帝国軍兵士らしき、二名の黒服男性が両手を上げている。
「コリャン軍、第707特殊任務大隊員だっ!」
「俺たちは、敵を撹乱しただけだっ!」
「はっ! どうか、分からねぇなっ!!」
「変な真似をしたら、狙撃してやる」
コリャン軍兵士を名乗る兵士たちは、帝国軍部隊が撤退した後も残っていた。
これは、逃げ遅れたか、或いは罠を仕掛けているのかも知れない。
そう考え、疑いながらも、ベクターSSー77を抱えつつ、黒人兵士は近づいていく。
また、赤ベレー帽の黒人兵士も、FALのダットサイトを覗きながら叫んで威嚇する。
「んんあっ!? その声は、イ・ミンジュ小尉っ? それに、ユン・ヒョンジン曹長では?」
「そっちの声は、ヌーラ軍曹だな? 砂漠の砂塵・訓練以来の再開だな?」
「懐かしいな、そっちは元気にしていたか?」
「奴らを知っているのか?」
その時、穴から身を乗り出した、女性兵士が二人に声をかけた。
顔に深緑色の布を巻いている、彼女はヌーラと呼ばれた。
対する、帝国軍兵士は、黒服を一気に脱ぎ捨てたことから兵種は、ヴァンピールだろう。
もう一人も、モザイクを掛けて、変身を解いたので、おそらく兵種はメイジだと思われる。
そして、緑色のスポーツタイプ・ヘルメットを被る兵士たちが登場する。
二人は、デジタル・ウッドランド迷彩を着て、緑色の防弾ベストと膝&肘にパッドを装着している。
ベクターSSー77を構えつつ、近づいていた、黒人兵士は後ろに振り向いた。
「彼等なら知っている、対テロ訓練を一緒に行って、経験をともにした」
「ふぃーー? ま、助けられたのも事実だからな」
「ああっ? 両手を下げていいか?」
「それそれ、下げさせて貰いたいんだが…………」
ヌーラは、二人の弁護をすると、黒人兵士は納得したらしく、ベクターSSー77を下げた。
その間、イとユン達は両手を上げたままだった事で、疲れたらしく手を下げたいと言ってきた。
「両手を上げたままの訓練は、受けているでしょ? って、冗談よ? 下げて」
「はぁ~~? 助かったよ、ヌーラ」
「これで、立ち続けなくて済むな…………」
ヌーラは、二人に両手を下げさせつつ不用意に近づいていく。
それから、イとユン達は腰から、H&K、USPを素早く抜き始める。
「なっ!?」
二発の銃声が鳴ったが、誰もがヌーラに銃弾が命中したと思ったが違った。
「ぐぶっ! ご、あっ!」
「まだ、奴には息があった…………」
「コイツは、チュソン軍の分隊長だろう」
そう言って、二人は腰にH&K、USPを仕舞うと、それぞれの武器を手に取る。
二人は、ヌーラの背中に白頭山ピストルを向けていた、チュソン軍兵を撃ち抜いたワケだ。
イ少尉は、ダットサイト&フラッシュライトを取り付けた、K2C1自動小銃を拾う。
ユン曹長も、ダットサイト付き、K7短機関銃を拾って死んだ、チュソン軍兵に銃口を向ける。
「…………助かったわ」
「おい、それより死体から銃器を集めろ、ミミックマスターが隠れていたり、罠を仕掛けているかも知れないから慎重になっ!」
「それだけじゃない、防弾パネルや箱を移動させろっ! この氷の前に防衛線を構築するんだ」
「敵の死体も片付けないと、放っておいたら悪臭が漂うぞ」
CAR《カー》816スルタン自動小銃を下ろしつつ、ヌーラは顔を覆っていた深緑色の布を外す。
そうして、彼女は安堵の溜め息を吐いた。
その後ろから、黒人兵士は、ベクターSSー77汎用機関銃を地面に置いた。
FALを背負った、黒人兵士も敵の使っていま円形テーブルを転がし始める。
灰色フリッツ・ヘルメットを被り、砂漠デジタル迷彩を着た、アラビ人兵士も走って来る。
彼は、近くで倒れていた、円形テーブルを立たせる。
それから、上にLG5Sスナイパー・グレネードランチャーを静かに置いた。
また、次いでルーマニャ製、AIM自動小銃も、テーブルに載せた。
「この銃も、役に立つな?」
「これは貰い、こっちは集めとかないと」
ナタンは、AK12を背中に背負うと、58式
小銃や82式機関銃を抱えて運び出す。
メルヴェは、65式歩槍を拾うとともに、PKP汎用機関銃を掴む。
二人は、ともに武器を分厚い氷壁の真ん中に取り敢えず集めてゆく。
「他の連中も、遮蔽物や瓦礫を集めているな?」
「あっちも、大変そうね」
ナタンが拾った武器を並べると、メルヴェも同じく床に置いた。
その間、イズラエル軍兵やPMC要員たちは次々と、遮蔽物や武器を運んでくる。
「急げ、敵は部隊再編して、また来るかも知れないっ!」
