「俺達は自分達の任務を継続するから奥へと向かう、お前達も気を付けろよーー」
ウェストは、自らの仲間達と味方レジスタンス達に向けて叫ぶ。
こうして、良く聞こえるように、下水道内に反響するほどの大きな声で別れを告げた。
それから皆を率いて、本来の行くべき道筋に戻る。
「分かった、そっちの無事も祈ってるぜ」
「絶対に無理はするなよーー」
四人のレジスタンス達は、遠くから声を掛けてきた、ウェストに返事を返す。
それから、すぐに荷物を抱えて、何処かへと早々に立ち去った。
「ああ、くそ、仲間が殺られたか…………」
「お前達も無事に生き残れよっ!」
生き残った、レジスタンス二名も返事をした後、仲間達の遺体に、十字を切って供養した。
「お前らっ着いて来い、合流ポイントへ急ぐぞ」
「俺達が遅刻したら彼方さんも困るからな」
「そうね、遅れ無いように先を急ぎましょう」
「早くしないと敵に見つかるかも知れないからね」
ウェスト・ハキム・メルヴェ・サビナ達は、銃の弾倉を換えたり、機関部に異常がないか確認する。
四人は、周囲に生き残った敵が潜んでいて、不意打ちを掛けてはこないかと警戒している。
また、先を急ぐために、準備を整え次第、皆歩き始めた。
下水道の先、湿気が無い、空っとした空気が漂う蛍光灯が備えられた通路に出た、ナタン達。
彼等は、その奥に存在する鋼鉄製ドアを目指す。
「開けるぞ、援護してくれ」
「分かった、援護は任せて」
「後ろは僕等に任せろ」
「突入準備はOKよっ!」
ナタン・メルヴェ・ハルドル・レギナ達は、それぞれ準備万端だ。
四人の変装役は、帝国警察に変装して、ドアを開いて、静かに突入しようとする。
それは念のために、万が一、中に居るかも知れぬ、帝国兵に見つかってたとしてもだが。
味方の格好をしていれば、余計な戦闘を避ける事が出来るからである。
そして、他の六人も、突入準備を整え待機する。
「皆、準備は良いか?」
「出来てるわよ」
ナタンとメルヴェ達は、ドアの裏側に帝国軍兵士が潜んでいることを予想する。
また、銃を手にして、連中待ち構えている可能性を考慮して、内部に突入する準備を始めた。
その背後に控える、ハルドルも腰に下げた、ホルスターから取り出した、グロック17を構える。
さらに、隣に立つレギナは、WIST《ヴィス》ー94Lピストルの銃口を扉に向ける。
「行くぞ…………」
「ええっ!」
ナタンは左手で扉を開き、右手でFAーMASのグリップを握り内部に突入する。
その後に続く、メルヴェはMKEKーMPTライフルを強く握り締める。
二人は、周囲に、敵は居ないかと様子を伺う。
「敵はっ!」
「居ない」
ナタンとメルヴェ達に続いて、ドアの向こう側に突入した、ハルドルとレギナ達。
二人も、彼方此方《あちらこちら》に銃口を向けて警戒したが、しかし、部屋の中には誰も居なかった。
そこに、唯一存在するのは、光沢が無い、銀色に塗装された梯子だけで有った。
「誰も居ないわ…………」
「敵は居ない、安全だ」
メルヴェが銃を下ろして緊張を解き、溜め息混じりに一言呟いた。
それから、ナタンは外に待機する仲間達に、安全を告げた。
「なら安心ね…………」
「大丈夫だったか」
MP5を持つ両手から力を抜いて下げつつ、サビナは歩いて来る。
すると、スターリングMK5.パラを構えた、リュファスも中に入って来た。
「良し、この上の廃工場が合流ポイントだ、それにしても良く誰一人欠ける事無く、ここまで来れたな?」
二人の後に続いて歩いて来た、ウェストは銀色に塗装された梯子を見た。
それで、やっと、目的地まで無事に辿り着く事が出来たんだなと安心した。
先程、味方の振りをして、帝国警察を騙した変装方法だが。
それらにより、大した損害も無く、戦闘に勝利することは稀である
大抵は劣勢に追い込まれている、レジスタンスが行う作戦は上手く行かないのである。
