「マーク、大丈夫かっ!!」
奥から、仲間を呼ぶ声が聞こえると同時、紅いベレー帽の男は、梯子を滑り落ちていく。
「ああ、そんな事より退却だっ! こっちからも敵が来るぞっ!」
下に降りた、紅いベレー帽を被る男の声を聞いている間に、ザミョール中尉は直ぐに動く
四角い穴に向かって、彼はポンプを何度も動かして、TOZー176を撃つ。
「逃げられたか、誰か手榴弾を持っていないか」
ザミョール中尉は、しゃがみこんで四角い穴を覗き、敵が逃げた事を確認すると、後ろに振り向く。
すると、ミミックマスターが手に、手榴弾を持って近付いてきた。
それは手渡されるとともに、ピンが引き抜かれて、四角い穴へと、素早く投げ入れる。
「隊長、閃光手榴弾しか無いですが?」
「十分だっ! キルサン、カピトリーナ、ソロモン一等兵」
ミミックマスターである、キルサンが投げ入れた閃光手榴弾だが。
それは、穴の中で炸裂して、目映い光と派手な爆発音を鳴らす。
ザミョール中尉は、それから即刻テロリストを掃討するべく、部下に次なる指示を出す。
「お前らが先に行け」
「了解でーーすっ!!」
「了解しました」
カピトリーナ二等兵は、背中の大楯を構えると、四角い穴に、サッと飛び込む。
それに続いて、ソロモン一等兵も、銃を構えて、同様に飛び込んだ。
「よっと?」
「?」
楯を構えた、カピトリーナ二等兵は、激しい銃撃を受けてしまう。
鎧を着込んだ、シュヴァルツ・リッターである、ソロモン一等兵にも、弾丸が何発も当たる。
彼等を標的にして、レジスタンス側から、一斉射撃が開始されたからだ。
「やっぱ、キツいわね?」
「小銃弾の威力程度なら耐えられる…………」
カピトリーナ二等兵が、構えた楯に命中した、銃弾は、見事に弾き返されてしまう。
ソロモン一等兵の鎧に、命中した弾丸も同様に防弾鎧が防いでくれる。
「このくらいは平気よ」
「ふん」
彼等は、正面からくる銃撃に対しては、決して怯まずに、各々の銃を構えて反撃する。
また、二人は味方が来られるように、攻撃しつつ、ゆっくりと前進する。
カピトリーナ二等兵は、腰から取り出したGSHー18ピストルを撃ちまくる。
ソロモン一等兵は、自動散弾銃である、ヴェープル12モロトを乱射する。
二人の撃ち放った銃弾は、徐々に鉄板や、木箱に隠れた、レジスタンス達を追い詰めていく。
「後退するぞ、スモークを焚《た》けっ!」
「分かった、今投げるわ」
隊長らしき人物が叫び、レジスタンス員の一人が発煙筒を投げて来る。
すると、コロコロと転がってきた筒を、ソロモン一等兵は、素早く蹴り上げる。
レジスタンスの方へと、蹴り飛ばされた発煙筒は、壁に当たると煙をブシュ~~と吐き出す。
そのせいで、暗い洞窟内には、瞬く間に白煙が充満していく。
「チッ! 視界が悪くて何も見えないわ」
「下手に動かない方が良い、奴等は奥で待ち構えているからな」
「その通りです、ここは冷静に対応しましょう」
充満する煙が薄れず、視界を覆うことを鬱陶しく思う、カピトリーナ二等兵とソロモン一等兵たち。
そう考えていた、二人だが背後から、いきなり女性の声が聞こえてきた。
なので、彼等は慌てて、後ろに振り向いた。
「ここは、一先ず、煙が晴れるまで忍耐強く待ちましょう? 御二人さん」
そこにいたのは、AK74を両手に構える、ニコッと笑う、女性警察隊員だった。
「ジナイダ軍曹、敵は居るか? 先行していた二人は無事か?」
「はい、ザミョール中尉、二人は無事でしたが視界が悪く、これ以上は暫く進めそうに有りません」
ジナイダ軍曹と呼ばれた、女性警察隊員は、後ろに振り向いた。
そして、穴に入ってきたばかりのザミョール中尉と、後ろ続く仲間達に答えた。
「そうか…………それよりも、煙が邪魔で何も見えない、いったい何時まで充満しているんだ」
