【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第4話 アジトへの道中は、気を抜けない

公開日時: 2024年7月8日(月) 05:55
更新日時: 2024年7月12日(金) 22:27
文字数:3,712


 ナタンとメルヴェ達は、アジトへと続く帰路を、ひたすら走っていた。


 彼らは、先ほどの任務を終えたため、一刻も早く安全な場所に戻る必要があったからだ。



「敵は居ないよな?」


「大丈夫みたいね?」


 地下の闇が、ナタンとメルヴェ達を包み込む中、二人が走る足音だけが静かな夜空に響いていた。



「はあ、はあ、もう少しだけ走ろうか」


「そうした方が良さそうだわ…………?」


 ナタンは、息を切らしながらも、決して立ち止まることなく、前を見据えて走り続けた。


 アジトまで、出来るだけ急いで戻らないと、テロの後ゆえに、帝国側が巡回などを強化するからだ。



 メルヴェは、彼の後ろで背中を見つめながら、時おり背後に振り返る。


 こうして、背後から敵が襲撃してこないかと彼女は警戒を怠らないのだ。



「もう少しで、セーフルームだわっ! ナタン、頑張ってねっ!」


「そこまで行ったら、少し休もうか?」


 メルヴェが笑顔で声をかけると、ナタンも微笑みながら、さらに走る速度を上げた。


 彼等は、仲間たちとの再会を心待ちにしながら、アジトへと近づいていった。



 だが、その前にレジスタンス側しか知らない、小さな仮拠点がある。


 二人は、後少しで秘密裏に作られた、そこまで、たどり着けるのだ。



「ここだ、このドアの中に入れば、セーフルームだ」


「まさか、ここが私達の安全圏だとは、帝国も思わないでしょうね」


 配電盤室と書かれた、プレートが貼り付けられた、ドアを開くと、ナタンは室内に入る。


 メルヴェは、周囲や背後への警戒を解かず、静かにドアを閉めた。



 それから、二人は奥に設置してある黒い機械をズラして、すばやく中に飛び込んだ。


 また、蓋を閉めてしまい、そこで彼等は、二つの天井から下げられた電球に明かりを灯した。



「木箱が幾つかある? 座って休もうか、コーヒーとクラッカーもある」


「そうしましょう…………道は長いし、少しだけ休憩したら、また何処かから地上に出ましょう」


 ナタンとメルヴェ達は、長い逃走の後、疲れ果ててながらも、セーフルームにたどり着いた。


 身を寄せ合うようにして、疲れた体を休めるために、二つ並んだ木箱に、彼等は座り込んだ。



「ふぅ…………やっと休めるね」


「だわね~~? でも、もう安心よっ!」


 ナタンが肩から力を抜いて、ため息をつくと、メルヴェも微笑みながら頷いた。


 この仮拠点《セーフルーム》は、外から遮断されており、静寂と安全が保たれていた。



「ふぅ~~ふぅ~~?」


「よっと」


 ナタンは、電球が放つ柔らかなオレンジ色の光を浴びながら、目を閉じて深呼吸を繰り返した。


 メルヴェも、死体から剥ぎ取った、H&K416を木箱の右側に置いて、全身から力を抜いた。



「ここは、本当に心地いいね? こんなに静かな場所だと寝てしまいそうだよ」


「フフ? こらこら…………ここに、コーヒーのペットボトルがあるでしょう? それを飲んで眠気を覚ましなさい」


 ナタンが言うと、ナタンも微笑みながら、クラッカーの袋を開きつつ返事する。



「だね? ここは、まだ敵地のど真ん中だ? コーヒーを飲んだら、また動きに行かなきゃね」


「そうよ、弾詰まりしてないか、確認しなきゃ成らないわね」

 

