「カルミーネが行ったわっ!」
「なら、後はどっち…………!!」
離れてゆく、カルミーネのバイクに向かって、メルヴェは、M60を機銃掃射する。
何回も放たれる弾丸は、路上の雪を吹き飛ばしまくる。
それで助かった、ナタンY字型の特殊な交差点を、左右どちらに曲がるか迷う。
だが、そんな彼は、ある物を見た。
緑色に塗装された、装甲板を貼りまくった、ダフ、トラックが左側の斜め前から走ってくる姿だ。
「左側に行く、メルヴェ、後ろは頼んだっ!」
「え? 分かったわ……て言うか、さっきから既に?」
左側の道に、ナタンはヤマハ・グリズリーを曲がらせると、メルヴェも後ろを見た。
そこには、車体全部を追加装甲で覆い、窓ガラスには金網を何重にも貼った、トラックの姿がある。
「ヤバい、ぶつかるっ!」
「……前に、逃げてゆくんだっ!」
ナタンとメルヴェ達は、装甲トラックが来る前に、必死で曲がり角を走り抜ける。
「うわっ! みんな、止まってくれっ!」
「アレは不味いわっ!?」
ダフ、トラックを前にして、流石に勝ち目がないと思った、カルミーネはバイクを止めた。
レギナも、バイクを止めると直ぐに建物へと走って行った。
他の面々も、乗り物を急停車させたりしながら逃げ出し、近くにある建物内へと飛び込む。
「装甲トラックだわ……これじゃ、ナタン達は終えないわね?」
「いや、行ってしまったぞ?」
ダフ、トラックは、ナタン達が行った先に進路を向けて走ってゆく。
その左側からは、装甲板が貼られた銀色コンテナからM2重機関銃が火を吹きまくった。
銃声とともに、辺りの雪や建物に、弾丸が当たる度にコンクリートが削られる音が鳴りまくる。
そんな中、ミアとレオ達は、道路左側にある弁護士事務所ビルの入口から様子を伺う。
「…………ヤバかったわね? どうする? 追撃する?」
「あんな、巨大装甲車、対戦車ミサイルがないと戦えないわよ?」
「まあ、今は無理だな……応援が来るまで待とう」
ベーリットは、左側の屋内駐車場から、ポッドバイクを運転しながら出てきた。
そうして、風防を上げると、車体から降りて仲間たちと、どうするか話し合おうとする。
右側の屋内駐車場からは、カルミーネとレギナ達が出てきて、追撃は断念しようと言いだす。
流石の彼らも、対戦車用武器が無しでは、装甲車両は破壊できないからだ。
一方、ボンテ通りに逃げ込んだ、二人は後ろを走るダフ、トラックが気になった。
「後ろのは味方だよな?」
「そうよ、安心して」
左側には、コンピューター・サポート・サービス店のビルがある。
右側には、トーン・ホテル・ブリストン・ステファニーがある。
そこを左側に曲がれば、ルイーズ通りだが、ナタンとメルヴェ達は、話し合いながら進む。
「ここは広い、狙撃手やRPGに注意してくれっ!」
「そうね…………どこに敵が居るかは分からないからね」
ルイーズ通りには、右側に雪被る木々が植えられていた。
その反対側には、いくつか建物が並び、シュタイゲンベルガー・ウィルチャーズ、ホテルがある。
また、それらの手前にある歩道には、左右どちらにも色んな車が停車していた。
「RPGーだっ! 気をつけろっ!」
「ホテルからだわっ!」
二人が、ホテルのU字型・道路に差し掛かった際、突如奇襲を受けた。
ナタンとメルヴェ達は、すばやくヤマハ・グリズリーを移動させながら銃撃で撃ち返す。
彼女が、M60を滅茶苦茶に乱射しながらだ。
そうして、敵の奇襲を切り抜けた、彼等は無事ホテルから離れてゆく。
しかし、後ろを走っていた、ダフ、トラックは何発ものRPG弾を喰らってしまう。
「うわっ! 繁みからだっ!」
「アレは交わせないっ!」
U字型道路の間には、雪被る繁みがあり、そこからドライアドが突然たち上がる。
そうして、奴は灰色の長筒であるRPGー29から弾頭を放った。
それは、ダフの荷台コンテナ後部を吹き飛ばしてしまった。
さらに、他にも白いホテルの上からは、RPGー7による攻撃が四方から飛んでくる。
V字型のホテルは、屋上や窓に潜んでいた、帝国兵が、何発も弾頭を撃って攻撃を継続する。
「このままじゃ、殺られちまうぞっ!」
「いえ、他のRPGは直撃してないわっ!」
ヤマハ・グリズリーを走らせ続け、敵の奇襲から無事に逃げ延びた、ナタンは愚痴る。
しかし、メルヴェは冷静に後ろを力強く走るダフを見守る。
そのコンテナには、何重にも貼られた装甲板がある事で、通常型RPGが貫通しない。
つまり、爆破はされても、外側の追加装甲しか壊せてないのだ。
さらに、中からも、四つの銃眼からM2重機関銃による強烈な反撃が開始される。
斜角の関係で、上層階に潜む帝国兵を攻撃できなかったが。
それでも、下層階に居る連中を牽制する事には成功した。
こうして、ガントラックは損傷を受けながらも、二人を追ってこれた。
「無事に逃げたようね」
「だったら良かった」
敵の奇襲を振り切った、ナタンとメルヴェ達は、円形交差点を進む。
