【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第三部 レジスタンスの過酷な戦いの日々

第21話 あの楽しかった日々から数年後に…………

公開日時: 2024年7月9日(火) 13:22
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:40
文字数:3,565


「おいっ! 着いたぞ…………アジトだ…………」


「動くなっ!」


 レジスタンス員が、アジトに着くと、鋼鉄製のドアを開く。


 すると、黄色く輝いた光る室内の中から突如、帝国軍兵士が、拳銃を向けて静止する。



「アイスシチュー!」


「マグマカレー?」


 レジスタンス員が何かを言うと、帝国軍兵士も、それに答える。


 さらに、奥の鉄扉を開けるために、三回叩き、中で待機する仲間に伝える。



「帰って来たか…………」


 帝国軍兵士の格好をした、レジスタンス員が叩いた鉄扉が、ゆっくりと開かれる。


 それで、中に隠れている、レジスタンス員たちの姿が見えた。



「気を抜くなよ…………見方に変装した敵のスパイかも知れないからな?」


 室内に居る、レジスタンス達は万一の襲撃に備えて、待ち構えていた。


 彼等は、テーブルやソファーの裏から現れると同時に武器を構えた。



 ステアーGB拳銃、ワルサーMPK短機関銃を向けて、歓迎する。



 ナタンを含む、外から戻って来た、レジスタンス達を待ち構えていた彼等だったが。


 レジスタンス員に変装した、帝国側スパイを警戒していたのだ。



 その為、こう言った歓迎をした訳だ。



「よせっ! 銃を下ろすんだ…………お前ら良く生きて帰って来たな」


 レジスタンス・リーダーらしき、茶髪で大柄な男が現れたが。


 ハリウッドのアクション俳優を想わせる彼は、帰って来た、レジスタンス達を労い、声を掛ける。



「リーダー! メルヴェは無事かっ?」


「ああ? ナタンお前の女房たるメルヴェは無事だぜ、奥で寛いで居るから行ってきな? がははっ!」


 リーダーらしき男は、ナタンの問いに笑いながら答える。


 すると、からかわれた事を、彼は無視しつつ急いで、メルヴェの元に向かう。



「やっぱ、女房は心配か?」


「リーダー…………余り、からかわないでやって下さいよっ? 奴も今夜の戦闘で疲れてるんですから~~」


 リーダーと、帰って来たばかりのレジスタンス員は、ナタンを心配して言った。



「それもそうだな? 取り合えず皆も明日に備えて休んでくれ」


 リーダーは仲間達に命令を伝えると、自らも寝室に歩いて行く。


 そして、見張り役いがいのレジスタンス員は、それぞれ部屋や倉庫に行く。


 それで、疲れているからと就寝する者、武器の整備や、弾薬補充を行う者に分かれる。



「メルヴェ! 無事かっ!」


「ナタンッ! 貴方も無事だったのね?」


 ナタンは、アジト奥の暗い廊下を歩いて行き、それから、3番と書かれている部屋まで来る。


 鉄製ドアを叩き、中で休んで居るので有ろう、メルヴェに声を掛ける。



 そして、彼女が無事かどうか確かめた。



「ナタン良く無事に帰って来てくれたわね…………私貴方も奴等に殺されたか連れて行かれたかと…………」


「心配は無いよ、この通り僕は無事さっそれより君は怪我は無いかい?」


 倉庫みたいに暗い、バスルーム程度の狭い寝室で、ベッドで毛布にくるまって居た、メルヴェ。


 彼女は、声を聞くとドアを開けて、ナタンを向かい入れる。



「怪我は無いわよ…………それよりも貴方に抱いて欲しいの…………」


「メルヴェ…………分かった良いよ…………」


 メルヴェは、自らの潤んだ瞳をナタンに向けると、彼にそっと抱き付く。


 そして、お互いの瞳を見つめ合いながら、静かにキスをした。



「ナタン…………」


「メルヴェ、君の事はずっと守って上げるよ…………例え、帝国が僕を殺そうとも君の事だけは何があっても守きるよ…………」


 白いベッドの上で目を瞑り、小さな喘ぎ声を、ぷるんとした唇から漏らす、メルヴェ。


 彼女の体を、ナタンは優しく抱く。



 そして、今度は彼女を強く抱き締めながら耳元で、そっと息を吐くように囁く。



「ふふ…………有り難うナタン、私も貴方の事を帝国のクズ共から守って上げる…………」


「だからって、無理はしないでくれよ? 君にもしもの事があったら僕は…………」


 メルヴェは、最愛の男に抱かれている嬉しさで、頬を赤くそめた笑顔を、ナタンに向ける。


 そうして、彼の背中を擦りながらそう話す。



 だが、ナタンは勝ち気なメルヴェに対して、無理はしないで欲しいと心配する。


 ナタンに取っても、メルヴェは最愛の女性だからだ。



「ふふっ? 貴方は本当に優しいのね♡ さぁ、そんな事よりも愛し合いに集中しましょ…………」


