「じゃあ、歩くか…………FADは……失くしちまったぜ」
「機関銃は壊れてるし、二丁拳銃で行くしか無いわよ」
ナタンは先の事故で、自動小銃であるFADを失くしてしまっていた。
しかも、トヨタ・テクニカルの荷台に備えてあった、AAー52は炎に包まれている。
それで、メルヴェは武器を無くした、彼に対して、険しい顔で拳銃を使えばよいと提案した。
「そうさせて貰うよ、先導する」
「分かったわ」
MASー1935を両手に握りしめながら雪を踏みしめ、ナタンは歩きだした。
メルヴェも、刑務所がある北東の方角を見て、すぐに移動を開始した。
しかし、二人は気がつかなかった。
屋根の上から狙われている事に。
「て言うか、撃たれた傷は平気なの?」
「何とかな……止血は安ぜ? わっ!」
メルヴェは脇腹を撃たれた、ナタンを心配して後ろから声をかけた。
その瞬間、狙撃手が一発弾丸を放った。
しかし、それは何故か外れてしまい、地面に当たるだけで終わった。
「狙撃手か?」
「ヤバかったわね」
遠く左側にある、ビルから帝国警察隊員が落下してくるのが分かった。
死体の側まで近づいて、様子を調べると、警察隊員は、サプレッサー付きAK47を持っていた。
しかも、サーマルスコープ&二脚まで備えてある改造型だった。
「音がしない奴なのに?」
「あっちよ、ナタン」
発射音がしない銃を前にして、ナタンは不思議そうに死体を見る。
一方、メルヴェは両手に猟銃を構えた、民兵を見つけて手を振る。
民兵も、二人に手を振るとすぐに屋上の奥へと姿を消した。
「あんまり、通りを歩くのは危険だな」
「こっちよっ! ここからなら刑務所に行けるわっ!」
ナタンは周囲に敵影がないかと、警戒しつつ移動する。
メルヴェは、鉄格子の大きな門と、小さな門がある場所を見つけた。
左側にある小さな門の方は、開かれており、裏路地へと行くことが可能だった。
「よし、行こうっ!」
「後ろは任せてっ!」
二丁拳銃を構えつつ、ナタンは狭い路地に入ってゆき、メルヴェはFADを持ち、周囲を見渡す。
「何かくるわっ! 車両部隊だわっ!」
「敵か味方か分からない、いったん隠れよう」
南方から車両部隊らしき影をみつけた、メルヴェは危機が迫っていると、ナタンに警告する。
それを聞いて、ナタンは壁を登り、雪を被る木々が生えた大門の敷地へと逃げ込もうとする。
「手を貸すよ」
「行くわよ」
こうして、ナタンとメルヴェ達は、いったん身を隠す事にした。
身を潜めた、二人は門の柱に隠れて様子を伺う。
轟音を響かせながら車両部隊は、彼等を気にせず、猛スピードで走っていく。
二人の目に映る車列は、クリーム色に塗装が統一されていた。
エズィプト製、ファハド280装甲兵員輸送車。
二つの牽引トレーラーに87式25ミリ機関砲を配備した、マン製トラック。
銀色コンテナに銃眼を三個も備えた、ボルボ製、トラックが二台。
ネオプラン製、二階建てバス、スカイライナー。
砲塔を備えた、南アフレア製、ルーイカット装甲車。
「味方か? 何処に向かうんだ?」
「PMC並みに重武装ね…………」
ナタンとメルヴェ達は、味方部隊だと分かり、安堵しながら移動していく車列を眺める。
二人は、このまま味方に合流しようとして、大門を開こうとしたが、鍵が掛かっていた。
仕方がないので、彼等は再び小門があった路地に戻ろうとした。
「ん? んんっ! 銃撃音がっ!」
「敵が現れたのねっ!」
壁を登った、ナタンの耳に、車両が急停車する音とともに銃声が聞こえた。
メルヴェは咄嗟に、壁上から飛び降りると、銃撃音が鳴り渡る方に眼を向けた。
そこでは、味方部隊が、敵の装甲部隊に進軍を阻まれており、交戦していた。
「支援しなきゃっ!」
「その前に、こっちが先だっ!」
メルヴェは走りだそうとするが、ナタンに右肩を掴まれて止められた。
何故なら、味方部隊の背後にも、車両部隊が現れたからだ。
ティーグルM装甲車が四台ならぶ。
また、その後方には、スウィス製、ウニモグ・トラックが二台あった。
「あっちを何とかしないとっ!」
「撃つわよ、側面から攻撃よっ!」
正面の二台ならんだ、ティーグルM装甲車は、Kord《コード》車載機関銃から連続で火を吹く。
