【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第139話 彼女はVR訓練場の中で

公開日時: 2024年7月10日(水) 21:51
更新日時: 2024年7月13日(土) 11:50
文字数:3,105


 崩壊した監視塔だった、コンクリートの山陰から、レギナは密かに戦闘している様子を伺う。



 自動小銃が連射される音や、汎用機関銃が何度も弾丸を放ち、狙撃銃の引き金が何度も引かれる。



 こうして、様々な射撃音と怒号や悲鳴が、巨大な刑務所内に木霊していた。



「ここなら安全ね…………」


 一人つ呟くレギナだが、刑務所内での争乱が収まる気配はなく、気は抜けず体も脱力させられない。


 彼女は、ミアとベーリット達の様子を密かに伺いつつ、身を潜めて戦闘状況を観察した。



「安全な訳ねぇだろうがっ!!」


「きゃっ!」


 その時、レギナの背後から両手斧を手にした、囚人が襲いかかって来た。


 突然の奇襲に、レギナは思わず、WIST《ヴィス》ー94Lを抜き取ると、直ぐさま発砲する。



「ぐあ…………て、帝国軍めっ! ぅ…………」


 腹を撃ち抜かれた囚人は、そう言うと、力なく真後ろに倒れてしまった。



「て、てて? 帝国って、私はレジ…………!?」


 そこで始めて、レギナは自分の服装が真っ黒い事に気がついた。


 ここで彼女は、ようやく自分が帝国警察隊員の制服を着ている事に目を疑った。



「はぁーー? これも、きっと連中の悪い冗談ね?」


「あそこに居たぞーー!!」


「女一人だっ!!」


「ひひっ! やっちまえ~~~~!」


 レギナが、一人で呟いている間に、彼女を発見した囚人たちが、刑務所の塀から飛び降りてくる。



「うらーーーー!」


「ウヒヒィ~~!!」


 塀から飛び降りず、拳銃を撃ってくる者や、下卑た笑みを浮かべて走ってくる囚人二人。


 囚人の内、片方は凶悪な顔つきをした黒人で、レンチを握っている。


 もう片方は、アシュア系の囚人で、ニヤついた顔しながらロープに巻き付けた石を振り回す。



「う…………こっちに、くんなってのっ!」



「うっ! …………」


「があっ!?」


「うげーー!!」


 レギナが、放った正確な射撃は、まず先に塀の上から撃ってきた囚人を撃ち落とした。


 そして、一人目が雪の積もった地面に落ちた後、残る二人も体を撃ち抜かれる。


 黒人の方は頭を撃たれ、アスア系は胸に穴を明けられてしまった。



「これは、悪夢ね…………!?」


 今の戦いで疲れる間もなく、レギナが見ている前で、今度はコンクリート塀が吹き飛ぶ。


 それと同時に、一台のトヨタ・テクニカルが刑務所内に侵入してきた。



「帝国兵を蹴散らせっ! 自由のために、囚人解放のためにっ!」


「突撃ぃーーーー!!」


「行け、行け~~~~~~!」


 トヨタ・テクニカルは、レギナを見つけると、当然だが車載された、二連対空機銃を撃ってきた。


 また、車両から飛び降りた兵士を含め、開いた塀の穴から続々と敵が刑務所内に入ってくる。



「ゲッ!? コイツら、囚人よりヤバいじゃないっ!!」


 対空関銃である、二連結された水冷式PM1910マキシム。


 この銃は、レギナが走る後を追うように銃弾を途切れなく放っていく。



「はぁ? はぁ? 何とか、こっちにくれば…………」


 レギナを撃っているのは、対空機銃化されたPM1910だけではない。


 囚人らとは違って、重武装で身を固めた連合軍の兵士たちも銃を撃つ。



 レギナが、監視塔の残骸・反対側に隠れている間、自動小銃や分隊支援火器も、彼女を狙う。


 そうして、カンカンッと鉄柱に弾丸が当たる金属音が辺りに響く。



「レギナ、こっちまで下がって来てっ!」

 

