アルジュリヤ、アバルサ。
ここは、黒っぽい灰色の低い山々に囲まれた渓谷部である。
アバルサまで、低地は、クリーム色の砂漠となっている。
だが、山々の麓などは黒灰色に地面は染まっていた。
「駱駝《ラクダ》が、一緒に走ってやがる」
「ランボー見たいにすか?」
「アレは、馬だろっ?」
外人部隊とPMC部隊を含む、機甲部隊が砂漠の町アバルサを目指して前進していた。
クリーム色に塗装された、ルクレールのハッチから車長は、上半身を出した。
赤いベレー帽を被った白人である彼は、遠方に見える、駱駝に騎乗するアラビ人を目にした。
ルクレール車内からは、部下たちの声が聞こえる。
今、周囲の砂漠には砂漠遊撃隊《デザート・ゲリラ》が駱駝騎兵として、すでに展開している。
彼等は、白衣を身に纏いピンクのスカーフを顔に巻いている。
「おっと、音が鳴ったな」
彼等、侵攻部隊の前面に迫るアバルサには、野砲と重砲が配備されている。
砲撃音を聞いた車長は、砲爆に晒されないために、急いでハッチを締める。
直後、何発もの砲弾が上空から飛来した。
しかし、幸運にも発射された砲弾の弾数が少なかったからか、一発も砲撃は当たらない。
砲弾は、全て外れてしまい、戦車の周辺にある土煙を舞い上げた。
ルクレール、チャレンジャーなどの主力戦車が集団正面を走る。
後続には、より多くの主力戦車オリファントが疾走していく。
「フレンチの野郎が前に居るのか?」
そして、最後尾には、多種多様な装甲車が砂誇りを舞い上げながら続く。
フランシュ製のPVP装甲車・VAB装甲車・パナールM3装甲兵員輸送車。
ブリティン製のAT105サクソン装甲兵員輸送車、ピラーニャV装甲兵員輸送車。
また、さらに距離の離れた位置をG6、155ミリ自走榴弾砲が走っていた。
その中で、ピラーニャVに乗っているPMC要員が、ハッチから顔を出して呟いた。
「帝国軍もルクレールを出したか?」
対する帝国軍も、アバルサから黒いルクレール戦車を前面に押し出してきた。
その右側には、PTー91トファルディ、Tー90等からなる混成部隊が展開する。
そして、左側には、少数のアルタイ戦車が走っている。
「今だっ!」
アルタイ戦車の側面に、何処からか、RPGー7が撃ち込まれた。
しかし、損傷を与えはしても完全破壊までは出来ない。
「即座に退避だっ!」
「よしっ?」
ベドウィン族を主力とする駱駝騎兵を中心とした、デザート・ゲリラ。
駱駝から降りた彼等は、RPGー7やジャベリンを砂漠の起伏や、所々に生えた木々から撃つ。
一発だけ撃った後、彼等は反撃が行われる前にすぐ移動しなければ成らない。
「何かくるっ!」
「ベルベル人っ! それに、トゥアレグとRSFだっ!」
ベドウィン族の兵士たちは、駱駝に乗って逃げ出すが。
その後を追って、アラビ馬に乗った、黒衣を纏う、ベルベル人がAK47を片手に疾走する。
また、別方向からは青衣《せいい》を見に纏った、トゥアレグ族が駱駝を走らせる。
その後方からは、PK機関銃を載せた、トヨタ・テクニカルを、二台並走させつつ駱駝部隊が来る。
彼等は、RSFと言われる元民兵からなる特殊部隊であり、黒衣を見に纏っていた。
彼等は、帝国側に付いた砂漠の遊牧民たちである。
最新兵器である、戦車が砂漠を進軍する中、駱駝や馬もまた同じく戦場を駆け抜ける。
アバルサ東北にある市街地。
「ぐわっ!?」
「死ねいぃっ!!」
駱駝の強力なキックにより、オーガーが後ろから吹き飛ばされる。
ここでも、砂漠の民は奇襲攻撃を仕掛け、既に帝国軍の兵器を相当数破壊した。