それ故、今まで運が良かったなと思ったのは彼だけではなく、全員がそう思った。
「レギナ、ハルドル、先に上に行ってくれ、外に出ると向かい側の建物に工作員が乗ってきたトラックが有る筈だ」
「それを確認すれば良いんでしょ、楽勝よ」
「だからって、気を抜かないでくれよ」
ウェストに命令された、レギナとハルドル達は、直ぐに梯子を登り始めた。
そして、蓋を退けて頭を出した、レギナはWIST《ヴィス》ー94Lピストルを構えて周囲を観察する。
どうやら、ここは廃工場の端にある休憩所横に併設された用具室らしい。
その場に、敵影が無い事を確かめると、彼女は身体を穴から這い出てくる。
また、物音を立てずに扉を少し開き、入り口からコンパウンドボウを構えて、外に注意を向ける。
「誰か周囲に居るかい?」
「いいえ、誰も居ないわ」
後ろから穴から出たばかりのハルドルが近付いて来て、小さな声で囁く。
レギナは、それに誰も居ないと答えて、廃工場の広い体育館みたいな空間に出ていく。
そこに、機械類は無く、既に解体されたか、所々に穴な開いた緑色の床しか存在しなかった。
「ふぅん、取り合えず一旦外に出ましょう?」
「向かい側って言ってたけど、どこかな?」
「真っ直ぐだ、真っ直ぐ」
レギナとハルドル達の背後から、ウェストが目的地である正確な場所を伝える。
いきなり、現れた彼の姿に、二人は驚いたが声には出さなかった。
「サビナ、ハルドル、行け…………援護する」
ウェストは、仲間に指示を出し。
廃工場の奥に位置する、車両用の錆び付いた、水色のシャッターの真下を指差した。
「あの向かい側に見える工場内に、トラックと工作員はあるはずだ? もし敵が居たら捕虜を連行する帝国警察の振りをしろ、中に居るのが工作員ならサビナが味方だと伝えろ」
「分かったわ、行って来るから援護は頼んだわよ、外に狙撃兵や巡回が居ない事を祈っててね」
「大丈夫さ、僕と居れば連行されている様に見えるから、安心して向こうに行けるんだしさ」
指示を出し続けるウェストに従い、サビナとハルドル達は、外に出て向かい側の廃工場を目指す。
辺りを警戒しつつ、二人は慎重な足取りで進んでいく。
その後ろ姿を、仲間達は入り口から見守る。
『…………彼等は無事…………工作員に合流出来るだろうか…………』
ナタンも、FAーMASを構えて、向かい側の廃工場内に入って行った二人を見守る。
また、脳内では心配しつつ、照準を覗いたまま、二人の合図を待ち続ける。
『…………? 大丈夫だったか…………』
手を振る、サビナとハルドル達の姿を視認した、ナタン達は外に出る。
そして、奇襲を左右から受けることを警戒しつつ、手招きをする、サビナの元に急ぎ向かう。
「トラックはあったわ、さあっ! こっちよ」
サビナの言葉を聞いた、仲間達は彼女が立っている方向に走って行ったが。
彼女の背後から、帝国兵達から背中に銃を突き付けられて、両手を上げた、ハルドルが現れた。
さらに、入口の左右からは、帝国軍兵士たちが、大勢ワラワラと現れる。
こうして、連中は、ナタン達レジスタンスを包囲した。
「みんな、済まないが銃を下げてくれ…………」
「テロリストどもに告ぐ、無駄な抵抗は止せ、諦めて大人しくすれば命だけは助けてやる…………無論、精神と肉体は変えてやるし、助けるのは肌が白い奴に限るがな」
ハルドルの背後に立つ、帝国軍士官は、冷酷な言葉を吐いた。
そして、ナタンの後頭部に、ウェルロッド消音拳銃を突き付けた。
『…………クソッ!? 包囲されたかっ!! だが待てよ…………あの士官の顔は見覚えがあるような…………』
ハルドルを背後から脅す、長身の帝国軍士官だが、奴に注目して顔を凝視する、ナタン。
彼は、なぜか士官の顔に不思議と見覚えがあった。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!