【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第5話 双方の協力者

公開日時: 2024年7月8日(月) 13:45
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:27
文字数:3,821


 地下道を密かに歩く、ナタンとメルヴェ達だったが、しばらくは敵に出会わなかった。



「ん? 後ろから足音がするっ! 地下道は、不味いな…………今までは」


「不味いわね? さっきの連中かしら? 取り敢えず、さっさと行かないとね」


 どうやら、帝国側部隊が真後ろの地下道を通って来ているらしく、ナタンは床を蹴る音を耳にした。


 複数人の敵が迫っていることは、メルヴェも察知して、ここから逃げる事を提案した。




「きっと? 襲撃の影響で、地下道の方に探索部隊が派遣されたんだ」


「なら、地下から地上に出ましょうっ!」


 ナタンとメルヴェ達は、帝国側の探索や巡回に、引っ掛かってしまう危険性を考えた。


 そして、彼等は地上に出てしまえば、むしろ帝国側の警戒網から逃れられるかも知れないと思った。



 こうして、帝国側の追跡部隊から逃れるべく、二人は必死で、ある場所まで走っていった。


 それから、二人は秘密の出入り口である赤字で、工事中と書かれた、黄色い看板を発見した。



「ここだ、右から取り外す」


「じゃあ、私は左側からね」


 両側から看板を取り外した、ナタンとメルヴェ達は、中に入ったあと、すぐに元の位置に戻した。


 二人が入った空間には、工事用具が所狭しと置かれている。



 そして、工事現場で使う、赤いコーンが四つも置かれた場所に向かう。


 これらを退かして、そこにあった、円形の出入口から下に続く、梯子《はしご》を降りていく。



「行くぞ」


「ええ」


 もちろん、ナタンとメルヴェ達は、上に赤いコーンの位置を戻して、蓋を閉めた。


 また、二人が降りた場所は黄土色の壁が続く、洞窟みたいな空間が広がっていた。



「上に行こう、ここは確か地下倉庫内に出るはずだ」


「先に行って、後ろは私が見張っているから」


 洞窟内の巧妙に偽装された、入口である岩壁を退かして、二人は地上に出ようとした。


 そこには、何処かへと続く坂道があり、彼等は臆することなく、進んでいった。



 ナタンは、坂を登って、小さな地下倉庫の中に出たが、当然周囲を警戒する。


 メルヴェも、後から上に来たが、周りに敵が存在しないかと、アチコチに目を配る。



「ここには、敵は居ないな?」


「ええ、防弾ベストと銃は置いておきましょう」


「誰か居るのか?」


 ナタンとメルヴェ達は、武器を下ろして、防弾ベストを脱いだ瞬間、階段から誰か降りてきた。



「おや? その武器は…………? レジスタンスの皆さんですか? 私は民間協力者のフェネックです…………さあ、上に行きましょう」


「協力者か、ありがたい」


「早速だけど、外の様子を教えて下さるかしら?」


 フェネックと、暗号名を名乗る、老人の後を追って、ナタンは階段を上がっていく。


 メルヴェは、街では帝国側が厳しい監視を行ってないか、彼に質問した。



「このヴァン・マルデ通り近辺には、部隊は存在してません…………しかし、巡回や監視カメラなど、それらには充分に注意して下さい」


「分かった、あと敵の装備を奪ったんだが、上手く隠してくれ? それと、助かった」


「私達は、アジトに帰るわ? 貴方も、レジスタンスに協力している事が、バレないように気をつけてね」


 フェネックから忠告された、ナタンとメルヴェ達は、彼の家を歩いていく。



「礼は要りません、それよりも、くれぐれも気をつけて」


「大丈夫だ、心配は要らない、それじゃあな」


「私達なら、きちんと逃げられるわ? さようなら」


 家から事務所の中らしき場所を通って、フェネックは二人を外へと案内する。


 ナタンとメルヴェ達は、彼に別れの挨拶を告げると、ドアから外に出た。



 そこには、茶色や白に塗装された、煉瓦壁の建物が並んでいる。


 背後に振り返った、彼等は反対側も、茶色い建造物が建ち並んでいるのを目にした。



「ここは、自動車の整備工場だったのか?」


「…………のようね?」


 ナタンとメルヴェ達は、周囲の建物を身ながら、ヴァン・マルデ通りを南に歩いていく。


 相変わらず、人通りは少ないが、何人か民間人や警察隊員たちが見える。



 それに、左右両側には、大量の様々な自動車が、たくさん並んでいる。



 他にも、街中に張られた、広告ポスターやモニターが帝国を讃えるプロパガンダ情報を流している。


 ここは、他の区域よりも、帝国軍や帝国警察などが用意した、青いサブリミナル洗脳装置が多い。



「帝国の青色の宣伝が、ウザいほど、あるな?」


「ここの住民は、きっと戦いに巻き込まれたくない人間が多いのよ」


 ノルデンシュヴァイク帝国の宣伝工作は、地元民に対する洗脳広告として、巧妙に構築されていた。


 軍旗や垂れ幕などには、帝国の栄光や絶対的な力を讃える、スローガンが堂々と掲げられている。



