ナタンとメルヴェ達の耳に、背後から聞きなれた人物たちの会話が届いた。
「ここの一階や公園内には、自爆テミスを隠蔽しておく」
「それなら、帝国軍の機甲師団も相手にできるな?」
廊下を歩く、二名の兵士たちが見張りに立つ、二人に気づく。
「なっ! ナタン、メルヴェ? お前ら、どうして、ここにっ!」
「貴様ら、基地では生死不明だったが、まさか生きていたとわなっ!」
驚きのあまり固まる、ウェストを余所に、ギデオンはウェブリー&スコットを二人に向ける。
「ちょっ! 待ってくれ、スパイはリュファスだったんだっ!」
「私じゃなくて、サビナがスパイだったでしょうっ?」
「ふん、そんな言い訳が通じるかっ! 武器を捨てろっ!」
「おっ! おいっ! 待て、まだ確実に、二人がスパイだと確定はしてないだろう?」
ナタンは、焦りながら必死で弁明するが、メルヴェは険しい顔とイエローボーイの銃口を向ける。
しかし、ギデオンは気にせず、強気な態度で、二人に拳銃を向ける。
そんな彼を何とか止めようと、ウェストは割って入ろうとする。
「どうしたっ! ナタン、メルヴェッ! お前たちっ!」
「帝国のスパイが、どうしてここにっ!」
ハキムとベッキー達も、部屋の中から聞こえる口論を耳にして、焦って飛び込んできた。
「はっ? ナタン、メルヴェ? お前達、また潜入工作しに来たのか?」
「悪いけど、今度こそ、死んで貰うわよっ!」
「…………だ、そうだ、せめて遺言だけは聞いてっ?」
「止めろっ! 二人がスパイだと言う確証はないっ!!」
ハキムは、ムーディAKMSを構え、ベッキーは SIG、540を二人に向ける。
そして、ギデオンは顔色一つ変えず、引き金を動かそうとした。
だが、その前に、ウェストが回り込み、三人による発砲を制した。
「ギデオン、お前も怪しいんだよ? ナタン、メルヴェだけじゃない? 他に怪しい奴は沢山存在するっ!」
「は? だから何だと言うんだ、俺が帝国のスパイだとでも言うのか、ああっ!」
ウェストは、二人を庇おうとして、怒鳴り散らしながら訴える。
しかし、ギデオンは聞く耳を持たず、彼の額にウェブリー&スコットを押し当てる。
「止めろ、ウェストは関係ないっ!」
「ちょっと、仲間割れは…………」
「うるさい連中だ、元々は貴さ? 砲撃だっ! 隠れろっ!」
「迫撃砲だっ! ついに始まったかっ!」
言い争う彼等を、ナタンは何とか止めようと怒鳴り、メルヴェも喧嘩を納めようとした。
しかし、ギデオンは一向に耳を傾けず、再びウェブリー&スコットの銃口を、二人に向けた。
その瞬間、砲撃音とともにロケット弾が、雨霰がごとく、公園と周囲に存在する建物に降り注ぐ。
かなり、大量に放たれた弾頭は、彼方此方《あちらこちら》を破壊しまくり、穴凹と炎だらけにした。
「ぐわああっ!」
着弾直後、軒下に退避しながら、ウェストは眼を見開いて叫んだ。
「多連想ロケット砲だっ!」
「砲撃も貴様らが? ぐぅ…………」
「危ないっ! 早く伏せるんだっ!」
「敵の狙撃兵よっ!」
ウェストは壁際で叫び、ギデオンは未だ拳銃を手羽なさなかった。
だが、彼の右脇腹が狙撃されると、ナタンは押し倒すように床に伏せさせた。
素早い動きで、近くの壁裏に隠れた、メルヴェは対狙撃兵用に使える武器はないかと探す。
「あったわっ!!」
そこにあったのは、ティルク製、多口径ライフル、KNー12だ。
サンドカラーに塗装された、この銃をメルヴェは手に取ると、壊れた壁に移動する。
「ナタン、退けっ! 俺を殺す気かっ?」
「助けて、やったんだろうがっ!!」
ギデオンは、自らに覆い被さるように身を守っていた、ナタンに敵意を未だ向ける。
「あんた達、そこで仲間割れしている暇があったら敵を狙撃してっ! 連邦庁舎ビルや政府機関ビルから撃ってくるよ? 味方も苦戦しているしっ!」
メルヴェは、KNー12の二脚を壁際に置かれた、木箱に載せながら怒鳴る。
彼女は、十字レティクルを動かして、デュカル通りに位置する、アルメア大使館に眼を向けた。
そこには、帝国側部隊が窓から、ドラグノフやスコープ付きAKなどを構えている姿が見えた。