「その前に運ばないとな」
三脚に載せられた、85式12、7ミリ重機関銃を、黒人と白人のPMC要員たちが運ぶ。
その姿は、御輿を担いでいるようだ。
「ここに、ランチャーや機関銃を設置する」
「予備弾も置かないとな」
「ロボアーミーは隠して置かないと」
「弾薬箱を持ってこいっ!!」
他にも、イズラエル兵達は、先ほどの戦いで、REEMロボアーミーが床に開けた穴に入っていく。
IMIネゲヴを窪み手前の床に置いた、イズラエル兵は再び後方に走っていく。
また、別な兵士はプラスチック製ケースを持ってくる。
フリッツ型と違い、丸みを帯びた、彼等のカスダ・ヘルメットは非常に目立つ。
こうして、連合側の部隊は吹き飛んだ地面を塹壕線として利用した。
また、その後方には防弾板や円形テーブルを倒して、バリケードを構築した。
防弾板は、左右に並べられていたが、その間を埋めるように円形テーブルが置かれている。
その隙間には、イズラエル兵やアラビ人兵たちが警備に立つ。
85式12、7ミリ重機関銃を中心に、PMCと民兵の部隊は、塹壕線に配置されていた。
彼等の手前には、プラスチック製ケースや土嚢に瓦礫などが盾代わりに置いてある。
また、汎用機関銃や敵から滷獲した銃器なども、大量に並べてある。
「はあ、敵の武器と味方の武器を集めたが? かなりの数だな」
「グレネードランチャーも、かなり持ってきているわね?」
ナタンとメルヴェ達は、PMC部隊に混ざり、左側にある防弾板の裏側に立っていた。
二人の目には、チィーナ製、87式自动榴弹发射器が、ズラリと並ぶさまが映る。
「あの穴からも、兵士が行ったり来たりしている?」
「きっと、伝令や支援に来ているのよ」
黒人兵士やアラビ人兵士たちが、戦闘中に吹き飛ばされた地下道からは、色々な者が出入りする。
二次大戦中の小銃を持った民兵、短機関銃を背負うPMC要員、爆弾を両手に持つチィーナ兵など。
雑多な人種と兵隊たちが忙しいそうに、動く姿が、ナタンとメルヴェ達の目に映る。
こうして、物資や武器が運ばれてくる度に、塹壕線やバリケードは強化されてゆく。
「ミネラルウォーターは、いかがですかな?」
「さっきのグレネー? あ、いえ? ありがたく受けとるわ」
「貰っておくよ、ありがとう」
AIMを背負った、デジタル砂漠迷彩を着た、アラビ人兵士が、透明なボトルを持ってきた。
メルヴェは、癖毛な黒髪で、チョビヒゲを生やした、褐色肌の彼を見ると呟く。
「ワリード・カリーリー、サウジ軍兵士だ?」
「メルヴェ・ペケル」
「ナタン・ラ・フォンテーヌ」
ワリードと名乗るアラビ人兵士に、ナタンとメルヴェ達も名前を告げる。
「レジスタンス、いやっ? 民兵か?」
「レジスタンスだったけど、今はPMCに協力しているわ」
「色々と、ワケ有りでね…………」
二人に話しかけてきた、ワリードだったが、ナタンとメルヴェ達は答えに困る。
レジスタンス仲間と連合軍コマンド部隊から、スパイ容疑を掛けられたからだ。
その後、二人は帝国兵に助けられ、仕方なく逃亡しながらPMCに合流した。
こう言った、面倒な経緯と理由があるから、彼には話せないのだ。
「まあ、部隊とか、ごちゃ混ぜに鳴っているからな? ここには人種や組織が複雑に絡みあった、正に連合軍が布陣しているからな?」
そう言いながら、ワリードは辺りを見回す。
「その通りね、顔の色も多様? 服装も実に多様だわ」
「部隊展開が、混戦が続いた事で、おかしくなっているんだろう」
「ワリード、スナイパーグレネードを持ってこいっ!」
「屋上に行くぞっ!」
メルヴェは、辺りを忙しなく走り回る兵士たちを見ながら何気なく呟く。
ごちゃ混ぜに編成されていく、連合軍部隊を、ナタンは考察する。
そんな中、仲間のアラビ人兵士たちに、ワリードは名を呼ばれた。
「分かった、今行くっ! じゃあな、二人とも、神の加護があらんことをっ!」
「貴方にも、幸運があることを祈ってるわ」
「そっちも無事でいてくれよな」
ワリードは、笑顔で二人に別れを告げると、急いで走り出す。
そして、近くの円形テーブルに置いた、LG5Sスナイパー・グレネードランチャーに近よる。
その背中には、灰色に塗装された、フリッツ型ECHヘルメットが腰から、ぶら下がっていた。
ナタンとメルヴェは、去りゆくアラビ人兵士を見送る。
それから後、暫くはBNPビルで戦闘は行われなかった。
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