「つっ!? ………………」


 暫くの間、幸福な時が経つことも忘れて、恋人同士によるイチャツキは続いた。



 そして、事が終わると。



 二人は、戦闘と抱擁で疲れ果てたのか、ベッドに倒れ込む。


 こうして、二人とも並んで、毛布を被り朝まで、ぐっすりと寝てしまった。



「もう朝かしら?」


 暗い夜が開けて、日の出頃に成ると、メルヴェは目を覚まして、時計を見た。


 朝ではあるが、彼女は少々寝覚めるのが早すぎたと思った。



 そして、毛布から体を出して寝ている、ナタンに、彼女は毛布を掛け直して上げる。



「メルヴェ…………愛しているよ…………」


「ふふっ? …………私もよ、ナタン…………」


 寝言を呟くナタンに、メルヴェはそっと囁いて、毛布をかけ直すと、自らもまたベッドで眠る。


 そして、朝の時間が来ると、今度は先に、ナタンが目を覚まして毛布をどかす。



 彼は、メルヴェを起こさないようにと、静かに起き上がった。


 それから、両手を天に向けて、無言で深呼吸と共に大きな欠伸をする。



「…………メルヴェはまだ寝かせて置こうか? 彼女も昨日の戦闘と抱擁で疲れきって居るだろうし? …………」


 ナタンは、メルヴェに対して、チラリと目を向ける。


 ベッド上で、大人しい子猫の様に、毛布にくるまる、メルヴェ。



 彼女に視線を合わせた、ナタンはもう少しだけ、寝かせて上げようと思う。



「さぁ…………朝の準備だ?」


 朝早く目覚めた、ナタンは一人そう呟くと、金色に光る、5、56ミリ弾をマガジンに詰めていく。


 その後、直ぐにFAーMASの各部をチェックした後、これを棚に載せる。



 また、彼はメルヴェの為に、倉庫に牛乳を取りに行こうとする。



「起きたら飲むだろうしな…………」


 彼は倉庫を目指して、薄暗く湿った地下に掘られた、アジトの廊下を歩き続ける。



 すると、向こうの部屋で、弾薬の補充や武器の分解掃除など


 そう言った作業をしている、レジスタンス仲間たちの声が、地下道に反響して聞こえて来る。



「昨夜の襲撃も失敗ね…………前回、前々回と作戦の失敗は続いているし、私達だけじゃあ奴等に勝てないわ? 連合軍の攻勢はいつ始まるのやら…………」


「そんな事言ったって、連合軍は腰抜けと小学校を出た新兵ばかりの素人集団だっ! 南方のアフレア大陸の砂漠で帝国軍を足止めするのに精一杯の雑魚ばかりだっ!」


 レジスタンス仲間の女性が不安げな声を出しつつ、連合軍はまだかと仲間に聞く。


 すると、野太い声の男性は、連合軍に期待は出来ないと大きな声を出して怒鳴っていた。



「でも連合軍が居るから俺達に武器や補給品が届くんだぜ? それよりもハンザ以外の地域はどうなんだ? …………」


「風の噂じゃあ…………チィーナ人民共和国とジューポンでも幾つかのレジスタンス組織が俺達同様に活発に抵抗活動を続けているらしい? 詳しい事は何も分からんがな…………」


「それならアタシ、知っているわよ? 確か、チィーナでは旧首席派や人民解放軍の残党が各地の秘密基地や山岳地帯でゲリラ戦を展開しているらしいわ? 後ジューポンも、ジューポン・セルフ・ディフェンス・フォースの特殊部隊や、右翼の組織が私達同様に地下抵抗運動を続けているって聞いたわよ?」


 他のレジスタンス仲間たちが話す声も、話す声が聞こえてくるが。


 ナタンは、そんな彼等が話す部屋の脇を通り、スタスタと、軽い足取りで食料倉庫まで歩いて行く。



「…………アフレア・サウスアルメア・アシュア…………他の地域でも僕ら同様に帝国の圧政に立ち向かう仲間達が居るんだよな? 僕らも彼等も勝てるのか? 人類の差別や価値観の違い…………そして社会の混乱や宗教対立等の醜く愚かな一面を突つき…………この星ヴァースの北方地域を瞬く間に制圧して占領下に置いた巨大な黒い影…………いったい彼等の目的は? 彼等は何処から来た何者なのか? …………」


 ナタンは思う、巨大な帝国が行った侵略による手際の良さ。


 そして、敵を前にして、纏まり切れなかった人類の敗北を。



「…………まるでウルフェンシュタインや? ジューポンの漫画のヘルシングや? オペレーション・ダークネス見たいに…………吸血鬼やゾンビ兵が僕達に牙を向け…………銃を発砲してくるなんて誰が想像出来ただろうか…………」


 彼は、誰も想像出来なかった事態に、どうすれば回避できたかと悩み思う。



「…………僕達は悪夢を映画やゲームの世界の中ではなく現実の世界で見続けているのだ…………」


「いったい、誰がこの永遠に続く悪夢の苦しみを終らせてくれるんだろうかな…………」


 ナタンは、ふと気が付くと、そう呟きながら、食料倉庫の近くまで歩いて来ていた。

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