【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

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デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第63話 ある教師の正体

公開日時: 2024年7月10日(水) 00:42
更新日時: 2024年7月12日(金) 23:06
文字数:3,581


 ラ・ローズ・ブロンシュから出た、二人は並んで、巨大広場グランプラスを歩いていった。



「あ~~! 美味しかったわぁ」


 市庁舎裏にまで来ると、フィーンは不意に呟いた。



「そうですか? 喜んで頂けるたなら良かった…………まあ、その? この後も飲みに行きませんか」


「えっ! 飲みに…………ですか?」


 突然、フロストから誘われた、フィーンは驚いてしまう。



『…………彼は、悪い人じゃないし? う~~んっ? 見た目も中身も、かなりいいし? どうしようかしら? …………』


 しかし、行くか、行かざるべきかで、フィーンは顔を紅く染めながら悩んでしまう。



『…………まあ、優しいし、ベッドまで行ったとしても~~それも悪くないわね? ジューポンの漫画みたいに、イケメンと気弱な女性が…………♡』


 等々と、フィーンは脳内で、妄想を膨らませてしまっていた。


 彼女は、ネット上に翻訳配信されている、ジューポン漫画のファンだ。



 それには、姫と王子・コーチと学生・上司と部下などと言った、男女の恋愛漫画が大量にある。


 また、もちろんだが、先生同士の恋仲を濃密に描いた作品も存在する。



「分かりましたわ、行きますっ♡」


「それなら良かったっ! では、運転手を呼びましょう? いや、ここは?」


 フィーンが承諾してくれた事を、フロストは喜び、そして何か思案する。



「それより、フィーンは、かなり飲める方なんですか?」

 

「ええ、ワインやウィスキーは余り飲まないんですが、飲めなくもないし? ベルギュー生まれですから、ビールならば、よく飲みますね」


 フロストは、フィーンが酒をどれだけ飲めるか、また飲む種類は何かと問う。


 酒豪や酒好きでない限り、無理に飲ませるのは良くないからだ。



「でしたら、今度は僕が奢りますから、バー・マグリートに行きませんか? あそこで、お洒落なジャズを聴きながら一杯やると言うのは…………」


「マグリートは、すぐそこで、近いですし? 歩いていけますからね? 分かりました、ご一緒します」


 フロストの提案に同意した、フィーンは早速だが、アミゴ通りを彼と並びながら歩いていく。


 それから、赤茶色の煉瓦を組み合わせてできた壁を、二人は通りすぎていく。



 こうして、アーチ型の入口まで来た。



「さあ、中へどうぞ、我が姫っ!」


「フフッ♡ 分かりました、我が騎士♡」

 

 フロストとフィーン達は、ごっこ遊びをしながら恋人たちのように、店内へと入っていった。



「ここ、前々から来たかったのよね~~♪」


 フィーンは、ぐるりと店内を見渡して、明るい表情を浮かべる。


 壁は、赤・赤・黄・緑など、色鮮やかな模様が描かれている。



『…………前々から行きたかった場所に来られて、しかも、タダ酒が飲めるっ! しかも、相手はイケメン♡ ヤダ、私ったら…………でも、もう、フロストさんに恋してるのは確かね? …………』


