アルフォンス・ゴッセトラーン通りを、二台のバイクが併走する。
「ナタン、遅刻しちゃうわよ?」
「心配するな、その時は、その時だ」
メルヴェは、レトロな外観のTozz《トーズ》製、青い電動バイク、ジョイス90を疾走させる。
その体には、ティルクで女性が着る民族衣裳である青いカフタンを羽織っていた。
ナタンは、ラザレス製の青と白に塗装された、大型四輪バイク、LM410を運転している。
彼は、制服の下にダークブルー色に染色されたシャツを着用している。
また、髪の色も同じ色に染めてあった。
二人とも、制帽は被らず、自身達の軽車両を走らせ続けていた。
「たくっ! 昔から、こうなんだから」
「遅刻癖は直らんよ」
メルヴェとナタン達は、呟きながらも、バイクを疾駆させ続ける。
二人は、右側に見える、レストラント・ベェ・メイと、左側のデフ・ベルジャンを通り抜けた。
そして、ハイウェイを越えると右側に、アフムニア・ウェルネス・センターが見えてきた。
さらに、左側には、アプメックス・フォール・キャンディーズがあった。
「メルヴェ、こっちだっ!」
「あっ! ちょっと」
ナタンは、右側の砂利道へと進み、メルヴェは後を追ってゆく。
「新しい警察署が見えてきたぞっ!!」
「アレが、そうね?」
ナタンとメルヴェ達は、枯れ木に両側を挟まれた砂利道を猛進し続ける。
その右側には、真っ青な池があり、左側には青少年センターが見えた。
「おいっ! ナタンじゃねーーか? 遅刻魔なのは大人になっても直らねぇなっ!」
「ナタン君、未だに変わって無いのね?」
レモント・ピルグリムス・デ・ピガルトラーン通りから、レオとミア達が現れた。
「そう言う、お前もなっ!」
「アンタらも遅刻仲間よっ!」
ナタンとメルヴェ達も、バイクの速度を上げながら、二人に対して言い返す。
レオは、FaunKraka《ファンクラッカ》640に跨がりながら走ってくる。
ミアも、MTモトラッド社製、MZ・RT125の走る勢いを上げる。
こうして、四人は、二つの先塔が目立つ、灰色に塗装された城門を通り抜けた。
ここは、グロート・ハイベールデン城だ。
「お前ら、遅いぞ?」
「君達、レディーを待たせるのは失礼だぞ~~」
「あまり、遅いと懲罰の対象になるわよ」
「それが嫌なら、もう少し早く来ることね」
キーランは、青色のトライアンフ3HWを入口付近に停車させながら座席から降りる。
その顔には、右目に片眼鏡《モノクル》が掛けられており、彼は制帽を被り始めていた。
今来たばかりの四人も、同じように制帽を被りだす。
内部からは、カルミーネが冗談を言いながら歩いてきた。
そこに、レギナとベーリット達も眠たそうな顔をさせながら現れた。
「キーラン、お前は裏切り者の癖に、うるさいぞ」
「あ? やるか」
レオは笑いながら、ワルサーP5Lを抜き取ろうとすると、キーランも腰に手を伸ばす。
「冗談だよ、冗談っ! ホラ、吸うか?」
「要らん、悪い冗談はよせ…………」
レオは、ポケットから煙草《タバコ》の箱を取り出すと、キーランに差し出す。
「遊んでないで、中に行くわよ」
「あんたら、アホに付き合ってらんないわ」
「いつまで、立ってもガキね」
「しょうがない連中は、放置しましょう」
レギナとベーリット達が、半ば呆れながら、建物内に入って行く。
それに、ミアとメルヴェ達も、二人の後を追ってゆく。
「いけね、俺達も早く行かないとっ!」
「バカやっている暇は無かったか」
レオとカルミーネ達が急いで走り出すと、ナタンとキーラン達も中に入って行った。
「ウウーー!!」
「こらっ!」
八人が城内に入ると、軍用犬と制服姿の警察隊員が出迎えた。
よくみると、それは青いラバースーツを着せられた、ワーウルフだった。
彼の首輪を、調教師《ハンドラー》は強く引っ張る。
「済みません、民兵から洗脳したんですが、まだ調教時間が足りてなくて…………」
「いや、大丈夫だ」
ハンドラーが軽く頭を下げると、ナタンも心配ないと言いながら通り過ぎてゆく。
「隊長殿、お早う御座います」
「隊長、お早う御座いますっ!」
略帽を斜め右に被る、黒い制服を着て、ロングスカートを履いた、ルイーズが現れた。
毛先を内向きに、カールさせた、彼女のロングパーマは青灰色になっていた。
アルノブルーのおっとりした印象の円らな瞳は変わっていない。
右肩から、スリングベルトで、青いスター・オブ・ライフが描かれた、バッグを下げている。
左腕にも、同じ物が描かれた腕章を身に付けていた。
武器は、護身用として、MP5A3短機関銃を左手で持ち、右手でローマ式敬礼を取った。
その横には、黒い半袖&半ズボン姿をした、ルカが立っていた。
彼の髪は、ボリュームが増えて、灰青色になり、獣耳が生えていた。
アルノブルーの瞳は変わらないが、やや険しい肝が座った目付きに変わっていた。
腰には、直刀スクラマサクスを容れてある鞘を下げる。
