「ラジオでも聞こうや?」
『ザザッ! ザザーー! …………北欧、バナク空軍基地で、テロリストによる襲撃が発生中っ! 帝国軍駐屯部隊および…………』
廃墟群を走る、トヨタ・テクニカルの中で、アシュア系PMC要員が呟く。
そして、ラジオ放送荷台に居る、ナタンとメルヴェ達にも聞こえてきた。
北欧、フィンマルク県、バナク空軍基地。
ノルウィンの遥か北にある、対ロシャ連邦軍による侵攻に備えて建設された、バナク空軍基地。
ここは、今や炎と黒煙が舞い上がり、大量の航空機が破壊されていた。
「いけっ! いけっ! 駐屯地の兵舎を破壊しろっ!」
「分かってるぜ~~! 突撃ぃーー!」
一台のODグリーン色に塗装された、ケネディジープが猛烈な勢いで、空港を駆けてゆく。
滑走路を悠々と走る、この車両には中央部にあるポールに、M1919重機関銃が搭載されている。
そこから、連合側兵士により、多数の小型ヘリや戦闘機に向かって射撃が行われる。
攻撃用ヘリであるハインド以外は、何度も機銃掃射を受けて破壊されてゆく。
爆発せずとも、機銃弾により装置が壊された航空機は、使い物に成らないからだ。
もちろん、一部は燃料に引火したのか、派手な爆風で吹き飛ぶ。
「滑走路は、向こうの連中が破壊したっ!」
「次は、駐屯地を粉々に破壊してやれっ!」
「よし、弾を込めたぞっ!!」
「撃てっ!」
仲間のケネディジープが、滑走路を疾走するさまを見ていた、連合側部隊。
彼等が乗った、ケネディジープM825は、M40、106ミリ無反動砲を載せていた。
この砲は、火を吹くと遠方にあった戦闘攻撃ヘリ、ハインドを吹き飛ばす。
その後、すぐに彼らは移動を開始して、北西にある、セル・ヴァランゲル駐屯地を目指した。
「ぐはあっ!!」
「ぎゃああああっ!!」
「がはぁ…………」
セル・ヴァランゲル駐屯地にも、大量の迫撃砲により発射された砲弾が降り注ぐ。
対ロシャ連邦軍用に作られた同基地も、帝国支配下となってからは、戦力の増強が計られていない。
迫撃砲の餌食となった、帝国軍兵士と帝国警察からなる部隊は、爆発する建物と運命を共にした。
帝国軍・帝国警察部隊の配下として、他には三つからなる部隊が、基地を警備していた。
セル・ヴァランゲル守備隊・ポルサンゲン大隊・フィンマルク郷土防衛隊などだ。
しかし、今や彼等は瓦礫に埋もれてしまい、ほぼ壊滅状態となった。
こうして、連合側部隊による北欧基地・襲撃作戦は大成功に終わった。
東アシュア・南部、海南島。
ここは島全体が、チイーナ人民解放海軍が使用する海上要塞と化していた。
しかし、かつての城主である人民解放海軍&武装警察に加えて、帝国海軍歩兵部隊が駐留していた。
「YJー83発射用意っ!! 撃てーー!!」
「YJー83発射っ!!」
旅滬《ルフ》型駆逐艦、青島《チンタオ》の艦橋から連合軍アシュア方面艦隊・司令官は命令を下す。
部下である海兵も、同じく復唱すると、四連装発射筒から対艦ミサイルYJー83が発射される。
また、多数の艦艇からも同じように、多数ミサイル弾が発射された。
その中には、ジューポン海上自衛隊で運用されていた、イージス艦である金剛。
オーストレイリア海軍に所属している、防護巡洋艦パラス。
これら、東アシュア・オセアニア地域までの国家から集められた連合海軍艦隊は、北上を続ける。
この大艦隊は、背後に多数、航空母艦と揚陸艦、が控えていた。
航空母艦である遼寧《りょうねい》とカールビンソンを中心とした空母部隊だ。
これらは、軽空母いずも型、軽空母マジェスティック、軽空母シドニーなどで構成されている。
「着弾っ! 全弾が沿岸部の艦艇に命中っ!」
「これも、サイバー攻撃の効果だな…………」
青島の艦橋で、部下から報告きいた艦隊司令官は横目で、チラりと金剛を見る。
かつて、チィーナ人民解放海軍とジューポン海上自衛隊は、南チナ海を巡り敵対していた。
もし、歴史にIFがあるならば間違いなく、この二大海軍は衝突していただろう。
しかし、今や祖国を追われた彼等は、朋友《ポンヨウ》として肩を並べる他ない。
チィーナ&ジューポン、それら東アシュアの海軍は、帝国侵攻時に、運良く脱出に成功した部隊だ。
この艦隊には、ほかにも東南アシュア・オセアニア国家に属する海軍艦艇も参加しているが。
もちろん、東南アシュアや太平洋に展開していた、アルメア・ブリティンなどの艦艇も存在する。
「特殊部隊の上陸と電子妨害も成功か? 次は揚陸艦を前に出せっ!」
サイバー攻撃により、連合軍大艦艇の移動を察知できなかった海南島防衛隊は、大打撃を受けた。
しかも、秘密裏に小型潜水艇により事前上陸していた、フロッグマン部隊も工作活動を開始した。
これにより、海南島では帝国側部隊と傘下に入っているチィーナ部隊が、混乱の渦中に陥っていた。
「報告しますっ! 敵部隊は西側から艦砲射撃を開始しましたっ!」
「何っ! 今すぐ本土に連絡しろっ!」
「ダメですっ! 無線は通じず有線通信もできませんっ!」
連合側・大艦隊は、南洋から海南島を真っ直ぐ進撃してきていた。
