昏睡状態となった、レギナの様子を警察隊員たちは、じっと観察していた。
「今頃、レギナは凄く幸せな夢を見ている頃だろう? きっと、楽しく遊んでいるに違いない」
フロスト中尉が呟くと、いきなり腰のポケットが振動し始めた。
「ああ、ネージュか? もしもし、どうしたんだい? うんうん、分かったよ、それで?」
『中尉…………上層部からの命令で、新たなテロリストの拠点が割れました…………それを調査しろと』
スマホを取り出した、フロスト中尉は直ぐに連絡相手に声をかける。
その相手である、ネージュは上層部から下った命令と、彼に新しい情報を伝えた。
「分かった、直ぐにそっち向かう…………うん、そうだよ、ああ…………」
少しの間、フロスト中尉はスマホで、ネージュ準尉と話した。
「ーーと、言うワケだから後は君たちに任せるからね? まあ夢の中で仲良くゲームでもして上げなよ」
「了解っ!」
「了解しましたっ!」
「了解ですっ!」
「了解…………」
その後、フロスト中尉はレギナを洗脳教育する事を、四人に任せて直ぐに部屋から出ようとする。
レオ・ミア・カルミーネ・ベーリット達は、フロスト中尉による命令が下ると素直に従った。
「済みませんが、フェスターシュニー博士、後を宜しく頼みます」
「わあってるわよ、後はこっちで調整しておく、それから女子たちは借りるからね」
軽く頭を下げて優雅に踵を返して、去り行くフロスト中尉。
そんな彼に対して、煙草を咥えながら、ミアとベーリット達を借りる。
と話しながら、面倒くさそうに、コンソールパネルを操作する、フェスターシュニー博士。
「ええ、構いません」
フェスターシュニー博士の頼みに、後ろに振り替えった、フロスト中尉は短く返事を返す。
「それじゃあ、僕らは邪魔だから外に行こうか」
「俺はトイレに行ってきます」
「あ~~僕は、トレーニングルームに行きます」
そう言いながら、部屋から、フロスト中尉が静かに出ていくと。
その背中に続いて、レオとカルミーネ達も、101号室から出ていく。
「さて、アンタらを残したのは訳がある…………もちろん、この娘の頭ん中をいじくり回すのを手伝い貰おうかと思っててね」
フェスターシュニー博士は、そう言いつつ親指を拘束されている、レギナに向ける。
「さっき、フロストの奴が言っへた通り、ゲーム形式で彼女を洗脳するわ…………だから貴女たちも一緒にゲームの世界に行くのよ」
「分かりました、そいじゃコレを被って…………と」
「ゲームの世界へGOーー!! …………お?」
フェスターシュニー博士は、レギナに対して行われる洗脳方法を、二人に説明した。
それから直ぐに、命令に従って、ミアとベーリット達も、ヘッドマウントディスプレイを被った。
一方、レギナはと言うと。
「…………ここは何処かしら? 寒い、ひたすら寒いわ」
ーーと言いつつ、両肩を震わせて、すばやく両腕を組む、レギナ。
「高い場所らしいけど?」
今、レギナが立っている場所は、白銀に輝く高い峰々《みねみね》に囲まれた刑務所の監視塔だ。
『緊急事態発生っ!! 繰り返す、緊急事態発生っ!! 刑務所内で暴動が起きているっ!! また、外からも敵勢力による襲撃が起きているっ!!』
「は? 暴動? それに、襲撃って何…………?」
「死ね~~~~!!」
いきなり、刑務所内に轟いた放送に、レギナは驚きながら呟く。
彼女が下を見ると、刑務所内では、オレンジ色の服を着た、囚人達が暴れ回っている姿が見えた。
連中は、看守である帝国兵を追い回し、鉄パイプや斧を振り上げては、次々と殺戮を繰り返す。
その中には、看守から奪った、拳銃や散弾銃に短機関銃まで構える者も見える。
そして、刑務所の壁から外には、軽野戦砲や迫撃砲を積んだ、トラック等が見える。
