ZILー157トラックは、車体を揺らしながら路上を走っていく。
その幌内では、ナタンとメルヴェ達が並んで、外に広がる景色を見ていた。
「いよいよ、敵の要塞に突入か…………」
「ここから先は、敵の陣地よ?」
ナタンとメルヴェ達を含むレジスタンスと、連合軍コマンドー部隊からなる、変装潜入部隊。
彼等は、要塞みたいに聳え立つ、鼠色の警察署手前まで近付いていた。
GAZー67ジープ、ZILー157トラック等は、低速で走っていく。
これらの車両は、警察署・地下車両保管庫へと繋がる入口に到達して、中へと進んで行く。
そこでは、帝国警察隊員たちが、大量に待ち構えて居るのであろう。
だが、敵が警戒している警察署内部に侵入した、二台の偽装車両は難なく潜入することができた。
「何処の部隊だ? 第三小隊の増員は、まだ来る時間では無いぞ」
「いやぁ~~アレだよ? 補給部隊として、我々は来たのさ」
GAZー67ジープを止めた、警察隊員に、何処の所属だと、ギデオンは聞かれた。
すると、彼は平然と嘘を話して、敵を欺こうと試みる。
「ふむ、補給物資の送り先は分からんから署長室に行くと良い…………それから署長に話は直接してくれ、さあ行ってよし」
「ああ、有り難うなっ!」
帝国警察隊員に対して、帝国警察下士官に化けた、ギデオンは礼を言う。
次いで、GAZー67ジープを走らせると、駐車場の端に停車させた。
もちろん、ナタン達が乗った、ZILー157トラックも、その後ろに停車させる。
その中から、潜入工作員として、彼等が飛び下りる。
こうして、出てきた全員が、帝国警察隊員に変装している。
「全員、気を引き締めろよ、ブツは危険な物なんだからな」
「そうだ、間違って、落としたりするなよっ!」
士官服姿に、顔を布を巻いて隠した、ウェストと、素顔のままであるハキム。
二人は、ナタン達レジスタンスの潜入工作部隊を、先導する。
彼等の言うブツとは、C4爆弾を意味しているが、警察隊員たちは武器弾薬だと思っただろう。
危険物を扱う、補給部隊員たちが喋っているように聞こえるからだ。
例え、肌が浅黒くとも、堂々としていれば、何ら問題はない。
何故なら、帝国では上流階級の人間や軍高官などに認められた、アラビ人兵士が多数存在している。
兵士として戦闘力が高かったり、医療技術を持っていたり、容姿が美しい者達だ。
それ故、肌が黒いと言う理由だけで、下手に因縁を着ければ、上が黙ってないだろう。
と言うわけで、黒人兵士やアラビ人兵士とは言え、二人は誰にも怪しまれる事がなかった。
ギデオン達は、先に上階に上がってお、司令塔として機能する、通信室に向かっていく。
他にも、武器庫・署長室などと言った、三ヶ所を爆破することが、彼等の狙いだ。
一方、ナタン達は、各車両や建物全体に、爆薬を仕掛けることが任務だったが。
予想より敵の数が多かったことで、彼等は予定を変更しようとした。
「ハキム、上から先に仕掛けようぜ、駐車場はダメだ」
「分かった、三階から行くぞ」
ウェストとハキム達は、敵の多い駐車場から計画を大きく変更した。
こうして、三階に行って、上から順に爆薬を仕掛ける事にした。
「俺、ナタン、メルヴェ、ハーミアン、ハルドル」
「ハキム、レギナ、ティエン、リュファス、サビナ」
ウェストとハキム達は、二組にチームを分けて、一階・二階に向かう人選を行った。
「良いか、計画通り建物の四隅に俺達は爆薬を仕掛ける、これで警察署内を混乱させるんだ」
「じゃあ三階は任せたぞ、俺達は二階に行く」
ウェストとハキム達は、仲間を率いて廊下を進んでいき、階段を上がる。
「みんな、ついてこい…………」
ハキム率いる、チームは二階に行ってしまった。
「また、別れるぞ」
さらに、階段を上った、ウェスト達は爆薬を仕掛けるため、再度二組に別れて行動しようとする。
