「車を止めろっ!」
「チィッ! 分かった…………と、見せかけてっ!」
H&K、P30を構えていたドライアドだったが、運転手はトヨタを停車させる。
しかし、いきなり急発進させて、ドライアドを振り落とした。
「ぐわああああ」
「チィッ! グフッ!」
「野郎、うぎっ!」
雪積もる道路に頃がってゆく、ドライアドは叫び声を上げる。
揺れる荷台の上で、ヴァンパイアとワーウルフ達は大きな隙を作ってしまった。
そこを、すかさず、ナタンはMASー1935を撃ちまくる。
そして、二人の胸に何発か当てることに成功した。
「殺られてたまるかってんだっ!」
「こっちも、そう易々と殺られはしないわっ!」
「ぐぅぅっ! 貴様っ!!」
今ので、ヴァンパイアとワーウルフ達を、ナタンは倒すことに成功する。
メルヴェも負けじと、小刀ヤタガンを下から振り上げ、帝国兵の左腕を斬り上げる。
「メルヴェッ!! 退けっ!」
「ぐはぁーー!?」
ナタンは、MASー1935拳銃を撃ちまくって、帝国兵に右側面から射撃を浴びせた。
そして、帝国兵が荷台から落ちると、味方部隊が居なくなった、トヨタに銃撃が飛んでくる。
「助かったわ、でも次がくるわよっ!」
「ああ、もう機銃を撃っている暇はないっ!」
直ぐ様、メルヴェは、ダネルMGLを持ち上げ、グレネード弾を放つ。
それにより、真っ向から座席に直撃を受けた、ZILー157トラックはド派手に吹き飛んだ。
しかし、残る二台のトラックからは、猛烈な射撃が飛んでくる中、ナタンも撃ち返す。
彼は、二丁拳銃で強く握りしめた、MASー1935を何度も発砲する。
それにより、トラックの敵兵は、撃たれまいと素早く身を隠す。
また、BTRー40ZhD装甲トロリーの運転手もH&K、P8拳銃を握る手を引っ込めた。
「よし、メルヴェ、今の内にぃっ!?」
「まだ、死んでねえぞ、この野郎がっ!」
「うわ、まだ生きてたのっ!」
ワーウルフは、背後からナタンの首を力強く締め上げ、息を吸えなくして苦しめる。
メルヴェは後ろに振り向き、ダネルMGLの銃口を向ける。
しかし、相棒を肉盾にされているため、榴弾を発射できない。
西側製・グレネード弾は、20メートル以内で、命中しても、爆発しないよう設定されている。
だから、メルヴェは何とか後ろに立つ、ワーウルフだけを仕留めようと狙いを定める。
「メルヴェ、後ろ…………後ろから撃ってくる…………?」
「黙れ、このまま首の骨を折ってやる」
「く、仕方ないわっ!? アレ…………」
荷台を狙い、後ろから何発か弾丸が飛んでくる中、ナタンの首はワーウルフに締められ続ける。
メルヴェは、自身やナタンを狙う追撃部隊に、ダネルMGLを向ける。
しかし、運悪く弾丸が無くなってしまい、二人は窮地に陥る。
「奴らは動けないっ! 今の内だっ!」
「集中攻撃だっ!」
「撃ちまくれっ!!」
ZiSー151トラックに乗っている、ドライアドは、何発もドラグノフSVDKから弾丸を撃つ。
それ以外にも、何人か帝国兵たちがAK15を撃ちまくる。
BTRー40ZhD装甲トロリーの運転手も、再びH&K、P8拳銃を発砲してきた。
「クソッ! うら……」
「うおっ!?」
「死ね、死ね、死ねっ!!」
ナタンは、二台のトラックから浴びせられる射撃を避けようと、ワーウルフを後ろに押し倒す。
しかし、それでも、ワーウルフは彼の首を掴んで放さない。
一方、メルヴェは背後の追撃部隊に、サルマスシズK10を撃って、牽制射撃を加える。
こうして、走っているトヨタ・テクニカルは、広い交差点の手前まで走ってきた。
左右両側には、眼科病院とホテル・フォンデンブロークがある。
「おい、荷台の連中っ! また前から来たぞっ!」
「援軍だっ! このまま一両くらい、破壊してしまえっ!」
「やったぞ、もっと射撃を集中させるぞっ!」
トヨタ・テクニカルの運転手は、真っ黒い特別列車が、前方から勢いよく走ってくる姿を見た。
それは、ZiSー151トラックに乗る帝国兵たちにも視認できた。