だが、偽情報を報告をするチィーナ兵は、連合軍コマンドに属する工作員だ。
それを聞いた、帝国の白人基地司令官は、慌てて部下に指示を出す。
しかし、本土との連絡手段は、既に連合軍が密かに上陸させた部隊によって、全てが潰されていた。
「報告しますっ!! 島に多数の揚陸艇と水陸両用戦車が近づいてきますっ!」
「クソッ! 砲撃しろっ! 何でもいいから迎え撃てっ!」
また、別なチィーナ兵による報告が伝えられると、暗い地下基地内部に司令官の怒鳴り声が響く。
そうこうしている内に、スクリーンには上陸を目指してくる戦車隊が映し出される。
それは、深緑色と黄緑色のデジタル迷彩に塗装された、05式水陸両用歩兵戦闘車が先陣を務める。
背後には、自衛隊や海兵隊使用の水陸両用車AAV7などが続く。
さらに、戦車や機動砲などを積んだ揚陸艦が後を追って海上を進んでくる。
こうして、海南島は、初動対応が遅れてしまい、島に敵部隊の上陸を許してしまった。
「地上部隊からの連絡です…………現在ベトネミから進軍した部隊は、靖西市・崇左市・防城港市などを突破しましたっ!」
「よし、このまま我々は地上部隊と連携して、海南島を落とすっ!!」
ベトネミ方面軍は、次々と旧チィーナ人民共和国との国境線を突破した。
破竹の勢いで、地上部隊は前線に立ちはだかる諸都市を陥落させていく。
この進撃作戦は、多少は侵攻した地域内に、帝国側部隊が残ってしまうであろう事が考慮される。
だが、後方の補給線から潰してしまい、退路を絶ってしまうと言う戦略である。
副官からの報告に、艦隊司令官は益々意気を増し、全艦隊に海南島攻略を通達する。
このようにして、東アシュアから東南アシュアは、地上と海上で激しい戦闘が開始された。
旧テュルクメニスタン・イーラン国境沿い。
ククラブ、バハルデン、ゴーダフ、ギョクテペ、アシガバード、アナウ。
上記の村落から都市部にかけて、連合軍とレジスタンスによる、大規模な侵攻作戦が開始された。
もちろん、連合軍・侵攻部隊の中核を成すのは、イーラン国防軍と革命防衛隊である。
また、その後方には民兵部隊《バスィージ》が、数百万人単位で集結している。
もちろん、革命防衛隊が緊急徴集した、民兵部隊を指揮する。
今、彼等が集結している場所は、コペトダグ山脈の尾根である。
「主砲発射用意っ! 砲撃用意っ! 撃てっ!」
カーキ色の主力戦車カラール、主力戦車ゾルファガール等からなる混成機甲師団だが。
ついに、彼等も攻撃命令が下る。
さらに、GCー45、155ミリ榴弾砲を配置した砲兵隊にも、砲撃指示が下った。
「町の様子は…………」
茶色・白・カーキー等からなる砂漠用迷彩に身を包んだ、野戦帽を被る機甲部隊の司令官。
眼下のオアシスに沿って存在する町に、凄まじい轟音が轟き、赤い炎と灰煙が舞い上がる。
そのさまを、彼は双眼鏡で確認した。
「よし、戦車隊は前進だっ! その後に歩兵部隊と民兵部隊が雪崩れ込めっ!」
司令官は、命令を下すと直ぐに部隊移動の準備に取りかかった。
次は、アシガバード市庁舎に、司令部を設ける算段なのだ。
こうして、彼等が力技で前線を押し上げようとしている間に、秘密裏に特殊部隊が動いていた。
「クリア」
「OK…………」
ゴドス軍と言われる革命防衛隊の中でも、暗殺や破壊工作など、非正規戦を実行する部隊だ。
連合軍が行った、大規模なサイバー攻撃と、彼等による妨害により、帝国側は大混乱に陥る。
帝国軍の送電施設を止めた彼等は、テュルクメニスタン民兵とともに今後も暗躍する。
帝国支配下とは言え、帝国に反感を持つ者は少なくないのだ。
テュルクメニスタン民兵部隊も、市内や村落で武装蜂起して帝国軍・帝国警察に戦いを挑む。
「シュヴァルツ・リッターだっ! RPGを用意しろっ!」
「今用意したっ!」
「やっちまえ、奴らを蹴散らすんだっ!!」
ゴドス軍の指導により、テュルク民兵部隊は提供されていた、RPGー7を四方八方から発射する。
顔や服装を白や赤い布で巻いた、民兵部隊は一般市民と姿が変わらない。
「ぐわああっ!」
「また、いつものテロかっ!」
「いや、違う…………総攻撃だっ! 動く者は何でも撃てっ!」
市内や村落へと砲弾が落下したあと、即座に民兵部隊も建物から出てきて、帝国側を襲う。
帝国側のパトカー、装甲車、シュヴァルツ・リッターなどは、全てがRPGー7弾を喰らう。
RPGーのタンデム式徹甲弾が直撃した、それらは燃え盛り、空に黒塵と灰煙を舞い上げた。
対する帝国側部隊は、建物の屋上やマンホールから襲撃を受けたことで慌てだす。
帝国側は、民兵だけを狙わず、一般市民ごと射殺していく。
中央アシュア地域では、宗教勢力が強かった。
それ故に、市民・民兵の判別せず、帝国側は手当たり次第に銃を発砲する。
これは、いつもの事であり常態化していた。
しかし、そんな彼等の正面からは、先陣を務めるイーラン軍、カラール戦車隊が迫っていた。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!