【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第91話 広い地下道での乱戦

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:23
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:10
文字数:3,141


「くっ! 来るなっ!!」


「くたばれぇっ!?」


 銃を乱射して、ザミョール中尉が飛び掛からぬようにと、敵側の二人は必死で応戦する。


 こうして、ケピ帽を被った男とプーニーハットを被った男たちは、銃を撃ちまくるのだが。



「つっ!」


 両腕を交錯させたまま、ザミョール中尉は、銃撃の間をすり抜けるように走る。


 そうしながら、ワーウルフに変身して、六人の連合軍コマンドー隊員たちに襲い掛かった。



「うわぁっ!?」


「ワーウルフだっ!」


 フリッツヘルメットを被った、傷だらけの顔をした、黒人男性は驚いてしまう。


 紅いベレー帽を被った、若い男は叫びながらも、素早く動いた。



 こうして、二人とも重機関銃の側から急いで離れる。



「下がれっ! 早く行くんだ」


 他の連合軍コマンドー隊員が素早く後退する中で、一人だけ殿《しんがり》を務める者が立っていた。


 それは、プーニーハットを被った男だったが、奴は帽子を脱ぎ捨てると、即座に変身を始める。



「ガアァァァーー」


「ガルルッ!!」


 プーニーハットを被っていた男は、連合軍側のワータイガーであった。


 そして、奴はザミョール中尉に、果敢にも白兵戦を挑んできた。



「貴様も獣人に改造されていたのか? ふん…………どちらが実力が上か勝負だっ!」


「五月蝿ぇ、俺はお前を倒すだけだ帝国野郎がっ! お前達は間違っている」


 ザミョール中尉と、ワータイガーの男は、互いに拳を力強く握り締める。


 それから、一気に素早く振るい合い、互いに爪で喉を切り裂こうと、激しい格闘を演じる。



「無実の人々を殺しやがって、お前達が殺した人々にも、善良な人や親兄弟に子供まで居たんだぞっ!」


「だから何だ? 戦場では殺すか殺されるかだけだ…………それとも貴様も生け捕りにされて捕虜に成りたいのか?」


 目にも止まらぬ速さで繰り出された、パンチを間一髪で交わす、ザミョール中尉。


 彼は、自らの犬歯が生えた、左頬を掠める拳を避けた後、即座に左手で着かんで反撃に転じる。



「ふざけるな、貴様等に洗脳される位なら俺は自害を選ぶっ! 誇り高きコマンドーを侮辱するなぁっ!」


「こっちだって元は、オモンやソーブル出身だっ! お前がSASかグリーンベレーかは知らんが? そう簡単に勝てると思うなよ」


 右手に生やした、鋭い爪で、ザミョール中尉は相手の肩を切り裂く。


 だが、ワータイガーの男も、直ぐさま喉元を狙って、引っ掻き攻撃を繰り出す。



「大丈夫ですかっ!?」


「中尉殿っ!」


 ソロモン一等兵とゲンナジー伍長達は、取っ組み合いの最中である、二人に銃口を向けるが。



「くそ、これじゃあ撃てないっ!」


 ソロモン一等兵の手に持つ、自動散弾銃であるヴェープル12モロトだが。


 この銃では、散弾を連射してしまい、敵とともに、ザミョール中尉を射撃に巻き込んでしまう。



「照準が合わせられん」


 ゲンナジー伍長が、両手に握る、ブルバップライフルOTsー14もだが。


 敵である、ワータイガーの男を貫通してしまい、背後で戦うザミョール中尉を巻き込みかねない。



「これでなら…………」


 ゲンナジー伍長は、いきなり口を覆う黒いガスマスクを剥ぎ取った


 また、揮発性の高い、粘性毒液を吐き飛ばして、ザミョール中尉を救おうとする。



 グールが使う毒ガス&バクテリエラー・ゾルダートの毒粘液。



 これ等は、味方のアンデッド・ミュータント達に対して、悪影響を与える事はない。



「行くぞっ!!」


 なので、バクテリエラー・ゾルダートである、ゲンナジー伍長は、堂々と攻撃できる訳だ。


 彼は、臆せず直ぐに細菌粘液を吐くために、深く息を吸い込もうと口を大きく開く。



「貴様なぞに、そう易々と殺られて堪るかっ!」


「けっ! 踏み込みが甘かったかっ!」


 だが、激しい乱闘の末に、ザミョール中尉とワータイガーの男たちは地面を頃がってゆく。


