【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第170話 冒険者パーティー、ソード・オブ・グローリー

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:55
更新日時: 2024年7月14日(日) 08:58
文字数:3,300


「敵かっ!? 答えろっ!!」


「う……」


「あっ!」


 灰白《かいはく》色の煙りが晴れると、黒人女性が、二人に刃を向けていた。



 ナタンには、首すじに細剣エスパダ・ロペラの鋭い切っ先が。


 メルヴェも、屠殺用短剣であるプニアルが顎に添えられていた。


 

「エスパーダ・イ・ダガの使い手である、この私に? と、どうやら味方みたいですね…………」


「そうだ、首を斬る必要はないぞ……」


「味方なのは、見れば分かるでしょう?」


 チリチリ・アフロヘアの黒髪・褐色女性は、黒く大きな瞳を二人に向ける。



 彼女は、バリンタワクと言われる、カーキ色のカクテルドレスを着ている。


 その上に、黒・緑・茶・黄土などと言った色からなるウットランド迷彩柄ポンチョを羽織っていた。



 手には、茶色い指ぬき皮手袋を、脚には、茶色いロングブーツを履いていた。



 FADを上に掲げるナタンは、褐色女性が剣を下げると、気が抜けて脱力してしまう。


 FADで防御しようと身構えていた、メルヴェも首すじから短剣が離れると同時に安堵する。



「失礼した、味方と敵を見間違えるとはっ! 不徳の至り…………」


「い、いや、そこまで謝罪しなくても」


「そうよ、今は混戦だったし?」


「ジュジース? ジュジースは何処だ?」


 ジュジースと呼ばれた人物は、おさらく褐色女性の事だろうと、二人は思う。



 ナタンはFADを下げつつ答え、メルヴェも謝罪は必要ないと言う。


 そして、彼女の名前を連呼する声が背後から聞こえてきた。



 名前を呼ぶ人物は、マサイの戦士だった。



「ここよ、味方と合流したわ? ワンガリ」


「そうか……エスメラル、ヨルギオス達はすでに猛士に乗ったぞ」


 ジュジースは、マサイ族の戦士を、ワンガリと呼んだ。



「ほかにも、残存兵力を二人が集めてきたから、俺達はタンク・デサントになるぞ?」


「仕方ないわ、そこの二人も良いですね?」


「分かった、そうしよう」


「今は、そうするしか無いからね……」


 ワンガリが言う、タンク・デサントとは戦車の車上に兵士が座って乗ることを意味する。


 第二次世界大戦時、装甲車が不足した事により、戦車に兵士を乗せる事態となった。


 当然ながら安全な後方では、兵士が奇襲などで殺害される事はなかった。



 しかし、最前線に送られた、タンク・デサント兵は凄まじい被害を受けた。


 もちろん、地雷を踏んだ戦車とともに爆散したり、砲撃で粉微塵となったからだ。



 そうするしか、基地に帰投する手段がないので、ジュジースは納得した。


 そして、彼女は、ナタンとメルヴェ達にも了承を得ようと声をかけた。



「よっと、手を化してあげます」


「さあ、早く乗れ……話は車上でしよう」


「分かったわ、有り難う」


「すまない、迷惑をかける…………」


 四人は、猛土までの右側面まで歩いていくと、早速乗車しようとする。


 ジュジースは、サッと飛び乗るとともに、メルヴェに手を差し出す。


 ワンガリは、怪我しているナタンの事を気遣い、両手を重ね合わせた。



「よっ!」


「っと?」


 メルヴェは屋根に登った、ジュジースの手を握り、猛土へと一気に飛び乗る。


 ナタンの方は、ワンガリに体重を支えられながら上部に上がっていく。



「ブラックホークダウンなら絶対に嫌がるぜ、なんて言うんだが、今は負傷しているからな~~」


「贅沢は言えないわ、乗せて貰えるだけ有りがたいでしょ」


 戦いが終了して、ナタンは安堵したのか呑気なことを言いだした。


 だが、そんな態度をメルヴェが半ば呆れつつ、さらに疲れた表情で叱る。



「そう……だな、済まない? てか、バイクは?」


「味方の兵士が回収した見たいよ、後ろで乗っているわ」


 ナタンは、不意に自分たちが乗っていた、バイクが気になり後ろを見た。


 同じく、後方に目を配りながら、メルヴェは答えた。



「そんな事より、名を名乗ろう……私はワンガリ・タヌイ」


「私は、ジュジース・ジーン・タン……」


「ナタンだ、ナタン・ル・ロワイエット」


「メルヴェ・ペケル」


