「さあっ! …………銃を床に置いて、すぐに降伏しろっ!」
「分かった、降伏するっ! 俺の命はどう成っても良い、だから部下達だけは助けてやってくれっ!!」
長身の士官に脅された、ウェストは仕方なく降伏する事を選択した。
それで、手に持っていた武器を、工場の緑色に塗装された、床上に置く。
そして、彼が装備と予備の拳銃も捨てると、仲間たちも、全員が彼と同じく武器を床に落とした。
「ふんっ! …………黒い獣《けだもの》の分際で、生意気を言いやがってっ!」
長身の士官は叫ぶと同時、部下に目配せをして、秘密裏に命令を下した。
うつ伏せ状態で、ナタンは両手を頭に乗せながらも、長身の士官を凝視する。
『…………彼は…………まさかっ!?』
「行動開始っ!!」
ナタンが見据える、長身の士官は、部下に大声で命令を下す。
彼の背後に控えていた、四名で構成される部下達は素早く動く。
彼等は、左右に展開していた、帝国軍兵士たちを、次々と手に持った銃で撃ち殺してゆく。
「全部片付いたか…………?」
長身の士官は、辺りに転がる、帝国軍兵士たちが死体となっている事を確認する。
そして、緊張を説いたのか、溜め息を吐きながら、ボソリと呟く。
「お前は…………まさかっ!?」
「お疲れ様でした、ウェスト少尉」
地面に伏せていた、ウェストが頭を上げると、長身の士官は、彼を起こすべく手を差し伸べた。
「コードネーム、ステンマシンカービン」
「コードネーム、グリースガン」
ウェストは、旧ブリティア軍で使用された、短機関銃の名前を言った。
対する、長身の士官は、旧アルメア軍で使用された短機関銃に名付けられた、渾名《あだな》を言った。
「やはり、お前が連合軍が送り込んだ、工作員か…………」
「はい、私はとある作戦計画の情報と、支援物資と武器を運んで参りました」
ウェストが彼に尋ねると、長身の士官はローマ式ではなく、額に手をかざす敬礼をした。
「連合軍特殊工作隊所属のギデオン・シーウェルです? お話より先に、まずは死体を片付けましょう」
「ああっ! それはそうだが、何処に隠すんだ?」
長身の士官、ギデオンは微笑みながら、死体を片付ける作業を優先すると言い出す。
それを、どのような方法で死体を片付けるよとするか、それが気になる、ウェストは質問する。
「それは心配要りません、トラックから彼等が出てくれば」
ギデオンが言った瞬間、彼の部下が、ノートPCを操作した。
すると、輸送トラック後部から、機体下部に四本のアームを備えた、ドローンを出現させる。
廃工場内を飛び交う、ドローンは帝国兵を片付けるべく、アームを動かしつつ宙に死体を浮かべる。
また、それを運ぶドローン以外は、支援物資や武器弾薬を下部に吊り下げていた。
こうして、ドローン部隊による効率的で、迅速な作業により、全てが素早く片付いていく。
「これで、アジトまでは楽に帰れますね、道中の変装による敵の欺きは我々にお任せをっ!」
「助かるな、さて、お前ら帰るぞ」
ギデオンとウェスト達に続き、帝国軍兵士に変装した、ギデオンが率いる四人の部下達は歩きだす。
そして、ナタンを含む、レジスタンス達は、アジトを目指して帰路に着く。
「あそこの部屋の梯子から降りられる」
「そしたら、アジトへの帰り道だ」
隣接する隣の工場まできた、ウェストとハキム等は屋内で、最奥に位置する部屋を指差した。
「では、行きましょうか?」
『…………彼は? 何処となくキーランに似ているな? …………』
梯子の存在する部屋を目刺し、ゆっくりと歩いて行く、ギデオン。
彼を背後から、凝視するナタンは昔ともに公園などで遊んだ、旧友の面影を思い出す。
その後、梯子を全員が降りて、ドローン部隊も後に続かせ、彼等はアジトへと戻って行った。
「くっ! かなり、ここは臭うな…………」
