建物の脇を密かに進む、帝国警察・第三小隊。
「あまり、窓には近づくなよ? 狙撃兵や敵戦車が狙っているからな」
「さっきの奴は、炎上しているわ? 戦闘で殺られたのね? けど、近くに別な戦車が居るわよ」
不用意に近づけば、隣や周囲の建物から狙われてしまうと、レオは仲間たちに注意する。
そんな中、外を警戒しながらミアは、MPiーAKー74Nのサーマルスコープを覗いた。
楕円形のカントリー・プラザ・BNP・PFビル付近には、敵機甲部隊が展開している。
彼女が言う通り、先ほど柵を破壊しつつ三人を狙っていた、ストーマー30歩兵戦闘車は黒焦げだ。
だが、その代わりに、深緑色に塗装された、FV101スコーピオン偵察戦闘車が戦っていた。
三台からなる軽戦車部隊は、ロキヨーム通りから、76ミリ、カノン砲を撃っている。
相手は、おそらく味方の機甲部隊だろう。
「うわわ? 今のはレギナか? 撃破したぞっ!」
「次もっ!?」
「もちろん、プロダクト54を撃ち込んでやったわよ」
三台のFVスコーピオン偵察戦闘車は、次々に徘徊型自爆ドローンで破壊される。
しかし、連合側も何も用意していない筈もなく、航空部隊を飛ばしてきた。
「リトルバードだっ!」
「伏せろっ! 機銃弾が飛んでくるっ!」
「対空武器は無いの? はっ!」
「ふ…………」
アルメア軍・特殊部隊で使用される小型ヘリ、リトルバードが、プロペラ音を激しく鳴らす。
上空から飛来した、八機編成の飛行隊は、タンカラーに塗装された機体から機銃を撃たない。
レオとミア達は、咄嗟に身を伏せて窓から離れたが、ベーリットは反応が遅れた。
しかし、彼女を庇って、サナダが覆い被さるように床へ伏せた。
直後、敵ヘリの両脇に搭載された、ミサイル・ボックスから弾頭が発射された。
「上の階が、丸ごと殺られた…………」
「次は、RPGー7だっ!」
やはり、連合側は罠を張っていたらしく、建物上階をミサイルで吹き飛ばした。
それに合わせて、向かい側の建物からRPGー7が、一斉発射される。
「うわっ! 一斉に来たぞっ!」
「ベーリットは無事か? サナダ、よくやった」
「はい」
「それより、ヘリが逃げていくわ」
こちらのビルに当たる、RPGー弾頭に焦るレオは叫んでしまう。
カルミーネは、爆風が吹きすさぶ中、ベーリットの安否を確認する。
サナダは、彼に短く答え、ミアはヘリ部隊の飛びさってゆく姿を見る。
警察隊員たちを攻撃したのは、ボーイングAHー6と言われるリトルバードを発展させた無人機だ。
一旦、帰投した後に再び対地ミサイルを積んで戻って来るかも知れない。
そう考える警察隊員たちは、急いで何とか対応しようとする。
「レギナ、ドローンは?」
「ダメね、撃ち落とされたか、電波妨害かは分からないけど、使えないわ」
「コイツは、不味いっ! おっ?」
「取り敢えず、撃ち返せっ!!」
ミネットは、複数の蔦で作成した囮《デコイ》を、少し離れた位置に作りまくる。
そして、レギナに対して、プロダクト54を射ってくれるように頼むが、無理だと言われた。
とにかく、反撃しないと不味いと思った、ソムサックは両腕に搭載した短機関銃を撃ちまくる。
そんな彼の頭に、ガツンッと狙撃銃による精密射撃が飛んできた。
ヴラウリオも、両手だけを頭上に掲げて、セトメ・モデロLを乱射する。
「狙撃手が居るっ! たぶん、あの向こうの丸っこいビルか、手前のビルからだ」
「あんな遠くに…………今はマークスマンライフルしかないわ」
「専用の狙撃銃は、置いてきてしまったしな? 今あるのでも充分に戦えるが、このRPGの数じゃあな」
「確かに、RPG射手も厄介だしな」
「私の囮《デコイ》も、殺られまくってますわ」
防弾ヘルメットの眉間を撃たれた、ソムサックは再び斜め上から射撃を浴びた。
それ故、飛んできた方角から楕円形ビル・もしくは手前のビルに狙撃手が居ると判断した。
もし、楕円形ビルから撃たれた場合、マークスマンライフルの精度では、太刀打ち出来ないだろう。
射程距離や狙撃精度などを考慮して、そう言った点から、ミアは無理だと思って呟いた。
レオの背負っている、H&K、G3SG/1でも、狙撃手と戦う事は可能だ。
