「生体改造に洗脳処置、挙げ句には政治的混乱に乗じた侵略戦争っ! そんな非道な行いをやってのける君たちが正々堂々と?」
ピエロ男は、冷静な語り口だが、先程より殺気を増大させる。
奴は、ザミョール中尉の命を、コンバットナイフで切り取ろうと、さらに斬撃の速度を上げる。
「笑えない、ジョークだねぇ?」
「音が、アチコチからする…………くっ! 撹乱するきか?」
ピエロ男は、幻影も含めた六人で、相変わらずタップ音を鳴らす。
こうして、どれが、本物なのか分からない様にしつつ、ザミョール中尉を混乱させる。
「アハハ、背中がガラ空きだよ」
「はっ!? しまった…………」
そんな中、ザミョール中尉の隙を狙った、ピエロ男は密かに動く。
奴は、背後から静かに近づき、コンバットナイフを喉に突き立ててきた。
「中尉っ! 危ないですっ!!」
ガリーナ二等兵は、弾切れになったAEKを手放し、コルト45を腰から抜き取りざまに発砲する。
「ガハッ! な? 何で位置が分かったんだ…………」
「幾ら貴方が優れた幻影使いで、臭いと音は誤魔化せても、本体の殺意や雰囲気までは誤魔化せないわよ」
ピエロ男は、前のめりに倒れてしまい、吐血しながら声を絞り出す。
ザミョール中尉の窮地を救った、ガリーナ二等兵は、位置を特定できた理由を語る。
それを聞いて、後少しで、完全な暗殺攻撃が成功したはずだった、奴は悔しがる
しかし、彼女の言う通り、奴からは微かな殺気が漏れ出ていた。
それは匂いとも音とも違うが、確かに周囲に広まっていたのだ。
「そんな? こんな所で…………ゴメン…………よ? サシャ…………」
胸を撃ち抜かれた、ピエロ男は、呻くように呟き、力なく背後の地面に倒れた。
「一匹、仕留めたか? だが敵はまだ勢いを弱めてはくれそうにないな」
鋭い視線を、ザミョール中尉は、岩陰から敵の銃火へと向ける。
彼は、優勢な連合軍コマンドー部隊に止めを刺すべく、思案する。
「一人負傷者が出たぞ、ヤバイ」
「火力を上げろっ! 近寄らせるな」
そこには、未だ健在な軽機関銃手である、緑色のシュヴァルツ・リッターが存在する。
また、分隊支援火器手のオーガーも、銃を猛烈に乱射している。
「アイツ等を仕留めるには、こちらも集中攻撃を加えねば…………」
ザミョール中尉は、敵の優勢な火力と、防御力が高いアーマーを着込んだ、敵に注視する。
「ソロモン、ゲンナジー、ギルシュ、キルサン、奴等の右に回れ、横から圧力を加えてやるんだっ! カピトリーナお前はそのまま正面から撃ち続けろ」
「ザミョール中尉、了解しました」
ザミョールの命令に従い、四人は互いに援護し合いながら、即座に移動し始める。
そして、所々に点在する、遮蔽物である岩や岩柱に身を隠しつつ右側へと進む。
カピトリーナ二等兵も大楯に身を隠しつつ、右手に握るGShー18を撃ち続ける。
「これでも、喰らえっ!」
岩影から、TOZー194を撃ち、散弾を発射するザミョール中尉。
一回撃つと、彼は直ぐに身を隠し、敵の銃撃から身を守る。
「二発目だっ!」
次に、ザミョール中尉は岩陰の反対側から二撃目を撃つ。
そうして、敵の注意を引き付けて、左側から攻める三人を援護する。
また、彼は身を隠しつつ、岩陰からチラリと命令を出した、三人の方を見た。
そこでは、彼等も銃を撃ちながら、何とか前進している様であった。
「ザミョール中尉、無事でしたか」
「ガリーナ…………さっきは助かった」
ザミョールの元へと、敵から雨霰の如く浴びせられる銃撃を潜り抜けてきた、ガリーナ二等兵。
彼女は、ザミョール中尉の側にある岩陰に張り付き、AEKー971から弾装を素早く付け替えた。
「奴等、また近づいてきたわ、弾幕を上手くすり抜けて来たわね」
「まだ負けた訳じゃない、必死で撃てば数が減るさっ!」