ここは、特殊な形状をしており、左右にある建物が斜め後ろから続く道に沿って、斜めに建ち並ぶ。
二人は、右側から中央の道へと道路を回り込むようにして、ヤマハ・グリズリーを走らせる。
その後に、ダフも続いてくる。
「ここは不味いな、ヤバい雰囲気が漂っていやがる」
「狙撃兵と特技兵が潜む、可能性が大だわ…………」
クリーム色の大きなビルが右に、大小様々な建物が左に建ち並ぶ。
ここの道路は、明らかに奇襲に適している。
ナタンとメルヴェは、走る速度を上げながらも奇襲に備えて屋上に眼を配る。
だが、やはり奇襲により、RPG弾が大きなビルから何発も発射された。
「RPGだっ! 凄い数だぞっ!」
「これじゃ、当たっちゃうわっ!」
右側にある大きなビルからは、窓や屋上から大量のRPGー弾が飛んでくる。
それに混じって、RPKやPKPと言った機関銃類も、帝国兵が射ってくる。
また、AKを乱射する兵士や、ドラグノフで狙ってくる狙撃兵も存在した。
ナタンとメルヴェ達は、上から雨のように降り注ぐ、銃撃とRPG弾に慌てる。
この攻撃を掻い潜るべく、ヤマハ・グリズリーは速度をグンと上げた。
「このままだと、殺られちまうっ!」
「いえ、大丈夫よっ! 味方だわっ!」
左側にある、さまざまな建物から民兵たちが銃を撃ち始めた。
屋根や、屋上からは狙撃用の猟銃やAKを構える民兵たちが、帝国兵を撃ちまくる。
出窓と、その上にあるベランダにも、散弾銃やRPGー7を構えた、民兵が居る。
また、屋根から出ているドーマー窓からも、クロスボウが出ている。
焦りだした、ナタンに対して、メルヴェは冷静に味方の存在を伝える。
「こっちも撃ち換えさないとねっ! キッチリ、礼は弾むわよっ!」
「ああ、やっちまってくれっ!」
メルヴェは、M60で帝国兵が銃を撃ってくる窓を狙って何発も銃弾を発射する。
大きな建物の窓を撃つと、次は出窓を、さらにベランダに銃撃を加えてゆく。
そうして、彼女が射撃を続けている間に、ナタンは、ヤマハ・グリズリーを一気に加速させた。
「ダフは、どうなっている?」
「まだ、健在よっ! RPGを何発か喰らった見たいだけどっ!」
ナタンは、自分たちの後ろを走るダフ、トラックが無事か、メルヴェに聞いた。
彼女が確認すると、何重にも貼られた装甲板がRPG弾の直撃を防いだらしく、まだ動いてはいた。
とは言え、荷台に積んだ装甲コンテナは、かなりボロボロになったいた。
それでも、M2キャリバー重機関銃から弾が途切れる事は無い。
「ん、アレは…………シュヴァルツ・リッターッ! それに、オーガーだわっ!」
通りすぎてゆく、建物の屋上にPKPを抱えながら連射しまくる、シュヴァルツ・リッターが居る。
また、オーガーは茶緑色に塗装された、バズーカー型の武器を肩に担いで立っている。
メルヴェは、連中を撃とうとするが遅かった。
「AT4? ジャベリン?」
「んん? どうした…………」
メルヴェが口にしたのは、西側諸国や現連合軍などで、主に使用されている対戦車用武器だ。
急に、M60から連続で聞こえていた発射音と、空薬莢を排出する金属音がなくなった。
それに、ナタンは違和感を感じて、彼女に問いかけた。
「うっわ…………!?」
「な、何が起きたっ!」
直後、オーガーはバズーカ型の武器RPGー28を発射した。
この一撃は、ダフの荷台コンテナに直撃して、完全に吹き飛ばしてしまった。
そのあまりにも、高い威力に、メルヴェが戦慄していると、後ろが見えないナタンも動揺する。
だが、それでも残った荷台コンテナの残骸が燃えてはいた。
しかし、牽引トレーラーを即座に切り離した、トラックは道路を走り続ける。
「運転席だけが、残っているわっ!」
「はあ? なんだよ、それ」
ナタンとメルヴェ達が話し合う中、オーガーは次の武器を取り出す。
これも、先ほど使用した武器と同じく、バズーカー状の筒型であるが、大きくて長くもなかった。
「また、撃って来たわっ!」
「じゃ、逃げるぞっ!」
しかし、ミサイル型の弾頭が発射されると、メルヴェはナタンに警告する。
それを聞いて、彼は全速力で、ヤマハ・グリズリーを走らせた。
「ぐわああああっ!」
「ぎゃああーー!!」
ミサイル型の弾頭は、出窓とベランダから銃撃していた民兵を吹き飛ばす。
ベランダに立つAKMを撃っていた民兵は、砲撃で吹き飛び、燃えながら三階から地上に落下した。
また、その下に居た、RPGー7を構えていた民兵は全身を真っ赤な炎に包まれつつ倒れた。
オーガーが放ったのは、焼夷兵器と言われる、RPOシュメーリ、ロケットランチャーだ。
「ヤバ…………燃えているわっ!」
「だったら、逃げるぞっ!」
ナタンとメルヴェ達は、戦場から離れるべく、さらに、ヤマハ・グリズリーを加速させた。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!