彼等が壊したのは、野砲や重砲・武器弾薬・寒冷化装置などだ。
これにより、この地域で、帝国軍側は上空を暗雲で覆えず、また降雪させられなくなった。
元々、この地域も他区域と同様に作物栽培を行うために、装置は作動していなかった。
そのため、現地民兵を警備に当たらせており、帝国軍兵士は地下施設に隠っていた。
また、野砲・重砲による砲撃が少なかったのは彼等が活躍したからだ。
「撃ち込めーー!!」
「突撃ぃーー!?」
「がはっ!」
「ぐっ!!」
砂漠の熱砂と太陽光により、地下に隠れている、アンデッドである帝国側兵士は地上に出てくるが。
連中は、太陽からの熱により目が眩み、熱気にやられて力が弱くなってしまう。
町中を走るのは、アラビ馬に乗った、ベルベル人達だ。
彼等は、砂漠の熱さに負けた帝国軍兵士を次々と片手に握るAK47を乱射して倒す。
あるベルベル人は、銀色に光るサーベルを片手に帝国警察隊員を斬り倒す。
また、白衣に身を包んだ、トゥアレグ族は手榴弾を地下施設への入口に投げ込む。
直後、爆発音とともに帝国兵や警察隊員たちが、爆風で入口から吹き飛んできた。
このように、同じ砂漠を横断する遊牧民族でも、帝国と連合に別れていた。
「反撃し…………」
「どうしっ?」
建物屋上から出てきた、帝国軍兵士を遠方から音もなく狙撃が襲う。
「一人、また一人………」
「隣の建物からだ」
それは、ナミブ砂漠に自生するワカメ見たいな植物ウェルウィッチアの姿をしていた。
だが、その正体は連合軍コマンドに属する外人部隊員だ。
黒人兵士と白人兵士たちが、ドリアードとして植物に擬態しながら、消音器付きの狙撃銃を構える。
匍匐体制で、二人は緑色のリュックに狙撃銃PGMウルティマ・ラティオを載せながら眼鏡を覗く。
アバルサから南の離れた位置にある小区域。
「やっているな? ヘリが飛び立とうとしてるぜ?」
「なら、SAMを撃たないと? アレ?」
一台のプジョーP4が、小地区へと、東方から近づいていく。
乗っている兵士たちは、外人部隊に所属するアシュア系とアラビ系の隊員だ。
彼等は、遠目に郊外から飛び立とうとする何らかの小型ヘリを目にした。
しかし、携帯式地対空ミサイルを射つ前に、後続のエズグィゥ装甲車が機銃弾で破壊してしまった。
ナイジュリア製の装甲車である、これは四台も走行しており、やがて郊外に近づくと停車した。
タンカラーを中心に、緑と茶色の迷彩塗装が施された、車内から兵士が続々と出てくる。
「行け、行け、地区全域を制圧するぞっ!」
「突撃だあーー!!」
「撃ちまくれーー!」
装甲車から降車した、緑ベレーを被る黒人隊長は、ベレッタM12を右手に持ちながら手を振る。
そして、自動カービンである、ミニベリルを持った兵士は建物を目指して走りまくる。
肌色の土壁に貼り付いた、ウッドランド迷彩服を着た連合軍兵士は、周囲を見渡す。
すると、敵影はなかったが遠方から複数の駱駝騎兵が走ってくる。
マカロフPMやAK47を撃ちながら、連中は連合部隊を目標にして、真っ直ぐ突っ込んできた。
「ぐわぁ…………」
「ぶぅあ?」
何人かは、奇襲を受けると、弾丸が命中して地面に倒れてしまった。
だが、エズグィゥ装甲車が反撃としてら機銃による弾幕を張った。
それでも、黒衣を纏った駱駝騎兵たちは止まらず突っ込んでくる。
「撃ち殺せっ! こっちに来させるなっ!」
「向こうからも来たっ! しかも、シュヴァルツ・リッターだっ!」
壁面からも、黒人隊長が、ベレッタM12短機関銃を撃ちまくりながら怒号を発する。
