燃え盛る地獄の業火が遮蔽物ごと、焼き尽くしていく。
「な、誰だっ! こんな攻撃をするのはっ!」
「うわああああっ!!」
「うぎゃーーーーーー」
レオは、床に伏せながらも、密かに火炎攻撃を行ってきた兵士を探す。
横凪に、左右へと振るわれる火炎放射は、ある人物が行っていた。
ソイツの火炎魔法は、左側から来た増援部隊員を焼き払う。
「ああん? あっ! ありゃ、マサイの戦士じゃないか? 奴が、マジシャンってんだなっ!」
レオは、背中からH&K、G3SG/1を取り出すと、息を殺して、マサイの戦士を狙う。
その間も、火炎放射は、ネレフタ無人小型戦車を何台も破壊する。
しかも、遮蔽物を焼くせいで、左側に位置する増援部隊は、甚大な被害を被っている。
さらに、部隊は灼熱火炎に道を塞がれ、前進も移動もできず、立ち往生している。
「これで、良し…………」
必殺の一撃を放つべく、レオはH&K、G3SG/1を構えて、スコープを覗く。
望遠レンズ内で、十字レティクルに合わせられるマサイの戦士。
「死ね…………」
「させませんよっ!」
狙撃により、マサイの戦士を倒す気が満々だった、レオは何者かに襲撃された。
敵を暗殺するため、狙撃体勢で無防備な彼は背中を蹴られたのだ。
「狙撃手…………そこかっ! いやっ! ジュジースが居るなら任せようっ!」
「あっ? 奴にも気づかれたか? この野郎、お前のせいで、狙撃できなかっただろうがっ!」
「安心して下さい、今度は体も動かなくなりますから」
マサイの戦士ワンガリは、レオが狙撃しようとしていた事に気づいた。
しかし、仲間の剣士ジュジースが狙撃手に白兵戦を挑む瞬間を見て、直ぐに大火球を乱発した。
「ぐわっ! がああああっ!」
「あ、ぎゃあ~~~~!?」
「死ねっ! この野郎がっ!!」
「喧しい」
大火球は、壁や遮蔽物に当たる度、周囲に飛び散り、火の粉を爆散させる。
その威力は、グレネード弾ほどではないが、焼夷弾みたいに火炎を振り撒く。
レオは、ジュジースを近づけまいと、H&K、G3SG/1を咄嗟に撃つ。
だが、ひらりと回るように、彼女は回避してしまい、次いで銀色に光る剣先が放たれる。
「く、味方が殺られちまうっ! てめえっ!」
「接近戦で、しかも白兵戦となれば、貴方に勝ち目は有りません」
H&K、G3SG/1の銃身を振り回して、次に銃床《ストック》で殴りかかる、レオ。
しかし、またもや、ジュジースはバップステップで回避してしたう。
と思いきや、右手に握る、細剣エスパダ・ロペラを真っ直ぐ突き出した。
さらに、左手に持つ、屠殺用短剣プニアルで斜め下から斬撃を放ってきた。
「うわっ! クソ、回避が間に合わねぇっ!」
「これで、終わりですっ! くぶぅっ!?」
レオは、自らに迫る、細剣エスパダ・ロペラの切っ先を即座に避けたが。
屠殺用短剣プニアルは、避け切れず、腹部を切り裂かれてしまう。
更なる突きを放とうとする、ジュジースは勝負に勝ったと思った。
その僅かな隙を突いて、棒手裏剣が背後から彼女を襲った。
「うおおっ! 殺られてたまるかああーーーー!!」
「くっ! 挟み討ちは、されたく無いわねっ!」
ワルサーP5Lを腰から抜き取り、レオは必死で発砲しまくる。
それと、背後からも攻撃を受けた、ジュジースは直ぐさま、煙玉を床に叩きつけた。
「くわっ? 視界を遮りやがったかっ! ぶっ!」
レオは、敵が退いたことで助かったと思ったが、それも束の間だった。
何故なら、彼の脇腹を遠距離から投射された石が、ブチ抜いたからだ。
「うわ…………なんだよ、コレ? 俺死ぬんか?」
「死にはしない」
青い臓物が見えるほど、大ダメージを受けてしまった、レオは後ろに倒れながら呟く。
そして、彼を死なせまいと、サナダが両足を掴んだまま近くの防弾板へと連れていった。
「ごべぇっ! ごぼっ! ごばあっ!」