だが、RPG射手達による猛攻と、狙撃手による精密射撃を前に、彼は何も出来ないのだ。
それに、おそらく狙撃手も、一人では無いだろう。
また、今は耐熱遮光フィルムも無いため、サーマルスコープに映ってしまう。
イェスパーも、MgM /07軽機関銃を撃とうとしたが、今は不味いと身を潜める。
その間、シモーネは分身である案山子を遠隔操作しながら狙撃を受ける。
「クソ、どうにか成らないのかよっ!」
「いや、味方の射撃が開始されたわ」
「グレネードだっ! まだ生き残りが居たんだっ!」
「こっちも、撃ち返してやるんだ」
多数発射されるRPGー7の弾頭に、レオは歯がゆそうな顔をしながら反撃する機会を伺う。
そうして待っていると、ミアは突然上階から聞こえた射撃音に歓喜する。
しかも、その中には一丁だけだが、グレネードランチャーがあるらしく、ポンッと妙な音が鳴る。
それを聞いて、カルミーネはベレッタMX4を撃ちまくった。
イェスパーも、Mg M/07軽機関銃を窓から勢いよく乱射させまくる。
「今の内に、移動してくれ…………俺、ミア、ソムサック、オルツィは援護で残る」
「私が今から幻影魔法で、虹色モザイクを仕掛けますっ! これで、敵から部隊は見えないでしょうから何人か進んで下さいっ!!」
「分かった、行くぞっ! イェスパー」
「了解した、行くしかないってかっ?」
H&K、G3SG/1を構え、レオはRPG射手を向かい側のビルに探す。
また、オルツィは幻影魔法により、一階の窓全てに虹色モザイクをかけた。
これにより、こちらの動きは分からなくなったが、代わりに目映い光が非常に目立つ。
なので、廊下を走る味方部隊はRPGー7による猛烈な攻撃を受ける。
それでも、先に進むしかない、ヴラウリオとイェスパー達は、ひたすら走ってゆく。
そうして、渡り廊下まで向かって行った、彼らは一先ず身を隠す。
「まだ、安心できないわよっ! シモーネ、案山子を渡り廊下にまで移動させてっ!」
「分かったわ、やって見る」
音が鳴らないように風刃魔法を放つ、ミネットは渡り廊下を怪しんだ。
彼女に言われた通り、案山子を移動させた、シモーネだったが。
「うわっ! やっぱり、爆発したっ!」
「地雷か、レーザーセンサー式の爆弾だわ」
「それだけじゃない、たぶん大勢で渡れば、そこを狙って、より威力のある爆弾が起爆されるだろう」
「なら、どうする? ここは一階だが走って向かい側に行くか?」
「止めとけ、地雷は敷地内にも埋めてあるだろう」
遠隔操作で案山子を走らせた、シモーネは驚き、ミネットは冷静に何が爆発したか考察する。
ヴラウリオは、より大型爆弾が設置されていることを考え、下手に突撃できないと思う。
イェスパーは、強行突破を考案したが、カルミーネは別な罠が仕掛けられていると警告した。
「…………私が、地雷原を突撃します」
「ダメだ、女性に行かせられるかってんだ」
「格好つけてないで何か? うわっ!」
「味方の迫撃砲だっ!」
シェラが窓から飛び出ようとしたが、全力で彼女の腕を掴んで、カルミーネは止めた。
そんな彼に呆れつつ、ベーリットはAGー3を構えて射撃を行おうとした途端、急に爆発が起きた。
イェスパーは、斜め上から降ってくる砲撃に、味方の砲兵部隊による支援が始まったと思った。
「建物が、アチコチ吹き飛んでいるわ」
「RPG射手も、かなり減っただろう?」
「しかし、地雷原や渡り廊下は? はっ! 魔法を使えば…………」
向かい側の建物が、上から降り注ぐ砲弾により、上階から崩落するさまを見て、シモーネは呟く。
カルミーネは、敵が放つRPG弾頭が減ったことに気がつく。
ミネットは、地雷原を破壊するためには、自身が全体魔法を放てば良いと考えた。
「地雷原は、厄介だ? ソムサックやシェラの鎧でも、ぶっ飛んでしまうかも知れないからな」
「だから、雷撃魔法を撃つわっ!」
ヴラウリオは、セトメ・モデロLを何発か撃ちながら地雷原に潜む爆発の威力を警戒する。
それを纏めて、破壊してしまおうと、シモーネは雷撃魔法を両手から広範囲に放った。
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