連合側は、他戦区が落ち着いて、そこから増援が到着した事により、勢いを取り戻す。
「味方は、まだまだ来ますよ? ギデオン隊長殿」
「それは朗報ですな、ウェン殿」
ウェンから、二階にまで撤退していた、ギデオン達に味方が来ると聞かされる。
それを聞いて、気を取り直した面々は、早速戦闘に戻ろうとする。
「イタリィー製の兵器多数っ! さらに、ウィザードが展開中だっ!」
「魔法が来るわよっ! 私の幻影兵も役に立つと良いけど?」
「見破られるかもな、それより、戦闘再開だっ?」
「対戦車兵器は、梱包爆薬や吸着地雷しかないぞ~~? どうすんだよ」
ウェンは、双眼鏡を覗きながら、仲間たちに戦況と敵戦力の詳細を伝える。
木箱を動かして、アイリーは窓から離れた位置に置くと、JS7、62ミリ狙撃銃の二脚を載せる。
88式汎用機関銃を、抱えながら窓に近づき、膝だちで、ワンは機銃掃射を行う。
チューも、彼方此方《あちらこちら》の木箱を開けては使えそうな武器を探す。
敵は、二台のダルド歩兵戦闘車をパレ広場に展開させており、機関砲を撃ちまくっている。
ロワ通りからも、チェンタウロ戦闘偵察車が、砲塔を動かし、一発砲撃してきた。
URー416装甲兵員輸送車が四台、TMー170装甲兵員輸送車が三台も走ってくる。
装甲車の車列は、デュカル通りで停車すると、様々な兵種を降車させてきた。
「うわっ! だが、この建物はまだ大丈夫だっ!」
「チュンタウロの砲撃や、ウィザードの魔法は厄介だっ!」
「分隊、隣の部屋から援護射撃するぞっ!」
「了解、隊長? 派手に行きますかっ!」
砲弾が建物の何処かに当たったらしいが、それでも、ウェンは怯まず95式自動歩槍を構える。
チューは、慌てず対戦車武器や盾になりそうな木箱を集め始めた。
ギデオンは、仲間を率いて、砲爆撃で壁が吹き飛された左側の部屋に向かう。
その後に、続き走りながら、ベッキーは笑顔で軽口を叩く。
「俺たちも援護するぞっ! 味方が戦えるようになっ!」
「分かってる、行くわよっ!」
ナタンは半壊した壁に、ベネット・メルシエの二脚を載せると、前方に向かって連射を始めた。
メルヴェも、KNー12を立ったまま構えて、窓からPKP汎用機関銃を乱射する敵を狙撃する。
「不味いなっ! 氷柱と火炎弾だっ!」
「奴ら、防護氷壁を作り出したぞ?」
「援護しにきたっ! 敵はっ?」
「支援を開始する、敵を発見した」
ハキムは壁に身を隠しながら、橫を通りすぎる氷柱や火球が、着弾して弾ける様子を見た。
ウェストも、クリスヴェクターを連射して、敵を牽制しようとする。
バーレットM82を抱えて走って来たのは、パトリシアだ。
また、レステルも部屋に入るなり、ブローニングオート5を構える。
「敵は正面だが、対戦車兵器がないっ!」
「味方は何発か撃っているようだが、当たらんっ!」
「なら、私がセンサーをっ? いや、また何か来たようだね…………」
「何が来たんだ? パトリシア」
クリスヴェクターを、何発か撃ちながら壁に身を隠す、ウェスト。
ハキムも、単発で何回か向かい側の建物を撃つと、すぐに身を引っ込める。
彼が言うように、塹壕やトーチカ等からは、味方がRPGー弾を放つが当たらない。
理由は、敵も建物からRPGー弾を放つ上に、グレネードランチャーも撃ってくる。
さらに、PKPやMG3などと言った、汎用機関銃を機銃掃射させてくるからだ。
パトリシアは、狙撃で射撃管制装置だけでも破壊しようと考えたが、何か妙な物を発見した。
レステルは、ファマエ短機関銃に持ち変えて、適当に乱射しながら何を見つけたか聞いてみた。
「馬車だよ、でも、アレって? ヤバイわ、今すぐ伏せてっ!」
「はっ! ぐわっ!」
「ギャアーー!?」
「な、なんだっ!」
キャリッジ馬車の二台から尖り帽子を被る魔女が、二連魔道粒子筒からビームを射ってきた。