そして、部下たちもミニベリルで応戦するが、エズグィゥ装甲車の背後からも新たな敵が現れた。
駱駝自体に鎧を纏わせた、重騎兵カタフラクトに、シュヴァルツ・リッターが乗っている。
奴は、そのまま連合軍兵士らによる銃撃を受けながらも突撃を敢行する。
次いで、駱駝の両面に取り付けられた武装マウントからRPGー2を発射した。
「うわっ! エズグィゥがっ!!」
連合側の黒人兵士は、RPGー2弾で、エズグィゥ装甲車が吹き飛ぶさまを見て叫ぶ。
旧式で、射程距離が短く、命中精度の低いRPGー2だが、弧を描くように弾頭を飛ばす。
この武器は、RPGー7より軽量なために旧式化してからも軽装甲車両を破壊する目的で使われる。
しかし、吹き飛んだはずの装甲車は煙が晴れると、無事な姿で出てきた。
オマケに、Uターンすると、カタフラクトに向かって勢いよく突っ走る。
「こっちに来る…………逃げなければっ! ぎゃあっ!?」
段々と速度を上げてくる、エズグィゥ装甲車に、カタフラクトは踵を返して逃げ出す。
とは言え、重騎兵ゆえに、即座に逃げられるはずもなく、後ろから撥ね飛ばされてしまった。
装甲車に当たった、RPGー2だが、二発とも直撃しなかった。
その上、さらに分厚い装甲を貫けなかった為に、無事な姿で出てきたわけだ。
「終わったな……? 動ける奴は続けっ! 重傷者はマミーに手当てして貰えっ!」
黒人隊長は、そう呟きながら命令を下しつつ、区域内へと走ってゆく。
他の黒人兵士たちも、負傷していない者は後に続いて素早く移動する。
彼等に向かっていた、黒衣を纏う駱駝騎兵の部隊は、すでに殲滅していた。
兵士たちと、エズグィゥ装甲車からの銃撃には耐えられなかったからだ。
「コイツは酷いな…………」
隊長の命令を聞いて、衛生兵マミーが、エズグィゥ装甲車から出てくると、重傷者を救護する。
見た目は、白円に赤十字マークが付いた、フリッツ・ヘルメットを被った黒人兵士だ。
しかし、顔や腕に灰色の包帯が巻かれており、さらに重傷者に回復魔法をかけてゆく。
重傷者だが、普通の兵士ならば完全に息絶えている頃だろうが、彼等はコープス・ソルジャーだ。
つまり、連合軍版のトーテン・シェーデル・ゾルダートなわけだ。
ゆえに、彼等も身体改造を受けており、多少の負傷は何ともなく、重傷者でも簡単には死なない。
「うらあっ!?」
「またか、死ねっ!」
一方、先陣を切って走っていった黒人隊長は、駱駝騎兵にベレッタM12の全弾を撃ち込む。
短機関銃と言えど、駱駝と青衣を纏った、トゥアレグ兵は真っ直ぐ突っ走る。
そうして、黒人隊長が身を屈めると、その近くにあった土壁に激突してしまった。
「ふぅ…………どうやら、コイツらも改造されているらしいな? アンデッド兵士とアンデッド・キャメルか?」
黒人隊長は、土壁の近くに倒れる駱駝とトゥアレグ兵らを見て呟く。
双方とも、身体改造を受けているらしく青い血を、体中に開いた風穴から地面に流している。
帝国側に着いた遊牧民たちが、向こう見ずな突撃してくる理由は、彼等も身体改造を受けていた。
その結果、強化された肉体と元来の勇猛果敢さが特効をさせていた。
「全員、建物に入るぞっ! いつまでも地上に居たら駱駝や馬に乗った連中に狙われちまうっ!」
黒人隊長は、部下に命令を下しながら家屋の中に突入していった。
このようにして、北アフレア地域でも、戦いは連合側が有利に進めていた。
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