【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第45話 逃れた二人の…………

公開日時: 2024年7月9日(火) 20:22
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:54
文字数:3,572


「ハァッ! ハァッ! ここまで来れば大丈夫か?」


「はぁはぁ…………だと良いけどね?」


 息を切らして、疲れ果てた、ナタンとメルヴェ達は、何とか敵から逃げることができた。


 二人は、路地裏にあった、何かの店裏に設置された物置き場らしき場所で、壁に凭《もた》れて座り込む。



「これから、どうする?」


「決まってんだろ、デパートを目指す」


 メルヴェの問いに対し、ナタンは向かう先はデパートだと答える。


 その後、二人は十分だけ、ここに座り込んだまま休憩する。


 そして、再び路地裏から薄暗い影の中を行だした。



「誰も居ないことを祈ろう?」


「その誰かが居たら、最悪よっ!」


 薄暗い路地裏から先に、光の差し込む道路を見付けた、ナタンとメルヴェ達。


 二人は、そこに帝国軍が居ないことを、神様に祈った。



「坂道だっ!」


「坂道ね?」


 路地裏を進んだ、二人は、やがて緩やかな坂道に出た。


 その場所には、坂道上方に帝国警察部隊が存在している。


 連中は、複数のコンクリート壁を設置して、陣取っていた。



 その陣地に置いた、壁にある小さな隙間穴から、銃口を突き出す。


 こうして、連中は眼下を通る、左翼の暴徒や、ベルギュー州軍部隊が来ないかと監視していた。



 下方には、ベルギュー州軍歩兵部隊が、対峙するように展開している。


 AFTディンゴ2装甲車と、ピラーニャ装輪装甲車などの陰に兵士達が隠れている。


 彼等もまた、坂の上方を防衛する、帝国軍部隊と睨み合いを続けていた。



「ここは駄目だな…………」


「そうよね? また来た道を戻りましょう」


 この坂道は、とても危険だと判断した、ナタンとメルヴェ達。


 二人は、今来たばかりの道を戻り、別ルートを辿ると、今度は広い道路に出た。



「あのホテルは大きいわね」


「あそこなら安全だろう?」


 広い道路には、遠くに立つ、大きなホテルらしき立派な建物が見える。


 こうして、安全そうな場所が存在することを発見した、ナタンとメルヴェ達。



 二人は、警戒しながら歩き、壊れた乗用車の陰から大型トラック裏へと隠れながら進んで行く。



「メルヴェッ! 止まって」


「何? どうしたの…………」


 二人が、タクシーの陰に姿を隠して、すばやく辺りを見渡す。


 すると、向こう側から、帝国警察部隊の車列が、自分たちに向かってくる姿が見えた。



 しかし、車列は隠れている二人の存在には気付かずに行ってしまった。


 その様子を、じっと隠れて見ていた、ナタンとメルヴェ達だったが。


 二人は、帝国警察の黒いパトカーが居なくなると、再びホテルを目指して、走って行った。



「これで、あのホテルまでの敵は居ないな」


「どうかしら? 油断しないでね」


 急いで、ホテルを目指して、道路に停まっている車の間を走る、ナタンとメルヴェ達。


 だが、そんな二人の前に、いきなり男達が現れた。



「止まれっ!」


「貴様ら、白人はいつもこうだっ! 虐殺ばかりしやがって」


「良くも俺達の仲間をっ!!」


 ホテルへと急ぐ、ナタンとメルヴェ達は、道路へと走っていく。


 二人の前に、現れた男達は、アラビ人と黒人で構成された、六人からなる暴徒達であった。



 彼等は、帝国兵から奪った物なのか、AK74で武装している。


 そして、銃口と激しい憎悪の感情を、二人に向けてきた。



「待って下さい、僕達は助けて欲しいだけ何ですっ!」


 ナタンは両手を上げて、六人の難民らしき大人達に助けを求めるが。


 怒り狂った彼等は、銃口を向けて、怒鳴り声で彼を罵る。



「信用出来るかっ!」


「子供とは言え、奴等帝国のスパイかも知れないぞっ!」


「撃ち殺せっ!!」


 彼等は、仲間を殺された怒りの余り、ナタンを撃ち殺そうと、引き金に指をかけようとするが。


 その瞬間、メルヴェが口を開いて、すぐに彼を庇った。



「待ってよ、私はティルク系よ? 貴方達と同じ難民なのっ! 彼は私の両親が帝国兵に撃ち殺された時に助けてくれたのっ!」


「ティルク人だと? その証拠は何処に有るっ!」


 右手を胸に添えつつ、前に出て、口から出任せを言った、メルヴェ。


 この場を乗りきろうとした、彼女に対して、証拠を出せと怒鳴るAK74を構えた、アラビ人男性。



「分かったわ、これを見てよ?」


 メルヴェは、落ち着いた表情で、ポケットの中に手を入れる。


 そして、中から青色と白色に塗られた、ガラスでできたた、目玉の飾りを取り出した。



「ナザール・ボンジュウよっ! どう、これで信じてくれた?」


 メルヴェが、取り出した飾り、それは彼女が母親からプレゼントされた物である。