 これにより、帝国軍人や帝国警察隊員の誇りを掻き立てていた。


 また、こう言った、工作用の宣伝は、住民たちが反乱を起こさないように設置されている。



 さらに、この大量配置された、工作物などを見て、ナタンは呟く。


 それを、メルヴェは民間人が帝国政府に忠誠を誓っていると報せるため、自ら用意したと考えた。



「ふぅ? まあ、現状だと帝国に逆らうのは自殺行為だからな」


「しかし、いつ見ても、青色と白い空は萎えるわね?」


 フェネックのような協力者や、レジスタンス員などを除き、一般市民は嫌々ながらも従う他ない。


 それは、帝国による苛烈な報復や、人権を無視した洗脳兵士に改造される事を恐れているからだ。



 ナタンとメルヴェ達は、そんな街中を何気なく、歩いていく。


 しかし、帝国は完全洗脳するほどのプロパガンダは、何故か流していなかった。



「帝国は、俺達を追い詰めようとしている…………だが、窮鼠猫をかむって、言葉があるように、ただでは殺られないぞ」


「連中の戦力は、圧倒的だけど? それでも、私達を倒しきれない…………しかし、帝国は優秀な兵士を集めるために、こっちを殲滅しないように手加減しているって、話だけどね?」


 一説によると、抑圧的な統治と宣伝工作に負けないほどの反乱分子を、敢えて煽っているらしい。


 それは、帝国軍や帝国警察などが、優れた戦士を選別するために行っているとも言われている。



「うわっ! また、爆発だっ! くっ!?」


「大変だわっ! また、別の組織が暴れたのねっ!」


「きゃああああっ! 戦闘よっ! 逃げなきゃっ!!」


「不味いっ! 急いで、避難しなくてはっ!?」


「急げ、敵の奇襲攻撃だっ! 我々も応援に向かわなくてはっ!」


「テロリストめっ! 今日は、やけに襲撃が多いなっ!」


 何処か遠くで、爆発音が鳴り響くと、ナタンは直ぐに反応して、背を丸めた。


 メルヴェも、背後に振り返り、黒煙が空に登っていく様子を見た。



 また、二人だけでなく、町を歩いていた、メイド服の女性も逃げ出す。


 それから、工事関係者らしき男性も、真っ青な表情で、とにかく走っていく。



 MP5短機関銃を両手に握る、野戦帽を被った、警察隊員は、走り出して事件現場へと向かう。


 PPKー20短機関銃を持つ、略帽を被った方も、早々と味方部隊を助けに駆けていく。



「不味いぞっ!! このまま戦闘に巻き込まれたらっ!?」


「撃たれてしまうか? 敵に捕まえられるわっ!」


 ナタンとメルヴェ達は、帝国軍&帝国警察の追手から逃れるために、必死に逃げていた。


 彼等は、レジスタンスの一員であり、帝国に捕まることは、死や洗脳されることを意味していた。



 黒く塗装された、パトリアAMV装輪装甲車が、二人の前方から走ってくる。


 しかし、いきなり車体前部が、爆風で吹き飛んでしまい、ひっくり返された。



「帝国警察を発見っ! 撃て、撃てっ!」


「RPGーを喰らえっ!」


「ぐわっ! このっ! がは…………」


「反撃してやるっ!!」


 三階建ての建物屋上から、黒人レジスタンス員がAK47を何発か撃ちまくる。


 その左側からは、路上を狙って、白人レジスタンス員が、RPGー7を路上に向けて放った。



 銃弾を喰らい、さらに上から発射された、弾頭を受けて、野戦帽の警察隊員は爆炎に包まれた。


 しかし、パパーハ帽を被る警察隊員は、白いワゴン車両の陰に隠れて、PPKー20を撃ってきた。



「ぐわっ! しまっ! うわーーーー!?」


「この野郎、お返しだっ!」


「やったかっ? よし…………」


 RPGーの筒を落としながら、地上へと落下していく、白人レジスタンス員。


 黒人レジスタンス員は、両手に握るAK47だけを下に向けて、とにかく乱射しまくる。



 当然だが、その銃撃は、ワゴン車に身を隠している略帽を被った、警察隊員には当たらない。



「あっちだっ! 左側の柵を飛び越えるぞっ! ぐっ!!」


「あっ! 待って、装甲車よっ!? うわっ! こっちに行きましょう」


「怪しい連中だ、撃ち殺せっ!」


「敵を発見した、これより攻撃する」


「帝国軍だっ! 煙幕を投げろっ!」


「あいよっ! その前に、グレネードを喰らえっ!」


 ナタンは、緑色の網が張られた柵に、急いで向かうが、そこに何発も弾丸が飛んできた。


 メルヴェも、彼を追っていたが、正面から並走してきた、黒いBTRー80装甲車に驚く。



 彼等は、灰色の乗用車を楯にしようと、車体左側に身を隠した。


 その間にも、帝国軍部隊とレジスタンス部隊で、激しい市街戦が展開される。



 帝国軍兵士は、右側の建物屋上からAK15を、二人が隠れる場所に向かって、何発か連射する。


 もう一人は、ライフルグレネードを、SKSの銃身から飛ばしてきた。


 アラビ人レジスタンス員は、窓を破って、煙幕弾を投げつつ建物から出てくる。


 二階の窓からは、黒人レジスタンス員が、AK74を派手に乱射しまくる。



 双方による戦闘は激しく、辺りを白と灰色の煙で包んでしまった。

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