目の前を漂う白い煙は暗闇と混ざり、灰色に染まり先程と相変わらず視界を覆う。
「何時までも邪魔をしているさ…………」
「誰だっ!!」
不意に、辺りに反響するような不思議な声が聞こえた事に対して、ザミョール中尉は怒鳴り散らす。
「ここ…………だよ」
カピトリーナ二等兵の首を、サバイバル・ナイフで、掻っ斬ろうとする黒い影。
「何?」
突如、背後からの攻撃を受けた、カピトリーナ二等兵だったが。
自らの首に、突き立てられようとした、鋭く銀色に光る刃に驚き、それに目を向ける。
「殺らせないわよっ!」
だが、それは運よく、ジナイダ軍曹がAK74を力強く振るったことで阻止された。
黒い影を、殴打した事により、銃床がサバイバル・ナイフを弾いたからだ。
「逃がしはしないっ! ぐっ?」
「あはは」
「待てっ!」
「くたばりやがれ」
カピトリーナ二等兵の頭を踏んで、勢いよく飛び上がった、黒い影だったが。
それは、どうやら緑色のウェットスーツに身を包んだ、ピエロ男らしかった。
ジナイダ軍曹によるAK74の発砲に加え、ザミョール中尉もTOZー176から散弾を放つ。
また、他の仲間達による銃撃にも、奴は身体を貫かれる。
だが、チーズの様に風穴だらけにされた奴は、赤い血を流しながら、天井に逆さまに着地する。
そして、霧に包まれるかの如く、煙に紛れて消え去った。
「奴は…………あの術からして、ソーサラーか?」
「まさか連合軍が我々の技術を」
ザミョール中尉は、ピエロが消えた天井付近を、鋭い目付きで睨む。
また、口元を歪ませ、尖った犬歯を出しながら、低い唸り声で喋る。
その隣では、ガリーナ二等兵が、敵が同じ技術を入手した事実に驚く。
さらに、これから始まる、テロリスト達との戦闘が酷しくなる事を想像する。
「そのまさかね、ああビックリした、音も無く私に近付くなんて」
「そうとうの手練れだな、奴は恐らくは連合軍コマンドーか?」
カピトリーナ二等兵とギルシュ二等兵たちは、洞窟みたいな地下道の奥を、警戒しつつ進む。
「私が先導します、私のアーマーなら多少の被弾も平気ですから」
ソロモン一等兵は、ヴェープル12モロトを構えて、全員の前を、一人先に行こうと歩み出す。
その後に続いて、ゲンナジー伍長・キルサン二等兵・ザミョール中尉たちが進む。
「…………なっ!?」
前進していた、ソロモン一等兵だったが、その身体を前方から、重機関銃が放った弾丸が貫いた。
さらに、飛んできた、火の玉が彼が装備している鎧を燃やす。
どうやら、今放たれた攻撃は、貫通力が高い大口径弾とバレーボール大の火炎球らしい。
「伏せろっ!?」
ザミョール中尉の命令を聞いて、直ぐさま身を伏せた仲間達。
彼等を襲った、激しい銃撃と火炎魔法による制圧射撃は暫く続いた。
「カピトリーナ、お前は楯を構えて前進しろっ! ギルシュ、お前は彼女を援護しつつ共に進めっ!」
「了解です、前進はお任せを」
「隊長、了解ですっ!」
ザミョール中尉の命令により、前進する、カピトリーナ二等兵とギルシュ二等兵達。
「銃撃が激しいけど」
「心配するな、誰か閃光手榴弾か、ガス弾を」
楯を構えて、カピトリーナ二等兵は前進しようとすると、ザミョール中尉は、仲間に命令を出す。
「はい、隊長殿っ!」
ドライアド姿のブルータイガー迷彩服を着ている女性警察隊員が答えた。
また、彼女は閃光手榴弾を右手の蔦を、投石紐が如く、器用に振り回して遠くに投げ込む。
「うわっ!!」
「ああっ!?」
投げ込まれた、閃光手榴弾の炸裂により、重機関銃が放つ、射線は滅茶苦茶な軌道を描く。
その隙を突いて、カピトリーナ二等兵とギルシュ二等兵たちは、急いで前進し始めた。
こうして、警察部隊は勇猛果敢な突撃を敢行していった。
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