Vz58ライフルを両手に構えたまま、ティエンはアーチ型トンネルを走り抜ける
そうして、出口付近に近づく度に銃撃音が大きくなってくるのが分かる。
きっと、激烈な戦闘が繰り広げられているのだろう。
そう考えた、彼女は走る速度を、さらに上げる。
「敵は…………向こうね」
壁に背を着け、出口から少しだけ顔を出して様子を見る、ティエン。
彼女が見たのは、薄暗くて広い空間と、小型船が通れそうなほど大きな排水路だ。
「ヤバイッ!? あっちの方が数は多い」
「このままじゃあ、押されちまうっ!」
「敵を追い詰めろっ! 殲滅するんだっ!」
「火力を集中させるっ!」
ティエンの前方右側には、レジスタンス員たちが四人だけで、孤軍奮闘している。
さらに、その先からは、十人からなる帝国軍部隊が、十字砲火を浴びせ続けていた。
「これは…………直ぐに援護しないとね」
「そうよ、ほらっ!」
壁に身を隠したまま、少しだけ体を出しつつ、Vz58ライフルを構える、ティエン。
その隣から声がしたかと思うと、レギナが素早く、コンパウンド・ボウを射ち始めた。
「メルヴェ、何処からっ!」
「貴女を追って来ただけよっ!」
ティエンとレギナ達は、会話しながらも敵に向かって自動小銃やコンパウンド・ボウを撃ち続ける。
「な? 味方か?」
「助かった…………」
「ぐっ! 肩に当たったか?」
「敵に増援かっ!?」
突撃背後から跳んできた、何者かによる銃撃に、レジスタンス員達は焦る。
しかし、直ぐ味方からの援護だと分かった彼等は、少しの間だけ壁に貼り付きながら安堵する。
一方、二人の銃撃に遠く左右両側から激しい攻撃を行っていた、帝国軍部隊は驚く。
だが、直ぐに猛烈な銃撃を再開し、もちろん二人にも、多数の銃弾が跳んでくる。
「うわっ! こっちにも来たわね」
「やっぱり、そう来るわよね?」
直ぐに身を隠した、ティエンとレギナ達だったが、後少し遅れていれば弾丸が体を貫いていた。
そして、穴が空いた、チーズのように体中が、ズタボロになっていただろう。
しかし、二人も歴戦の戦士であるため、難なく敵による攻撃を回避できた。
「てか、他の連中は? あと、敵の中にシュヴァルツ・リッターが存在するわよ」
「他の連中は、側面に周り込むって…………奴の重装甲は厄介よね…………」
ティエンは身を隠す前に、体格が良くて全身鎧を着たような兵士らしき姿を発見していた。
ソイツは、汎用機関銃か分隊支援火器を使っているらしく、高火力で此方を圧倒する。
「このまま、ここで撃っていても埒《らち》があかんっ!! 前進だっ!! 行けっ!!」
「了解しましたっ!」
『ブシュゥーーーー!!』
帝国軍下士官の命令を受けた、帝国兵たちが右側から走ってくる。
しかも、その中にはグールが居るらしく、奴が青紫色をした毒ガスを吐いた事で姿が確認できない。
煙幕代わりに毒霧を使った、奴は数人の仲間を率いて、突撃を敢行してきた。
「一気に前進だっ!」
背後から、シュヴァルツ・リッターによる援護の元、突撃してくるグールたち帝国軍部隊。
姿の見えぬ敵に、ティエンとレギナ等を含む、レジスタンス達は焦る。
「ぐわっ! な、が…………?」
「ぎゃっ!!」
『バチャッ!!』
だが、そこに右側から誰かが銃を撃ってきて、急に横から奇襲を受けた、三人は瞬殺される。
何発か銃撃を受けた、グールは前のめりに倒れてしまい事切れた。
また、率いていた帝国軍兵士たちも、コンクリートの床に同じく倒れたり、水路へと落ちていった。
「いったい、誰かしら?」
「他の連中だろうけど?」
「ティエン、レギナッ! 無事か?」
「俺たちは、こっから援護するからなっ!」
ティエンとメルヴェ達は、味方の援護に感謝しつつも誰による支援だろうかと、二人とも思う。
そして、横から奇襲を仕掛けたのは、ナタンとハキム達だった。
