「レギナは、敵の手に堕ちたのか…………クソッ!?」
「残念だけど、黒いマントを靡《なび》かせながら、追ってに加わっているわっ!」
ナタンとメルヴェ達は、交差点を超えて、ビルの間を走り抜ける。
「じゃあ、レギナは帝国の手先に…………」
「でしょうね? じゃなきゃ、今ごろ後ろに居ないわっ!」
ナタンは後ろの機銃マウントで、M60を連射しまくる、メルヴェに声をかける。
それに、彼女は険しい表情で、額から冷や汗を滴しながら答えた。
背後から追ってくる帝国警察の車両は、四台。
それらに乗っている警察隊員は、かつて共に幼少時代を過ごした仲間たちだ。
「今んところ、当たっては居ないけど、近づいては来ないわねっ!」
「機銃掃射を警戒しているんだろうっ?」
ヤマハ・グリズリーは、装甲板に包まれた牽引トレーラーに機銃を備えている。
それ故、そう易々と四台の軽車両を近寄らせはしない。
逃走する二人は、T字路を越える。
その左側には、ヴェト通りがあり、歩道両脇にさまざまな自動車が停車してある。
右側には、円い二つの窓が目立つ、マイソ・ナ・セアベラニ博物館がある。
「交差点だっ! メルヴェ、あそこまで真っ直ぐ行くぞっ!」
「このまま行けば、大通りねっ! 危険だけど、ブリュッセル宮殿に行くには、どのみち通らなきゃならないわねっ!」
交差点の遥か向こうには、道路が見え、右側には巨大な高級レストラン・ビルが存在した。
しかし、ナタンとメルヴェ達はビルに見とれている暇はなく、逃走を続けねば成らない。
もちろん、その間もM60からは無駄使いせぬよう、断続的に機銃弾が撃ち出される。
「よし、交差点を抜けっ!?」
「煙幕弾っ!」
ナタンとメルヴェは、前方に発射された、グレネード毒ガス弾に驚く。
何発も発射された、毒ガス弾は道路を青い煙で満たす。
「ガスなら、装甲も関係ないわ…………」
ベーリットは、そう呟きながらポッドバイクの車体に、GPー25グレネードランチャーを撃つ。
彼女は、次いで合計六個あるGP25の蓋を車体に収納する。
彼女は、次にタッチパネルを操作して、車体前方・両脇から蓋を横下に開く。
そこから出てきたのは、青色に塗装された、CBJーMS個人防衛火器である。
「仕方ない、隣に行くぞっ!」
「分かったわ、あわわっ!」
「おっ! 曲がったぞっ! 今が、チャンスだっ!」
「そうね…………って、アイツはナタンじゃないのっ!」
「…………!? しまっ! ナタンだわっ!!」
ナタンは、交差点を右に曲がり、リヴルヌ通りへと、ヤマハ・グリズリーを走らせた。
当然、彼の姿は曲がる際に、敵による射撃に晒されてしまう。
その隙を、狙った機銃弾が飛んできて、メルヴェは彼に弾丸が当たるかも知れないと焦る。
AWOー700を運転する、レオは好機到来とばかりに、ワルサーP5Lを右手で構える。
その側車に乗った、ミアは何発かずつ、MG3を連射する。
ベーリットも、CBJーMSから十数発も、機銃弾をバラまく。
しかし、実際に当たった弾丸は、装甲板に命中して弾かれるだけだった。
「うわあ、狙って来やがったか?」
「逃げ切るのは難しいわね…………」
運良く攻撃が当たらなかった、ナタンは背後からの追撃に気を引き締める。
M60を機銃掃射しながら、メルヴェは前方に行かせはしないと、引き金を引き続けた。
追撃部隊に追い越させると、無防備な彼が射撃を受けてしまうからだ。
「まだ、撃って来るわっ!」
「行かせない気ねっ!」
「ベーリットが行ったぞっ!」
ミアとレギナ達は、連続で飛んでくる機銃弾により容易に、ヤマハ・グリズリーには近付けない。
そんな中、カルミーネは一人スピードを上げて突っ込んでいく、ベーリットに驚く。
「私のも防弾仕様だからね…………ナタン、レギナ」
ベーリットは、風防ガラスの中で呟きながら、眼を鷹がごとく鋭くさせる。
次いで、彼女はポッドバイクのスピードを、一気に加速させて、ヤマハ・グリズリーを追い越した。
「いくわよっ!!」
ついに前方へと回り込んだ、ポッドバイクは後方から真っ青な毒ガスを噴出する。
「うわっ!? 毒ガスだっ!?」
「不味いわ、避けてっ!」
右手に、ヤマハ・グリズリーを走らせて、ナタンとメルヴェ達は、青ガスを回避した。
そして、交差点を通りすぎてゆく。
「レギナ、カルミーネッ! あの車両に乗っているのは、ナタンとメルヴェ達だっ!」
