連合側で参加しているウクレイナ義勇兵により、向かい側の建物内からは激しい銃声が聞こえる。
「建物正面は制圧したっ! 援軍を寄越してくれっ!」
「やりやがった、凄い速さだ…………」
「ナタン、俺達は気が抜けないぞ」
「まだ、ゾンビが走って来ているわっ!」
「分かった、我々アラビ人部隊が突入するっ!」
ウクレイナ軍義勇隊は、早々に建物の一角を制圧して、突入口を確保したらしい。
そして、三階から、オレーナが味方部隊に向かって、増援を呼び掛ける。
ナタンは、彼等の迅速な行動に驚嘆しながら、AMDカービンから弾倉を抜く。
ウェストとメルヴェ達は、装甲バスの両脇や上から、ゾンビ部隊が強襲してくるさま見た。
当然、彼等は銃撃を加えるが、サン・ミッシェル大聖堂側でも機銃掃射で抵抗している。
そのため、向こう側も何とか、ゾンビを退けていた。
「援護は来ないのか? このままじゃ殺られちまうっ! こっちにも、ゾンビが来やがるしっ!」
「また、戦車が撃って来るぞっ!!」
「退避、退避ぃーーーー!?」
「もう避けられないっ!? 頭を下げろっ!」
ウェストとハキム達は、公園を走るゾンビに向かって、銃撃していた。
そんな中、大聖堂側から、再びカプランMT軽戦車が走って来て、砲身から科学弾頭を発射する。
チィーナ軍兵士やアラビ人兵士たちは、散々に回避したため、逃走するのが遅かった。
「うわああっ!?」
「ああーーーー」
ナタン達が走ってきた方向に逃げた、アラビ人兵士やチィーナ軍兵士は、黒い爆煙に巻き込まれる。
「うぅ? クソッ!」
「ああ、アアァァッ!!」
「グェ、グオーーーー!?」
「く、来るなっ!」
砲撃で吹き飛された、チィーナ軍兵士は、アラビ人ゾンビを、前に這ってでも逃げようとする。
壁際に倒れた、アラビ人兵士は、チィーナ兵ゾンビに、M4A1を撃ちまくる。
「不味い、放っては置けないっ!」
「うわああーー!! た、助けてくれ~~!?」
「グルォォ」
「彼等を助けなきゃ」
「この死にやがれ、近づいてくるな」
「ガオオオオーー」
ナタンは、AMDカービンを撃って、アラビ人ゾンビの右足を撃ち抜いた。
次いで、チィーナ軍兵士に素早く駆け寄っていき、片足を掴んだ奴の頭に弾丸を撃ち込む。
M4A1を撃ちまくる、アラビ人兵士だが、チィーナ兵ゾンビの体を貫くだけだ。
底に横から、メルヴェが素早く、イエローボーイを連射した事で、両足を攻撃できた。
「よし、助かった、後は…………」
「戦車が逃げていきやがる?」
「RPGー7が効いたんだろう、当たらずとも圧力は掛けられる」
「ハキム、ウェスト、前進しよう」
「ここに居ても、殺られるだけだわ」
アラビ人兵士は、チィーナ兵ゾンビの頭に、M4A1を向けると、一撃を撃ち込んで倒した。
次なる科学砲弾を警戒する、ウェストの目には、カプランMTが大聖堂へと逃げる姿が移る。
ハキムが推察した通り、RPGー7による四方八方からの猛攻が効いたらしい。
モスバーグM500を持ち、ハルドルは前の建物へと、姿勢を低くしながら走っていく。
ティエンも、コルトXMー177E2を、何発か公園の方に連射すると、彼に続いて駆け出す。
「あ? まあ、行くしかねぇか…………ハキム、ナタン、メルヴェ、行くぞぉ~~」
「ああ、早く行かねば、科学攻撃の餌食だっ!」
「待って、と言ってる暇は無いわね?」
「おい、置いてくなよ、んあ?」
ウェストは、向かいの建物に駆け出して行くと、ハキムも公園に銃撃しながら走ってゆく。
メルヴェも、何回かイエローボーイを大聖堂に迫るゾンビに乱射した後、すぐに移動し始める。
彼等の後を追おうとした、ナタンは背後から聞こえてくる大きな射撃音を聞いた。
「装甲車だ」
ナタンは、アラビ人兵士達が防弾板で入口を塞ぐ前に、味方装甲車両が到着するのを見届けた。
ベージュ色のシミターMkII偵察戦闘車が、30ミリ、ラーデン機関砲を発射しながら走ってきた。
キャタピラで路上を走破する、この車両はKMAB装甲バスに対して、連続砲撃を続ける。
