「うああぁぁーーーー!!」
ガタガタ、ガタッと柩の鉄蓋が開かれ、それが床に落ちる音が周囲に響き渡る。
そして、柩の中から咆哮を上げて、誰かが身を起こした。
それが何者かと驚いたまま、体を動かすことが出来ない、ナタンとメルヴェ達。
二人は、黙って身を起こした、謎の人物に目を向けていた。
「う、う~~んーー? 良く寝たと…………」
柩から現れた、人物のシルエットを警戒しながら、二人が眺める。
当の謎に包まれた人物だが、頭には、獣耳が生えており、手には鋭い爪が見えた。
その正体は、何と帝国軍・強襲兵である、ワーウルフであった。
ナタンとメルヴェ達は、いきなり現れた、帝国強襲兵の顔を注意深く凝視する。
彼女は、ブライト・ゴールド色に輝くロングヘアーに、ブルーワルツ色の瞳を持つ。
また、黒茶色をした犬鼻をを持ち、大きな薄青い唇からは、鋭い刃のような犬歯が覗いていた。
そして、正面に立つ、女性ワーウルフは帝国側のアンデッドにしては珍しく、薄浅黒い肌だった。
また、青いウェットスーツに身を包んだ、女性兵士らしかった。
装備は、胸元に右肩から左脇腹へと斜めに掛けて、黒灰色のスリングベイルを下げている。
それは、左手のビィチャージ短機関銃に繋がれていた。
腹には、左右・三本ずつ、合計六本の弾帯が、備え付けられた黒灰色ベストを着ていた。
右足には、マカロフPM用の拳銃レッグホルスターがあった。
左足には、柄付き手榴弾の弾帯が三つ付いたレッグホルスターを着用している。
また、両足には、黒灰色のタイツを履いていた。
そして、彼女の装備する、ベスト、ホルスター、タイツだが。
コレ等は、ベルトで全て繋がっており、それら装備は、扇情的な下着のようなデザインであった。
「おや、君達は仲間かな?」
「そう…………だ、現在警邏《けいら》中だ」
「私達は、ここを通って警察署まで戻りたいのよ」
女性ワーウルフは、正面に立つ、二人の姿を寝惚け眼に入れる。
すると、二人に、右手で右目を擦《こす》りつつ質問してきた。
その扇情的な姿と美貌に見とれていた、ナタンは一瞬だけ、口ごもって答えるが。
それを横から見逃さなかった、メルヴェは彼の脇腹を肘で、グイッと突っついた。
「フフッ! あんた達さあーー? 見ない顔だけど? ウチ等とは別の管轄の警察官だね、まあ良いわ? どうぞ、お通りになって…………」
ナタンが横に立つ、メルヴェに渇を入れられる様子は、女性ワーウルフに取って面白かったようだ。
彼女は、にへら~~とした笑みを浮かべつつ、二人に話しかける。
「…………っと思ったけど、あんた達からは何か帝国とは違う匂いがするわね…………クンクン? あっ! これはテロリストの匂いだわっ!?」
鼻に、神経を集中して、微かな匂いを嗅いで見た、女性ワーウルフは気づく。
帝国警察に変装している、ナタンとメルヴェ達の正体が、レジスタンスであると。
彼女は、墳墓内中に響く大きな声で叫ぶと、近くに設置された、柩の蓋が外れる。
そして、中からガタガタと蓋を揺らしつつ、三名の帝国警察隊員が姿を表した。
「いや違う、僕等はっ!?」
「テロリスト何かじゃないわよっ!?」
「なら、何で変な匂いがするのかなぁ~~?」
ナタンは、顔を真っ青にして、言い訳を言って誤魔化そうとした。
また、メルヴェも必死で違うと言って、両手を振りまくるのだが。
そんな二人の弁も虚しく、女性ワーウルフは犬鼻をヒクヒクと動かして匂いを嗅ぐ。
こうして、下手な嘘には、騙されないよ、と言うような表情を顔を浮かべる。
その背後には、石蓋をずらし、ユラ~~りと立ち上がる、帝国警察隊員たちによる影もあった。
一人は制帽を被った、下士官服のバクテリエラー・ゾルダートだ。
他は、制帽を被った、ヴァンパイアとトーテン・シェーデル・ゾルダートだ。
三人とも、まるで、ホラー映画に登場する墓場から出てきたばかりのゾンビ見たいであった。
もっとも、彼等は帝国により製造された、アンデッド兵では有るのは間違いないが。
「マリールイーズ…………敵か?」
「何々? 敵?」
「敵なら殺すだけだ…………」
顔に、背中と左腹へと続く黒い蛇腹ホースの付いた、ガスマスクを付ける帝国軍兵士。
彼は、左腹にも、四角い細菌保存用の装置を身に付ける。