先程、激烈な戦闘が繰り広げられた、下水道内を歩く、ギデオン。
彼は、鼻が曲がりそうな程、空間に広がる余りにも酷い臭さに、露骨に嫌そうな顔をする。
「我慢して下さい、私達も出来れば通りたくは無いんですから」
「ああ、臭いに慣れて無くて…………済まないね?」
レギナが、横から不意に言葉をかけると、ギデオンは済まないとだけ短く答えた。
「それより、貴方と何処かで会った事があるかしら?」
「いえ、貴方達と会うのは始めてですが?」
レギナの質問に対して、ギデオンは平然とした顔で違うと答えるが。
やはり、彼はキーランでは無いかと彼女は疑いの目を向ける。
「ナタン…………アイツさ、何かキーランに似てない?」
「うん、僕もそう思うよ?」
ヒソヒソ声で話す、メルヴェとナタン達だが、二人はギデオンの背中を見つめながら怪しいと思う。
彼等は、新たに現れた、連合軍コマンド隊長ギデオンを怪しみつつも、ずっと歩いていく。
下水道内を進み、運良く帝国側部隊とは出くわさず、レジスタンスの秘密アジトへと戻った。
その後。
無事に、アジトの入口にまで、幸いなことに無事、戻って来られた彼等だったが。
入手した、武器・弾薬類を吊り下げた、ドローンとともに中に入ろうとする。
「ここが、入口ですか?」
「一見すると、行き止まりに見えるがな…………」
「ここを押せばね」
ギデオンの短い言葉を聞いた、ハキムとレギナ達は一歩前に出る。
二人は、左右に並んで、灰色のコンクリート壁を力強く押して、ゆっくりと回転させる。
「さぁ皆、中に入るぞっ!」
「あーー! 重かったわぁ」
こうして、偽装された回転式ドアから、アジト内に入ろうとする、連合軍工作員とレジスタンス達。
彼等全員が入ると、最後尾のハルドルとサビナ達は、コンクリート壁を回転させて入口を閉めた。
「さて、もう変装はしなくて良いな、皆服装を替えよう」
「そうですね、隊長殿っ!」
「味方に撃たれるなんて、ゴメンですしね」
そう呟くように指示を出した、ギデオンに従い、部下達は、帝国軍兵士の服装を脱ぎ始める。
皆、味方による誤射は、とうぜん受けたくは無いから、着替えだした訳だ。
それから、トーテン・シェーデル・ゾルダートの格好をしていた、彼等は正体を晒す。
ギデオンは帝国軍士官の服装を脱ぐと、下には白いシャツに青いネクタイをしていたが。
それも脱いでしまうと、さらに下は、白いTシャツを着ていた。
そして、彼は黒いズボンを脱ぐと、下には薄い生地の黄緑色をした、作業ズボンを履いていた。
彼は、瞳から、サイアンブルー色のカラーコンタクトを取り、ゼラニウム色に光る瞳を露にする。
「髪色も脱色しないとな」
そう語る、ギデオンの後ろに控える部下達も、もちろん彼と同じようなラフな格好をしていた。
四人の内、一人は背が高い女性であった。
彼女は、かなり長い茶髪ロングヘアに、カメリア色の瞳で、南アルメア系な顔立ちだ。
彼女は、ワーウルフを猫版にしたような格好をしている。
頭には猫耳を、顔には猫鼻を、口元から犬歯を覗かせていた。
その横に立つ人物は、少し浅黒い肌だ。
癖の強い黒髪を7、3に整えた、南アシュア系な顔立ちで、瞳はクラベット色であった。
彼も、トーテン・シェーデル・ゾルダートみたいに、顔の右半分を赤黒い骸骨が露出していた。
また、後ろに存在する二人の内、右側に位置する若い女性は背は低かった。
栗色ショートヘアで襟足を跳ねさせ、前髪を揃えており、チェリーポップ色の瞳であった。
左側に位置する男性は、南太平洋系の顔立ちで、肌は浅黒かった。
黒髪オールバックに、薄緑色をした草葉が混じり、瞳の色はレッドアップルであった。
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