「今日学校に新しい先生が来るんだって」
「本当なの? でも何でこんな時期に来るなかな…………」
小学校の長い渡り廊下を、明るい笑顔を浮かべて、テクテクと歩く女子生徒たち。
二人は、新任教師が赴任して来るとの話題で、会話に花を咲かせていた。
「何でも、ネースケンス先生が育休で病院に入院中だから、変わりの先生が来るんだって訳らしいよーー?」
「え~~そうなんだぁーー? 新しく来る先生がイケメンの男の人だったら嬉しいよねぇ~~」
女子生徒たちは、二人揃って楽しそうに話しながら歩いていく。
そして、床に腰を卸し、壁に背中を凭れ掛ける、ナタンとレオ達チンピラの前を通り過ぎていく。
「はぁ? 新任教師っ? イケメンっ? 知るかよっ! …………んな事」
「全くだな…………あっ!! やべっ?」
「こぉら~~! あんた達ぃーー何で廊下で座ってんのぉ~~! そんなに座りたいならちゃんと教室の椅子に座りなさいっ!」
廊下で、不良みたいに座る、ナタンとレオ達に対して怒りを露にする女性教師の怒声が響く。
それに、ビックリした、二人は慌てふためきながら立ち上がる。
だが、その場から急ぎ逃げ出そうとする、ナタンとレオ達は、女性教師に肩を掴まれる。
クルリと体を回されて、二人に真剣な眼差しと、険しい表情を彼女は向ける。
彼女は、背が低く、赤茶髪の髪を後ろで、ポニーテールにして縛っている。
その髪を、二つに丸め、玉ねぎ型にしていた。
ポニーテールを玉ねぎヘアにした、ヘーゼルカラーの瞳を持つ、女性教師に説教を喰らう二人。
「まーた貴方達ねぇ? ナタンにレオ? 良いっ! 二人とも、そんな不良見たいな事を続けていたら録な大人に成らないわよっ!」
「録な大人にって? イズラムゲリラとか~~?」
「そうそう? 他にもネオナチとかぁ?」
二人の将来を心配して、説教を聞かせて諭す、女性教師だが。
ケラケラと笑いながら冗談を言って、ふざけた態度を取るナタンにレオ達。
「二人とも…………良い加減にしなさーーいっ!」
「ああぁーー! ご免なさ~~いっ! フィーン先生っ!」
「うあぁ~~! フィーン先生~~! すいませんでしたぁーー!」
怒り狂う、フィーン先生に謝りながら、再び逃走を図る、ナタンとレオ達。
彼等は、教室まで逃げ込み、そこで授業開始を告げるチャイムの音が鳴る。
「全く…………あの二人の将来は凄く心配ね?」
一人、渡り廊下に残った、フィーン先生はそう呟くと、自分も授業を行う為に、教室を目指した。
「それにしても…………新米の先生は大丈夫かしら? 何だか色白で体が弱そうだったけど…………」
渡り廊下で呟き、フィーン先生は、教室の前まで来ると、ドアを開いて中に入り授業を開始する。
「皆さん授業を始めます」
一方、別な教室で新しい先生が来るのを待つ、ナタンとレオを含む生徒たち。
そして、ドアが開かれ、廊下から若い灰色スーツ姿の男性教師が現れた。
「や~~あ? 皆待たせたね…………僕が産休で暫く授業を行え無い、ネースケンス先生に変わって新しく赴任して来た、フロスト・ズィルバーマンだっ!」
新しく赴任して来た、男性教師は、優しい笑顔を教室の中にいる生徒たちに向けて、名を名乗る。
「皆、ネースケンス先生が仕事に戻る短い間だけの付き合いに成るけど宜しくねっ!」
そう話す、新しく赴任して来た、フロスト先生の姿を見た、ナタンは凄く驚いて叫ぶ。
「あっーー! 昨日の吸血鬼だっ!」
「吸血鬼だって? 酷いな~ナタン君は?」
この学校に、赴任して来たばかりであるフロスト先生に対して、ナタンは失礼な事を言ってしまう。
彼の大きな叫び声は、教室中に響いた。