そして、BTRー40ZhD装甲トロリーは、特別列車と衝突しないように、線路から路上に出た。
しかし、なぜか味方であるはずの特別列車から砲撃や機関砲による射撃が飛んできた。
機関砲ZPUー2、旧式戦車Tー62、歩兵戦闘車BMPなど。
貨物列車の荷台に載せられた、様々な兵器類が火を一斉に吹く。
「ぎゃああああっ!」
「うわあっ!?」
「な、何でっ!?」
「ぐあーーーーーー」
ZiSー151トラック、BTRー40ZhD装甲トロリー。
これらに乗っていた、ドライアドを含めた帝国兵たちは、トラックごと爆散した。
「な、何だったんだ?」
「ぐああぇぇ? ぅ…………」
「もう少しだな」
「いえ、今すぐよ?」
トヨタ・テクニカルの運転手は、呟きながら通りすぎてゆく、特別列車を眺める。
ナタンは、顔を真っ青にしながら、必死で踠《もが》いていた。
そして、ワーウルフは最後の一撃だと、両腕に力を込めたが。
追撃部隊が殲滅された事で、後ろを気にしなくて良くなった、メルヴェが銃口を向けた。
次いで、サルマスシズK10から、一発だけ弾丸が発射された。
「う…………」
「はぁはぁ…………た、たた助かったよ、メルヴェ?」
「はあーー? ナタン、大丈夫なようね?」
眉間を撃たれた、ワーウルフは両腕から力が抜けてしまい、ナタンは解放される。
そうして、立ち上がった彼を見て、メルヴェは安堵した。
それから、二人は特別列車を見た。
「おーーい?」
「大丈夫かぁ~~?」
特別列車の屋根や、Tー62戦車には幾つも赤い旗が立てられた。
それから、レジスタンス員と言うより、民間人らしき人物たちが手を振ってきた。
特別列車は、通常の列車に旧式兵器を大量に積んだ、急増兵器だが。
連合側の反攻作戦と一斉蜂起に合わせて、市民たちも義勇兵として、戦いに参加したわけだ。
それにより、これも滷獲されたのだろう。
「味方が乗っていたのか、BF1みたいに戦いに成らなくて良かったぜ」
「ナタン、これはゲームじゃないの? 実戦なのよ…………」
ようやく、戦いに決着がつき、ナタンは力なくAAー52に、ベルトリンク式機銃弾を装填する。
その手前で、メルヴェはサルマスシズK10をホルスターに仕舞った。
そして、床に置いといた、FADを手に取って構えた。
「ようやく、静かになったな? これで、敵が来なければ…………」
運転手が呟いた瞬間、いきなり何かが右から突っ込んできた。
「うわああっ!?」
「きゃああああっ!」
ドンッと言う音とともに、ナタンとメルヴェ達は、道路に体を放り出された。
「痛い、いたた、ここは? メルヴェ?」
「ミゾン・ノトォダミ・ダ・ラ・ポヴィドンス…………よね?」
すぐに起き上がった、ナタンは辺りを見渡して、メルヴェを探す。
幸い彼女も、柔らかい雪の上に転がり落ちたお陰か無事だった。
今、二人が見ている物は白い修道院に突っ込んだ、二台の車両だ。
今まで自分たちが乗っていた、トヨタ・テクニカルだが。
それは、入口の脇に、半分壁面に埋まったように作られた塔に衝突して前面が完全に潰れていた。
一方、小さな入口の方は、黒いボクサー装甲車が突っ込んだまま炎上していた。
「そうだ、だが、それよりも…………」
「運転手は、死んでるわよ」
トヨタ・テクニカルを眺める、ナタンとメルヴェ達だったが。
ぺしゃんこに潰れた座席から、真っ赤な血が流れ出ているのを確認した。
「ああ、これから何する? 運転手から行き先は聞いてないし?」
「この近くには刑務所があるわ、そこが目的だったのかも?」
中世風の趣《おもむき》を残した、街並みを眺めながら、ナタンは困った表情を浮かべる。
メルヴェは、近くに存在する帝国警察が管轄する刑務所がPMCの襲撃目標だったと考えた。
「そこに行くには、まだ前に行くしかないか……」
「しかも、歩きながらね…………」
こうして、ナタンとメルヴェ達は、射撃音が木霊する街中を歩きだした。
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