「ナタンか…………何処のアジトから来たんだい?」
「41番目の所からです、彼処はもう帝国警察に潰されましたが…………」
ハルドルは、名前を名乗った、ナタンに何処から来たかと問う。
その質問に、元居た場所は、すでに帝国警察に制圧されたしまったと、ナタンは語る。
彼は、苦虫を噛み潰したような、渋くて暗い顔を向ける。
「そうか? でっ! ナタン、君の探していた弾薬を渡すよ、5、56ミリ弾だよ」
「有り難うハルドル、感謝するよっ!?」
暗い表情を浮かべた、ナタンの気持ちを察した、ハルドル。
彼は、手元にある段ボール箱の奥底へと、両手を突っ込む。
そして、弾薬が入った、ワンカートの煙草ケースに見える弾薬箱を、十二個ほど取り出した。
また、それを小さめの空になっている段ボール箱に入れると、ナタンに手渡す。
弾薬箱を纏めて受け取った、彼は暗い表情を浮かべていたが。
親切な、ハルドルの優しさに感謝して表情を和らげる。
「ほほぉーー? ナタン君は綺麗な、お姉さまである私に手をだそうとした後、直ぐにイケメンなハルドルと打ち解けてBLな関係になるとはねぇ~?」
そん二人の様子を、ティエンは背後から伺っていた。
彼女は、二人をからかい、口に手を当てつつ、ケラケラと笑う。
そして、BLな関係と言われて、顔を気恥ずかしそうに赤く染めた、ハルドルは声を荒げて怒る。
「ティエンッ! 怒るよっ!!」
「えっと…………僕もそう言う嗜好は無いです…………」
ティエンの下ネタ冗談に、ハルドルは怒ったが、ナタンは呆れ果ててしまう。
そして、彼女は何を冗談ばかり言っているんだと、心の中で思う。
「あははっ? ご免、ご免っ! さてナタン君は無事に弾薬を受け取った事だし、他にも欲しい物はあるかなーー?」
「後は…………今は特に有りませんね?」
笑いながら、二人に冗談を言った事を謝罪した、ティエン。
彼女は、他にも、何か欲しい物は有るのかと質問してきたが。
ナタンは、首を傾げて考え込み、欲しい物は今の所は必要ないと判断する。
「それじゃあさっ!! 欲しい物を見付けたついでに私達の仕事を手伝ってくれる?」
「そうだな? 彼にはアレやコレを運んで貰おうかな?」
ナタンの是非を問わず、ティエンは雑用仕事を押し付けて来た。
ハルドルも、提案に乗って、荷物の配送作業を任せようとしてきた。
「ここまで、私達に親切にして貰っておいてまさか断る訳は無いわよねぇ~~?」
「はい? えっと? その仕事とは?」
クスクスと、ティエンは笑いながら口をニヤけさせつつ、目を細める。
仕事依頼を断れる筈の無さそうな雰囲気をした、ナタンをじっと見つめる
そして、その見た目通り、彼は断り切れずに配送作業を任されてしまった。
「悪いね? まあ簡単な仕事だし、届け終わったら、そのまま自分の仕事に戻るか、休憩に戻るのかは知らないけど好きにして良いよ?」
「頼んだわよ!! 私達も忙しくて、此処を離れる訳には行かないのよ…………て事で貴方はあの箱をカートで三番トイレまで運んで頂戴っ!」
ハルドルとティエン達は、二人して、カートに積まれた大きな箱と小箱に、視線を向けた。
それを押して、三番トイレまで運んで行こうとする、ナタン。
「分かりましたよ…………二人には弾薬を探すのを助けて頂いたし、これ位は僕も手伝いますよ…………」
そう言って、渋々カートを押して、ナタンは三番トイレを目指す。
扉を開いて、弾薬庫を出ていこうとする、彼の背中に、二人から声が掛けられる。
「じゃあナタン、お使い頼んだわよぉ~~」
「また何か? 困った事とかがあったら来いよ~~」
声をかけてきた、ティエンとハルドル達から体《てい》の良い、お使い係り扱いされた、ナタン。
彼は、内心押し付けられた仕事を嫌がりながらも、前へと進んでいく。
また、二人には弾薬を融通した貰ったので、仕方無いかなとも思う。
それから、弾薬庫のドアを閉めて、警備に立つ黒人レジスタンス員に声をかける。
こうして、カートを三番トイレまで押して行こうとする。
「三番トイレまで運べと言われたんで、行って来ます」
「そうか? 分かった行け…………」
ナタンが、カートの配送場所を黒人レジスタンス言に教える。
すると、彼はタンタルを抱えながら脇に退けて、そうかと短く答える。
そして、彼を三番トイレまで行かせた。
「はぁ~~? 僕は頼まれたら、余程の事でない限りは断り切れない正確なんだよなぁ…………」
暗い廊下を歩く、ナタンだが、こちらは物資や防弾用の鉄板が余り設置されてなかった。
そのお陰で、カートを押しても、かなり楽に通る事ができた。
「は~~? この道は楽に通れて良いな~~」