 ナタンとメルヴェ達は、地下道で敵から奪った銃の確認作業を始めた。



「っと、その前に一杯だけ飲むよ」


 ナタンは、ペットボトルを手に取り、コーヒーを一気に飲み干した。


 それから、敵が使用していた、H&K416を注意深く点検し始めた。


 機関部の状態、射撃モード、それに弾倉を抜いて、装填されている残弾数を確認した。


 これ等を、丁寧に確認することで、彼は自動小銃の状態を正確に把握しようとする。



 メルヴェは、彼を隣で見守りながら、周囲に対する警戒を怠らなかった。


 彼女は、敵が上から襲撃してくることを想定して、天井に目を配った。



「メルヴェ、銃の点検が終わったから、こっちは木箱を積み上げる? その間に、君も銃を調べてくれ」


「分かったわ、じゃあ階段を作るのは頼むわねっ!」


 ナタンは、重たい木箱を何個か積み重ねて、階段を作っていく。


 その間に、メルヴェは自動小銃を弄って、手早く確認作業を終えた。



 こうして、二人は休憩を済ませると、また蓋にしている黒い機械をズラして、慎重に外へと出た。



「よっとと、敵は無し? メルヴェ、大丈夫だっ!」


「うっしょ? 本当に居ない見たいね?」


 配電盤室には、敵は見当たらず、ナタンはH&K、416の銃口を下げる。


 しかし、彼は気を抜くことなく、いつ敵兵士が現れても対応できるように、心構えが出来ている。



 メルヴェも、外に出ると、暗闇や真後ろから帝国軍や帝国警察などが、奇襲して来ないかと見張る。


 それから、黒い機械を移動させながら、仮拠点への入口を閉めてしまった。



「ここから先も、先導するっ! メルヴェ、着いてきてくれ」


「分かっているわ、ナタン…………じゃあ、後ろは私が担当するわね」


 ドアを静かに開けると、ナタンは敵が存在しないかと確認する。


 また、敵影がない事を確かめた彼は、なるべく足音を立てずに、地下道を歩いていく。



 メルヴェも、背後に一回だけ振り返ると、そこに誰も居ないことに安堵する。


 そうして、彼女は前を歩くパートナーの背中を見ながら足早に進んでいく。



「ん? ヤバいな…………」


「どうしっ? 敵ねっ!」


 暫くの間、ナタンとメルヴェ達は、暗い地下道を歩きながら息を潜めていた。


 二人は、帝国軍・帝国警察の部隊が巡回しているのを知っている。


 まして、テロが起きた後なので、尚更連中が動いており、それらと出くわさないように願っていた。



 しかし、運悪く、警羅に出ている帝国警察部隊の一団と遭遇してしまった。


 だが、幸いなことに連中は、まだ彼等の存在に気がついてない。



「この先に、敵が隠れているかも知れないっ!」


「いいか? 全員、気を抜くなよ」


「不味いな…………? 今きた道を戻るか?」


「いいえ、こっちに行きましょうっ!!」


 帝国側部隊の指揮官が、歩きながら部下たちに命令を下している声が聞こえてきた。


 また、副官らしき人物の出した指示も、前方から響いてくる。



 身を隠すために、ナタンは再び後ろに戻ろうかと考えて、踵を変えそうとした。


 その瞬間、メルヴェは前方に忍び足で、そそくさっ進んでいった。



「メルヴェッ!?」


「着いてきてっ!」


 驚く、ナタンだったが、メルヴェは前へと、どんどん歩いていく。



「こっち側からなら、大丈夫っ!」


「なるほど、別な道から行くんだな」


 メルヴェは、十字路を右に曲がると、ナタンも同じ場所に向かっていく。


 そして、帝国側部隊が進んでくる足音を、二人は聞きながら隣の道を密かに移動する。



「これなら、バレないわね」


「全くだっ!」


 メルヴェは前を見据えつつ、ナタンは後ろを警戒しながら隠密行動を取る。



「ん? 足音が…………しかも、テロリストの匂いがする? しかし、味方部隊の匂いも一緒に感じる?」


「それは、どう言う事だ?」


 しかし、いきなり隣の地下道から、帝国側部隊が発する声が聞こえてきた。


 ある兵士が匂いを嗅いだらしく、他の者も妙な存在に警戒感を高めたようだ。



 ナタンとメルヴェ達は、急いで壁際に身を寄せ、息を殺して隠れる事にした。



「出てこい? テロリスト野郎? そこに居るのは、バレてんだよ?」


「出て来ないと、閃光手榴弾を投げてやるぞっ!」


 匂いを嗅ぎながら歩く兵士と、銃を構えつつ歩く兵士たちの足音が、段々と近づいてくる。



「何言っているのさ? 私達は味方部隊だよ、今さっきテロリストを排除したばかりなんだよ」


「メルヴェ?」


「あん? 何だって…………」


「味方だと? 本当にかっ! 怪しいな」


 メルヴェは、咄嗟に出任せを言って、近づいてくる敵兵士たちを欺こうとした。


 いきなり、嘘を言われた、ナタンは驚いたが、彼女に合わせることにした。



 しかし、匂いを嗅いでいる兵士と、その相方は警戒心を解かない。


 二人の装備は、民間人が着ている衣服と、帝国側が使用する防弾ベストなどだ。



 それ故、本人達から漂うレジスタンスと、帝国側の匂いが混じっている。


 これで、嗅覚と聴覚が鋭い者ならば、どちら側の人間かが分からず、正体を怪しむわけだ。



「私達は、こっち側から巡回していて、貴方たちと出会ったの? そんなに心配なら、そっに行くわよ?」


「分かった、今から俺達も向かうからな」


「グスタフ、ヨハンッ! 隊列を乱すなっ!」


 メルヴェの返答に、正体を確かめようとする兵士は、ゆっくりと歩いてきた。


 だが、副官の声が地下道内に響きわたり、こちらに向かっていた、二人は足を止めてしまう。



「仕方がない…………グスタフ、行くぞっ!」


「ああ、そう言うことで済まないが、我々は先を急がせて貰うぜ」


「それは分かったわ、じゃあ、またねっ!」


「勘違いさせて、悪かったなっ!」


 ヨハンと呼ばれた兵士が踵を返したらしく、匂いを嗅いでいた、グスタフも離れていくようだ。


 メルヴェとナタン達は、二人に別れの挨拶を告げながら、反対側へと歩きだした。




「メルヴェ…………」


「ええ」


 ナタンは、メルヴェに静かに合図を送り、二人は早々と帝国側部隊から距離を取ろうとする。



 この後も、彼等は長い間、地下道を歩き続け、足音を立てずに進んだ。


 そうする事で、帝国軍&帝国警察の注意を引かないようにして、なるべく目立たないように動いた。

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