「酷いな~~? 確かに僕は先天性白皮症《アルビノ》で良く、ヴァンパイアに間違われるけど…………だからってそんなに叫ぶ必要は無いだろう?」
「あっ! すっ済みません先生…………でっでも昨日の先生の服装はまるで本物の吸血鬼見たいでしたよ」
困り顔で喋る、フロスト先生に対して、ナタンは何とか苦しい言い訳するが。
「ちょっと、ナタンッ! あんた何先生に対して失礼な事を言ってんのよっ?」
「メルヴェの言う通りだぞっ! て言うか? お前は何処でフロスト先生と出会ったんだ…………」
メルヴェとキーラン達にも、言われたナタンは、またも適当な言い訳を答える。
「いや? 先生も悪いんだって、昨日見た時は真っ黒いロングコートを着てて本物の吸血鬼に見えたし、つうかあの時の公園での後に道を尋ねられたんだよ」
ナタンは、自分が何故失礼な事を言ったのか、二人に事情を説明する。
そこに、フロスト先生は、ナタンやメルヴェ達を含む、騒ぎ始めた生徒たちに落ち着くように促す。
「皆、静かにっ! 授業を始めるよ」
「あの人が新しい先生か? まっ確かに教師っつ~~よりは、吸血鬼見たいに見えるな?」
「それにしても格好良いわねぇ~~♡」
教室中の生徒たちに対して、静かにするように促す、フロスト先生。
彼を、頭の後ろで腕を組み、胡散臭い詐欺師を見るような目付きで彼を睨む、レオ。
机に、右腕を置き、左手を頬に付けながら頬を赤くしつつ呟く、ミア。
と、まあ生徒たちの反応は様々であった。
「先生っ! 質問良いですかっ! 先生は実は吸血鬼で僕たち生徒を餌にしようと考えているんじゃっ!」
「そうそう? 先生はアルビノって言ってるけど吸血鬼が良く使う太陽に肌が焼かれる奴の言い訳じゃあ」
「あんたら? 先生に対してナタン見たいに失礼な事を言ってるわよ…………」
カルミーネとレギナ達も、新しく来た先生に興味を示し、冗談を言って、授業を妨害する。
ベーリットは、そんな二人を半ば呆れながらも、ツッコミを入れて制する。
「はいはい? 分かったよ、授業は一旦中止にして君達の質問に答えるよ」
うるさく騒ぐ生徒たちに、フロスト先生は質問時間を取った。
そして、生徒達の自らに対する、様々な質問や疑問に答えて行く。
「あははっ! 前に住んでいた町でも良く吸血鬼だって間違われたよ、それに肌も髪の毛も白いから目立つしね」
フロスト先生は、生徒から次々と飛んでくる質問に笑顔で答え、みんなに好印象を与える。
その後は普通に授業を行っていった。
やがて、放課後の時間が来ると、ナタン達は教室に集まっていた。
それから謎の新任教師フロスト先生について、話し合っている。
「でさあーー皆? あの先生の事をどう思う?」
「そりゃあ! 勿論あいつは吸血鬼に決まってんだろう?」
「そうだぜぇ~~奴は吸血鬼ドラキュラの子孫か何かだろっ?」
「もし、それが本当だとしたら私達は食べられちゃうの?」
ミアは、教室に集まった遊び仲間たちを前にして、フロスト先生の正体に関して考察を聞いた。
レオとナタン達は、あいつは本物の吸血鬼だと言い、レギナは、不安そうな顔で怖がりながら呟く。
「まあ、その可能性は有るかもな? 奴の本当の姿は、夜な夜な美女の首筋に噛み付く吸血鬼…………もしくは狼男かもな?」
「そうよ? あいつは吸血鬼ドラキュラの子孫で、レギナ見たいな可愛い女の子を拐って首筋に噛み付いて、お嫁さんにしちゃうかもね?」
「そんな訳無いでしょう…………皆は映画の見すぎよっ! ま~~あ、私もあの先生は怪しいと思うけどさ?」
「僕もそう思うよ! 奴は得たいの知れないモンスターやエイリアンじゃないかってね?」
謎の新任教師フロスト先生を、キーランとベーリット達も、吸血鬼や狼男だと言いだす。
