「…………? 奴らは何処へいったっ!」
「分かりません、砲撃で吹き飛んだのかも?」
「CP、CP…………追跡対象が消失した」
「消えただとっ!」
封鎖部隊は、とつぜん幻影のように消え失せてしまった、ナタンとメルヴェ達を探す。
追跡部隊も、左右に首を振っては隠れて居ないかと、二人を見つけようと捜索する。
「今よっ! 撃ちまくってやるわっ!」
「奇襲攻撃のお返しだ、遠慮せず受け取れっ!」
「うわあっ!!」
「ぐ…………」
「ぎゃっ!?」
「うげぇ?」
メルヴェは、FADを連射し始め、ナタンも後から同じく射撃を行った。
この銃撃は、発射速度が遅い分、正確に敵を狙い撃つことが出きる。
そうして、発射された弾丸は、追跡部隊の兵士たちと、バイクを右側面から撃ち抜いた。
これにより、残り一台だった、TIZーAMー600の搭乗兵は撃ち殺された。
電動バイク、IGパルサーの隊員たちも、胸や腹を撃ち抜かれて負傷する。
「行くぞっ! メルヴェイッ!!」
「ええっ! 行きましょうっ!?」
マガジンが空になるまで撃ち続けた、ナタンはFADを背中に回す。
次いで、建物の中からバイクを一気に走らせて飛び出していく。
FADをホルスターに仕舞った、メルヴェも後を追って、バイクを走らせた。
それを見た、封鎖部隊と追跡部隊は銃撃して、二人を止めようとする。
「反対側が、ガラ開きになってるぜっ!」
「このまま、逃げ切ってやるわ」
追跡部隊が走っていた道を、ナタンとメルヴェ達はバイクで駆けてゆく。
その後を再び、IGパルサー部隊が追いかけてくる。
「…………ん? また、追って来たのかっ!」
「あっちも執拗な性格なのね…………」
先ほど逃げた先から、ヴォドニク装甲車と四台の
MVー750サイドカー部隊が走ってきた。
それを視認して、ナタンは驚き、メルヴェは呆れながら呟くのだった。
「来るぞっ!」
「衝突する気なのっ!」
前方から猛烈な勢いで迫り、ヴォドニク装甲車と四台のMVー750サイドカーが突っ込んでくる。
そして、向こう側は、上部の砲塔から射撃しつつ、二人に突撃してきた。
主武装14、5ミリKPVT重機関銃&副兵装7、62ミリPKT機関銃を撃ちながらだ。
四台のMVー750サイドカー部隊も、側車に備えられたPK機関銃を撃ってくる。
ナタンは、前から段々と向かってくる敵に恐怖し、メルヴェも真っ正面から戦いを挑む敵に驚く。
「ヤバイ、さすがに蜂の巣にされちまうっ!」
「左よっ! 左に逃げるのっ!!」
このまま走れば、追跡部隊に激突するか、機銃弾に体を貫かれるか。
非常に危険だと思った、ナタンはメルヴェの指示に従って十字路を左に曲がる。
その後、急激な旋回に着いて来れなかったらしく、追跡部隊とは距離を取れた。
しかし、それでも連中は諦めた訳ではなく、直も二人を追撃する。
「ちくしょーー! まだ、追ってきやがるっ!」
「それより、前よ、前っ!!」
ヴォドニクを、中心とする追跡部隊は、まだ追ってくる。
ナタンが、サイドミラーを覗き込みながら舌打ちすると、メルヴェが叫ぶ。
そこに目をやると、検問所があり、左側の小屋から銃撃してくる。
反対側には、生ゴミを容れるコンポスト型のトーチカがあり、そこからも弾丸が飛んできた。
しかも、連中は検問所のバーを下げ、さらに路上に罠を敷き始めている。
それは、剣山のように刺が生えた、暴走車両を止めるためにある、スパイクストリップだ。
これを踏むと、二人のバイクは車輪がパンクしてしまう。
「これじゃ、捕まっちまう…………」
「路地に入るわよっ! 着いてきてっ!」
ナタンが額から冷や汗を流す中、敵を狙って、サルマスシズK10を撃つ、メルヴェ。
彼女が、先に路地に入って行くと、ナタンも後に続いて路地に進む。
「ナタン、ここまで来れば、連中も追っては来ないわ?」
「どうかな……少なくとも、装甲車やサイドカーは来れないだろうが?」
そう言いつつ、メルヴェは安堵のため息を吐いて肩から力を抜く。
サイドミラーを見て、敵の追跡を振り切ったか、ナタンは確認しながら呟く。
