ハンザ連邦合衆国、ベルギュー州、州都ブルーシェル、公立小学校の廊下。
教室前・廊下にて、窓下の壁に凭れ掛かって座り込む、悪ガキ二人組。
その不良が如く陣取る男児らは、もちろん、ナタンとレオ達だ。
「ぷはぁ~~うめぇぜっ! ジューポン製のタバコはよっ?」
「そうだなぁーーこんな美味い物を彼奴等は毎日味わって居るのか? 羨ましいぜっ!」
廊下にて、タバコを味わって、渋い表情を浮かべるナタンとレオ達。
彼等は、今自分達が大人の格好いい男に成りきっていると思っていた。
「あっ! そこで何をしているっ!」
「それは、まさかタバコッ!?」
そこに、いきなり教師らしき人物達の台詞が聞こえてきた。
ゆえに、ナタンとレオ達は急ぎ、その場から逃げ去ろうとする。
「やべっ! 見つかったか?」
「早く逃げろっ!」
右側から、聞こえてきた声に、慌てて逃げ出すナタンとレオ達であったが。
背後から、なぜか笑い声が聞こえてきたので、気になった、二人は振り向く。
「あははっ? 逃げ出すなよ」
「ふふっ! 僕達だよ、ナタン、レオ?」
そこに居たのは何と、キーランとカルミーネ達だった。
二人は、ナタンとレオ達が美味そうにタバコを吸っていたので、声をかけた訳だ。
そうして、彼等が出した声を、ナタンとレオ達が教師が怒った声だと勘違いしてしまったのだった。
「なんだよ~~? お前達かよ、これはタバコじゃない」
「ナタンの叔父さんが仕事でジューポンに立ち寄った時に、駄菓子屋で買った、ココアシガレットって名前のお菓子だ」
二人に対して、ナタンとレオ達は吸っていたのは、タバコではない。
これは、ただのお菓子だと説明した。
タバコに、そっくりな世にも珍しい、パッケージのお菓子。
その味に少し興味をそそられた、キーランとカルミーネ達。
彼等も、一本吸って見たいなと思った。
「お前達も一本吸って見たらどうだ?」
「沢山あるし、二人も遠慮すんなよっ」
「これは? そんなに美味いのか」
「ナタン、一本分けて頂戴っ!」
ココアシガレットを、美味そうに吸う、ナタンとレオ達に奨められた、キーランとカルミーネ達。
二人は、ココアシガレットの箱を、一人一箱ずつ受け取ると、早速一本試しに吸ってみた。
「うん…………美味い」
「甘い? そして美味し~~い」
ココアシガレットは、口の中に入れると、甘い味が蕩け出す。
蕩けて、徐々に感じる深い甘味は、じわじわと口内に広がって行った。
キーランとカルミーネ達も、その甘く深い味を気に入る。
彼等は、大人のように、ココアシガレットを唇にくわえる。
それを、二本指で挟み、二人とも格好を付ける。
「ぷはっ! この甘い味が良いな?」
「女子達にも持って行こうぜ?」
「ミアやメルヴェ、レギナ、ベーリットも吸いたいだろうしな」
「それは良い考えだよ、教室に行こうっ!」
ココアシガレットを味わう、ナタンに対して、レオが女子達にも、土産を配ろうと言い出す。
キーランとカルミーネ達も賛成するが、土産を持ってきた、当のナタンはと言うと。
「メルヴェ? アイツは女子じゃなくて、メスゴリラの間違いだろ?」
「ぶはっ! メスゴリラって、お前っ!」
「また殴られるぞ?」
「君も懲りないなぁーー」
ナタンが、今この場所には居ない、メルヴェに対する悪口を言い出す。
レオは吹き出して、口にくわえていた、ココアシガレットを口から落としそうになる。
キーランとカルミーネ達は、何時も懲りない、ナタンに呆れてしまう。
「誰が何だって…………」
「誰が何なの? ねっ? 何?」
「あんた等、また馬鹿をやってんのね?」
「どうせ、また私達の悪口でも言っていたんでしょっ!」
その場に…………メルヴェ・ミア・ベーリット・レギナ達が現れた。
そして、女子四人はナタン達が、何か録でも無い事をしていたに違いないと思った。
