【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第99話 闇の中から魔女の屋敷に?

公開日時: 2024年7月13日(土) 10:20
文字数:3,253


『…………うーーん? うーーん…………』


 簡易ベッドの上で、かなり苦しそうに魘されているラハーラー。


 今の彼は、幼い子供姿で、暗く寒い地下室で、苦し気に身体を横たえていた。



 だが、意識は中々寝つけず、逆に寝ようとすればする程に、昼間の事を思いだして、眠れなくなる。


 さらに、今夜は無かったが、夜になると彼を養子に迎え入れた、男から受けた虐待が頭に浮かぶ。


 奴から受けた数々の暴力、それを、どうしても思いだしてしまう。



「このウスノロがあぁっ!! 水も満足に酌めないのかああぁっ!!」


 ラハーラーを引き取った、男は地元の有力者であり、彼以外にも、男児を数多く引き取っていた。


 そんな奴であるが、今は幼い彼の失敗に対して、体罰で頭を拳骨《ゲンコツ》で叩いた所だ。



「オラッ! オラッ!! どうだ参ったか?」


 何度も、繰り返し、ラハーラーの腹を思いっきり蹴りあげる男


 普通ならば、こんな者は警察に捕まるか、正当な裁きが与えられるべきで有ろう。



 真っ当な社会を維持する国なら、当然そうなるのであるが。


 内戦が何時終わるとも知れぬ、生き地獄である、アフガネスタンは別だ。



 男は、地元の有力者と言う地位に加え、アフガネスタン警察にも、強力なコネがある。


 さらに、対テロ作戦を行うために駐留する、アルメア軍にも顔が効く。



 奴は、多数の民兵を、自分が保持する私兵として雇っている。



 警察も、彼による賄賂と男児を使った接待を受けており、多少の犯罪行為は黙認されている。


 アルメア軍も、過激派テロリストよりは、ましだと考えて、奴を使っている。



 それは、対テロ作戦には奴みたいな男の権力と、地元民兵による道案内など。


 そう言った、支援が必然だから、多少の事には目を瞑り、黙るしかないと言うわけだ。



「ああっ? 署長、ようこそ、今日は誰を可愛がりますかな」


 真っ暗な地下室に閉じ込められて、半ば監禁状態のラハーラー達。


 彼等は、日が沈み月が天に上ると、夜の接待を、無理矢理に勤めさせられていた。



『…………こんな所は嫌だっ! 絶対に逃げ出してやるっ! …………』


 そう胸に誓った、ラハーラーであるが、それは直ぐに実行へと移すことが出来た。



「大変ですっ! タリバ…………」



 木製ドアを開いた、パコル帽を被った民兵の身体を、AK47が発射した弾丸が貫いた。



「ひぃぃぃっ! だっ! 誰かぁーー!! 助けてくれーーーー!?」


 男の配下である民兵達と過激派テロリスト集団が、戦闘する激しい銃撃音が、木霊する。


 その恐ろしい音が、ボロボロに穴が開いた玄関から聞こえてきた。



「うぇーーん、怖いよ~~!!」


「えへっ! え~~~~んっ!」


 ラハーラー以外の男児達は、一瞬だけ目を丸くすると、すぐに恐怖で混乱してしまう。


 また、外から聞こえてきた恐ろしい戦闘の音を聞いて騒ぎだし、涙を流して、五月蝿く泣き叫ぶ。



「アソコだ、アソコが司令部だあ~~撃てぇっ!!」


 何処からか知らないが、シュポンッパシュッと、妙な音が、連続で地下室にまで聞こえてきた。


 これが、いったい何なのか分からない、男児達は泣きながら怖いと思うが。



「うわぁぁっ!?」


 それは、少し離れた位置から放たれた、RPGー7弾頭の発射音だった。


 さらに、軽迫撃砲から放たれた、砲弾が着弾する音である。


 当選だが、それ等は住居を破壊してしまい、男も瓦礫の下敷きにしてしまった。



「うわぁぁーー! 痛いよーー! 痛いよー!?」


「…………」


「うぁ? ぁ…………」


 空から降ってきた、迫撃砲が発射した砲弾は、容赦なく男の自宅を破壊してしまう。


 だが、同時に地下室を塞いでいた、ドアも破壊してくれた。



 その室内に監禁されていた、不幸な男児たちには、様々な者らが存在した。



 余りの痛みに凄まじい悲鳴を上げて、ただ泣き叫び続ける者。


 もう助からない程に、全身負傷してしまって、苦し気に呼吸する者。


 すでに、頭の半分を爆風に吹き飛ばされて、静かに事切れた者。


 一見無事に見えるが、不自然に黙りこくり、瞳に光の無い、胸を貫かれた者。



