【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第6話 双方の協力者2

公開日時: 2024年7月8日(月) 13:46
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:29
文字数:3,318


 レジスタンス部隊は、屋根に陣取る帝国軍兵士たちを倒そうと、建物や自動車の陰から銃を撃つ。


 一方、帝国軍部隊は、BTRー80装甲車から続々と降車してくる。



 双方による戦闘で、このヴァン・マルデ通りは、白灰い煙に包まれてしまった。


 これにより、姿の見えない敵を狙って、互いに激しい銃撃が始まる。


 その中には、機銃掃射や対戦車武器を使う音が混じっており、戦闘音が止む気配はない。



「うわっ! これじゃ、戦うしかないっ! やるぞ、メルヴェッ!」


「仕方ないわねっ! 護身用の拳銃を撃つしか? うわ…………」


 ナタンとメルヴェ達は、それぞれの武器を抜き取り、戦いに参加しようとした。


 そう思った瞬間、二人の間近に、柄付き手榴弾が頃がってきた。



「離れろっ!」


「きゃああっ!」


 ナタンは急いで、それを壁に向かって蹴っ飛ばし、メルヴェは直ぐに身を伏せた。


 そして、柄付き手榴弾は、壁際で爆発してしまい、窓ガラスを吹き飛ばす。



「不味いわ、私達の存在もバレているわ…………」


「心配ない、ここから中に入れるぞ」


 メルヴェは、即座に立ち上がり、直ぐさま、乗用車の陰に隠れる。


 その間、ナタンは窓から建物に侵入して、室内へと避難した。



「メルヴェ、手を出してくれ」


「分かってるわ、ナタン」


 ナタンは後ろに振り返り、メルヴェの手を掴んで持ち上げつつ、彼女も室内に入れた。


 それから、二人は戦闘から離れるべく、奥へ向かって、走り出した。



「軽装備で、拳銃しか今はない…………あっちの組織は手伝えない」


「私達も戦いに参加したいけど、不利な戦闘に巻き込まれるのは、ごめんだわ」


 今のナタンとメルヴェ達に取って、大事な第一目標は、拠点に無事帰還する事である。


 出きる限り、二人は他のレジスタンス勢力や組織などを支援したい。



 だが、帝国側が強すぎて、包囲されているような状況なら、味方とは言っても見捨てる他ない。


 また、敵との戦闘事態を、なるべく回避しながら行動したいわけだ。



「こっちは、誰も居ないっ!」


「なら行くわよっ!」


 こうして、ナタンとメルヴェ達は、そそくさと民間人の振りを建物内を通っていく。



「行くぞっ! 味方が殺られているっ!」


「増援に向かわないとっ!」


「は…………」


「…………?」


 誰か分からないが、近くから何人かの戦闘員らしき、人物たちが走ってゆく、足音や声が聞こえる。


 ナタンとメルヴェ達は、壁に貼り付いて、耳を澄ましながら、じっと動かない。



「今のは、どっちだろうか?」


「さあ、分からないわ」


 増援に向かったのは、味方を助けに行った、レジスタンス部隊か、それとも帝国側の部隊か。


 それを確認している暇は、ナタンとメルヴェ達にはなかった。



「通りに出たな? ここはグロウナング通りだ」


「あそこは、セルフ洗車場よ、あの中を進みましょう」


 さっきの場所と同じく、グロウナング通りも、建物と自動車が、ズラリと左右に並ぶ。


 その中でも、両側を建造物に挟まれた、一階建てである、セルフ洗車場は目立っていた。



 その見た目は、灰色屋根や赤茶色い煉瓦があり、大きな窓には防犯用に鉄格子があった。


 運よく、ここの中央にある入口は開かれており、ナタンとメルヴェ達は、取り敢えず中に入った。



「また、向こう側に出るぞっ!」


「ええ、行くわよ…………」


「うわあっ!」


「レジスタンスかしらっ!? 不味いわっ!!」


 セルフ洗車場の入口から突入した、ナタンとメルヴェ達は、奥へと走ってゆく。


 その近くでは、戦闘音や彼等が走る足音を聞いて、会社員やOLなど何人かが壁際に伏せていた。



 彼等、民間人は戦闘に巻き込まれたくないため、ひたすら身動きせず、建物内に隠れているのだ。


 そんな中、正面から何人かの帝国軍部隊が飛び出てきた。



「動くな? ここの人間は全員、怪しいから拘束させて貰う」


「あっ! しまった…………」


「不味いわ、不味い状況になったわね…………」


 帝国軍兵士たちは、フリッツ・ヘルメットと、弾帯付き防弾ベストを、全員装着している。


 連中は、ナタンとメルヴェ達に、AK15の銃口を向けてきた。



「待って下さい、彼等の身分は私が保証します」


「誰だ、貴様はっ!」


 しかし、いきなり二人の前に茶色いコートを身につけた、女性が現れた。


 カールさせた薄茶髪ロングヘアーの女性は、微笑みながら黒目を、隊長らしき人物に向ける。



「私は、このセルフ洗車場の管理人で、帝国軍や帝国警察の車両洗車の仕事を請け負っています? 彼等は、私が読んだ機械整備士なんですが? テロに巻き込まれて、ここまで命からがら逃げて来たんでしょう」