 それにより、吐き飛ばされた、細菌粘液の射程外へと、離れて行ってしまう。



「中尉っ!?」


「こいつの相手は俺に任せろ、お前達は先に行けっ!」


 ワータイガーの男と、剥き出しである黒い岩壁付近で戦う、ザミョール中尉。


 その彼に、ゲンナジー伍長が声を掛けると、彼は目を向けることなく、怒鳴る。



「了解しました、敵を追撃します」


「先に行って待っています」


 こうして、逃走した敵を追撃するよう命令を下された警備隊員たちだが。


 中でも、ソロモン一等兵とゲンナジー伍長たちは、素早く奥の方へと走って行ってしまった。



「良いのか? お前は壁に追いやられて劣勢なんだぞ、三人で掛かれば俺一人簡単に殺れるだろう」


「奥で態勢を整えられると厄介だからなぁ~~? それに貴様一人位、俺の力だけで充分だっ!」


 ワータイガーの男に、背後にある壁へと押し付けられる、ザミョール中尉であったが。


 彼は、渾身の力を振り絞り、後ろを右足で蹴り飛ばす。



「喰らえっ!虎男」


 ザミョール中尉は、勢い良く壁を蹴った、右足を曲げる。


 そして、ワータイガーの男に、溝内を目掛けた膝蹴りを放つ。



「詰めが甘いぞ」


 しかし、ワータイガーの男は繰り出された膝蹴りを、喰らう事はなかった。


 奴も、相当な実力者らしく、意図も簡単に、左側に避けてしまう。



 それから、奴は鋭い爪を振るい、ザミョール中尉の両目を潰そうと、右腕を伸ばす。



「これで、終わりだあぁぁっ!!!!」


「しまっ!?」


 ザミョール中尉は、焦りつつ瞼《まぶた》に映る、ワータイガーの男が振るう鉤爪を睨む。


 彼は、一瞬だけ覚悟を決めたが、一向に両目からは痛みを感じなかった。



「がはっ? …………お前? 番《つがい》だったの…………か」


 ザミョール中尉の目前では、白い体毛を揺らす狼女に変身した、ガリーナ二等兵が立っていた。


 また、彼女に、背後から喉元を噛み千切られた、ワータイガーの男が苦しむ姿があった。



「ダスビダーニャ」


 バタンと、ワータイガーの男は、力なく地面に崩れ落ちる。


 彼を、冷ややかな視線で見下ろす、ガリーナ二等兵。



 彼女は、倒れた死体を踏みつけながら、完全に死んだかどうかを確かめる。



「ザミョール中尉、大丈夫です? お怪我は有りませんか?」


 彼女は、死体に向け、ロシャ語で、さようならと一言呟いた。


 その後、直ぐに、ザミョール中尉に向き直り、彼を案ずるが。



「心配は要らん、俺は無事だからな」


「そうですか、良かったですっ!」


 軍服を着ている二匹のワーウルフ姿をした、二人であったが。


 ザミョール中尉の方から、一旦変身を解くと、ガリーナ二等兵も、人間へと戻る。



『…………正々堂々と、一対一で勝負をしたかったが、俺一人では命を取られていたな…………彼女に感謝だな…………』


 ザミョール中尉は、ガリーナ二等兵に感謝の気持ちを抱くも、それよりも任務を優先する。



「奥に行った二人が心配だな…………ガリーナ直ぐに行くぞ」


「はいっ! 中尉、追撃任務は続行ですねっ!!」


 ザミョール中尉は、乱れた軍服の襟を正すと、飛び掛かる時に捨てた武器を拾う。


 こうして、背中に、TOZー194を背負って、両手にAK12を構える。



 ガリーナ二等兵も、安堵の表情を浮かべていたが、彼女も、直ぐに気持ちを切り替えた。


 そして、他の仲間と共に先行している、二人を探しに行った。



「しかし、ZPUー2まで有るとはな…………重機関銃だと思っていたが、まさか? これ程強力な兵器を用意しているとは」


 ザミョール中尉は、走りながら後ろに、チラリと視線を向ける。


 そして、二連装対空機関砲であるZPUー2の姿を一瞬だけ見る。



 彼等、八人は暫く走ると、蟻の巣穴みたいに成っている小部屋が複数存在する通路を通過していく。



 ここには、武器弾薬が大量に保管されていた。



「居たな」


 ザミョール中尉が短く呟き、その方向に、第二小隊の仲間達が目を配る。


 すると、ソロモン一等兵とゲンナジー伍長達が、そこには存在した。



 二人は、左右両側の壁に隠れて、連合軍コマンドー部隊と睨み合っていた。

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