その正体は、下士官服を着た、白髪バクテリエラー・ゾルダートだ。
彼は、味方に変装した、ナタンとメルヴェ達をのテロリストではないかと警戒する。
そして、ビィチャージ短機関銃を二人に向ける、女性ワーウルフの名を呼んで、敵かと声を掛ける。
そして、身体を揺らして首を曲げる、銀髪のヴァンパイアは敵が居るかと聞いてきた。
彼は、薄ら笑いを顔に浮かべつつ、腰のベルトに幾つも、ぶら下げた短剣の鞘に手を伸ばす。
そして、小さく細い銀色のスローイングナイフを取り出す。
ベルトリンクシステムが付いた、MG3汎用機関銃を、帝国軍兵士は柩の中から取り出す。
彼は、険しい目を向ける、灰白髪のトーテン・シェーデル・ゾルダートだ。
また、敵だと知らされた彼も、二人へと非常に重たい銃とともに、威殺すような鋭い眼光を向ける。
「んっ? そだよ、敵だわっ! コイツらは味方に変装してるけどねぇ~~? バレバレなんだわ」
「そうか、なら遠慮は要らんな…………」
マリールイーズが、仲間達に敵が変装しているんだと答える。
すると、バクテリエラー・ゾルダートも、KSー23S散弾銃を構える。
こうして、ナタンとメルヴェ達に、太い銃口が向けられる。
『…………ヤバイッ!? どうすれば…………』
『…………このままだと撃ち殺されるわ…………』
正体がバレてしまい、絶対絶命のピンチに、何も言えずに立ち尽くす、ナタンとメルヴェ達。
しかし、二人の背後からも、誰か三人が歩いてくる足音が聞こえてきた。
「待て、本当に味方だ…………これを見ろ?」
「そうよ、私達は警邏の途中で発見した捕虜を連れて行く処だったの」
「…………」
後ろから出てきたのは、何と帝国警察に変装した、ハルドルとレギナ達であった。
そして、彼等から背中に銃を突き付けられて、顔を床に伏せているのは、ウェストであった。
彼は、両手を背中に回して、手錠をされた振りをしていた。
「奴等の拠点を偶然発見してね? 襲撃した後に生き残ってた、コイツを捕まえたのよ」
「長時間、コイツ等の拠点を捜索していたから匂いが付いたのかも? それと、コイツ以外は皆殺しにしたから、情報はコイツからしか取れないから連行中って訳だよ」
敵の匂いが漂う理由は、長時間、相手方が潜伏する隈無《くまな》く拠点を捜索していたからだ。
そう上手く言い訳をする、レギナとハルドル達。
「そう、それなら、別に敵の匂いがしても可笑しく無いわね? でもさ…………その銃は何なの?」
「同じ帝国の警察官にしては、お前達は珍しい銃を持っているな?」
マリールイーズとトーテン・シェーデル・ゾルダート達は、言い訳を聞き入れない。
また、さらなる質問を、ナタン・メルヴェ・ハルドル・レギナ達へと問い掛ける。
その背後では、スローイングナイフを何時でも投げ飛ばせるよう、ヴァンパイアが睨みを効かせる。
奴は右腕を高く掲げて構えており、銀色に光る小さな刃が見えた。
そこから左隣では、トーテン・シェーデル・ゾルダートが、MG3をじっと構えている。
そうして、こちらの出方を、連中は伺っていた。
「ああ、これね? これは私達は他の地域から赴任したばかりでね、だから貴方達とは装備が違うのよ」
「僕は隣のフランシュから、彼女は遠いティルクから、後ろの彼はスノーランドから、その隣の彼女はポローランドから赴任して来たんだ」
自分達が、一般の帝国警察隊員たちと、装備が違う理由であるが。
それを、メルヴェが適当なことを頭に浮かび上がらせて、直ぐにデタラメを答える。
ナタンも、元々は別地域で勤務していたが、急に異動命令が下り、ここに来たのだと嘘を吐いた。
「なぁんだ~~そう言う訳だったのね~~」
「テロリストの攻撃で、装備と人員が足りなくて困っているのは何処の署も同じか…………」
意外にも、ワーウルフとトーテン・シェーデル・ゾルダート達は、すんなりと真っ赤な嘘を信じた。
こうして、ナタンとメルヴェ達の口から出た、適当な出任せに、連中はスッカリ騙されてしまった。
また、彼等を味方だと完全に信じきってしまった連中は、武器を下げた。
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