地下道の奥へと進む、レオとカルミーネ達。
彼等の両脇には、いくつか死体が、紅黒い血を撒き散らしながら倒れていた。
「レジスタンスの死体だ、俺達以外にもスパイが居たから、そいつが全部殺したのか?」
「凄い奴だ、この死体はマガジンを取り替えている間に、首を切り裂かれている…………」
爆発物など、ブービートラップが仕掛けられているかも知れないことを考慮しながら進む、二人。
こうして、死体を触る事なく、離れた場所から観察する、レオとカルミーネ達。
「こっちのは頭に、二発も喰らっている? コイツは心臓を一突きだ?」
「相当な戦闘力だな? 数人を相手に、ここまでやるとは…………」
精確な射撃技術、高い戦闘力、敵よりも素早い動き、一切の迷いなき行動力。
味方スパイが、確かな実力の持ち主であることを理解する、レオとカルミーネ達。
二人は、剥き出しのゴツゴツとした岩壁が続く、地下道を、さらに奥へと進んだ。
その前に、急に障害物として、たくさん岩石が現れた。
「駄目だな、恐らくは戦闘中に崩れたのだろう…………手榴弾の爆発で、ここは崩落したのか?」
「向こう側から攻撃されたのか? それとも、もう一人のスパイが通ってから崩れたのかな」
レオとカルミーネ達は、崩れた瓦礫の山を、隅から隅まで調べるてみるが。
どこにも、通ることが出来そうな隙間は、発見できなかった。
「仕方無いな、来た道を戻って、別ルートで外を目指すぞっ!」
「それしか道は無いね、じゃあ戻ろうか」
周囲に、道は無いと判断した、レオが踵《きびす》を返し、部屋の方へと歩いて行く。
その後を追って、カルミーネも足早に着いていった。
「奥には、またドアか?」
「まあ、行こう…………」
先程、格闘戦を繰り広げた部屋の奥にも、長い廊下が続いておる。
その奥には、やはり木製ドアがあった。
それを発見した、レオとカルミーネ達は、木製ドアを少しだけ開く。
次いで、罠が仕掛けられていないかと、慎重に調べる。
何も不審な物が無い事を、二人は確認した。
彼等は、出口を探しつつ、ドアの向こう側へと進んで行った。
奥には、まだ剥き出しの岩壁が続いている。
その所々にある部屋には、武器・弾薬などと言った、爆発物が詰め込まれていた。
おそらくは、これ等も、レジスタンス達が用意した、武器の備蓄庫だと思われる。
そんなスズメバチの巣穴みたいに、岩盤をくり貫いて作られた地下道を、二人は通る。
そんな中、彼等の耳に、激しい銃撃音が聞こえてきた。
「戦闘だ…………救援か? 早すぎるな?」
「レオ、とにかく音のする方へ急ごうっ!」
途切れる事なく続いてくる、銃撃音の正体を掴もうと、レオは駆け出す。
音の聞こえてくる前方に走り出した、彼は急いで確かめに向かう。
カルミーネも後を追って、ワーウルフ姿となって、四つん這いで走る。
やがて、二人が長い地下道を通り抜けると、銃撃音の正体が発見した。
そこには、広いトンネルのような空間がある。
また、そこで防御陣地を構築した、レジスタンス達が、激しい抵抗を行っていた。
「撃て、撃って、撃って、奴等を近づけさせるなっ」
「分かっているっ! だから撃っているんだろうが?」
防御陣地と言ってもだが、大した物が設置されている訳ではない。
広い空間の左右に、土嚢を中心にドラム缶と鉄板を寄せ集めただけの簡易的な物があるだけだ。
その後ろに、二つの木製の見張り台から機銃陣地を構えてある。
ここから、レジスタンス達が応戦しているだけであった。
しかし、レジスタンス側は、正面にバリケードとして、冷蔵庫や事務机を配置していた。
さらに、その前面に鉄条網を敷いて、有刺鉄線により、敵が進軍することを阻んでいる。
それにより、救援に駆けつけた帝国側部隊は、曲がり角から、身動き出来ずに様子を伺っていた。
レオとカルミーネ達は、それを敵側の防御陣地よりも背面から見ていた。
「うへぇ、三脚に設置した機関銃が三つに分隊支援火器手が二人」
「かなりの火力だ、こちらは制圧射撃すら出来てない」
レオは、後ろの見張り台から連続射撃を行う重機関銃手を睨む。
次いで、それらを険しい表情で眺め、どうしようかと思案する。
左側から、帝国側部隊に機銃掃射を続ける、レジスタンス達。
土嚢裏から、高火力で横凪に機銃掃射しまくる重機関銃手。
右側から射撃を途切れ事なく続ける、二人の分隊支援火器手。
カルミーネも、周りの短機関銃や、マークスマンライフルを手に持つ、レジスタンス員を観察する。
さらに、アサルトライフルで弾幕を張る、レジスタンス員たちを睨みつける。
「キャリバーM50に、MINIMIか?」
「それに、周りのマークスマン、サブマに、アサルトも邪魔だね」
レオとカルミーネ達は、幸いにも、射撃手達の背面に隠れていたことで、まだ見つかってはいない。
それから、二人は物音を立てずに近づき、ある程度の距離まで来ると銃を構える。
「手榴弾は無いからな」
「仕方無いさ」
二人は狙いを定めると、レジスタンス側に後ろから、息を合わせて奇襲攻撃を仕掛けた。
レオのワルサーMPによる銃撃は、右側に位置する重機関銃手を前のめりに倒す。
そして、奴を見張り台に備えてあった機銃下の鉄板に凭れ掛からせた。
その横で、ベレッタM12を一気に乱射した、カルミーネ。
彼の銃撃も、土嚢裏から撃っていた、分隊支援火器手を一人殺害し、もう一人を負傷させた。
「後ろからもっ? 敵はどこだっ!」
「あいつ等だっ! 撃ち殺せっ!」
こちらの存在に気がついた、レジスタンス達は、何人かが銃を発砲してくる。
サブマシンガン、アサルトライフルなどの銃弾が飛んできた。
それで、二人は即座に動き、今来た道に戻ると、曲がり角に身を隠す。
「奴等、撃ってきやがったぞ…………厄介だな」
「アレだけ、多数の銃弾は流石にね?」
曲がり角からの裏から、反撃してきた防御陣地がどうなっているか様子を伺う、レオ。
また、後ろで、カルミーネは、ベレッタM15に替えの弾装を装填する。
彼等に気を取られ、火力が低下した、レジスタンス達の隙を、帝国側部隊は見逃さなかった。
「やっと来たか…………前進しろ、奴等を殲滅するっ!!」
帝国側の野戦帽を被った、下士官グールは、大きな声で叫ぶ。
増援部隊が、到着したと同時に、彼は前進命令を部下へと下したのだ。
すると、帝国側部隊は、スモークグレネードを数個地面に転がした。
こうして、地下トンネル内に、白い煙幕を炊くことで、それにに紛れて前進を開始した。
「オーガーを前へ、シュバルツ・リッターもだっ!」
彼等は、重武装兵オーガー・重装甲兵シュバルツ・リッター達を、前面へと押し出す。
こうして、じりじりと、レジスタンス達が待ち構える防御陣地に迫る。
「奴等が来るぞっ! 駄目だ、間に合わないっ!」
「いや、絶対に近寄らせるなぁーーーー!!」
レジスタンス側も、バリケードを突破させないため、重機関銃の火力を帝国側部隊に集中する。
「いやっほぉ~~~~! わーーいっ!!」
そんな中、煙に紛れて進む、帝国側部隊の中から、場違いな少女に見える青いピエロが現れた。
青いラバースーツ、ピエロ帽子に涙目のメイクを施された真っ白い顔。
両足には、巻き付けた紐に、幾つものスローイングナイフを仕舞っている黒鞘を帯刀していた。
「キラキラッ! キラキラッりーーんっ!?」
ピエロ少女らしく、両手の五本ゆびに、スローイングナイフを挟みながら取り出す。
すると、魔法でも相手に掛けるかの如く、笑顔で元気良くレジスタンス達へと、駆け出して行った。
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