戦闘が終了すると、レオは内臓を損傷しているため、ヤドリアンとソイラに付き添われていた。
「レオ、生きていたか? 顔色が良くないな?」
「他の連中に死人は出てないか?」
「済まん、俺は途中から動けなくなったから分からないんだ」
イェスパーとヴラウリオ達が、重傷を受けた、負傷兵に肩を貸して連れてきた。
レオは、彼等に事情を説明しながら申し訳なさそうに呟いた。
「そうか、分かった、俺達も一緒に行く」
「コイツを助けねば、成らんしなっ!」
「ああ、負傷者のためにも、そうしてくれ」
イェスパーとヴラウリオ達は、レオの後を追って歩いていく。
その途中には、灰色に塗装された、ダビドIMV歩兵機動車が、二台路上に停車していた。
PKT車載機関銃を搭載した、この二両は、やはり機関銃手に、ロボット兵アトラスを載せている。
また、その奥には、ダビドIMV通信車が、一台だけ停車している。
おそらくは、指揮官用の車体だろう。
「警戒を緩めるなよっ! まだ、逃げ遅れた敗残兵が残っているかも知れない」
「ああ…………特に、RPGには注意が必要だな」
「リオネーラ、グスターボ? 警戒は他の連中に任せろっ! お前たちも救護に向かえ」
高速攻撃車両である、UAZ《ウアズ》ー469には、三人の兵士が乗っていた。
車体には、前方右側に、PKP汎用機関銃を備えている。
まん中には、 ポールマウントに載せられた、SPGー9に無反動砲が搭載されている。
車体の後部左側には、AGSー30自動擲弾銃があった。
それぞれの武装を、キューバル派遣部隊員が、引き金を握って警戒に当たっている。
また、周囲に散会していた、二名の兵士たちに、ヤドリアンは指示を下す。
「はっ! 中を見てきますっ!」
「直ちにっ!」
命令を聞いて、ドラグノフを構えていた、ブラックベレーを被る、リオネーラは走っていく。
その前に、見えた姿は細顔に、大きくて丸い目に黒い瞳を持つ、若い黒人兵士だ。
背中には、Sa《サ》23短機関銃をベルトのフックに着けている。
一方、グスターボは、RPGー7Dを斜め上に向けて構えていたが。
指示が下ると同時に、武器をSa《サ》23短機関銃に持ちかえて、直ぐさま走ってゆく。
彼の容姿は、大柄で黒髪黒目を持つ、ラテン系白人男性だ。
フェイスバイザー付きのエビテール型ヘルメットを被り、プロテクターを全身に装備している。
そのため、RPG射手兼防弾兵であると思える。
「救急車が見えて来たぞ、確りしろよ?」
「もう少しよ、あと少し」
「心配しなくてもいい、死ぬほどじゃないからな」
ヤドリアンとソヤラ達は、辛そうなレオを心配して言葉をかけた。
そんな彼等は、装甲ガントラックであるパキートの左側を通り過ぎる。
コイツの荷台には、砲塔に、ZUー23ー2機関砲が装備されている。
また、後部側面に見える三つの丸い穴は、おそらく銃眼だろう。
「救急車って、アレだな?」
「そう、あそこの二台だっ!」
レオが呟くと、ヤドリアンは二台並んだ装甲車を指差した。
円に青十字の模様が、正面に画かれた、パンデュール1だ。
「ヤドリアン副隊長、こちらへっ! 救急隊員が待機していますっ!」
「アナイス、分かってる、今負傷者が来るからなっ!」
パンデュール1救急車の裏から、褐色肌をした女性兵士が現れた。
彼女に、ヤドリアンは答えながらも急いで、レオを連れていく。
アナイスは、ステッチキン機関拳銃を、両側のホルスターに容れている。
彼女は、褐色肌で焦げ茶色のロングパーマ、大きな黒い瞳に、キリッとした眉と大きな唇を持つ。
灰色ベレーを被る、彼女は薄紫色の半袖シャツと青ジャケットを羽織り、青ズボンを履いている。
「確認しますが、負傷兵ですね?」
「ああ、だが、俺より向こうのが重傷だ…………」
アナイスは、レオに声をかけたが、彼は後ろから連れて来られた負傷者を気にする。
イェスパーとヴラウリオ達が、連れてきた兵士は、かなり重傷だからだ。
「分かりました、衛星兵っ!」
アナイスは、衛星兵たちを呼ぶと、救急医療チームが走って来る。
「コイツは、酷い…………こっちの兵士は、近くの野戦病院に連れていく」
「ドローンを準備しろっ!」
司教みたいな格好のリッチ&軍医リッチたちは、レオより重傷である負傷者を搬送しようとする。
「お前は、内臓を殺られているな…………一度、開腹手術をせねば成らん、麻酔準備だっ!」
「早急に、メスと内視鏡を準備しないとっ!」
レオは、ヤドリアンとソヤラ達によって、長い四つ足に、車輪が付いている担架に載せられた。