 そして、これはティルク製の御守りである、ナザール・ボンジュウであった。



「よしっ! 良いだろう」


「おいっ! 本当に良いのかよっ!」


「信用しない方が良いぞっ!」


 それを見た、難民達のリーダーらしき、アラビ人は取り合えず、ナタンとメルヴェ達を信用したが。


 仲間のアラビ人と黒人達は、納得していない様子だった。



「ねぇ? 私達は、もう言って良いかしら」


「ああっ! だがホテルは駄目だぞ、帝国軍の通信所が設営されているからな? 取り合えずは向こうの店に俺達の仲間が隠れて居るから、そこに行けっ!」


 二人の処遇を巡って、揉めている難民達に、声を掛けた、メルヴェだったが。


 リーダー格らしきアラビ人男性は、親切に色々と二人に情報を教えてくれた。



 そして、彼は近くの店に避難している、仲間達が潜んでいる所に行けと言ってきた。



「有り難う、感謝するわ」


「僕からも、有り難うございます」


 二人は、リーダー格らしき、アラビ人男性に礼を告げる。


 それから、クリーニング店の建物を目指して走って行く。



 だが、そこに妙な音が、遠くから聞こえて来た。



「何だっ? この変な音は…………」


「花火かしらって、これは大砲のっ!」


 聞こえてきた風を切るような音に反応した、ナタンとメルヴェ達。


 彼等の前で、派手な爆発が起きて、クリーニング店が吹き飛んだ。



 爆発・爆炎・爆風などに巻き込まれた、ナタンとメルヴェ達は、一瞬意識が飛んだ。



「くそーーー!? 良くも俺達の仲間をーーー」


「貴様ら許さんぞーーー!!」


「仲間の仇だっ! くたばれぇぇぇーー!!」


 その数十秒後に目を覚ました、ナタンは衝撃的な光景を見てしまう。


 それは、難民達を包囲殲滅しようと、迫り来る帝国軍の戦車部隊だ。


 また、それに随伴する、大勢の帝国軍兵士たちが向かってくる姿であった。



「…………メルヴェは? 何処だ…………」


 ナタンは視線を動かして、メルヴェを探すが、何やら体に異変を感じる。


 それは、下半身が瓦礫の下敷きになり、動けなく成っていたからであった。



 彼は、下半身の埋もれたクリーニング店の瓦礫から這い出ようと、もがくが。


 体は一向に動かず、一ミリ足りとも、ズレることすら無かった。



「ナタンッ! 大変っ! 大丈夫?」


 そこに、メルヴェが背後から現れて、瓦礫の中から細長い板を見付ける。


 それを上手く使って、ナタンの下半身を覆う瓦礫を退かそうとした。


 しかし、一生懸命に力を込めて、梃子の要領で板を動かしたが。



 当の瓦礫は、ビクともしなかった。



「メルヴェッ! 僕を置いて君だけで逃げてくれ」


「ナタン! 諦めないでっ私が絶対に助けるからっ! …………絶対によっ!」


 二人の前には、包囲した難民男性たちを虐殺する帝国軍兵士たちの姿が映る。


 彼等難民たちは、果敢に抵抗したが、二人を残して、他は戦死してしまう。


 その生き残った、二人も腕や足を負傷して、もう戦えそうに無かった。



「居たぞ…………劣等生物共めっ!」


「害獣を排除します」


 制服姿の帝国軍士官と、部下である帝国軍兵士たちは、ゆっくりと進軍してくる。


 彼等は、先程の戦闘で、穴だらけに成ってしまった自動車に近寄る。


 また、その陰に隠れていた、難民達を虐殺しようと迫る。



 右腕を負傷した、アラビ人男性、両足を負傷して、動けなく成った黒人男性など。


 二人に、帝国兵たちは、拳銃と自動小銃の銃口を向けた。



「まっ! 待ってくれっ! 撃たなっ!」


「撃つなっ! 降伏ううっ!?」


 難民男性たち、最後の生き残りである、二人も処刑されてしまった。


 そして、次は自分達の方へと、帝国兵達が来ると考えた、メルヴェは。



「ナタンッ! 私も瓦礫に身を隠すわ、だから貴方も奴等が来ても、大人しく死体の振りをしてっ!」


「ああ…………メルヴェ、分かった」


 ナタンの前で、メルヴェは上手く隠れるように告げると、すばやく瓦礫に身を隠した。


 それから、帝国軍士官を先頭にした歩兵部隊が現れた。



 身を動かせない、彼にも、帝国兵達が警戒しながら進んで来るのが見えた。



「…………奴等が近付いて来る…………心臓がバクバク鼓動する…………」


 ナタンは、疲れ果てたのか、それとも瓦礫に頭を打ち付けられたせいか。


 彼の意識は、深い闇に段々と沈んで行った。



「おいっ! 子供が居るぞ、負傷してるっ!」


 ナタンの意識が、完全に闇に呑まれる前、帝国軍士官が発した、声が聞こえてきた。


 だが、彼は眠るように意識を手放してしまい、暫くの間、何も聞こえ無くなってしまった。

 面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。


 あと、生活費に直結するので、頼みます。


 (^∧^)

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート