敵の姿が見えぬ中、帝国警察部隊は、何人かが重傷を負いながらも、破壊された戦車に隠れていた。
「不味いな、衛生兵が居ないと、みんな死んでしまうっ! 俺は行ってくるっ!」
「分かった、ターリク…………ヴラウリオを呼んで来てくれっ!」
サーマルゴーグル付きの黒いフリッツ・ヘルメットを被る、アラビ人男性隊員は走り出した。
バフチャー空挺歩兵戦闘車の裏から、レオは腹を右手で押さえて、背中を預けたまま座り込む。
「分かった、次いでに他の連中が居たら、増援に来るように頼んでくるっ!」
「頼んだぞ…………ぐ、ぅ?」
そう言って、M16A4と69式毫米反坦克火箭筒を、ターリクは背負いながら駆け出していく。
彼は、アルメア製デジタル海軍迷彩服に似た、青と水色の野戦服と、黒い軽量ベストを着ている。
そして、青灰色のジーンズを履いている彼は、一直線に走る。
その後ろ姿を見送りながら、レオは唇から青血を垂らして、白シャツを汚す。
「毒ガスの煙を消してやるっ!」
「お前、マジシャンかっ!」
連合軍兵士の中から、アラビ風ターバンを巻いた、マジシャンが叫ぶ。
それと同時に、RPGー7の弾頭が真っ直ぐ、バフチャー向かってきた。
「うわっ!!」
「がはっ!?」
バフチャーの残骸がRPGー弾で、さらに攻撃されて揺れる。
その衝撃は、レオやカルミーネ達に取って、かなり体に傷みを与える。
流石の彼らも、大ダメージを受けている事から、衛生兵が来なければ死んでしまうだろう。
「レオ、形勢逆転だっ! 今度は、こっちから攻撃を仕掛けてやるっ!」
「ナタン、負け惜しみはよせっ! 早く、こっち側に来いよ? 歓迎するぞっ!」
青い毒ガスは、既に晴れており、円形テーブルの裏から、ナタンがAK12を連射してくる。
レオは体を捩らせて、腰から抜いた、ワルサーP5Lを何回か撃つ。
「誰が行くかっ! バカタレッ!」
「はっ! うるせえっ!?」
罵詈雑言を吐き出しながら、ナタンとレオ達を含む双方の勢力が、銃を撃ち合う。
「火炎弾と雷撃を放つっ!」
「こっちは、パンツァーファウスト3だっ!」
「不味いぜ~~? アレは俺でも耐えられない…………」
「だとしても、撃ち返さないとっ!」
マジシャンが魔法を連発すると、自衛隊員が対戦車兵器の弾頭を撃った。
ソムサックは、両腕から短機関銃を撃ちまくり、何とか応戦しながら持ちこたえていた。
だが、流石に彼が身に纏う防弾鎧も、対戦車用の徹甲弾は防御できない。
それでも、彼は残骸の右側から少し離れた位置で、敵を牽制している。
ミアも、体中から青血を垂らしながら、ヴィーガー941を乱射する。
「ぐっ!? クソが…………」
「きゃっ!?」
「うぐ…………」
「お前たちは、もう終わりだっ!」
パンツァーファウスト3の弾頭は、残骸に当たらなかった。
だが、床に当たった事で、弾けた破片を辺りに撒き散らした。
レオ・ミア・カルミーネ達は、吹き飛された土砂に襲われる。
ナタンは、ヘリカルマガジンが空になるまで、AK12を撃ち続ける。
「おっ? やってんなぁ~~?」
「敵は何処だ、あそこだな…………」
「また、援軍かっ?」
「PMCの連中かっ!?」
連合側に、PMC部隊が合流して、エスメラルとワンガリ達が戦列に加わる。
チィーナ軍兵と自衛隊員は、急に後方から現れた増援に驚く。
「まだまだ、援軍は来るよ? 向こうは片付いたからね?」
「我々は、魔法を射つのみだっ!」
「ヤバイわ、アイツは昨日の火炎放射男よっ!」
「それに、あのレディーは強い奴だ…………」
エスメラルは、自信満々の笑顔を見せながら、投石紐を回転させ始めた。
ワンガリも、投槍エンペレの先から巨大な火球を作り出し、どんどん大きく膨らませる。
ミアとカルミーネ達は、彼等の姿を見ただけで絶望する。