司教姿のリッチと軍医リッチ達は、急いで彼をパンデュール1救急車へと運ぶ。
「ああ、くそ…………眠るのか?」
そう言いながら、レオは麻酔ガス用のマスクを、顔に装着されると、深い眠りに付いた。
「レオ、レオ? 時間だよ?」
「レオ、もう動けるだろう」
「カルミーネ、フロスト中尉…………」
カルミーネとフロスト中尉の声が聞こえた、レオは目を覚ますと起き上がる。
「皆は? ミアやベーリット、レギナは?」
「落ち着いてくれ、今から説明する、それより早く起き上がるんだな」
自らに被せられている、青い毛布を退かした、今の彼は白いシャツだけを着ている。
フロスト中尉は、混乱しながら仲間たちの身を案ずる彼を落ち着けようとした。
「ここは、昨夜の戦闘で君たちが活躍した場所だ…………軍服や装備は、そこの武器ボックスの上に置いてある」
フロスト中尉は、室内の窓側にある乱雑に積まれた、プラスチックケースを指差した。
「それで、仲間達は?」
「重傷者だらけだが、全員アンデッド、問題は無い…………」
レオは自身が眠っていた間に、ミアを含む全員の安否が気になって仕方がない。
そんな彼に対して、フロスト中尉は冷静に説明し始めた。
「しかし、ミネットは胸部損傷で入院中、また、首も斬られていたからね? 咄嗟に蔦で首は防御したようだし、アンデッドだから簡単には死ななかったようだが…………まあ、明日には復帰できるだろう」
「そうですか、それなら良かった」
フロストは、重傷を負ったが何とか一命を取り留めた、ミネットの状態をレオに教えた。
「シェラは、かなりの威力が高い雷撃を受けたんだが、防弾鎧内に施された絶縁体のお蔭で、全身に重傷を負ったが、ギリギリで生きているよ…………彼女は何日か安静にして貰わないと」
「彼女も?」
フロスト中尉は、レオに雷撃を受けた、シェラが入院中であり、早期復帰が困難であると説明する。
「現場に居合わせた、アスカリ部隊だが? ファルクは腹部重傷を受けて生死をさ迷っているそうだ? また、フェリシテと言う隊員は全身に大火傷を負ったらしいな」
「連中も、かなり殺られてしまったんですね…………」
アスカリ部隊も被害を被ったことを伝える、フロスト中尉に対して、レオは昨夜の戦いを思い出す。
敵味方双方が入り乱れて、乱戦により、陣営に関係なく、ともに多くの死傷者が出た。
それを脳内に浮かべた、彼はボンヤリとする。
「それから、昨夜は敵兵を捕らえたようだね? 彼等には、これから戦力になって貰うよ、クク…………」
「そそ、ソイツらは? 昨日の連中ですね?」
「イッセン・トンバルバイ二等兵ですっ! RPGの射手ですっ!」
「カディアトゥ・ベアヴォギ二等兵っ! 今日から第三小隊のメンバーに成りますっ!」
嬉しそうに、戦利品として滷獲した兵士たちを、フロスト中尉は紹介する。
レオは、彼等の姿を見て驚きながら、氷壁や蔦網で連合軍兵士を捕らえていた事を思い出した。
イッセン・トンバルバイを名乗る黒人男性は、服装が変わっていた。
鼠色の上下制服に、青い肩章が備わり、青い弾帯ベストを腹に巻いている。
頭に巻いていた、ヘッドスカーフも当然青色の物になっていた。
ホロサイト、伸縮ストック、ハンドガード付きレイルシステム、フォアグリップなど。
武器も、これらを装着した、AK47カスタムを両手に握っている。
また、分割可能で、携帯が容易なRPGー7Dを背中に背負っていた。
女性兵士である、カディアトゥ・ベアヴォギは、相変わらず、顔が見えない。
フリッツ・ヘルメット、戦闘服は同じだが、迷彩模様が青と白などに変更されている。
面を隠すためのマスクも、縁が青色で中側は迷彩に染められていた。
彼女の迷彩服は、青・黒・灰・水色と、アルメア海軍デジタル迷彩に似た配色だった。
膝や肘の、パッドや弾帯付き防弾ベストも、青色に塗装され直している。
武器は、ダットサイト、フォアグリップを装着した、AKMカスタムを両手で持っている。
「彼等も、俺達の仲間になってくれたか…………」
「そうだ、それよりも部隊全員で動くぞ、今日は殲滅戦だっ! 兵器も用意したしなっ!」
レオが小さく呟くと、フロスト中尉は興奮したのか、大きな声で叫ぶ。
「レオッ! カルミーネッ! これから、将校同士の話し合いがあるっ! それに、まだ仲間が来るぞっ! 急げ、着いてくるんだっ!」
新たな仲間を得た、フロスト部隊は連合側を殲滅するべく行動を開始した。
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