「なっ!? 何でも無いぜっ! それよりもメルヴェ、お前も一本どうだ? ミア、お前も吸えよ」
「ベーリット、レギナ達も遠慮しないで試しに一本吸って見なよ?」
メルヴェの悪口を上手く誤魔化した、ナタンは、二人に対して、ココアシガレットを奨める。
レオも、ベーリットとレギナ達に遠慮はするなと、ココアシガレットの箱を手渡した。
「何これ? タバコ…………だよね?」
「大人に成らないと吸えないんじゃあ?」
「こんな物を持ってたら先生方に見つかったら只じゃあ済まないわよっ!」
「てか? 子供がこんな物を持っているだけで逮捕されるんじゃ…………」
メルヴェ・ミア・ベーリット・レギナ達も、お菓子を、結局は貰ってしまった。
四人は、受け取った、ココアシガレットを本物のタバコだと思う。
そして、怪訝な顔を向けて、ナタン達を見つめる。
「それは、タバコに見えるお菓子だからな? 前にも俺の叔父さんが、ジューポンとかに仕事で行った時に、変な物を土産に買ってきた事があっただろ?」
「あ~~? そう言えば、そんな事も有ったわね? 確か前は、プラスチックかゴムで出来た、サムライの刀のオモチャとか買ってきたわよね」
ナタンとメルヴェ達は、叔父さんが旅行で買ってきた、下らない土産を思い出す。
二人が話していると、背後には、怒り顔の魔女が居ることに、女子達だけは気が付いた。
「ナタン君、レオ君、貴方達は何をしているのかな…………それっ! タバコよね?」
「えっ! いや、これは、その…………」
「えっと? これはお菓子でして?」
怒りを堪《こら》え、目を細めて、作り笑顔を二人に向ける、フィーン先生。
そんな彼女に対して、ナタンとレオ達は、言葉を詰まらせてしまう。
「あっ! そうだっ! …………フィーン先生も一本どうです? これっ! 実は、ジューポン製のタバコ型のお菓子なんですっ!」
「あら? 有り難う…………どれどれ…………うーーんっ! 甘くて美味しいわねって、こらーーっ! 学校にお菓子を持って来たら駄目でしょうがぁーーー!?」
フィーン先生に、袖の下を渡して見逃して貰おうとする、アホな小学生である、ナタン。
当然だが、そんな彼を、彼女が見逃してくれるはずは無く。
「全く、貴方達と来たらっ! 何時も、何時も性懲りも無く悪い事を繰り返してっ!」
「彼等を赦して上げて下さいフィーン先生、彼等だって大人の真似をしたい年頃何ですよ? だよねまあ君達も学校に紛らわしい、お菓子を持って来ないでね、分かったかい?」
廊下で、ナタンとレオ達を怒り始めた、フィーン先生だったが。
そんな彼女を、背後から現れた、フロスト先生が止めた。
「フロスト先生…………まあ貴方がそう言うなら? 今回は特別に見逃して上げましょう、しかし、今回こそ二人共反省してもう二度としないと誓いなさい」
「はい、フィーン先生…………」
「はい、先生…………」
フロスト先生の説得に、フィーン先生は顔を少しだけ赤くして応じる。
彼女は、コホンと咳き込む真似をして、説教を軽く言うだけにした。
また、ナタンとレオ達が直ぐに謝ったので、二人を赦す事にした。
「君達、良かったね? 許して貰えてさ、後もう授業の時間だよ? 教室に行きなさい」
フロスト先生の言葉を聞いた、フィーン先生と、八人は慌てて教室に走って行く。
「貴方達っ! 廊下は走らないのって、私もそんな事言ってる場合じゃないわねっ!」
「そうだよっ! フィーン先生?」
「あんたもよっ! 喋って無いで早くはしらないと次の授業に遅れるわよっ!」
フィーン先生が叫ぶ中、ナタンとメルヴェ達も、急いで教室に駆け込む。
彼等の後ろ姿を、優しい目で見送る、フロスト先生だが。
彼も、妖しく微笑んだ後、自らの教室に向かって走って行った。
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