何故なら、連中は他のPMCや帝国兵よりも圧倒的に強いからだ。
「ぐぶっ! ぐぼぉっ?」
「…………? あ?」
「不味いわっ! こんな状態で、あんなのを射たれたらっ!」
「これは、どうすりゃ良いんだよっ!」
サミーラは全く動けず、ベーリットも瀕死状態で何もできない。
この状態で、ミアとレオ達は何もできないで身を隠し続けるしかない。
「て言うか、ルルワとレギナ達は?」
「二人とも、さっきから何処に行ったんだよ?」
「うわああっ! 後ろから来やがったっ!」
「いつの間に回り込んでいたんっ! ぐお?」
大火球が放たれると思っていた、レオとミア達は、背後から聞こえてきた声を不思議に思う。
それは、連合軍兵士やPMC要員が不意討ちを受けて、叫んでいたのだ。
「こっちから来るとは思ってなかったのね?」
「回り込んでしまえば、挟み撃ちに…………」
レギナの放った、焼夷矢テルミット・ボルトは、連合軍兵士に突き刺ささって、体を炎上させる。
ルルワも、FN、F2000を撃ちまくり、何人かPMC要員たちを倒す。
「まさか、別の部屋に移動していたのか?」
「青いガスの時に、RPGー弾で開いた穴から通って来たのよっ!」
ナタンの背後から、メルヴェが移動してきて、敵が何故奇襲できたか推察する。
「メルヴェ、どうする?」
「私達は、正面の連中を殺るわ」
ナタンは円形テーブルの裏で、ヘリカルマガジンを交換しながら、メルヴェに相談する。
すると、彼女は後ろより前を見て、ズタボロにされた残骸に隠れるレオ達を睨む。
「後ろから来たかっ? なら、もう少し小さくしてやろう」
「だったら、そっちに投げるよっ?」
「不味っ! ルルワ、下がるわよっ!」
「アレは確かに…………」
ワンガリとエスメラル達は、背後にある右側の部屋に攻撃を仕掛けた。
放たれた火球は、壁に当たると同時に、派手に弾けて焦げあとを残す。
投石された瓦礫は、入口の曲がり角を貫通して砕け散った。
この攻撃を受けて、レギナとルルワ達は反撃するか、それとも奥に下がるか。
それを、連合軍部隊の何人かが警戒しながら銃を向ける。
「おい、ナタンッ? 連中は知り合いか?」
「知り合いと言うか、昔馴染みだっ!」
「それより、また来るわよっ!」
「あんたら、喋ってないで、前に集中することっ!」
ジハードは、警察隊員と話し合うナタンを不思議に思い、何か因縁でもあるのかと感じた。
しかし、戦闘中に呑気な会話をしているほど、敵は甘くない。
メルヴェは、敵部隊に何らかの動きがあり、油断ならないと警戒する。
フランシーヌも、ストックレスAKを単発連射しながら敵を注視する。
「まだまだ、敵は来るよっ!」
「分かってるって…………」
フランシーヌは、ナタンとメルヴェ達より後方にある土嚢から援護射撃を行っている。
ジハードは、左側で防弾板を横にして、身を隠しながら、ベクターSSー77を乱射している。
「さっきの青迷彩だっ!」
「仲間を連れて来た見たいよっ!」
ヘリカルマガジンが弾切れとなった、ナタンはAKの通常型バナナ弾倉に取り替える。
メルヴェも、ミニミ分隊支援火器を床に設置しながら撃ち続ける。
「RPGを発射するっ!!」
ターリクは、チィーナ製69式毫米反坦克火箭筒を床に設置すると、即座に弾頭を発射する。
「うわあっ!?」
「ジハードッ!!」
発射された弾頭は、ジハードから左側にある壁に当たって、破片を撒き散らす。
それを、背後のドラム缶に身を隠していた、マフディーは心配した。
「レオッ! 何人かと合流したっ! あと、ヴラウリオと帝国軍部隊も連れてきたぞっ!」
「ターリク、分かった…………」
69式火箭筒を放った、ターリクは直ぐに立ち上がり、レオの方へと走ってきた。
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