黄緑色ベレー帽の白人女性コマンドは、渋い顔をしながら、必死でベレッタM92Fを両手《アキンボ》で撃ち続ける。
その側では、紅いベレー帽を被る男性コマンドが、真っ直ぐに手を伸ばす。
こうして、真っ直ぐ伸ばした、指先から火の玉を発射し続けていたが。
三人の突撃班が、左側から迂回してくると、奴はベネリM4散弾銃を背中から取り出す。
「来るなっ! 来るなってんだよっ!」
岩陰や岩柱に身を隠して、進撃してきた帝国警察部隊の三人にベネリM4が散弾を発砲する。
こうして、紅いベレー帽の男は、敵部隊を近寄らせない様にする。
「ぐぅっ! 奴等が来るのか、来るなら帰り撃ちだ」
「蜂の巣にしてやるぜ、さあ来いやっ!!」
ケピ帽を被った、白人コマンドとフリッツ・ヘルメットの黒人コマンド達は、銃を乱射しまくる。
それにより、二人は弾幕を張って、一時的にでも進撃を止めようと努力する。
「オラ、オラッ!!」
「うらあ~~~~!」
白人コマンドは、ブルバップライフルであるFAーMASG2を連射する。
黒人コマンドは、H&K、Gー3を単発連射で何回も撃つ。
しかし、岩陰などの遮蔽物に身を隠しては進む、警察隊員たちは、前進を決して止めない。
彼等は、かなり近づき、距離五メートルまで差し迫っていた。
「喰らえっ! グボォッ!」
ゲンナジー伍長は、顔の下半分を覆う、ガスマスクを外す。
次いで、口を大きく開いて、紫色の毒粘液を吐き飛ばした。
「しまっ!! ぐふぅ…………!?」
逃げ遅れた、フリッツ・ヘルメットの黒人コマンドは、いきなり前のめりに転んだ。
彼は、もがき苦しみながら白眼を剥いて、口から泡を吹いてしまう。
「奴等は毒粘液を吐いて来たぞ、気をつけろっ!」
左右から、オーガー&シュヴァルツ・リッター達が、激しい弾幕を張る。
そんな中、ケピ帽の白人男性コマンドも怒鳴りながら、FAーMASG2を乱射して撃ちまくる。
その攻撃を、岩陰に身を隠して、やり過ごそうとする四人だったが。
しかし、彼等の前方に位置する、遮蔽物・左側にある陰では、コソコソと密かに動く存在がある。
また、そこから段々と近づいて来る、一人の人影は奇襲しようと、一気に攻撃を仕掛けてきた。
「ここからなら…………さっきのお返しよっ! ブハァァ~~~~!」
アジア系の迷彩野戦帽を被った、グールである女性コマンドは、息を深く吸い込む。
そして、岩陰から勢いよく顔を出したかと思うと、彼女は口から緑色の毒ガスを噴射してきた。
「ぐわぁ~~~~!!!!」
毒粘液を再び吐こうと、準備していた、ゲンナジー伍長は、まともに毒ガスを吸ってしまった。
それにより、喉を両手で押さえたまま、後ろにバタリと倒れた。
「一人負傷っ! これじゃあ化学戦かっ!?」
「何だって良い、奴等に撃ち返せっ!」
「じゃないと、穴だらけにされるぞ」
岩陰に身を隠している、ソロモン一等兵・ギルシュ二等兵・キルサン二等兵だったが。
この三人に、大量の銃弾がバラ蒔かれて、岩塊に小さな穴が、沢山ひらいていく。
また、連合軍側の集中攻撃に晒される、彼等は身動きが取れなかった。
こうして、彼等は反撃すら、まともに出来ない状況に追い込まれた。
「さ~~? ふぅ…………姿を晒しなさい?」
岩陰に潜み、ステアーAUGA2を構える、緑色ベレー帽を被った黒人女性コマンド。
彼女は、ダットサイトを覗くと、静かに狙いを定める。
標的は、制圧射撃を受けて、身動きの取れない、ソロモン一等兵とギルシュ二等兵たちだ。
照準の赤点を合わせると、二人を狙撃しようと、気を集中させる。
彼女は、獲物の無防備な姿に笑みを浮かべて、緑色をした唇を舐めると、そっと引き金を引いた。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!