「はぁっ!? アイツ等がか?」
「ちょうどいいわ…………彼らも、こっち側に来て貰いましょう」
交差点の手前で、レオはバイクに跨がる二人に追撃目標が誰かを伝える。
レバヌン料理店&ナイトクラブを通りすぎながら、カルミーネは思わず叫んでしまう。
その後ろを走る、レギナは舌舐《したなめず》りしながら呟く。
そして、彼女は、BMW、R1250RTーPのスピードを段々と上げる。
「カルミーネ、着いて来てくれるかしら…………レオ、ミア、援護をお願いするわっ!」
「あ…………? 分かったよ?」
「援護かっ! よし、やってやるっ!」
「なにか案があるのねっ! じゃ、射撃するわっ!」
レギナは仲間たちに援護を頼み、一直線にBMW、R1250RTーPを疾走させる。
その車体両脇には、白兵戦用に装備された武器がある。
右側には、戦斧ナヅィヤック、左側には、攻撃用混ブズドゥィガンがある。
こう言った武器を使い、彼女はヤマハ・グリズリーに白兵戦を挑もうと言うのだ。
彼女が、スピードを上げるのに、カルミーネも合わせる。
レオは、ワルサーPL5を何発か発砲しまくり、ミアもMG3を猛烈に機銃掃射させる。
「ガンガン言ってるぞっ! 後ろから猛烈に撃ってきたな?」
「制圧射撃よっ! レギナとカルミーネを援護する気だわっ!」
装甲板の真後ろから金属を叩くような射撃音を聞いて、ナタンは敵が猛攻撃を仕掛けてきたと悟る。
メルヴェは、レギナとカルミーネ達のバイクを近付けまいと機銃掃射するが。
「ベーリットはまだ追っているわね? なら私は…………ナタン、メルヴェイッ!! 降伏してっ!!」
「はっ? レギナ、お前っ!?」
「射角がっ!!」
攻撃を簡単にすり抜けた、レギナは攻撃用混ブズドゥィガンを抜く。
そして、ナタンの右腕を狙って、重たい一撃を放ってきた。
それを助けようと、メルヴェはM60を、素早く向けようとしたが。
距離が近すぎるため、敵である彼女を狙って、下方に射撃ができない。
「黙って喰らいなさい…………」
「殺られるかっ!」
「はっ! ナタン、助かったわねっ!」
レギナの細腕だが肉体改造され、筋力が増しており、ゆえに重い武器も軽々と振るえる。
しかし、ブズドゥィガンによる殴打を喰らう前に、ナタンは咄嗟に走る速度を下げた。
そのため、間一髪で打撃を回避できた。
「チ…………打撃を受ければ、いいものをっ!」
レギナは、殴打により、ナタンを殺そうとしたのではない。
彼の右腕を叩けば、ヤマハ・グリズリーが停まるだろうと思って攻撃した。
だが、予想は外れ、反撃を喰らう。
「この距離ならっ!!」
「当たったところで、そう簡単には死なないわよっ!」
ナタンは、左手で腰からMASー1935を抜き取り、すばやく発砲する。
それに対して、ブズドゥィガンで、顔を遮りながら、レギナは距離を取り始めた。
とは言え、至近距離で、何発も腹や胸に拳銃弾を喰らってしまった。
だが、低威力の拳銃弾を喰らっても、彼女は肉体強化を受けている。
それゆえ、この程度では死なない。
「よくも、レギナをっ! ナタン、お前と言えど、女性に手を出すなら容赦はしないっ!」
「うるせぇっ! カルミーネッ! 帝国の飼い犬になった、貴様に言われたくないっ!」
女性に手を出されたら、イタリィーの男として、カルミーネは簡単にキレてしまう。
また、彼は過去にベーリットを助けられなかった、惨劇を経験した事もある。
それを思い起こし、怒りのあまり彼はワーウルフに変身する。
そんな彼を前にして、正義感が強い、ナタンも帝国の邪悪な支配を受け入れられるはずが無い。
二人は、タンフォリオT95と、MASー1935で、互いの体を狙って撃ち合う。
「カルミーネ、これでも喰らいなさいっ!」
「連携攻撃だっ!」
「くぅ? 二人で来るとは、ズルいぞっ!!」
防盾から顔と右手だけを出し、サルマスシズK10で、戦いに参加した、メルヴェ。
それにより、ナタンは何発か肩や脚に拳銃弾を喰らいながらも、カルミーネを何とか撃退する、
十発も、弾丸を喰らった彼は、二人から距離を取り始めた。
そうして、ナタンとメルヴェ達はY字型の特殊な交差点まで走って来た。
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