彼等は、レギナが言ってた通り側面に回り込んでいたのだ。
「俺たちも居るぜっ!」
「これでも喰らえってのっ!!」
「やってやるっ!」
ウェストは、クリスヴェクターを撃ちながら、サビナはMP5を撃ちつつ声を上げる。
ハルドルも、モスバーグM500を何回も撃ち、散弾を敵に浴びせようとした。
「また、テロリストが現れたのかっ!」
「いったい、何人隠れているんだ?」
「構うか、火力で押しきれば問題ない」
相次ぐ右側面からの銃撃に、帝国軍部隊は徐々に追い詰められ始める。
しかし、防弾装備を有する、シュヴァルツ・リッターだけは動じる事がなかった。
奴は相変わらず、H&K、MG4分隊支援火器を連射し続けていた。
しかも、そこに帝国側部隊の援軍が、凄まじい機銃掃射をしながら現れた。
それは、ベルギュー海洋構成部隊で使用されていた、河川哨戒艇リベラシオンだ。
一度、武装解除されたあと、広報任務などに活用された。
だが、帝国地上軍・帝国警察は、対テロリスト用に再武装化して、戦闘に投入している。
「増援かっ!」
「やったぞっ!!」
現れた、河川哨戒艇リベラシオンに帝国軍部隊は歓喜する。
この小型艦艇は、前方甲板と後部甲板から凄まじい銃撃を飛ばしてくる。
前方甲板からは、三角形の防盾《シールド》が前方に備え付けられた、NSV重機関銃が火を吹きまくる。
後部甲板からは、船体に身を隠しながら帝国軍兵士たちが、自動小銃などを撃ってくる。
「ヤバイッ!! 身を隠さないとっ!?」
「きゃっ! 不味いわ…………」
「ぐわあっ!!」
「があああーーーー!?」
ティエンとメルヴェ達は、素早く身を引っ込めたので、運良く銃撃から身を隠せた。
しかし、左側のレジスタンス員達は銃撃によって、二名戦死してしまう。
河川哨戒艇リベラシオンに、搭載されたNSV重機関銃は、12、7ミリ口径の弾丸を放つ。
これの威力は高く、曲がり角を簡単に、ブチ抜いてしまう程だ。
二名のレジスタンス員たちも、身を素早く隠したまでは良かったが。
彼等は、運悪く、12、7ミリ弾の餌食となってしまっていた。
「不味いわね? これじゃあ、私達が負けちゃうわ」
「本当ねっ! リュファスやハーミアン達は、いったい何をやっているのかしら?」
「二人だけになってしまったな…………」
「こうなったら、奥の手だ…………」
ティエンとレギナ達は、曲がり角から離れ、奥へと下がりつつ冷静に思案する。
同じく、彼女等より少し手前の左側にある壁裏で、身を潜める、レジスタンス員たち。
二人は、何かを準備し始めた。
「よしっ! セットアップ完了」
「なら、飛ばすぞ」
片方のレジスタンス員は、背中に背負った、リュックを地面に下ろす。
そして、中から二機のドローンを取り出して、下部に爆弾を吊るした。
さらに、もう一人のレジスタンス員は、ノートPCを操作し始めた。
すると、二機のドローンは宙を静かに飛んでいき、帝国軍部隊へと近づいていく。
それは、気づかれる事なく、NSVの機関銃手へと向かってゆく。
もう一機は H&K、MG4分隊支援火器を連射する、シュヴァルツ・リッターへと進む。
「よし、今だっ!」
「投下するっ!」
頭上に、小型ドローンが飛んでいるとは知らない、帝国軍部隊は制圧射撃を続ける。
一方、レジスタンスの二人は、ノートPCに映る、ドローン達から送られてくる映像を見る。
暗視機能が付いた、カメラは照準内にNSVの機関銃手を捉えた。
また、もう一機も同様に、シュヴァルツ・リッターの姿を上部から確認している。
直後、爆弾が投下されて、凄まじい爆発が起こった。
こうして、ドローンによる強力な爆撃で、帝国軍の機関銃手たちは吹き飛んでしまった。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!