もう一つのキャリッジ馬車からも、魔術師が、収束照射型魔道筒をからレーザー光線を放つ。
それに、スコープを覗いていた事で、いち早くパトリシアは気づいた。
しかし、二連ビームは、モニカの上半身を焼いてしまった。
レーザー光線は、レステルの首を撥ね飛ばして、床に転がした。
ナタンは驚きながらも、直ぐさま、ベネット・メルシエのスコープを馬車に向けた。
その先には、青いクリスタルを填めた、収束照射型魔道筒がある。
「アイツらか、早い撃ちに殺さねばっ!」
ナタンは、キャリッジ馬車の収束照射型魔道筒を握る魔術師を狙って、何発か機銃を放つ。
だが、それは魔術師が作り出した突風により、跳ね返されてしまった。
「はっ? 銃弾が効かないのかいっ! なら、レステルの仇だっ! 喰らえっ!」
今度は、パトリシアが魔術師を狙撃しようと、バーレットM82を撃った。
しかし、結局は見えない風の壁に阻まれてしまい、対物ライフルによる攻撃も効果がなかった。
「モニカは、負傷したか…………仕方ない、ブルーノ、ランチャーを持ってこいっ! ベッキー、援護射撃を続けろっ!」
「了解しましたっ! ただいま、取ってきますっ!」
「分かりましたよ、やるだけやって見ます」
「敵は何処だ? 俺のビッグボウが撃ちまくりたいと言ってるんだっ!」
ビームによる真っ黒な焼け跡を見ながら、冷静に命令を下す、ギデオン。
ブルーノとベッキー達も、悲嘆に暮れる暇なく、悲しみを堪えて、それぞれ動き出す。
そこに、いきなり映画ランボーに登場するような大男が現れた。
ボサボサの黒髪を長く伸ばし、厳つい顔をした筋肉マッチョマンは、ウォーハンマーを振り回す。
そして、逆さに置いてから、ビッグ・クロスボウの前方下部に左手を伸ばす。
すると、折り畳み式の下が空洞に成っている金属製フォアグリップを嵌めた。
「アレが、敵か? あんな物は? っと」
全身に、白灰色の鎧を着て、それに赤茶色に染められた皮鎧を上に纏う、大男だが。
赤褐色肌の彼は、臆することなく、ビッグ・クロスボウから矢を放った。
それを、魔術師は強風で止めようとしたが、時既に遅かった。
突風に触れた途端、強酸性の毒ガスが、矢から吹き出したからだ。
「単なるポイズン・ボルトじゃない、強酸性のストロング・アシッド・ボルトだ」
強酸性矢ストロング・アシッド・ボルトの威力は半端なかった。
敵の魔術師を、黄色い毒ガスが包み込んでしまい、姿が見えなくなってしまったからだ。
毒煙が晴れると、そこには、収束照射型魔道筒を含む金属以外は、全てが溶けてなくなっていた。
「帝国相手には、このくらい、やらないとな」
「スタッロ、ここに居たのか、俺は前に出るから援護してくれっ!」
誇らしげに呟く、筋骨隆々の大男は、スタッロと言うらしい。
そこに、全身を黄褐色鎧に身を包んだ、新たな兵士が現れた。
彼は、顔までアーメット型兜で包んでいるため、容姿が全く分からない。
背中には、タバティエール銃とショートソードを背負っており、両手には手動迫撃砲《ハンドモーター》を持つ。
これは、中世から近世で使用された、現代で言うグレネードランチャーだ。
「あの? 大丈夫なんですか?」
「ああん? 奴なら大丈夫だよっ! アレでも精鋭だからなっ!」
中世の世界から飛び出してきたような二人を前に、ナタンは困惑する。
特に、ニカッとした笑みで親指を立てる大男は、まるで御伽話《おとぎばなし》のオークを思わせる。
また、窓から落下していった男は、グリーン・シュヴァリエか、ただの防弾兵かも分からない。
「ダンターは、優秀な騎士だよ? 心配すんなってっ!」
「なら、良いんだけど…………」
スタッロは、ビッグ・クロスボウを今度は、二連魔道粒子筒を搭載した、キャリッジ馬車に向けた。
ナタンは、それを見ながら呟くのだった。
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