 フィーンは、すでに内心では、フロストに恋していることを認める。


 そうしている内に、彼女は薄茶色いカウンターに向かっていき、同じ色の席へと座った。


 また、背後を見渡した彼女は、緑色の背凭《せもた》れが付いた椅子も目に入れた。



「フロスト先せ? いや、フロストは何を頼むの?」


「僕は決まってるよ、ここも、かなり利用しているからね」


 フィーンは、フロストを見ながら、頬を紅くしつつ質問する。



「そうっ? じゃあ、貴方に私が飲む物も任せようかしら?」


「なら、マスターッ! アレを頼むよ」


「はい、フロスト様っ! こちらを…………」


 フィーンは、常連であるらしい、フロストに飲み物の種類は任せることにした。


 すると、マスターは太くて長四角の大理石を二人に出した。


 それは四隅の一つに、逆ドーム型グラスが取り付けられた珍しい物だった。



「当店自慢のカクテルです」


「ありがとう、マスター」


 マスターは、シェイカーを揺らして、グラスの紅透明なカクテルを注ぐ。


 それから、彼が静かに去ろうとすると、フロストが礼を言った。



「どうも、フロスト様…………」


 マスターは、丁寧に一礼すると、二人に背を向けながら去ってゆく。



「さて、フィーン? 二人の出会いに乾杯しようじゃないか?」


「そうね、フロストッ♡ じゃあ、乾杯っ♡」


 カチンとグラスを小さく鳴らしてから、フロストとフィーン達は、紅透明なカクテルを喉に通す。



「フロストは、どうして教師になったの? 私は子供たちと楽しく過ごしたいし、子供たちに勉強を教えたいからって、理由から成ったんだけど…………」


「僕ですか? 僕は子供たちを、アンデッド兵士に洗脳しようと思ってね?」


 不意に、フィーンは教師を続ける理由を自分から語ってみた。


 そして、フロストが同じ職業を選んだ訳を知りたくなったのだ。



「ええっ!! 何ですってぇぇーーーー!?」


「ハハッ! ジョークですよ、ジョーク? ナタンやレオ達が、いつも言ってるでしょう? 僕のことを吸血鬼だって…………そんな訳があるはず無いのに…………」


 ビックリしてしまい、フィーンは大声で叫んでしまった。


 そんな彼女に対して、フロストは冗談だったと言って、唇に人差し指を当てる。



「…………あっ! ですよね~~? アハハ? 私ったら、冗談も本気にしちゃうなんて?」


「まあ、僕の正体は、ただの教師ですよ? 多少は金持ちと知り合いなだけの?」


 フィーンは、フロストの指を見ながら周りに迷惑をかけたと思って、辺りを見渡す。


 しかし、周りを囲む人々は気にしてないのか、それとも、一度注目してから興味を失ったか。



 理由は、分からないが、幸いなことに客の殆どは、酒を飲みながら静かに談笑していた。



「そうよね? フロストは先せ? な、だけ? アレ…………アレレ? 何だか眠くなって…………」


「さあ、お姫さま? お眠の時間ですよ?」


 フィーンは、急激に体から力が抜けると同時に、眠くなってしまう。


 そうして、倒れそうになった彼女を、フィーンは背中に手を回しつつ支える。



「フロスト様、マシンの御用意はできてます」


「分かった、この人は僕が直々に運ぶからな」

 

 さっきのマスターが現れると、フロストは深く眠っているフィーンを抱き上げる。



「フロ、スト?」


「フィーン先生、僕の正体は後で教えましょう? そう、ベッドの上でね」


 フィーンを、お姫さま抱っこのまま、フロストは彼女を軽々と持ちつつ歩きだす。



「アハハハハッ!」


「フロストの奴、やったな?」


「女を堕とすとわね~~?」


 悪魔のように嗤《わら》う、フロストを誰も客は気にすることはなかった。


 今、ここで酒を飲んでいる男女は、全員帝国に属するアンデッドだからだ。



『…………ああ? フロストの正体は、マフィアか何かだったのね? 自分の判断は甘かったわ? …………』


 右目から涙を流しながら、眼を瞑った、フィーンは、フロストにより何処かへと運ばれていった。



 それから、地下深い場所に、二人は居た。



「お目覚めかな? フィーン、ククッ!」


「フロストッ! 貴方は犯罪者だったのね? まさか、マフィアの一員だったとはっ! いや、その格好は…………」


 黒い制帽と軍服を着ている、フロスト中尉が右側に立っている姿を見て、フィーンは大声で叫ぶ。


 だが、いくら彼女が暴れようと、体は全く身動きが取れない。



 両手は、ベッドの柵に交差するように、手錠を填められているからだ。


 両足も、同じように股を広げられた状態で、ガッチリと拘束されていた。



「マフィアかーー? ま、確かに帝国は悪事も重ねているからな? それも、外れちゃいないよ」


「貴方、極右やネオナチだったのね? 私を狙った理由は何? 体が目当てかしら? そうだったら、ここを逃げ出したら警察にっ!」


 フロスト中尉は、両腕を組みながら天井を向きつつ、呑気に話す。


 対する、フィーンは彼の態度を見て、罵倒しつつ怒鳴り散らす。



「無駄だよ…………僕たちは、すでに様々な組織や団体に溶け込んでいるからね? 君を狙ったのは表向きは、帝国のためだが、確かに体と心も個人的には欲しかったからね」


「くぅ~~! ふざけないでっ!」


 フロスト中尉の言う通り、帝国が放った潜入工作員は、あらゆる組織に混じっている。


 そして、フィーンのように、内部から仲間を増やすべく暗躍していた。



「ふざけてないよ…………それに、僕も本当は警官であり、ナタンやレオ達の言う通り、吸血鬼のエイリアンなのさ? あと、スパイでもあるな?」


 フロスト中尉は、一人ブツブツと自身の正体を語る。



「はあ~~? いったい、どう言う事なのっ! いいから拘束を外しなさいっ!」


「まあ、いずれ君にも、分かるよ? その装置が学習させてくれるさ」


 フィーンが暴れながら、拘束具をガチャガチャと揺らす中、フロストは彼女の頬にキスをした。



「いやっ! 何コレッ! 離してっ! 離してーーーー!」


「では、サヨナラだ、フィーン先生? 次に起きたら新しい人格に、アップデートされているだろう」


 フィーンは、自らの両眼を覆ったバイザーと、スッポリと頭部に被せられた、ヘルメットを怖がる。


 それを見ながら、フロストは愉しげに嗤うのであった。

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