【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第86話 少し前に別の場所では

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:16
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:07
文字数:3,403


 地下道に鳴り響く、足音。



 その音を発する人数は、五人であり、帝国軍・帝国警察に属する者たちであった。



「うわぁーー? 辺り一面、血の海だぜぇ」


「血の海どころか? コレ殺戮地獄だよ?」


「うるさいぞ、ガキどもがっ! これは、俺の戦果だ」


 レオとカルミーネ達が話す中、ザミョール中尉は、暗い地下道を歩きつつ回想する。


 つい、三十分前のレジスタンスとの戦闘を、彼は思いだす。



 それは遡る事、ほんの一時間ほど前だが。



 ブリュッツェン市内を、帝国警察のパトカーが二台も走っている。



「暇だぜ、かつてのロシャ連邦時代は楽しかったぜ」


「また、その話ですか?」


 青いパトランプと、青と黒で塗装された車体が街中を通り抜けていく。


 それに乗っている警察隊員は、指揮官であるザミョール中尉と、運転手役のガリーナ二等兵だ。



「ああっ! 悪いかよ? こう暇だと詰まんな過ぎて、愚痴の一つや昔話が出るのも仕方がねぇんだよ」


 悪態を吐きながら、ザミョール中尉は、煙草に火を着ける。


 彼が握った、紙箱には水色の空を背景に、飛行機が描かれていた。



「はぁ~~~~」


 鼻孔と口内に充満する、濃厚な香りを、深く味わうザミョール中尉。


 彼は昔、とある連邦国家で、警察官だった頃に、良く吸っていた、煙草の銘柄を思い出す。



『…………このブルガリー製の…………いや? ここではブルガリャ製か? Tuー134に紙が砂糖黍の味がして甘かったKaribe…………』


 彼が、思い出した煙草の銘柄は、全てが故国に、当時輸入された者であった。



『…………国内産じゃKOSMOSが割りとマシな味と品質だったな…………あ~~? 思い出したら吸いたくなって来たぜぇ…………あの黒いパッケージと宇宙ロケットのイラストがまた見たくなったな…………』