さらに、降車した帝国軍兵士たちが、ドアを盾にしたり、車内からAK12自動小銃を撃つ。
その後ろからも、黒いVANTーVMシールドを構えた兵士たちが、味方部隊に近づいていく。
どうやら、連中は、ウニモグ製トラックから降車したようだ。
ナタンは、二丁拳銃を乱射しながら近くの敵軽装甲車両へと走っていく。
メルヴェも、それを援護するためにFADで、Kord《コード》車載機関銃を撃ちまくる機関銃手を狙撃する。
「退け、邪魔だっ!」
「何っ!? ぐあ」
「うっ! 何処からっ! ぎゃあっ!」
「グフッ! ガハァ……」
ナタンは、ティーグルMの周囲に展開していた、帝国兵たちを射殺する。
次いで、彼は車両正面へと回り込む。
そこから、彼は隣の車両から、Kord《コード》車載機関銃を連射している機関銃手を撃ち殺す。
ここで、両手に握る、MASー1935の弾倉を変えながら、彼は左右を確認する。
左右どちらからも、バンッガチュンッと、いきなり現れた、彼を狙った銃撃が飛んでくる。
「……ナタン、仕方ないわね」
メルヴェは、ナタンを攻撃しようと前進してくる帝国兵たちにFADを何発か撃った。
しかし、VANTーVMシールドを持つ兵士や、防弾ベストを着た兵士に銃撃は効かない。
シュヴァルツ・リッター程ではないが、中量級の防弾アーマーに身を包んだ兵士は、中々厄介だ。
「近づいてくんなっ!!」
ナタンは、自身が隠れるティーグルMに右側から近づいてくる敵兵に、二丁拳銃で銃撃を加える。
しかし、メルヴェが撃った時と同じく、防弾装備に拳銃弾は弾かれてしまう。
それを確認すると、彼は直ぐに身を引っ込めて周囲を観察する。
と、同時に爆発音が聞こえた。
「味方か? ん?」
ナタンは、味方部隊の誰かが爆発物でも投げたかと思い、正面に目を向ける。
そこには、クリーム色の車両が何台かあった。
牽引トレーラーを引っ張る、ヤマハ・グリズリー。
ヒンド、バジャジ製、三輪タクシー。
南アフレア製、ゲッコー、RDLV
アルメア製、RGー33トラック。
「やっぱり、撃破したのか?」
さらに、奥には帝国軍の黒い装甲車両が、二台炎上している姿があった。
偵察装甲車フェネック、輸送装甲車フクスだ。
きっと、威力が高い爆弾か、対戦車用武器にでも破壊されたのだろう。
ナタンは、敵車両を撃破した味方部隊を確認する暇なく、近寄ってくる敵を攻撃しようとする。
「ナタン、伏せてっ!」
「はっ?」
メルヴェの声が聞こえた瞬間、ドンッと言う音が辺りに響き渡る。
ナタンは近くで起きた爆発音に驚き、身を縮めてしまった。
そして、正面の味方部隊を見ると、地面に伏せながら、滑腔式無反動砲AT4を構える兵士が居た。
また、味方部隊の中には、グリーン・シュヴァリエが、分隊支援火器を持つ姿を視認した。
「よっしゃ? 反撃だなっ!」
ナタンは、右手に握るMASー1935を敵兵士に向かって何発か発砲する。
その射撃は、当たらなかったが、防弾兵やシールドを構えていた、敵兵が爆散した様子が見えた。
地面の雪には、黒焦げと青い血が染み渡り、周りには手足が頃がっている。
その間に、グリーン・シュヴァリエは、ミニミ分隊支援火器を乱射しながら歩きだす。
「このっ! 当たれっ!」
「よし、行くぞっ!」
メルヴェは、敵兵士に向かって銃撃を放ち、援護射撃を行う。
ナタンも、それに続いて、二丁拳銃を連射しながら後ろにある、ティーグルMの正面へと走る。
「は? 上から…………」
バンッと音がしたかと思うと、ナタンは帝国兵が上から撃ち殺される瞬間を目にした。
さらに、地面には火炎瓶が投げられたことで、帝国兵たちが、慌てふためく。
「民兵だわっ! 市民が蜂起に立ち上がってくれているのよっ!」
「そりゃ、朗報だなっ!」
メルヴェとナタン達は、民兵に助けられるのは三度目だ。
彼等は、特別列車からの砲撃や、屋上から狙撃してくれた。
左右にある建物から、市民たちは拳銃や猟銃を撃ち、お手製のパイプ爆弾や火炎瓶を投げている。
戦局が連合側に傾いた今、市民抵抗運動は最高潮に達している。
それ故、ナタン達に微力なれど、彼等も力を貸すのだった。
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