左腕には、紺色と黒の渦巻き模様が描かれた円形盾バックラーが装着されている。
「ああ、お早う…………君達は、待機質で待っていてくれ」
それだけ言うと、ナタンは二人の脇を通り過ぎて、廊下を歩いていく。
「話さなくていいの?」
「今はいい…………今は」
後ろから近づいてきた、メルヴェは質問するが、それに、ナタンは短く答えた。
「あっ! 貴方たちっ! フロスト中尉と私達は、急用で居なくなるわっ! 戻ってくるのは午後だから何かあるまで城内で待機していて」
「は? 分かりました」
「急用ですか、了解です~~」
廊下の曲がり角、左側から姿を現した、ネージュ準尉に、レオとミア達はローマ式敬礼をした。
「何でも、第六小隊の方に出かけているらしくてね?」
「第六、また新しい部隊が編成されたんすね」
「まだまだ、帝国は拡大するわよ」
ネージュ準尉の言葉を聞いて、レオとミア達は新しい部隊が気になる。
「まあ、どんな部隊かは分からないけど、城内の敷地からは出ないでね」
それだけ言うと、ネージュ準尉は歩きながら何処かへと向かって行った。
その後、八人は待機部屋で白い箱を開けていた。
「これは、お前? これは、お前のな? こっちは、お前の」
「これは、メルヴェの? こっちは、ベーリットの? これは~~レギナのね?」
レオとミア達は、次々と仲間たちに、ネクタイを配っていく。
カルミーネに渡された、黒いネクタイは、ファシスト・イタリィーのイラストが描かれていた。
黒と白で染色された、古代ローマの鷹紋章&斧に薪を束ねた、ファスケスだ。
ナタンに渡された、ネクタイには、二つの紋章が半分ずつ描かれていいる。
一つは、第33SS武装擲弾兵師団シャルルマーニュ=フランス第1の師団章だ。
左半分の帝国鷲《ライヒスアドラー》が、ドイツを象徴している。
右半分にある、三つの百合が、カール大帝=シャルルマーニュを象徴している。
キーランの黒ネクタイは、イギリス・ファシスト連合が使用していた物だ。
白円と雷の間が、青く染色されている。
その下には、特殊空挺部隊SASで使用されている部隊章がある。
白く縁取りされた黒盾には、水色の翼が生えた白い短剣と青いベルトが描かれていた。
「これが、私のね?」
カフタンを脱いで、事務椅子に掛けた、メルヴェが着ている制服は、レオと同じ男性用の物だ。
両肩に付けた、肩章と襟章にも、灰色の狼グレイ・ウルブズが白黒で描かれた、物を着けている。
灰色戦闘服と同じく、黒い制服には、円形型の水色バッジがあり、中に白線が描かれている。
また、さらに内側は白狼が岩上に立ち、天に向かって吠えている姿があった。
黒ネクタイには、二種類の紋章が描かれている。
一つは、ティルクが使用する、右側に大きな白三日月&左側に小さな白星マークがある。
その下にも、バッジと同じイラストが描かれているが、こちらは狼が黒くなっている。
ベーリットの黒ネクタイも、二種類の紋章が描かれている。
ノルウィン国章の斧を構えた物は、赤が青に、黄色が黒に変更されていた。
その下には、ノルウィン特殊作戦コマンドが使用する、短剣に羽根が生えた物がある。
こちらは、元から白黒なので、一切変更はされてない。
レギナの黒ネクタイも、ポローランドで使用される国章たる、王冠を被った白い鷲が描かれている。
しかし、盾型の紋章は赤から青へ、翼や羽毛を描いた線は、灰色から黒く変更されている。
また、その下には、ポローランド陸軍第一機甲師団フサリアが使用する標章が描かれていた。
これは、縦を向いた長四角に黒で、絵図が構成されている。
「ミアとレオも着けてよ?」
「そうさ、早くしてくれ」
レギナとカルミーネ達は、二人に黒ネクタイを着けるように促す。
レオの黒ネクタイは、盾にドイツェル国章が描かれている。
しかし、黒鷲は変わってないが、黄色は白に、嘴《クチバシ》と鍵爪は赤から青に変更されていた。
また、下には、顔左側が骸骨と化した狼が描かれている。
あと、彼の両腕には、ナチス時代に使用された、黒鷲が白い盾内に描かれている。
だが、鷲の脚が握る円内シンボルには、ノルデンシュヴァイク帝国が使う紋章に変更されていた。
ミアの黒ネクタイにも、ドイツェル連邦の国章が描かれていた。
こちらは、双頭の黒鷲だったが、黄色は白に、赤は青へと変更されている。
下には、剣に両側からステアーAUGが添えられた、ヤークトコマンドの紋章が描かれている。
だが、盾の上と下は、赤から青に変更されている。
両腕に装着した、横に長四角となっている白いバッジは、初期・東ドイツェルの国章が描かれる。
しかし、これも黄色が青に変更されていた。
「さて、新しいネクタイも受け取ったし、次は何をする?」
ナタンは、そう呟くのだった。
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