 煙草の味を思い出す、ザミョール中尉が、懐かしい思い出に浸っていると、隣から無線機が鳴った。



『潜入中の工作員からの要請で、テロリストの拠点にて戦闘中との事だ、付近をパトロール中の警官は至急応援に向かえ』


「了解、これより指定されたポイントに向かう」


 無線機に答えた、ザミョール中尉の隣では、ガリーナ二等兵が、カーナビ・パネルを眺める。


 そこに写された、指定ポイントの位置を、彼女が確かめていた。



「急いで向かおう、工作員の命が心配だからな」


「どうやら、地下からビーコンは発信されている様ですね」


「近くの地下防空壕入口から侵入できる見たいですが、敵拠点の正統な入口の位置は不明ですよ」


 ザミョール中尉が、今も戦っているであろう工作員を心配して呟く。


 また、運転席の後ろから、ギルシュ二等兵が詳しい位置を、ノートPCを操作して確める。



「アレ? また予備のウォッカを忘れてきちゃった」


「またかっ? 外回りに煙草とウォッカは必需品だろうが、カピトリーナッ!」


 その隣席には、カピトリーナと呼ばれた女性隊員が座る。


 彼女は、空になった、ウォッカの瓶を足元に転がさないように、ゆっくりと置く。



 また、膝の上に載せた、バックを漁り、他にまだ封を開けていない瓶がないか探っていた。



 彼女は、レモンカラー・ロングテール髪に、ヴァイオレットの瞳、唇はスカイブルーなど。


 わりと大人しめの印象を受ける、可愛らしい見た目をしていた。



 服装は、黒いウシャンカ帽を被り、帝国警察の黒い制服を着ている。


 下には、黒いロングスカートと、青いタイツを履いていた。



「あーー!! ストリチナヤ、モスコフスカヤ、ストロワヤ、スタルカ、ペルツォフカ~~!?」


「うるさいですよ、任務に集中して下さい」


 バック内から出てくる物は、様々な種類のウォッカが容れてあった、空瓶ばかりである。


 そして、まるで子供のように騒ぐ、カピトリーナ二等兵を、ギルシュ二等兵が叱った。



 彼等が、今乗っているの車両であるが。



 それは、高級スポーツカーである、黒い塗装のポルシェ・カレラGTだった。


 その後ろを、追尾して走る黒いパトカーは、フェラーリSP12ECである。



 これ等のパトカーだが。



 民間から、強引に徴用して入手した物、反体制派から、押収・滷獲した物。


 などと言った手段で確保した車を、警察車両に改修して、使用しているのだった。



 市内を走る二台のパトカー。



 その車列は、立ち並ぶ黒いビル群を抜け、地下防空壕入口付近にまで来ていた。



 広大な公園の一角。



 そこに、第二次世界大戦中に構築された、古い防空壕。


 そのコンクリート製である、入口には、人だかりが出来ていた。



 古びた、公衆トイレのような外観をした、防空壕だが。


 この入口付近から、周辺を取り囲むように布陣する、黒服を着ている一団。



 それは、帝国軍部隊の姿だった。



 パトカーの社内から、ザミョール部隊は、遠目に彼等が展開している姿を眺める。


 装甲車が、三台も並び、大勢の帝国軍兵士たちが、周囲を警戒していた。


 トーテン・シェーデル・ゾルダートが、二十人も警備に立っている。


 また、グールが四人、オーガーとシュヴァルツ・リッター達は、一人ずつ存在している。



 と言った感じで、小隊規模の部隊が、辺りを封鎖していた。


 防空壕入口は、彼等の存在により封じられ、看板と鎖が付いた棒を立てられていた。



「クソが、先を越されたか?」


「彼等も工作員を助けに?」


 ザミョール中尉とガリーナ二等兵たちは車内から、帝国軍部隊を観察する。



「知るか、それより俺達も中に入れるか交渉して来るからな」


 ザミョール中尉は、口から煙草を放すと、胸ポケットから取り出した、携帯灰皿に押し付ける。



「ガリーナ、お前だけ来い」


「了解ですっ!」


 ドアを開いて車外へ出た、ザミョール中尉の後を追って、ガリーナ二等兵も車外へと出る。



「指揮官は何処だ?」


「彼方に居りますっ」


 パトカーである、ポルシェ・カレラGTから離れた、ザミョール中尉。


 彼は、防空壕入口の前に立つ、三人の帝国軍兵士達に指揮官はと声を掛けた。



 すると、三人の帝国軍兵士で、真ん中に立っている兵士は、ローマ式敬礼をして答えた。



「どうも、御苦労さん」


 その兵士から離れた、ザミョール中尉は、彼が手を向けた方向へと直ぐさま向かう。


 そこには、三列に並んだ装甲車がある。



 また、右側にある車両二台の間に、帝国軍指揮官らしき、女性将校が存在した。



 彼女は、非常に目立つ、ラベンダーグレイ色のウシャンカ帽を被る。


 服には、襟元が白色の模様が入った、黒いロングコートを着ていた。



 足には、黒い乗馬用ズボンと、黒いロングブーツを履いていた。



 容姿は、ペール・ホワイト・リリーとミルク・ホワイト色の髪を、マッシュボブヘアにしている。


 ゼニスブルー色に光る丸い瞳に、クラウドブルー色のアイシャドウを塗っている。


 唇は、プルンと膨らんだ、アクア・マリン色だ。



 と、見た目はかなり、大人の色気たっぷりの女性だった。


 その右手には、演奏指揮者が使う、指揮棒《タクト》を持つ。



 その後ろには、もう一人、フードを深く被って、足元まで黒いマントを着た兵士が存在した。


 それと、護衛役を務める、二人の帝国兵が控えていた。



「何だ貴様は?」


 ノートPCを弄くる、帝国軍・女性将校は、かなり機嫌が悪そうだ。


 彼女は、ザミョール中尉の姿を見るなり、顔に凄く面倒臭そうな表情を浮かべる。



 それと同時、如何にも邪魔者が来たと、敵意も剥き出しにした。



「帝国警察、第二小隊のザミョール中尉です」


「帝国軍・野戦憲兵隊、指揮官のフォイルスニェーク大尉だ」


 直ぐさま、ローマ式敬礼を取る、ザミョール中尉だったが。


 彼に対して、フォイルスニェーク大尉は邪魔だと、あから様な態度を取り続ける。



「単刀直入に申し上げます、我々も中に入れて貰えませんか?」


「それは無理な相談だな、我々が先に封鎖して内部に突入したのだ」


 ザミョール中尉の申し出だが、もちろん、フォイルシニェーク大尉は許可しない。


 彼の頼みを聞いても尚、一向に地下防空壕へと立ち入ることを、許可しない理由だが。


 それは、帝国警察部隊と帝国地上軍の仲が悪いからだ。



「仕方が有りませんな、ん?」


「どうした?」


 そんな時に、突然ザミョールは懐に入れていた、タブレットを取りだして、内容を読んだ。



「付近で、テロリスト連中と帝国警察部隊が、交戦中との事です」


 フォイルスニェーク大尉の前で、タブレットの内容を伝える、ザミョール大尉。



「と言う事で、我々は至急向かわねば成りませぬので」


「ふんっ! 知るか…………さっさと、立ち去れっ!」


 別の場所に行くと告げる、ザミョール中尉に対して、フォイルスニェーク大尉は短く答えた。

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