しかも、向かい側や近くの建物からはRPGー7による一斉射撃が行われた。
「うおっ? 大爆発したぞ」
ナタンは、KMAB装甲バスが大爆発したのに驚き、腰を抜かした。
「急げ、今度は向かいの建物だ」
「無反動砲も運ぶぞ」
チィーナ軍兵士たちは、無反動砲の砲身と三脚を分解して、持ち運び始めた。
それを眺めている暇なく、ナタンも窓を飛び越えて、屋内から出ていく。
「メルヴェ達は、何処に行ったんだ?」
ナタンは建物内に入ると、一人廊下を走って奥を目指す。
ここでは、連合・帝国と双方の兵士が死体となって、無惨に転がっていた。
とにかく、ひたすら彼は奥に向かって、苦戦しているであろう味方の増援にいく。
その途中、シミターMkIIが、突撃していく姿が見えた。
「味方も前進しているのか」
ベージュ色の金網に包まれた車体に続き、何台かトヨタ・テクニカルが続く。
ナタンは、窓から斜め下に向かう坂を下ってゆく、車両部隊を眺めている暇なく前に向かう。
「おい? こっちよ、こっち?」
「君は、オレーナだっけ?」
オレーナは、大きな壁穴の左側から手を振って、ナタンを呼んだ。
ここは、酷い砲撃を受けたらしく、天井に幾つかも穴が空いている。
要は、半壊状態なのだが辛うじて、一階と二階がトーチカとして使えそうだった。
彼女が身を隠す、壁も敵の機銃掃射によって、削り取られていく。
「そうよ、アンタは?」
「ナタンだ」
オレーナの側まで近づいた、ナタンは小穴から周囲を観察する。
そこに、敵の戦車らしき姿はなく、遠くに存在するビル郡から攻撃が飛んできていた。
「他の連中は?」
「知らないわ、上じゃないの?」
辺りを見回しながら、ナタンは仲間たちの事を、オレーナに聞いた。
しかし、彼女はAKー103を単発で何回か撃ちながら分からないと答える。
「そうか、分かった…………メルヴェ達は、上に行ったのか」
AMDカービンを小穴から撃った後、ナタンは周りの味方兵士を見た。
ここに存在するのは、ウクレイナ軍部隊とPMC部隊だけだ。
「トヨタが来たわっ!」
味方の部隊が来ると、建物手前で機銃掃射を一斉に始めた。
オレーナは、彼等に合わせて、自身のAKー103を連射する。
ナタンも膝だちで、壁際からAMDカービンを単発連射した。
「凄いな、しかし?」
トヨタ・テクニカルのドラム缶に囲まれた、キャリバーM50重機関銃は火を吹きまくる。
緑色のトヨタ・テクニカルに搭載された、マキシム四連対空機銃も、凄まじい連射を敵に浴びせる。
これら機関銃とRPGー7の勢いに負けて、敵部隊は、蹴散らされていく。
しかし、未だ建物から行われる帝国側の射撃は衰えず、次々と発射されてくる。
「アールピィーーGーーーー!?」
「離れろっ!」
「敵も、反撃してきたぞっ!」
オレーナが、大声で叫ぶと、緑バラクラバの兵士は壁から離れる。
そして、着弾した後、緑ベレーの兵士は直ぐに、フォルトー401汎用機関銃を撃ちまくる。
どうやら、敵は左側のビル郡からRPGー弾を、一斉に放ったてきたようだ。
ナタンは逃げ遅れてしまい、アチコチから振り袖ぐ、瓦礫と灰煙に包まれた。
「ケホッ! ケホッ! があ、クソ…………あ?」
「うあ、生きてるね?」
灰煙の中から、ナタンは立ち上がると、AMDカービンを床に落ちた手に取る。
その時、真後ろから女性兵士が起き上がる声が耳に届いた。
「パトリシア? なぜ、ここに」
「それは、話すと長くなるよ?」
ナタンは、瓦礫の下から現れた、パトリシアに驚きつつも話しかけた。
「あの装甲バスを破壊しようと、ヤブローと一緒に、こっちに来たんだよ? そしたら、砲撃で瓦礫の下敷きさ」
「そうだったのか? 大変だったな」
パトリシアは、ナタンの問いに答えながら、床に伏せて、バレットM82を構えた。
スコープを覗いた彼女は、窓からAK74を構える帝国軍兵士に照準を合わせて、すぐに撃つ。
こうして、連合側は苦境に立たされながらも、何とか複数のビルを奪還した。
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