「ナタンとメルヴェ達は向こうに行け、俺達は通路沿いに仕掛けるからな」
ウェストは、懐から小箱を幾つか取り出すと、何気なく鼠色の廊下で、壁際に置いた。
一見すると、この様子は誰かが、点検を行うために作業しているように見える。
「分かった、じゃあ僕らは行くよ」
「あっちは任せてねっ!!」
ナタンとメルヴェ達は、ウェスト達から離れて、薄暗い警察署内の廊下を歩いた。
「全て終わったな…………」
署長室に、C4爆弾を設置し終えた、ギデオン率いる連合軍コマンドー達。
彼等は、当初の目的を達成したことで、任務を終えたと判断して帰投しようとする。
「モニカ、クラーク、下に行くぞ」
「分かったわ」
「了解っ!」
ギデオンの命令に従い、連合軍コマンドー達は返事をすると、彼について行く。
一人は、南アルメア系である、モニカと呼ばれる女性コマンドだ。
SIG、540ライフルを背中に抱えながら、彼女は歩く。
もう一人は、ヒンド系であり、クラーク呼ばれた男性コマンドだ。
INSASライフルを担いで、彼も堂々と廊下を進んでいく。
「ギデオン、こっちも完了したぞ」
薄暗い廊下を歩いていた、ギデオン達三人の前方から、仲間達である二人組が現れた。
「ブルーノ、ベッキー、ここはもう良い…………立ち去るぞ」
ギデオンは、向こうから現れた男性コマンドをブルーノと呼ぶ。
その少し後ろを歩く、女性コマンドは、ベッキーと言われた。
二人に対して、彼は任務完了したので、直ぐにここを去ると伝えた。
顔を布で隠した、南太平洋系のブルーノは肩にFNCを担いでいる。
白人系のベッキーは、C7LSW分隊支援火器を両手に持っていた。
彼等五人が、廊下を足早に歩いて行くと、向こうから、二人の警察隊員が現れた。
「おっ! あんた等は新しい隊員達か?」
「へぇ~~貴方達がねーー?」
「いや、我々は補給物資の搬入に来ただけだよ、書類を署長室に届けたから仕事は終わりさ」
前方から来たのは、第三小隊に属する、レオとミア達であった。
二人は、新しい仲間かと期待して、ギデオン達に声をかけたが、その期待は直ぐに否定された。
「そうかい…………分かったよ、邪魔して悪かったな」
「じゃあね~~」
「では、これにて失礼させて頂く」
落胆する、レオとミア達だったが、二人は別れを告げながら歩きだす。
そんな彼等を気にせず、ギデオンは何食わぬ顔で、横を通り過ぎて行く。
「今の奴、何処かで見たような記憶が…………」
「はぁ、そう言われれば、何処かで…………と言うか、キーランに似てなかったか?」
ミアは、通り過ぎた連中の方に振り向きながら、不意に呟いた。
それを聞いた、レオも今通り過ぎた、下士官が、かつての友キーランに酷似していると思う。
「まさか、彼も洗脳されて、別部隊に?」
「可能性は有るな? 後で調べて見よう、データベースを探れば、何か分かるかもな」
まさかと思う、ミアとレオ達だったが、彼等は話し合いながら曲がり角を通った。
すると、そこに更なる偶然が、二人の前に訪れた。
「う…………」
「はあっ!?」
「ナタンッ!」
不意に、曲がり角から現れた警察隊員が、無言で、二人の右脇を素通りしようとする。
だが、レオとミア達は、彼の顔を見逃さなかった。
その顔が、幼馴染みである、ナタンだったからだ。
「…………いえ、違います、私は先を急いでいるので行かせてもらいます」
ナタンは、何とか誤魔化そうと、平静さを保ちながら離れようとする。
こうして、二人から逃れようと、彼は顔を合わせず、早々に立ち去ろうとした。
だが、もちろん、そう簡単に上手く逃げられるはずが無かった。
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