「誰か居たか…………」
「レジスタンスの姿は見えません?」
「何も発見出来ません」
地下道内を巡回する、帝国警察部隊が、ナタン達レジスタンスの行く手を塞ぐ。
この暗い地下道は、地下墓地《カタコンベ》へと続いているが。
ここを通らなければ、別のアジトへは辿り着けない。
しかし、行く手を阻み、まるで、カタコンベを守護するように警察隊員が立ち塞がる。
アンデッドである、帝国警察部隊員達は、十二人と数が多い。
対する、ナタンを含むレジスタンス達は七人と人数が少ない。
それに、帝国警察特殊部隊員の方が、装備・能力ともに上であり、さらに練度と士気も高かった。
「アイツ等、ゾンビ兵やヴァンパイアだけじゃなく? シュヴァルツ・リッターも居やがるぜ」
レジスタンス員が、敵を観察して、大きく重苦しそうな黒鎧に身を包んだ、不気味な兵士を見た。
それに、険しい視線を向け、彼は敵から発見されないように小さな声で呟く。
シュヴァルツ・リッターと呼ばれた兵士は、黒い鎧を着こみ、MG42汎用機関銃を構えていた。
背中には、大剣と大楯を背負い、見るからに強く、半端な攻撃は効きそうに無い外見をしていた。
「何としても、ここを通らなければ成らないのだが、これでは? 仕方ない、爆弾を仕掛けろ…………ナタン、メルヴェ、敵の注意を惹いてくれっ!」
アラビ人である、ハキムは小さな声で呟き、仲間達に、C4爆弾と地雷を仕掛けろと指示を出す。
もちろん、ナタンとメルヴェ達にも、彼から命令は下された。
「他の道は無いし、どの道敵と戦わなければここは通れない…………」
「爆弾の設置が完了しましたっ!」
ハキムは未だ、カタコンベの入り口を塞ぎ続ける敵を警戒していると。
仲間のレジスタンス員から、爆弾設置が完了したと告げられる。
「ハキム…………俺達は何時でも行ける」
「奴等の注意を惹けば良いんでしょう?」
奇襲攻撃の準備が出来た、ナタンとメルヴェ達は敵から注意を惹こうとする。
そして、地下道から、何時でも飛び込めるように、銃を構えて姿勢を低く身構える。
「ナタン…………行くわよっ!」
「ああ…………分かった」
メルヴェは、両手にUTSー15散弾銃を構えて突撃する。
ナタンも、FAーMAS自動小銃を構えて、突撃して行く。
メルヴェが発砲した散弾は、帝国警察隊員たちの体を、次々と薙ぎ倒して行く。
ナタンが発砲する5、56ミリ弾も、帝国警察隊員たちの体に貫通して、無数の風穴を開けていく。
「ここに居たかっ!! レジスタンス!」
「敵だ…………発砲しろ…………」
帝国警察隊員の下士官と隊員達は、体を貫く銃弾を物ともせずに反撃してきた。
警察隊員たちは、銃を発砲しながら、シュヴァルツ・リッターの背後に隠れる。
次いで、巨体を楯にしつつ、左右から銃弾を撃ち放ってくる。
突然の奇襲に、警察隊員は驚いたが、すぐさま、一旦態勢を立て直した後、反撃に移ろうとした。
「メルヴェッ! もう良い退却だっ!!」
「ええっ! ナタン、どうやら充分に惹き付けた様ねっ!」
暗い地下道内から、ナタンとメルヴェ達は、互いに叫び合う。
カタコンベの入り口前を警備していた、帝国警察部隊員に銃撃を加える。
仲間たちが待つ、奥の地下道へと、互いに援護しながら後退した行く。
「全身する、後に続け…………」
シュヴァルツ・リッターは、背後に隠れていた、警察隊員に告げる。
背中から、防弾仕様の大楯を取り出して、左手で構える。
右手には、MG42汎用機関銃を握りしめ、滅茶苦茶に乱射しながら、ゆっくりと歩き出す。
「デカ物が食い付いたなっ!」
「そう、良い子ね…………早くこちらに来なさい」
警察隊員を、大勢引き連れて、攻撃してきた、シュヴァルツ・リッターは二人を殺そうと歩き出す。
奴に対して、ナタンとメルヴェ達は、振り向き様に銃撃を加えながら走り、後退して行く。
「ナタンとメルヴェを援護しろっ!」
レジスタンス達も、短機関銃や自動小銃で、二人の援護を始める。
こうして、帝国・レジスタンスと、双方は激しく戦いだした。
そして、相互に激しい銃撃を、地下道内の右へ左へと飛び交わせる。
また、レジスタンス達は、応戦しながら徐々に後方へと下がっていく。
警察隊員は、シュヴァルツ・リッターを、全面に押し出して、前進して来る。
