【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第160話 追跡&逃走…………そして、大脱走

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:36
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:53
文字数:3,558


「こっちだ、この向こうに…………」


「気は抜けないわね」


 ナタンが、両手にMASー1935を確りと握り、曲がり角から飛び出る。


 次いで、メルヴェが右手に、サルマスシズK10を持ち奥の階段に銃口を合わせた。



 階段に誰も居ない事を確認した、二人は階下に向かって降りてゆく。



「ビリーとアーニャ達が殺られたっ!」


「仕方ない、バイクは置いて行くっ!」


 二人が、階段を降りてから、すぐに連合側の声が聞こえてきた。


 だが、油断は出来ないので、近くにあった段ボール箱へと、彼等は身を隠した。



 すると、どうやら連合側の兵士たちは、逃走を開始するようだ。



「しかし、お前らは何処に隠れてたんだ? 俺たちは地下に居たが?」


「同じレジスタンスの死体の中さ…………んっ! 誰か居るっ!」


「急げ、早く出すんだっ!?」


「俺が、奴らを牽制するっ! 今のうちに出せっ!」


 レジスタンスや連合兵たちは、逃走用に用意していた、プジョーP4で逃げていく。


 その際に、ナタンとメルヴェ達の気配に気づいた彼等は、銃を撃ってきた。



 短機関銃や自動小銃を、連合側部隊は撃ってくる。



「ちょ…………待てっ!」


「味方よっ!?」


 ナタンとメルヴェ達は、身を低くして弾丸を回避しようと試みた。


 そんな二人が隠れる段ボール箱に穴が開きまくり、端っこが吹き飛ぶ。



 頭上の数センチ先を、9ミリ弾や5、45ミリ弾が何発も飛ぶ中、彼等は焦る。


 しかし、連合側は逃げてしまったらしく、もう弾丸は飛んで来なくなった。



「ヤバかったな…………殺されるところだった」


「本当に焦ったわ…………」


「あっちで、銃声がしたぞっ!!」


 ゆっくりと、頭を上げて外の道路を、ナタンとメルヴェ達は見た。


 だが、そこには路上に積もった雪に轍《わだち》があるだけだった。



 しかも、運悪く付近にまだ残っていた、帝国側部隊に見つかってしまった。



「不味い、僕らも逃げないとっ!」


「アレよ、アレに乗るのよっ!」


 ナタンが焦って騒ぐ中、メルヴェは冷静にある物を見つけて指を指す。



 連合側部隊は、どうやら六人で逃げる積もりだったらしいが。


 仲間二人が殺されたので、仕方なくプジョーだけで逃げた。



 そのおかげで、バイクが二台だけ残っていた。



 帝国軍用バイクに偽装された、ブリティン製バイク、トライアンフTR6トロフィー。


 アルメア製の大型バイク、短機関銃用ホルスター付き、ハーレーダビットソン・39年型。



「これ…………映画好きなレオだったら分かるな?」


「は? 良いから行くわよっ!!」


 帝国側から離れるために、二人は、バイクに乗って逃走を開始する。



 ナタンは、TR6トロフィーに跨がると同時に発進させる。


 メルヴェも、前方右側にある茶色いホルスターにFADを入れると、エンジンを噴かす。



「メルヴェッ! 何処に行こう? 行く宛がないよっ!」


「とにかく、今は追跡部隊を振り切るしかないわっ!」


 雪積もる道路を並んで走る、バイクに跨がりながら、ナタンとメルヴェ達は話し合う。


 それでも、行き先は決まらず目的もなく、ただ帝国側の部隊から二人は逃げようとする。



 バイクの速度を上げる二人だったが、後ろ姿は帝国側部隊に見られていた。



「居たぞっ! 撃てっ!」


「了解、狙いはバイクに…………」


「あのバイクだな」


 帝国警察の士官らしき兵士が叫びながら、銀色に塗装された、ワルサーP38を撃ちまくる。


 それに合わせて、周囲の兵士たちも、H&K、G36Gを連射する。



 しかし、それらの弾丸は二人に当たる事なく、四方発砲に飛んでいくだけだった。



 ただ、帝国側も馬鹿ではない。



 直ぐさま、追ってを二人に差し向けて来た。



「うわ、追って来ているっ! 絶対に逃げないとっ!」


「前だけを見て、後ろなんて撃てないわよっ!」


 後ろをチラ見した、ナタンは自分たちを追跡してくるバイク部隊を視認する。


 メルヴェは、強い風を受けながらも後ろに躊躇せず、ひたすらバイクを走らせる。


 そんな彼等を狙って、MVー750サイドカーが二台も追ってきた。


 さらに、その後方からは、TIZーAMー600バイクが、七台も蒙スピードで走ってくる。



「射撃開始っ!」


「奴等を撃ち殺せっ!」


 MVー750サイドカーには、側車にPK機関銃が搭載されている。