狭い路地だが、ゴミ箱や段ボール箱など以外は邪魔になる物はない。
しかも、それとて低速で走れば、ぶつからないので問題ない。
「やっと、安心でき…………なさそうだわっ!」
「こっちは、戦車かよっ!!」
二人が路地から出ると、直ぐ右側にTー90プラルィヴ型戦車が停まっていた。
Tー90プラルィヴは、砲塔を回転させると、125ミリ砲を撃ってきた。
「うわああああっ!!」
「きゃああああっ!?」
ナタンとメルヴェ達は、二人とも間近で砲撃音を聞いて、耳の中に耳鳴りが木霊し続ける。
そして、二人とも建物に砲撃が当たった衝撃でバイクを転倒させてしまう。
「ヤバイ、あんなの相手に出来ないぜっ!?」
「また、奴からも逃げるしか無いわよっ!?」
焦りまくりながら、ナタンはTR6トロフィーを立たたせると急いで走らせ始める。
同じく、メルヴェも戦車とは反対方向に、ハーレー39年型を疾走させる。
しかし、そんな二人を逃がすほど、Tー90プラルィヴは甘くなく125ミリ主砲を撃ってくる。
「うぐぅぅ…………」
「ぎゃっ!?」
主砲による砲撃は、またも二人が逃げる先にある建物に当たり、着弾した箇所から瓦礫を飛ばす。
だが、瓦礫が散弾のように振り袖ぐ中、何とか二人は無事に通過できた。
それにより、ナタンとメルヴェ達は安心するが。
「やった、切り抜けたぞっ!」
「これで、危機は脱したわね」
そう言って安心する、ナタンとメルヴェ達だったが、もちろんTー90プラルィヴは攻撃してくる。
今度は、125ミリ主砲から、レフレークス誘導ミサイルを発射してきた。
発射された、レフレークス弾頭は二人の乗った、バイクを目掛けて飛んでくる。
「不味いっ! 追い付かれちまう」
「そうなる前に、こっちよっ!」
レフレークス弾を恐れる、ナタンは呟きながらもバイクの速度を上げる。
一方で、メルヴェは右側にある狭い路地へと急いで入ってしまった。
「あっ! っと…………」
ナタンも急いで彼女を追って、路地の中に入ってゆく。
直後、レフレークス弾が建物に当たって大爆発を起こした。
その勢いで、路地に、オレンジ色に揺らめく爆炎が迫ってきた。
当然だが、それは怪物のごとく、二人を飲み込まんと炎を噴流させる。
「うわあああ、炎だあーーーー!!」
「丸焦げなんて、御免よーー!!」
ブワッと膨らみつつ、直ぐそこまで炎は来ていたが、二人は路地から何とか無事に脱出した。
難を逃れることに成功した、ナタンとメルヴェ達だが、だからと言って安心は出来ない。
何故ならば、次なる敵が二人を睨んでいたからだ。
「はぁ、はぁ、ようやっと逃げ出せたか?」
「いいえ、まだまだ安心出来ないわよ…………」
プラルィヴから逃げ出せた、二人だったが、そこには次なる新手が待ち構えて居た。
ナタンは、バイクを止めて背後を見ると、やっと戦車からは逃げおおせたと思った。
しかし、メルヴェは右側にある集団が存在する事に気づく。
連中はバイク部隊と違って、エンジン音を噴かさない。
何故ならば、重種の黒馬が遠方から走ってきたからだ。
「騎兵隊っ? しかも、西洋の騎士?」
「いや、アレは馬に跨がった、シュヴァルツ・リッターよっ!」
シュヴァルツ・リッターが跨がる馬は、黒い鎧を被せられ、青く目を光らせている。
恐らくは改造された、アンデッド・ホースと思われるが、それを見た二人は即座に逃げ出した。
ナタンは騎兵隊の搭乗に驚き、メルヴェは冷や汗を滴しながら険しい表情になる。
馬上槍試合で使われる、笠状鍔が付いた、ヴァンプレイト・ランスを、騎兵隊は装備する。
連中は、馬上槍試合の盾シュテックターゲを胸元に置くと、一斉突撃を仕掛けてきた。
「ぐっ! あんなに密集されたら切り抜けられないぜっ!」
「だったら、こっちから逃げるのよっ!」
ナタンとメルヴェ達は重装騎兵隊から逃げるべく、反対側へとバイクを走らせた。
だが、そんな二人の前方から走ってくる別動隊が見えた。
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