「今だっ!! 爆破しろっ!!」
ナタンが叫ぶと、レジスタンス員は、起爆装置を作動させて爆弾を爆破させる。
そして、シュヴァルツ・リッターの両脇で、強烈な爆風が炎とともに発生する。
すると、警察隊員たちは、爆風と飛び散った破片に殺られてしまう。
さらに、天井から降り注いだ土砂の下敷きになって、ペチャンコに潰れてしまった。
「ケホッ! ケホッ!」
「うっ! ぐふぐふっ!」
飛び散った土砂の土埃を吸い込んだ、ナタンとメルヴェ達は苦しそうに咳き込む。
また、二人は仲間たちの姿を確認しようと、後ろにある地下道に目を向ける。
「皆ぁーー? 無事なのか…………」
「無事なら返事をしてぇーー!」
土埃が、暗い地下道内を舞い、視界を遮る中で、ナタンとメルヴェ達は叫ぶ。
すると、土埃の向こうから、大きな声がで返事が木霊した。
「こっちは無事だっ! しかし爆風の威力が強すぎたな…………退路が塞がれてしまった、仕方が無いから引き換えして他のルートを辿るぞっ」
ハキムの声が、向こう側から聞こえて来て、二人は安心した。
そして、声が聞こえる方へと、二人は土埃の中を進み、レジスタンス仲間達と合流する。
「ハキム? 次は何処に向かうんだ」
「早くしないと、また敵の警備や増援が来るわよ?」
ナタンとメルヴェ達は、レジスタンス部隊を率いる班長である、ハキムに対して質問する。
「取り合えず来た道をまた通って今度は別のルートを…………昔の防空壕を通りアジトを目指す、分かったか? ならもう行くぞ」
ハキムは、レジスタンス達を率いて、今まで辿って来た道を引き返す。
ナタンとメルヴェ達も、彼の指示に従い、黙って着いていく。
暫くの間、彼らは一言も喋らずに、地下道で気を張り詰めて、警戒しながら進む。
敵は、今のところ確認できないが、誰も油断はしていない。
彼等は、バッタリと出くわしても良いように、いつでも戦闘するために銃を構えて歩く。
「ここは何だか寒いな…………」
ボソリと呟く、ナタンは、またも唐突に強烈な不安感に襲われる。
彼の脳内には、死に対する恐怖と自分が帝国兵に捕まる姿が浮かぶ。
「…………撃たれた? 死んだ? 誰が…………僕が!? いや生きているだけど…………誰かが僕を抱き抱えて連れて行く? 血塗れの僕を謎の帝国兵が? 胸元までしか見えず顔は分からないが確かに連れて行く! …………」
ナタンは、幻覚か夢かは分からない、映像を脳内で思いだし、そこから意識を反らせないでいた。
「…………これは幻影だろうか? それとも夢悪なのか…………誰かが叫んでいる…………誰何だろう答えなきゃ…………」
ボンヤリとしていた意識から、はっと我に返った、ナタン。
彼は、自分を揺さぶる、黒髪ショートヘアの女性に目を向ける。
「…………タン? タン、ナタンッ!」
「っ!? メッ? …………メルヴェ?」
ナタンは、眼前に立っている、メルヴェの顔を見て、一呼吸して緊張を解く。
戦っている時よりも、彼は何時、敵が襲って来るか分からない時間の方が恐怖を感じる。
周囲を警戒している長い静かな時が、逆に怖くて堪らないのだ。
「どうしたの? また不安に成ったのね、確りしてよっ! 戦いは始まったばっかりなのよ?」
「あ…………あ? あっ! 済まない…………どうかしていた、君の言う通り気を確り引き締め無いとな…………」
ナタンとメルヴェ達は、共にレジスタンス達が作った、列の最後尾に並ぶ。
それから、二人して小さな声で、話し合いながら進んで行く。
やがて、地下道の奥に、鋼鉄製ドアが姿を現し、それをレジスタンス員が開けようとすると。
「何だっ!」
「罠だっ!! 放れろーーーー!!」
レジスタンス達が不思議がっていると、仲間が叫ぶが、もう遅い。
転がって来た閃光手榴弾は炸裂して、大きな破裂音と眩い光を放った。
「ルキ・ウェルヒッ! 帝国警察特殊部隊だっ! 投降しろっ! さもないと、貴様らは全員撃ち殺す」
ナタン達レジスタンスは、一瞬の内に目と耳を、閃光手榴弾が炸裂した、光と音にやられた。
さらに、罠を張り、待ち構えていた、帝国警察部隊に銃を突き付けられた。
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