帝国軍の猛攻により、ナタン達は郵便局内へと、後退を余儀なくされた。
「敵が来てるなっ!」
「ナタン、エスメラル、無事だったか?」
「ダンター、生きてたかい」
ナタンは、AMDカービンの照準を郵便局内に侵入してくるゾンビに向ける。
そんな中、急にカウンターの左側から、ダンターが現れた。
エスメラルは、彼が生きていた事で、へらへらと嗤い始める。
「ああ、何とかな、ゾンビに鎧を噛まれたが、剣で斬ってやったよ」
「それでこそ、漢って、モンだよっ!!」
「セントリーガンを設置するっ!」
「その間、皆さんに援護を頼むわっ!」
ダンターが、タバティエール銃を構えると、エスメラルも丸石を手に握る。
そうして、彼らが敵を待ち伏せしていると、二人の東アシュア系兵士が現れた。
一人は、緑色のECHヘルメットを被る男性兵士であり、右肩に折り畳んだ、三脚を載せている。
装備は、迷彩の防弾ベストと、腰に大きな弾帯を二個も下げている。
背中には、M4A1突撃歩槍&M24、SWS狙撃銃を背負っていた。
もう一人は、小柄な女性であり、カバー付きEHCヘルメットに黒いゴーグルを装着している。
顔は、迷彩マスクにより、やや細目である事を意外は分からない。
装備は、弾帯を四個付けた防弾ベストを装着している。
背中には、イサカM37&57式歩槍を背負っている。
彼女は、ガトリングガンの銃身と機関部を両手に抱えていた。
二人とも、緑・茶・黒・白からなる迷彩服を着ており、緑色のプロテクターを肘と膝に装着する。
「退いてくれ、入口に地雷を設置するっ!」
「ガンカメラ設置完了っ!」
二人が、セントリーガンを、窓の間にある壁に設置すると、銃身が旋回し始めた。
他にも、奥から現れた民兵やレジスタンス員たちが、多数の罠を仕掛けていく。
黒人レジスタンス員により、入口には、クレイモア地雷が投げられていく。
白人民兵は、監視カメラと連動するイングラム短機関銃を、カウンターの上に置く。
「ここで、敵を暫くは食い止めるっ!!」
「力翔《リーシアン》、来たわよっ!」
「おいっ! アンタらも早くこいっ!?」
「来ないと、ゾンビの餌になるよ~~」
リーシアンと呼ばれた、男性兵士はM4A1突撃歩槍を抱えながら、窓から少し離れる。
女性兵士も、イサカM37を両手に持ちながら、入口を警戒しつつ走り出した。
ナタンは、ゆっくりと走る二人を心配して、カウンターまで来るように呼ぶ。
エスメラルは、丸石を投げて、窓から侵入しようとしてくる、ゾンビを倒した。
「上から見てきた、ゾンビが来るぞっ!?」
「手榴弾を持って来たぞ」
「それも大群だ、しかも蜘蛛なっ! げぶぅ?」
白人民兵と黒人民兵たちが、木箱を抱えながら後方から走ってくる。
その後を追ってきた、連合軍兵士は腹部を大口径弾に撃ち抜かれてしまった。
「スナイパーだっ! それも、対物ライフルを使っているっ!」
「頭を撃っておけっ! ゾンビ化するかも知れないからなっ!」
さらに、後ろから増援として、到着した連合軍兵士は、床に倒れた死体を探る。
だが、別の兵士はマカロフ拳銃で眉間に何発か撃ち込む。
「それより、来たぞ~~?」
「ゾンビと蟻、蜘蛛だっ!」
エスメラルは、入口に群がった黒アリの頭に丸石をブチ込む。
ナタンも、AMDカービンを撃ちながら敵を寄せ付けまいとする。
二人や他の兵士が撃った弾を潜り抜けた、ゾンビや黒蜘蛛は、地雷を踏んで爆散する。
マッチョ・ゾンビは、集中攻撃を受けて、後ろに倒れてしまう。
「よし、これなら…………」
「油断するな、スナイパーが狙っているんだ」
「また、発煙弾を投げるかっ?」
「そうした方がいいわ」
ナタンは、何とか撃退できている事に安堵するが、ダンターはカウンター裏に隠れている。
そして、彼はタバティエール銃に、弾を込めていた。
リーシアンは、腰の弾帯から発煙弾を取り出して、投げ飛ばした。
レジーヌは、サーマルスコープを覗き、MKR、SS20狙撃銃を構える。
そして、郵便局内に侵入しようとする、マッチョ・ゾンビの眉間を撃ち抜いた。
「予心《ユーシン》、撤退命令はまだか?」
「まだまだですっ!」
リーシアンは、巨狼が顎を開きながら走ってくると、口内をM4A1突撃歩槍を何発も撃ち込む。
ユーシンは、イサカM37のポンプを何度も引いて、ゴリラを倒す。
「ぐあっ? がっ!」
「うっ! ぐ、ぐ」
「増援だっ!」
「何とか持ちこたえろ」
白人レジスタンス員は、カウンターに隠れていたいたが、銃撃を浴びて倒れてしまう。
黒人PMCは、AKMを撃っていたが、右肩や胸を弾丸が貫通して力なく体制を崩した。
郵便局内でも、戦局は悪化していたが、それでも増援は来ていた。
奥から、白人民兵はM2カービンを持ってきて、連合軍兵士はM16A4を撃ちながら走る。