それを否定する、メルヴェもまた、やはり先生は怪物では無くとも、何処か怪しいと言う。
カルミーネも、それに続いて、モンスターやエイリアンでは無いのか。
と、本人が聞いて居たら、失礼過ぎるだろうと思う事を、皆で言い合う。
「でも…………あの先生になら私の事を同じ吸血鬼に変えて、お嫁さんにしてくれても良いかな♡」
「ああっ! ずるーーいっ! 私もフロスト先生にお嫁さんにして欲しいのにぃっ!!」
フロスト先生に惚れている、レギナとミア達は、彼が怪物だとしても、格好いいと顔を赤らめる。
「アホらしっ! 血を全部吸われて干からびた、ミイラ見たいに成ったらどうすんだよ?」
「だよな? あんな怪しい奴は信用出来ないぜっ!」
そう悪態を吐く、ナタンとレオ達だが、急にドアが開かれて、件のフロスト先生が入って来た。
「君たち…………また僕の事を吸血鬼だとかエイリアンだとか言い合って居たね? そんな事を話し合っている暇が有るなら家に帰って勉強でもしたらどうなんだい?」
開かれた扉から教室内に、ゆっくりと入って来た、フロスト先生。
彼は、八人の生徒達に呆れながらも怒らずに注意する。
「あっ先生っあの…………これは? そのっ!」
「全部聞いて居たよ…………」
ナタンが言い訳をしようとすると。
フロスト先生は、全部聞いていたと言い、教室内が気まずい雰囲気に成る。
「はぁ~~? 君達は全くしょうがない生徒達だな? 今日は早く家に帰りなさい、良いね?」
「はい…………」
「はぁい」
フロスト先生に注意された、ナタンと遊び仲間たち全員が、そそくさと帰りだして教室を後にする。
「あっ! ナタン君は待ってね?」
「えっ! 何でですか?」
フロスト先生に、いきなり呼び止められた、ナタンは、ヤバい怒らせたかと困惑して焦るのだが。
「君はいくら何でも言い過ぎだよっ! 僕の見た目も誤解を生んでいるかも知れないけれど…………それにしたってモンスターやエイリアンは無いだろう?」
「ご免なさい…………でも、エイリアンとか言ってたのはカルミーネだしっ!」
静かに説教をして怒る、フロスト先生に対して、ナタンは、一度は謝るも再び言い訳を言った。
「言い訳はしないのっ! …………君には昨日助けて貰った事だし、そんなには怒らないけど? もし僕が本当の吸血鬼やエイリアンだったらどうすんだい…………」
「えっ! それは…………まさか本物のっ!」
突如、雰囲気が変わった、フロスト先生の様子に、少々ビビりながら、ナタンは後退る。
そして、徐々に近付いて来る、フロスト先生は、ナタンの体をがっしりと掴む。
次いで、か細い腕だが、かなり強い力で、彼の両腕を押さえつける。
「うわぁぁーーーー!? 放せっ!」
「あははっ! ビビったかい? 人の事を吸血鬼だとか言ってた罰だよ…………これに懲りたら余り変な噂話しをするのは止めようね?」
驚き、悲鳴を上げるナタンの体を放し、冗談だと愉快に、フロスト先生は笑う。
その後、再び驚いたまま、キョトンとした顔をする彼にさっさと家に帰るように促す。
「陰口や行きすぎた冗談は御互いに嫌だろう?」
「せっ先生!? 冗談かよっ! は…………あ~~? わっ! 分かりました…………もう帰ります、さようなら」
そう言うと、教室からナタンはそそくさと出ていき、教室には、フロスト先生だけが残された。
「吸血鬼か…………皆そう言うんだよね?」
一人呟く、フロスト先生は四角い黒渕眼鏡を掛けなおして、教室の端にある机まで行く。
そして、椅子に座ると、書類を整理したり、残りの仕事を終わらせようとした。
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