「もう、こっちは安全よっ!」


 まるで、悪魔の誘惑や囁きみたいに感じる、ベーリットとミア達による声だが。


 見ると、彼女たちが今まで戦っていた場所には、黒い輸送用トラック、イェルチ600がある。


 それらは、隙間なく二台前後に並んでおり、バリケードの役割を果たしていた。



 また、車両のタイヤはパンクしており、下から敵がくる心配はない。


 塀の上も、炎上しており、そこからは敵が来られなくなっていた。



「行くワケないでしょっ! アンタらは敵よっ!」


「レギナ、早く来ないと死ぬわよっ!!」


「今は戦場に居るのよっ! それに貴女は私達の味方でしょっ!」


 ここが、電脳空間内に作られた洗脳目的の箱庭であると、分かっているレギナは二人に叫ぶ。


 そんな彼女を、心配するベーリットとミア達は、早く此方に来てほしいと言う。



「そっちに行くんだったら、自分で決着を着けるわあぁぁっ!!」


 そう叫びながら、レギナはWIST《ヴィス》ー94Lを額に当てながら引き金を引いた。



「うぁっ!?」


 しかし、引き金を引いた瞬間にちょうど良く、敵の砲撃が降り注いだ。


 これにより、レギナの自決は失敗に終わってしまった上に、彼女は爆風で吹き飛ばされた。



「…………ったた? う?」


 爆風により、ミアとベーリット達よりも、レギナは少し後方へと飛ばされていた。


 また、砲撃で吹き飛んだ地面の穴に彼女は運よく落ちた事で、敵による銃撃を受けずに済んでいる。



「…………レギナッ! 今の貴女は、帝国警察の一員なのっ!」


「そうっ! だから、ボサッとしていると死ぬわよっ!」


「…………うるさいっ!! 私は自由に死にたいのっ!!」


 ベーリットが真剣な顔をしながら叫び、ミアは敵に対して、二丁拳銃を撃ちながら怒鳴る。


 だが、レギナ当人は再び額に拳銃を当てながら目を瞑って怒鳴る。



 レジスタンスの一員として、まだ彼女は自決する気だ。



 最も、自決したところで、このVR訓練用に作られた、ゲーム世界からは抜け出せない。


 もし、死んでも何事もなかったかの如く、生き返らされるだけだ。



 戦争ゲームのリスタート地点から、やり戻される事と同じようにだ。



「うげ…………さっきの?」


「うわっ! 連中が攻めて来たわっ!」


「このままじゃ負けちゃうわっ!」


 先ほど、レギナを狙っていた、対空機銃を積んでいた、トヨタ・テクニカルが走ってきた。


 それも、大量の7、62ミリ弾を、凄まじい勢いで、バラ撒きながらだ。



 ベーリットとミア達は、ここで敵を食い止めんと必死で反撃する。



「何とか、足止めしないとっ!」


「そうよ、食い止めないとっ!」


 ミアは両手のステアーGBとステアー・ハーン・ドッペルを撃って、敵を足止めする。


 ベーリットも、敵を牽制すべく、AGー3を走って来る兵士に向けて狙い撃つ。



「アレは厄介だわ…………ここで、仕留めてやるわよっ!!」


「うっ! 殺ら…………」


 大型タイヤの裏から、ベーリットはAGー3を撃ち、対空機銃PM1910の機関銃手を撃った。



「火力を途切れさせはしないっ!!」


「行けーー! 敵は三人だっ!」


「やってしまえっ! 数で押しきるんだっ!」


 倒れた機関銃手に変わって、別の兵士が荷台に飛び乗り、対空関銃を撃ち始めた。


 それに加え、まだまだ自動小銃を撃ちながら、他の兵士たちも突撃してくる。



 さらに、囚人たちも、銃や鉄パイプを持ちながら、さながらゾンビのように向かってくる。


 こうして、色んな武器を持った敵が、何処からでも無限に涌き出てくる。



「…………これは、悪夢よ? 私はレジスタンスだわっ! 最後まで諦めないし…………今度こそ終わらせるわっ!」


 余りに敵が多く、また悪夢の洗脳用に作られた世界に耐えられなくなった、レギナ。


 彼女の周囲では、数えきれないほどの敵が集まっていた。


 その目つきは、まるで理性を失った獣みたいに凶悪だった。



 ミアとベーリット達が、何とか現れる囚人や兵士たちを倒している姿が見える。



 しかし、このVR世界は彼女にとって、地獄のような場所だった。


 悪夢に支配された箱庭で、彼女は味方から警察隊員と見なされた事で、孤独と絶望に包まれていた。



 しかし、彼女の心には、まだ微かな希望が残っており、卑劣な帝国に立ち向かう覚悟を決めた。



 それは、またもや自決する事で、全てを終わらせようとする算段だった。



 こうして、彼女は、自らの顎《あご》にWIST《ヴィス》ー94L拳銃を当てて、遂に引き金を引いた。

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