「わぁ~~い! 新しい武器だぁーー!?」
『ゴツン!!』
ナタンは、十字路となっている通路を呑気に進んでいた。
だが、その左側から急に飛び出してきた、少年にぶつかってしまった。
彼は、怪我は無いかと、優しい言葉を頭を押さえている少年に掛ける。
「大丈夫かい? 君に怪我は有るか?」
「ううん、大丈夫だよ? お兄ちゃんの方こそ大丈夫なの?」
男の子と、ぶつかってしまった反動で床に転んだ、ナタンは立ち上がる。
それから、少年に怪我は無いかと聞くと、彼は大丈夫と笑顔で答えて、しかも逆に心配してきた。
「ああ、こっちは大丈夫だ…………何も心配はいらない!! と言うか? それは…………」
「これは、お姉ちゃんがくれたんだよ?」
ナタンは、少年の右手に握られている拳銃に目を向ける。
それは何と、ベレッタM92Fであった。
「君っ! それは危ないよ」
「これは玩具だよ?」
ナタンが心配した、少年の拳銃は良くできた玩具であった。
きっと、レジスタンス達の誰かが、彼に遊び道具として与えたと、ナタンは推測する。
少年の手に握られている拳銃が、武器では無いと分かった、彼だが。
改めて、彼は少年の容姿を観察する。
丸みがかった幼い顔立ち、ややピンクがかったベージュ色をした肌と、ショコラカラーの髪。
優しそうな、おっとりした眼差しの瞳はアルノブルー色だ。
服装は、クリケットグリーン色をした、ジャンパーの下に、クリムゾンカラーTシャツを着こむ。
下半身は、ピクニック・グリーンのサルエルパンツと、黒いスニーカーを履いていた。
「ルカ? ルカぁーー! 何処なの~~?」
そこに、少年の姉らしき、女性が発した声が聞こえて来た。
ルカと呼ばれた少年は、その声に返事をして、居場所を女性に知らせる。
「お姉ちゃん、僕はここだよーー」
「ルカッ!? ああ良かった…………迷子に成ったのかと思ったわ…………」
ルカと少年を呼ぶ、女性は彼を追ってきたらしく、両膝に手を当てる。
彼と同じく、彼女は、ショコラ色の毛先を内向きにカールさせた、ロングパーマを揺らす。
アルノブルーのおっとりした印象を思わせる円らな瞳を持ち、顔は丸みがかった卵型。
肌は、うっすらとピンクがかったベージュ色をしている。
服装は、チャックを開いた、ベラ・ミント色のブルゾンと、下に白いカーディガンを着ている。
左腕には、衛生兵を表す、紅い布に白い円と、中央に、十字が描かれた腕章を着けている。
下には、パラキート・グリーン色をした、白い花柄のミモレ丈スカートを履く。
脚には、薄透明な茶色レギンスに、紅茶色のエスパドリーユ靴を履いていた。
「もぉーー何処に行ってたの? 貴方は見ない人ね…………あっ! 失礼しましたっ! 私はルイーズ…………ルイーズ・メローニです、こっちの男の子はルカです」
「僕は、ルカ・メローニだよっ! 宜しくねっ! お兄ちゃん?」
「僕は、ナタン・ル・ロワイエです、此方こそ宜しく」
礼儀正しく名前を名乗った、ルイーズ・ルカ姉弟に対して、ナタンも自己紹介する。
そうして、彼も宜しくと言って、二人に笑顔を向ける。
「それで? ナタンさんはお仕事中でしたのね、弟が御迷惑を御掛けして申し訳有りませんでした…………ほらっ! あんたも謝りなさいっ!」
「ご免なさい、お兄ちゃん…………」
「良いんですよ、此方も不注意で、ぶつかった事ですし、此方こそ弟さんにカートをぶつけてしまい申し訳有りませんでした」
弟の頭を押さえながら直ぐに謝る、ルイーズと、姉である彼女と一緒に謝罪するルカ。
その二人に対して、ナタンも悪いと言って頭を上げるように促す。
「あの? 僕は仕事が有りますので、これで失礼させて頂きます」
「はいっ! どうぞ?」
「バイバイ? お兄ちゃんっ!」
ナタンが、失礼させて頂きますと言ってカートを押して、三番トイレまで向かおうとした。
すると、ルイーズとルカ姉弟は脇に退け、カートを押した、彼が通路を通り安いようにする。
こうして、彼は姉弟の横を、頭を下げて通り過ぎて行く。
彼が去って行く途中、背後から姉弟が何やら話す声が聞こえた。
「ルカッ! 何度言ったら分かるの? お姉ちゃんを心配させ無いでちょうだいっ! お姉ちゃんにはもう貴方しか家族が居ないんだからっ」
「ご免ね、お姉ちゃん? でも、ここはレジスタンスの基地の中だから安全だよ?」
「…………姉弟か? 良いな? 僕にも頼れる兄さんや可愛い弟が居れば良かったな…………」
カートを押す、ナタンは背後から聞こえる姉弟の声が遠くなるまで、話し声を聞いていた。
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