「ううむ? どうやら、身分証を見る限り、本当にそう見たいだな…………」


 笑顔のまま女性は、隊長に身分証を提示して、二人に関する説明を行った。



「よし、別に変な所は、無さそうだな? 良いだろう、お前達は開放してやるっ! ただし、他の者は連行するっ! 反体制側の人間なら、直ちに洗脳部屋に送ってやるっ!」


「私達は、テロリストじゃないんだ、分かってくれっ!」


「ひぃぃっ! やめてっ! 痛いっ!」


 隊長の命令を聞いて、帝国軍部隊は周辺で、身を伏せていた民間人を連行していく。



 会社員は、必死で弁明するが、帝国軍兵士は彼の言う事を無視して、銃を背中に突きつける。


 OLも、背中を蹴られながら無理やり、何処かへと歩かされてゆく。



 こうして、帝国軍部隊は、周辺の人間たちを捕まえながら奥に向かっていった。

 


「貴方たち? レジスタンスね? 私のコードネームは、サンドラ…………さあ、こっちよっ!」


「やはり、協力車だったか?」


「助けてくれて、ありがとう? 危うく捕まえられちゃう所だったわ」


 いきなり、現れた女性は、民間人の協力者であり、窮地を救ってくれた。


 名前はサンドラで、彼女も密かに、レジスタンスを陰から応援する支援者だった。



 彼女は、ナタンとメルヴェ達を、帝国軍の追手から逃がすために、手助けすると言って歩きだす。


 こうして、彼女に案内されながら、二人は安全なルートを通って、無事に逃亡できると安堵した。



「こっちに来て、地下道を案内するわ」


「また、地下に行くのか」


「文句を言っても仕方ないわよ」


 サンドラは、セルフ洗車場の裏に出ると、芝生《しばふ》に指を突っ込み、蓋を開いた。


 彼女が穴に入ると、ナタンとメルヴェ達も、サッと飛び込んだ。



「蓋は閉めて置かないと」


 案内役である、サンドラは上空から敵に発見されないように、すぐに入口を塞いだ。


 こうして、三人は真っ暗な洞窟を進んでいき、やがては行き止まりの岩壁に辿りついた。



「ここよ、この上は教会に通じているわ? ここの地下にも、武器弾薬から食料に医薬品まで隠してあるの?」


「分かった…………よっと? ここも、セーフルームなんだな」


「ふっ! ここまで来れば、さっきの戦闘からは、ようやく離れられるわね」


 サンドラは、地下道の天井に四角い枠を見つけ、ジャンプして、両手で草を掴んだ。


 ナタンは、彼女に引き上げられると、今度は彼がメルヴェが出られるように助ける。



 こうして、三人は正教会の建物である、パウエス・デ・サン・セバ教会まで来た。


 今、彼等が立っている場所は、教会の左側に作られた、芝生が生えた大きな庭である。




「次は、こっちに行きましょう」


 裏道や秘密通路に詳しいサンドラの後に、ナタンとメルヴェ達は着いていく。


 彼女の案内で、巧妙に帝国側の捜査網を掻い潜り、安全な場所へと、無事に逃れることができた。



「この中で休んでて…………茶を用意するし、後で秘密経路を案内するから」


「済まない、何から何まで助けてくれて」


「サンドラ、本当に助けるわ」


 サンドラは、茶色い床上を歩きながら、広々とした白い教会内を進んでいく。


 彼女は、右側の空間にある、茶色い十字架と白いキリスト像にまで、二人を案内する。



 ナタンとメルヴェ達は、手前にある燭台が置かれた、台座を見ながら彼女に礼を言った。


 そして、彼女が開いた右側のドアへと向かっていき、二人とも室内に入った。



「ククッ! いえ? 礼を言うのは、こちらこそよ…………」


「警察だっ! 手を上げろっ!」


「動くなっ! 貴様らを逮捕するっ!」


 こうして、サンドラは二人に対して、武器や情報を提供して、彼等の逃亡を手助けしてくれた。


 そう思えたが、彼女の正体は、帝国警察が市中に紛れ込ませた、密告者だった。

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