「衛生兵は…………居ない」
レオを防弾板の裏に隠した、サナダは呟く。
「援軍が来たぞっ! チィーナ緊急展開部隊だっ!」
「自衛隊《JSDF》も来たぞっ!」
「…………ハァ、ハァ? 不味いな、これじゃ全滅だ? サナダ、撤退を準備しろっ!」
白人民兵が叫ぶと、連合軍兵士も、味方の増援が到着した事を喜ぶ。
その叫び声を聞いて、形勢逆転された事を悟った、レオは撤退することを決断する。
左側の味方部隊は、火炎放射により、状況確認はできないが、おそらく潰滅状態だろう。
また、右側の仲間たちも何処に居て、戦闘できる状態かも不明だ。
「因みに、俺は置いてけっ!」
レオは、即座に自身が殿を勤めることを決意する。
「ん…………それは、まだ速い」
「どうした、出血が酷いなっ!!」
サナダは命令された通り、彼を置いて行こうとしたが、そこに左側から兵士たちが現れた。
片方は、黒服のワーウルフで、もう一人は司祭みたいな格好をした、リッチだった。
「今、助けてやる…………これで、出血だけは止まる? だが、あまり動き回るなよっ!」
「敵は何処に行った?」
防弾板まで来た、リッチは早速だが、回復魔法を唱えて、レオの腹に空いた大穴を塞ぐ。
そして、ワーウルフは離れた場所にある事務机から、ビィチャージ短機関銃を撃ちまくる。
「有り難う、助かった…………敵の中で厄介な連中が居るっ! 黒人の女剣士とマサイ族の戦士だっ! 特に女剣士は白兵戦が強いっ! マサイ族の奴は火炎魔法を射ちまくっているっ!」
「分かった、だが、今は安静にしていろ」
「動かない方がいい…………」
レオは、味方部隊の二人に、敵が強いことを説明したが、彼は内蔵まで完全に癒えた訳ではない。
なので、リッチとサナダ達は、彼を動かないようにと説得する。
「しかし、あのマサイ族と女剣士は?」
「マサイ族は、シェラが行った…………女剣士は背中から棒手裏剣を投げつけてやった」
レオは、連合軍の中でも、かなり実力が高い二人を警戒するが。
もう既に、手は打ってあるから安心しろと、サナダは告げる。
「確かに、火炎魔法が止んだぞ」
「ああ? 本当だっ!」
リッチが防弾板の左側から顔を出して、様子を伺いながら呟いた。
その言葉を聞いた、レオも戦況を確めるべく、右側から敵部隊を観察する。
「うぎゃーーーー!!」
「ぐわわぁぁっ!」
「ぐほっ! う…………」
「貴様、中々やるなっ! だが、私に近寄らせはしないっ!」
シェラは、たった一人で白兵戦を挑み、黒人民兵を斬り捨てる。
それと同時に、白人PMC要員の右目に、細剣フルーレを突っ込む。
そして、死んだ奴を肉盾にしながら、アシュア系民兵に投げつけると、双方とも串刺しにする。
こうして、ワンガリの元へ辿りついた彼女だったが、いきなり火炎魔法を浴びせられる。
「この程度関係ない」
「チッ! 死体を盾にしたかっ!」
殺害した兵士たち二名を、串刺しにしたまま、シェラは肉盾にしつつ、火炎放射を防御した。
ワンガリは、彼女が身につけた防弾鎧に、槍の穂先は効かないと考えた。
そして、柄の方で顔を殴るべく、投槍エンペレを凄い速度で振り回した。
ガツンッと、今の攻撃は防御しようとした、彼女が出した左腕に当たる。
「お前は、かなりの使い手だな? 剣の腕が一流だ…………だが、俺には勝てんっ!」
「それで?」
ワンガリは柄の方を前に出して、打突を与えようとする振りをしながら、身を伏せた。
シェラは彼が何をしたのか分からず、取り敢えず頭に細剣フルーレを突き刺そうとする。
「ぐゃっ! ぐああああぁぁぁぁっ!?」
「これが狙いだったんだよ?」
シェラは、背後から雷撃魔法を喰らい、後ろに倒れてしまった。
そして、ワンガリは立ち上がりながら呟くのだった。
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