 ワンガリが名乗ると、ジュジースも名前を教えた。


 二人に対して、ナタンとメルヴェ達も名と名字を喋った。



 そんな中、ガタゴトガタゴトと雪が積もった道路を二台の猛土は前後に並んで進む。


 最後尾には、ナタンとメルヴェ達が乗っていた、バイクを連合側兵士が跨がって走らせていた。



「ナタン、その肩の刃は拠点に戻ってから、ヨルギオスに抜いて貰え」


「彼は衛生兵の知識があり、回復魔法が使えるので……」


「ああ、心配してくれて有り難う」


 ワンガリとジュジース達は、負傷するナタンを心配して、衛生兵による治療をすすめた。


 応急処置程度ならば、二人とも出来ない事もないが、彼の肩に尽き刺さった刃には手を出せない。



 下手に抜くと、出血が速まるからだ。



 流石に、それで死ぬ事は無いだろうが傷口を広げてしまいう可能性がある。


 ゆえに、二人は手を出さず衛生兵の役割を持つ、ヨルギオスに任せた訳だ。



「メルヴェ、貴女も脇腹をやられているようね? 重傷とまではいかないけれど、それでも結構なキズね……貴女もヨルギオスに見て貰った方がいいわよ」


「ヨルギオス……」


「あっちに乗っている僧侶だ、その隣に居る戦士はエスメラル、二人とも俺達の仲間……いや、パーティーだな」


「パーティー? まるで、ファンタジーの世界みたいだな?」


 ジュジースは、メルヴェの負傷を気にして、やはり治療して貰うように言う。


 そして、怪我した彼女は衛生兵たる、ヨルギオスとは誰かと思い呟く。



 ワンガリは、前方を走る猛土へと目を配り、仲間たちの特徴を二人に教えた。


 それを聞いた、ナタンは彼等の格好を、中世ファンタジーに登場するよう人物みたいだと思う。



「ハハッ! 中世ファンタジーかっ? …………まあ、戦前は冒険者パーティーのチームを組んでたからな」


「ソード・オブ・グローリーって、チーム名で、祭りとか大会に参加していたんですよ」


「ああ、サバゲーの中世版みたいなやつだな」


「鎧とか着て、剣や槍を振るうイベントとかね?」


 ワンガリは楽しく、また懐かしそうに話し、ジュジースも丁寧に教える。


 ナタンとメルヴェ達は、テレビ等で紹介される観光客むけに行われる、剣闘技大会を思い浮かべる。



「まっ! 正しくは、アーマード・コンバット・リーグなっ!」


「その大会で、私たち四人は昔から仲良くチームを組んでいたんです」


「なるほど、帝国の一部兵士みたいに中世ファンタジー世界から来たワケじゃないんだ」


「そう思えるほど、役にハマり切っていると言うか? そのままファンタジー世界から出てきたように見えるわね?」


 ワンガリとジュジース達の言う、大会は鎧を来た人間同士が戦う競技である。


 武器は、切っ先が尖ってない剣や槍などを使って、中世の雰囲気を楽しもうとする戦闘遊戯だ。



 ナタンは二人を見て、追跡部隊に所属していた帝国兵みたいに、中世・世界から来たと思っていた。



 カボチャの馬車・オムニバス馬車・ドラゴン。



 そんな物まで、異世界から運んできて運用している、帝国軍&帝国警察。


 連中は、侵略者であり、様々な次元や星々から帝国の兵士として人々を、拉致・洗脳している。



 だから、メルヴェも同じように帝国と戦うべく、中世の世界から二人が来たかも知れないと考える。



「あの二人も、そう見えるだろう? まあ、俺たち四人は今傭兵として雇われているけどな」


「民間軍事会社フリー・イージス所属、ソード・オブ・グローリー分隊と言うわけです」


「レジスタンスや連合軍コマンドじゃないんだ?」


「ナタン、レジスタンスや連合軍も色んな部隊があるでしょ?」


 ワンガリが言う民間軍事会社とは、通称PMCとも呼ぶ。


 この会社は、傭兵を銃を持った警備員として雇う組織だ。



 剣闘技大会に出場していた、二人は帝国による侵攻で、今や本物の戦士になった。



 それを、ジュジースは坦々と説明する。



 ナタンは疑問に思ったことを口にするが、メルヴェから組織も色々あると言われた。


 その通り、連合と帝国は軍や警察以外にも様々な組織が傘下として、枝分かれするように存在する。



「そう、民間軍事会社も、その内の一つさ」


「他にも色々な組織や部隊が動いています」


 ワンガリとジュジース達は、メルヴェの言葉に同意して答える。


 そうこうしながら、廃墟の奥へと猛土は走って負傷兵を運んでいった。

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