「突入だっ! ぐああっ!」
「グオオッ!?」
正面しか撃てないが、ガンカメラの射線に入った、軽装兵は何発も弾丸を浴びて射殺される。
ゾンビも、セントリーガンにより、胴体がズタボロに千切れてしまい、床に崩れ落ちる。
「ぐあっ! グオオッ!」
「ぎゃああっ! グルルッ!?」
「敵が科学攻撃してきたよっ!」
「ここにも、ゾンビがっ!!」
連合軍側の罠は、上手く敵を撃退しているが、それでも帝国側は、圧倒的な戦力を投入してくる。
敵のグレネードランチャーにより、放たれた科学弾を浴びた、連合軍兵士とアラビ人兵士は死ぬ。
この青い毒ガス弾により、二人はゾンビへと転化した。
手斧を、一気に振るい、エスメラルは素早く、敵の顔を叩き潰す。
ナタンは、アラビ人ゾンビの頭を殴ろうと、AMDカービンを振り回した。
「ぐっ! このっ! うわっ!」
「グオオッ!?」
ナタンの銃は、ゾンビに捕まれてしまい、窮地に陥ってしまった。
しかも、彼の鼻先を横から、一発大口径弾が通過していった。
「不味いっ! このっ!」
「ウガアアーー? が…………」
腰から、右手でMASー1935を抜くと、ゾンビの両膝を狙って撃った。
次いで、奴が体制を崩そうとすると股間を蹴り上げ、後ろに吹き飛した。
最後に、頭に拳銃弾を撃ち込んだが、彼は直ぐにカウンター内へと体を引っ込める。
「敵に狙撃兵が居るねーー?」
「不味い、ん? ドローンだっ!」
対物ライフルを持っている、敵狙撃兵に警戒して、カウンターに身を隠す、エスメラル。
ナタンも、同様に狙撃兵や銃撃を警戒して、両手だけを頭上に掲げて、AMDカービンを撃つ。
そんな中、郵便局内に小型ドローン編隊が到着した。
「盾を持って来たぞっ!」
「対物ライフルを持った奴が居るっ! そんなの役に立たないっ!」
「敵が再び、進撃してきたぞっ!」
「装甲兵だっ!」
防弾盾とコルト拳銃を構える、連合軍兵士が後方から現れた。
しかし、黒人レジスタンス員は、柱の陰からMP5Kを連射しながら叫ぶ。
白人PMC要員とアラビ人兵士は、ゾンビや魔物ではなく、敵が歩兵を出してきた事に気づく。
さらに、シュヴァルツ・リッター&オーガーなどが、その中には混じっている。
「本格的な進げ? うぅ……………」
「機銃掃射だっ! 伏せろーー!」
連中は、銃撃を物ともせず、ゆっくりと歩きながら郵便局内に入ってくる。
地雷を踏んでも、爆発するだけで、防弾鎧を傷つける事はできない。
カウンターに隠れていた連合軍兵士は、オーガーのMG3汎用機関銃に胸を撃たれて死んでしまう。
アラビ人兵士たちは、柱の裏で、頭を下げて身動き取れずに居る。
「グオオオオォォッ!?」
「転化したぞっ! うわっ!」
科学弾・死霊術のどちらによる者か、考えている暇がないほど、連合軍側は追い詰められていた。
ゾンビ化した、アラビ人兵士が、連合軍兵士に襲いかかる。
この距離では、装甲兵に対して、RPGー7は使えない。
さらに、動く死者に対応する事で、ナタン達は手一杯になる。
「不味い…………このままじゃ?」
「援軍だっ!」
「うぐああーー!?」
「ぐあっ!?」
敵の機銃掃射を前に、ナタンは身動きせず、ひたすらカウンターに身を隠していた。
そこに、誰かが増援が到着したと、大声で叫ぶと、シュヴァルツ・リッターが爆発した。
次いで、いきなり、オーガーも爆炎を浴びて吹き飛ぶ。
「梱包爆薬だっ!」
「次々と敵が殺られていく?」
「イズライル軍だっ!」
「敵が蹴散らされていく?」
投げつけられた梱包爆薬により、オーガー&シュヴァルツ・リッター達は、次々と爆破されていく。
白人民兵と黒人レジスタンス員たちは、それを見ながら誰が投げたんだろうと思う。
しかし、アラビ人民兵は、イズライル軍が後ろから現れた事に気づく。
彼らが投げる、対戦車地雷やC4爆薬により、屋内に侵入してきた、帝国軍部隊は全て撃退された。
「撤退だっ!? 引き下がれっ!」
「何だと?」
「後方の機甲師団が、敵機に殺られたっ!」
「クソがっ!!」
爆風に曝されながら進む、帝国軍側に、グールらしき伝令兵が走ってきた。
彼から話を聞いた、オーガーは信じられないと言った様子で、PKP汎用機関銃を撃ち続ける。
他に、バクテリエラー・ゾルダートも現れると、後方の様子を伝達する。
それを聞いた、シュヴァルツ・リッターは退散し始めた。
「なんだ、連中…………撤退していくぞ」
「空中から轟音がっ?」
ナタンとエスメラル達は、上空を何が飛んでいるのか分からない。
だが、帝国軍兵士が言っていたように、味方航空機が爆撃している事だけは理解できた。
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