それらに乗った連中は、囚人たちと違って、自動小銃や重機関銃など重火器を装備している。
服装は、レジスタンスや連合軍と同じく緑色だ。
「ヤバい場所だわ、てか…………私も帝国兵を倒さないとっ!」
レギナは、監視塔の真ん中にある机から自らが、身に付けていた装備を取る。
コンパウンド・ボウ&矢筒。
WIST《ヴィス》ー94Lピストル&複数の弾帯。
これ等を装備した、レギナは直ぐに下で暴れている囚人たちに加勢するべく、弓を構えた。
「え?」
外から敵が放った、RPGー7が監視塔の柱に当たり、ド派手な爆発を引き起こした。
「えっ! ちょ、待っ…………!?」
それにより、監視塔は上部スペースを支えられなくなり、刑務所内に倒れてゆく。
ゆっくりと倒れ始めた、監視塔の上で、レギナはアタフタするが、結局は何もできない。
「わぁーーーー!!!!」
そうして、監視塔とともに、レギナは地面に向かって落ちていく。
「…………ててて? っと?」
結局、倒れてしまった監視塔から落下した彼女は、何とか生きていた。
そこで、痛む体を起こし、辺りを見回すと看守である帝国兵たちが、必死で敵に反撃していた。
オレンジ色の囚人たちは、まるでゾンビ映画みたいに大量に走ってくる。
そして、帝国兵たちは軽武装であり、拳銃や散弾銃ていどの武器しか所持していない。
「背後は取ったわ、これで…………」
コンパウンド・ボウを構えた、レギナだったが、なぜか彼女の方にも銃弾が跳んできた。
「は? 私は味方よ、何で射つの?」
暴徒と化した、囚人たちはレギナも標的に看守から奪取した銃を撃った。
刑務所内が、混乱に包まれる中、彼女もまた騒動の中では、ひたすら右往左往するしかない。
「レギナ、助けてっ! このままじゃあ~~私達は、押されちゃう」
「こっちも、ヤバいわっ!! レギナの援護が必要よっ!!」
「はあっ!?」
見れば、何人かの帝国兵と一緒に、ミアとベーリット達が、囚人達と戦っている姿が見えた。
ミアは、灰色に塗装された、コンテナの後ろに隠れながら悲鳴を上げるように言った。
彼女は、ステアーGBとステアー・ハーン・ドッペルを囚人たちに向けて乱射する。
ベーリットも、いくつか積み上げられた大型タイヤの陰から、AGー3を囚人達に撃つ。
彼女も、囚人たちの数が多い事に苦戦しているようであり、険しい表情をしている。
レギナは、そんな二人の状況に驚く。
「…………何で、私に頼むのよっ! 私は貴女たちの敵でしょうっ? はっ! そうだわ、ここはVR空間の中なのね」
レギナは、ついさっきまで自分が、101号室の中で拘束されていた事実に気づく。
そう、ここはPC内に作られた箱庭であり、夢の中に存在する架空世界でしかない。
「…………!! そうかっ!! 二人とも、私を騙そうって考えているのね?」
突っ立ったまま、動きもせず思案し続ける、レギナの存在は、囚人達にとって格好の的だ。
ゆえに、レギナの足元に何処からか銃弾が何発も跳んできて雪を舞い上げる。
「きゃっ!!」
驚きのあまり、後ろに倒れてしまった、レギナは急いで立ち上がる。
それと、同時に直ぐ後ろにあった倒れたままの監視塔にまで走ってゆく。
殆ど、瓦礫の山と化してしまった監視塔だが。
この残骸は、身を隠すには便利な遮蔽物として使えそうだった。
「ふぅ~~? 何とか、戦闘からは逃げのびれたわね…………」
レギナは、自分は帝国兵ではないし、また帝国警察隊員でもないと思う。
そう考えながら、崩壊した監視塔だった、コンクリートの山陰から、彼女は密かに様子を伺う。
散弾銃を発砲する音や、短機関銃が何度も火を吹き、拳銃の引き金が何度も引かれる。
そうして、様々な射撃音が大きな刑務所内に木霊していた。
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