【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第241話 戦闘終息

公開日時: 2024年7月15日(月) 07:53
文字数:3,035


 二名の警察隊員が、決死隊として、特効を敢行した事で、連合側は一気に後退を余儀なくされた。



「敵が進撃してきたぞっ!!」


「これ以上は、進ませないっ!!」


 緑色の細菌保存用装置を身につけた、チィーナ軍兵士は、マスクを外すと細菌粘液を吐き飛ばす。


 野戦帽を被り、体中が傷だらけの自衛隊員も、毒ガスを噴出する。



「うわっ! いったん、下がるよっ!」


「分かった、援護するから先に行けっ!」


 科学攻撃から逃げるべく、女性隊員とユーセフ達は引き下がる。



「今だっ!? 予想より敵は来なかったが仕方ないっ!」


 片手で、MAT49を撃ちまっていた、マフディは左手に握る起爆スイッチを押した。



「うわっ! 揺れだしたよっ!」


「どうなっているんだよ?」


 女性隊員とユーセフ達は、急に爆発が連続して木霊したことに動揺する。


 大量の瓦礫が崩れ、帝国側と連合側は互いに姿が見えなくなってしまう。



「ケフッ! ケフッ! おい、全員集合だ?」


「生きている者は集まりなさい?」


 揺れが収まると、フロスト中尉は崩落した瓦礫の山を眺めながら命令を下す。


 ネージュ準尉も、彼とともに部屋から出てきて、隊員を集めはじめた。



「…………で、君達は? 誰だい?」


「ハッ! ハーミアン・マシリンギ二等兵です」


「私は、ユーセフ・ハミース二等兵ですっ!」


 フロスト中尉は後ろに振り返り、増員された警察隊員たちに質問する。



「ハーミアン? 貴方も帝国に?」


「これを、くっつけて貰わないと…………」


「その声は、レギナッ!」


 