 TIZーAMー600にも、旧式のディグチャレフ機関銃が備え付けられている。


 当然ながら、それらによる猛烈な連続射撃が、帝国側部隊により、二人の背中に浴びせられる。



「撃ってきやがったか? なら、あそこで曲がろうっ!!」


「分かったわ、行くわよーーーー!!」


 街中をバイクで疾走する、ナタンとメルヴェ達だが、流石に何丁もの機関銃には勝てない。


 そう考えた、二人は即座にバイクを十字路の右側へと向かわせて走らせ続ける。



 しかし、ここで思わぬ敵が登場する。



 装甲車ヴォドニクだ。



「うわっ!? 前から装甲車だっ!」


「気をつけて、撃ってくるわよっ!」


 ナタンとメルヴェが叫んだ瞬間、ヴォドニク上部の銃塔からは14、5ミリ機関銃が撃たれる。


 対戦車用ライフルよりも、威力のある機銃弾が二人に真っ向から浴びせられた。



 だが、いきなり現れた二つの目標を捉えられるはずもなく、機銃掃射は全てはずれた。


 さらに、装甲車の左右を、二人が乗った、バイクはすり抜けてゆく。



「何とかなったな?」


「でも、まだ後ろからくるわっ!」


 すり抜けに成功した、ナタンは呟いている間に、メルヴェは叫ぶ。


 ヴォドニクが、銃塔から銃撃しつつ、二人を追うべく旋回しようとする。



 しかし、おかげで追撃部隊のサイドカー&バイク部隊が足留めをくらってしまった。


 だが、装甲車の両側をTIZーAMー600が、三台も、すり抜けてしまった。



 連中は、執拗《しつよう》に追跡を止めない。



「しつこい連中だぜ、何か使える物はないのか…………」


「無いわよ、後ろに向かって撃つくらいしか出来ないわっ!」


 ナタンは、必死で手榴弾や罠などを探すが、バイクにも周囲の道路にもソレらしき物はない。


 そして、メルヴェは背後に振り向きもせず、適当にサルマスシズK10を撃つ。



 乾いた音を何回も鳴らして、反撃する彼女だが肝心の攻撃は当たらない。


 そうこうしている内に、敵の後方から増援が現れた。



「また、新手だっ!!」


「ええっ!? こうなったら…………」


 十字路を左に曲がりながら、チラリと横目で追跡部隊をナタンは見た。


 すると、TIZーAMー600とは別に、何台かの黒いバイクが追いかけてくる姿を捉えた。



 それは、帝国警察・交通機動隊に配備されているロシャ製の電動バイク、IGパルサーだ。



 メルヴェは、二種類のバイクに跨がる追跡部隊に対して反撃に移る。


 右側の茶色いホルスターから、FADを取り出して、後ろに向かって滅茶苦茶に撃ちまくる。



「ぐわあぁぁっ!!!!」


「どわあーーーー!!」


「うわああああぁぁっ!!」


 メルヴェの撃った弾は、何発かが前方を走っていた、バイク部隊に当たる。


 搭乗する帝国軍兵士や車体に当たった事で、転倒して、後続の追撃部隊を巻き込んでしまう。



 これにより、TIZーAMー600が二台、IGパルサーは一台破壊された。



「この距離なら射程内だっ!」


「反撃を開始するっ!」


「我々警察隊も、撃つぞっ!!」


「射撃開始ぃーー!!」


 TIZーAMー600は、車載された、ディグチャレフ軽機関銃を撃ちまくる。


 後続部隊のIGパルサー部隊も、各隊員それぞれが、片手で撃てる銃で発砲してした。



 これにより、機銃掃射に混じり、マカロフPM拳銃やトゥーラ二連散弾銃が撃たれる。



 追跡部隊による激しい射撃は、ナタンとメルヴェ達を窮地に追い込む。


 何回も撃たれる拳銃弾と散弾は、機銃弾よりも正確であり、下手すれば命中しかねない。



「うわっ! 頬をかすったぞっ! これじゃ大脱走よりひでぇ~~!!」


「映画じゃないんだから騒いでても、誰も助けてくれないわよっ!」


 逃げる、ナタンとメルヴェ達はバイクのスピードを、さらに上げる事で敵と距離を取る。


 こうする事で、激しい銃撃から逃れようと必死で、バイクを走らせるのだが。



「居たぞ、連絡にあった通りだっ!」


「射撃開始だ、撃ちまくれっ!」


「RPG、配置完了…………GP配置完了」


「今だ、発射するっ!!」


 ナタンとメルヴェ達を止めるべく、帝国側部隊がボクサー装甲車の車体を横にして道を塞いでいた。


 しかも、周囲の建物からは不意を突いた、AK74による一斉射撃が開始された。


 それに続いて、RPGー7の弾頭やAKに備えられたGP30グレネードも発射された。



 雨のように大量発射された、5、45ミリ弾による射撃。


 RPG弾とGPグレネード弾なども、道路を破壊して灰煙を上げる。



「ああああっ!! くっ! こうなったら…………」


「ヤバイわね、いったん止まりましょうっ!」


 無数発生した灰煙が、道路を完全に包みこんでしまう。



 すると、そこに居るはずである、ナタンとメルヴェ達の姿が忽然と消えてしまった。

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