さらに、RPGー7やAGI 3X40を構えている兵士が屋上に陣取る姿もあった。
「味方と銃撃しているわっ! 私は支援するわよっ!」
「チッ! 貴様らは信用できないっ! だが、今は敵の殲滅が先だ、後で拘束してやるからな」
「そんな事を言っている暇があるなら敵を撃てって、敵が来たぞっ!」
メルヴェは、ZPUー4対空機関砲を扱うPMC部隊に近づく帝国部隊を攻撃する。
五人の内、一人はシュヴァルツ・リッターであり、PKPブルパップを乱射していた。
しかし、KNー12により、8、59ミリ弾が肩から貫通して、奴は吹っ飛ばされた。
ギデオンも、部屋の隅にあった、対戦車ミサイル、スパイクLR型を手に取る。
ウェストも、壁に立て掛けてあった、RPGー9を取り出す。
「機甲師団が進撃してきたか…………」
「ナタン、これの代わりに置いた、それを使ってっ!!」
ナタンは、ビルの隙間から迫る重戦車軍団を目にして、圧巻されてしまう。
メルヴェは、KNー12のスコープを覗きながら膝だちで狙撃支援を続ける。
「よし、アレだな?」
彼女から援護を頼まれた、ナタンは旧式軽機関銃である、M1909ベネット・メルシエに向かう。
これは、誰かが民生用のスコープを取り付けていたらしく、遠方を射撃できるようになっていた。
「弾倉は、補弾板か? いや、布ベルトか?」
「いいから援護してっ! 次は、南西のパレー・デザ・アカデミーの上よっ!」
ナタンは床に伏せながら、銃本体を調べたが、メルヴェは怒鳴りながら敵を狙撃する。
87式対空機関砲を扱う、チィーナ軍部隊に帝国軍部隊が総攻撃を仕掛ける。
幸い味方側は、円形に配置した、ドラム缶を土嚢で補強した遮蔽物に隠れている。
こうして、何とか敵からの銃撃から身を隠していた。
「怒鳴らないでくれ、今やるから」
「だったら、早くして」
ナタンは彼等の窮地を救うべく、ベネット・メルシエを連射する。
すると、銃から弾丸が空になった布ベルトが、プリンターの紙みたいに出てきた。
メルヴェも、KNー12狙撃銃で、RPKー74を連射している、オーガーの頭部を撃ち抜いた。
「戦車隊と歩兵隊だっ! 昨日より、多いぞっ!」
「コイツは不味いね? ブルーノとモニカ達は、どこ行ったのさ?」
ハキムは、遠方の屋根に見える敵歩兵部隊に、ムーディーAKMSを単発連射させる。
ベッキーも、C7LSW分隊支援火器で援護射撃を敵に浴びせる。
「アイツらも近くに居たっ! 直ぐに救援に来てくるはずだっ!」
「敵戦車撃破っ!」
ギデオンは公園内に侵入してきた、スパイクLR型で、BMDー3を撃破した。
ウェストも、RPGー9の二脚を窓辺に置くと、弾頭を発射して、ダルド歩兵戦闘車を破壊する。
「敵の歩兵戦闘車と戦車が多いっ!」
「味方の対空兵器が撃破されているぞっ!」
公園内に侵入してくる戦車隊は、ロシャ製のTー14アルマータとBMDー3が大多数だ。
そこに、レオパルド2A9やアリエテMk3などが混ざっていた。
ベッキーとハキム達は、敵の大部隊を前にして、冷や汗をかきながら、必死で銃撃を続ける。
既に、塹壕内にも敵が入り込み、味方の民兵部隊と交戦していたからだ。
「きっと、次は航空機で爆撃する気だ」
「早く、帝国軍兵士を撃たないとっ!」
パレー・デザ・アカデミー屋上の敵部隊に増援が到着したらしく、再びオーガーが姿を表す。
ナタンとメルヴェ達は、味方防空部隊を救うべく、敵部隊に援護射撃を行う。
87式対空砲を、チィーナ軍兵士が操作したらしく、敵歩兵が次々と肉片と化していく。
しかし、そこに背後からワーウルフが近づき、ナイフを振るい、対空砲手を殺害してしまった。
「不味い、今度は俺達を狙ってくるぞっ!」
「しまったわっ!」
床に伏せながら、ナタンは機銃掃射を放ち、メルヴェも狙撃により、ワーウルフを倒した。
だが、敵部隊は遂に防空部隊を殲滅して、土嚢の中に入ってしまった。
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