 こう言った男児が多かったが、一番奥の方で寝ていた、ラハーラーだけは運良く無事であった。



「怪我は無い?」


 幸運にも負傷し無かった、ラハーラーは、この場所から逃げ出そうと走り出した。



「待ってよーー! 置いてかないでぇっ!?」


「ぐすっ! お兄ちゃ~~んっ!!」


 彼を後ろから呼び止める、かつて仲間だった男児たちが叫ぶ声。


 それに、一瞬一人だけ、逃げる罪悪感を感じた、ラハーラー。



 だが、彼は同時に彼等の声が恐ろしく感じた。



 それは、罪悪感だけではなく、既に死んだ両親から聞かされていた、話に登場する怪物たち。


 即《すなわ》ち、毎晩荒野に現れる、精霊《ジン》の声みたいに思えたからだ。



 アラビ地域より、さらに東方に位置する、中央アシュアの国アフガネスタン。


 ここでは、死者の魂は荒野をさ迷う内に、悪霊のようになる。


 また、凄まじく悪い精霊になると信じられていたからだ。



 特に、悪人や悪い事をした者はだ。



 もちろん、男児達は悪人ではないが、彼には精霊たちが呼んでいるように感じられたのである。


 精霊と言うか、死者が呼ぶように感じたのも無理はない。



 彼等は、もうすぐ逃げ出せず、砲撃により、瓦礫の下敷きになって本当に死んでしまうからだ。



「ごめんね…………」


 そう一言だけ呟くと、ラハーラーは他の男児達を無視して、一気に走り出した。


 彼は、恐怖と罪悪感で、胸が張り裂けそうになるのを感じたが。


 彼等は、既に死んだような者で、悪い精霊と化していたと、何度も自分に言い聞かせて階段を登る。



「おおい、可愛がってやった事も有るだろう? 助けてくれ…………」


 ドアごと破壊された壁を越えた所で、男が声を掛けてきたので、ラハーラーは左に振り向く。



「まだ、死んでないのか?」


 ラハーラーが目を向けた先には、瓦礫の下敷きになっても、まだ生きていた男が倒れていた。


 身体を負傷した訳では無さそうだが、奴に覆い被さる瓦礫を退かす事はない。



 奴に凄まじい恨みのある、彼は即座に無視して、裏口へと向かう。



「なに? 今まで育ててやったのに…………クソガキがっ! 今に覚えてろっ!?」


 五月蝿く騒ぐ男の声に、耳を貸すことは無いと思う、ラハーラー。


 彼は、裏口から飛び出ると、眼前に広がる崖を目にした。



「死ねっ! 欧米帝国主義に手を貸した背信行為の報いは受けて貰うっ!!」


「アーラァー! ハックバルーー!!」


「ま、待て、話せば分かっ!? があっ!! …………」


 二名のテロリスト兵により、男は身体中をAK47から連続発射された、弾丸に貫かれて絶命した。



「フン」


 男が撃ち殺された様子を確認した、ラハーラーは崖下へと、一気に身を投げた。


 テロリストに捕まってしまえば、男と同じく殺されるのか。


 奴がしたような悪い事を、今度は連中から無理矢理されるだろう。



 そう思えたからだ。



 そこで、崖下に落下した彼は、空中をフワリと舞った後、固い地面に衝突してしまった。



 こうして、彼の意識途切れた。



「ぬ?」


 連続で聞こえる妙な音が、銃撃音かと思った、ラハーラーは、急いで重たい眼を開く。


 すると、そこには、国境無き医師団のヘリコプターが空を飛んでいた。



「大丈夫かい?」


「もう安心だぞ」


 辺りは、日が昇って朝になっており、彼を囲むように、アラビ人や白人の医療救急隊員が居た。


 こうして、彼は悪夢から救われたが、今度は困窮する、NGOキャンプに身を寄せる事になる。



 そこで、ラハーラーは欠乏する物資や衛生環境の悪さに苦しめられる。


 しかし、とあるNGO組織の一つである、人権団体によって、彼はハンザに送られた。

 


「ハンザに行きなさい、彼処は天国だよ」


「君の身分は保証されるよ、移民するんだ」


 NGO人権団体の職員から聞かされた話しでは、向こうは安全な場所だと言う。


 また、近年の内戦により悪化した、アラビ諸国から難民などを保護している。



 そして、そう言った人間たちを、ハンザ連邦合衆国が受け入れているらしいのだ。


 移民と言う魅力的な話を聞いた、彼は己の幸せを掴むため、意を決した。



 こうして、遠く離れた異国の地である、ハンザ連邦合衆国に向かうことに決めた。

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