 左側の部屋から、レギナとルルワ達が登場すると同時、ハーミアンが彼女らに声をかける。



「レギナッ! 無事?」


「いえ、見ての通りよ」


 ハーミアンの問いに、レギナは右手に握る、自身に付いていた左腕を見せた。



「負傷者は、居るかっ?」


「こっちよ、こっち」


 ヴラウリオの叫びに、ルルワは彼を呼びながら歩いていく。


 右手を切り落とされていた、彼女も回復魔法で、治療して貰おうと近づく。



「ん、これは…………?」


 ルルワは何かを踏むと、それが男性隊員の腕であることが分かった。



「きっと、彼のね?」


「大丈夫か?」


「ヴラウリオ、軽い治療を施したら全員撤退するっ!」


「もう負傷者は? 貴方は誰? アシュア系の…………」


 ルルワは、対物ライフルによる狙撃で吹き飛んだ、カルミーネの右腕を見つけた。


 それを、自身の腕とともに持ち上げると、ヴラウリオに近づいていく。



 フロスト中尉は、敵の逆襲に備えて、部下たちに撤退命令を下す。


 ゆっくりと歩き出した、ネージュ準尉は捕虜を捕えた、シュトルムZ兵を見つめる。



「ファン・ヨンリム曹長、チュソン軍・シュトルムZ部隊の督戦隊所属でしたっ!」


「そう、生き残ったのね? 貴方もうちの隊に入りなさい」


 ビシッと通常の敬礼を行った、男性兵士はファンと名乗った。


 彼は、ケピ帽型の野戦帽を被り、青緑・茶・空色に染色された迷彩服を着ていた。



 背中には、チュソン軍版のRPK74である、64式軽機関銃を背負っていた。


 これには、短距離スコープ&ヘリカルマガジンが装着されている。



「分かりました、副隊長殿っ! 捕虜は処刑しますか?」


 腰の茶色いホルスターから、白頭山ピストルを抜いた、ファンは捕虜に銃口を向ける。



「ぜぇぜぇ…………ぐぶぉ?」


「そうね、それを決めるのはっ?」


「よせ、ソイツも使い道がある? ああ~~ファン曹長、周辺の武器を集めろ」


 苦しげに、俯《うつぶ》せで倒れている、ジハードを見て、ネージュ準尉は呟く。


 そうしている間に、ファンが握る白頭山ピストルの銃口をフロスト中尉が下げさせた。



「他の連中も、まずは負傷兵の後送が先だ、それから出来るだけ装備を回収したら、撤収だ」


 フロスト中尉は、全員に聞こえるような大きい声で命令した。



「ファン、シモーネ、ソイツに手を貸してやれっ! 他の者は装備を回収しろっ!」


「聞いた、レギナ? 積もる話もあるけど、命令が最優先だわ」


「ええ、今は武器を回収するのか先決ね」


 フロスト中尉は、命の灯火が今にも消えそうな、ジハードを助けようと命令を下す。



 もちろん、人命救助が目的ではなく、彼には兵力確保のために使おうと言う魂胆がある。


 その命令を聞いた、レギナとハーミアン達は、忙しそうに動き始めた。



「グフッ! フロスト中尉、何とか生き残れましたな?」


「オルツィ、貴様、何処に行っていたっ!」


 崩落して、瓦礫に塞がれた部屋の入口から、オルツィが出てきた。


 フロスト中尉は、戦闘中に姿が見えなかった彼女を問い詰めた。



「一部・帝国軍部隊の勝手な突入と、連合側による我が隊への分断攻撃が有りましたよね? その後、私は民兵部隊と、一人幻影で兵を増やしながら戦闘していました」


「あの罠か…………」


 淡々と語る、オルツィの話に耳を傾ける、フロスト中尉。


 連合軍部隊は、室内に突入した、警察部隊を四方から奇襲した。



 また、様々な罠や誘導により、隊員たちはバラバラに散らばってしまった。



 これは、事実である。



「しかし、中々勝利できず、焦っていると? 一発放った矢が戦いに決着させました…………なんと、敵の方も私と同じ幻術兵だったのです」


「…………その後、合流した後は、密かに連合側の方に幻影兵を増やしてた訳だな」


 オルツィの説明を聞いて、フロスト中尉は、彼女が嘘を吐いてないと判断した。



「はい、その通りです」


「分かった、イェスパー、彼女と瓦礫や部屋の入口を見張っていろ」


「了解したですっ!」


 オルツィの話に納得した、フロスト中尉は保哨に、イェスパーを呼んだ。


 こうして、二人が見張りに立つ中、警察隊員は武器を回収しながら撤収し始めた。



 一方、その頃、ナタン達は部屋から出て、廊下を走っていた。



「味方と合流しなければっ!」


「もう、かなり後方に戦線を下げているはずよ」


「二人とも、どうやら敵は追って来ないね?」


 ナタンとメルヴェ達は、廊下を走り抜け、土嚢を飛び越えながら進む。


 その後を追っていた、フランシーヌは後ろを警戒するが、敵影は見えない。



「それでも、油断は出来ないっ!!」


「ええ、早く味方と合流しましょうっ!」


 ナタンは走る速度を上げ、メルヴェも遅れまいと必死で駆けていく。



「誰か来るぞっ! 敵兵かっ!」


「射さ、いや、待て?」


 廊下を抜けた先にある広い空間では、チィーナ軍兵士たちが待ち構えていた。


 しかし、そこに居たのは、機関銃手のワンとチュー達だった。



「二人とも? いや、三人とも無事だったか?」


「いったい、何があったんだ?」


「戦線が崩壊した、それで建物を爆破して、これ以上の進撃を阻む事にしたんだ」


「私達は、そこから逃げて来たのよ」


 ワンとチュー達は、廊下奥に銃を向けながら、三人に向こう側の出来事を問いただす。



 ナタンは、起きた事の詳細を説明しながら、AK12を背負い直す。


 メルヴェは、深いため息を吐きつつ、廊下の方に指を向ける。



「ここも、塞いだ方が良さそうだね?」


「ああ、今から鉄板を貼る積もりだったんだ」


「そのために、工兵隊が準備している」


 フランシーヌの指摘を聞いて、ワンは近くに山積みにされた、防弾板を指さした。


 チューも、廊下の正面に立ち、ダットサイト付き03式自動歩槍を構えていた。



「じゃあ、任務は終わったか?」


「そうね、やっと落ち着けるわ…………」


「大変だっ! ブリュッセル通りから敵が攻めて来ているっ!!」


「急げ、今度は向こう側が占領されるっ!」


 ナタンとメルヴェ達は、床にすわり込もうとしたが、いきなり聞こえた悲鳴に驚く。


 声がした方に眼を配ると、チィーナ軍兵士と自衛隊員たちが、何処かへと走ってゆく姿が見えた。

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