2019年のハンザ連邦合衆国、ベルギュー州、首都ブルーシェル市内。
『ブルーシェル全市民に告げるっ!! 現在ハンザ連邦全域はノルデンシュヴァイク帝国軍の統治下に有るっ! 我々は無期限の戒厳令を発令し、我々の統治体制に反対するものや逃亡を図る者は容赦なく射殺するっ!! 嫌なら大人しく家に綴じ込もって居るんだな?』
市内全域に、ノルデンシュヴァイク帝国軍の放送が流される。
それを聞いていた、左翼のデモ隊や難民達は殺されて堪るかと、一斉蜂起した。
これにより、ブルーシェル市内を含むハンザ各地は、阿鼻叫喚の戦場《じごく》と化した。
「ノルデンシュヴァイク帝国が何だっ! 我々は平和を愛するヴァース市民だっ!」
「肌の色や宗教違いでの差別は許されないっ! 我々は断固ノルデンシュヴァイク帝国に抵抗するぅっ!」
左翼と難民からなる、大規模なデモ隊は、町角や広い駐車場で抗議活動を始める。
やがて、彼等は通りや広い交差点へと行進を開始して、暴動を起こす為に動き出した。
彼等は、プラカードを振り回し、ナチスの起こした、ユダヤ人排斥運動みたいに暴れ回る。
それは通称、水晶の夜と呼ばれており、人種差別で起きた悲劇だ。
また、棒徒たちは、宝石店やケーキ屋のショーウィンドー硝子を叩き割る。
彼等は、こう言った八つ当たりをして、暴れ始める。
「貴様ら白人が、俺達黒人を奴隷扱いしやがったから暴れているんだっ! 分かったかあーーーー!!」
「差別反対っ! 我々平和を愛する者達は帝国の支配に決して屈しないっ!」
「そうだっ! そうだっ! 私達はハンザでの生活保護を支給される権利と安心して暮らす正統な権利があるっ!」
好き放題に、過剰な暴力を振り回す、難民と左翼達だったが。
彼等は、ノルデンシュヴァイク帝国軍の歩兵部隊と激しく、ぶつかる。
そうして、ド派手な戦闘が、市内各地の街頭で開始される。
「我が帝国の統治に何の役にも立たない黒い塵共と、脳足りんなお花畑頭の持ち主は全て排除しろ…………」
「了解しました…………全て処分します」
「了解、直ちに塵掃除を開始します」
制服姿の部隊長が、命令を下すと、道路を埋め尽くす暴徒達に向かって、兵士が狙いを定める。
次いで、帝国軍部隊は、大量のAEKライフルから銃弾をバラ蒔いた。
さらに、彼等の後方から、黒い装輪装甲車が、二台現れる。
二台は、機関砲を発砲して、デモ隊の体を粉々に吹き飛ばして行く。
「きゃああああ~~~~~~!!」
「うああああああーーーーーー!?」
「やめろぉーーーーーーーー」
彼等は、たちまち機関砲の銃弾に体を、ズタズタに切り裂かれて絶命していく。
悲鳴を上げる、暴徒達を気にする事無く、帝国軍兵士たちは銃撃を続けて、デモ隊を蹂躙する。
逃げ惑う、烏合の衆と成り果てた、難民や左翼たちは成す術なく、一人また一人と殺されてゆく。
そして、最後列に居て、運良く逃げ切れるかと思って居た、暴徒達だったが。
彼等は、交差点の右側から姿を現した、戦闘車両に驚愕してしまう。
それにより、体が固まって、動けなく成ってしまった。
「何だ? ありゃあ…………」
それは戦車みたいに、キャタピラを装備して、上部の砲塔に、二連装対空砲を備え付けていた。
「対空砲…………!! 危ないっ!」
そう、それはかつて、ソ連のアフガン侵攻で大勢のアフガン・ゲリラの体を引き裂いた兵器だ。
硬い岩石を、ガリガリと機関砲で削り、戦車以上に、歩兵を虐殺する自走対空砲であった。
「あああーーーー!?」
「うあ…………」
黒い自走対空砲は、二連装の機関砲を発砲して、邪魔なデモ隊を虐殺していく。
そして、悲鳴を上げる暇無く、暴徒達は体を貫通して来る対空機関砲の弾に殺られる。
これにより、彼等はドミノ倒しに成りながら倒れてしまう。
その攻撃から辛くも逃れ、何とか生き残った、暴徒達は挟み内にされてしまった。
だが、突然上空に、うるさい騒音を出す飛行物体が現れる。
その正体は、緑色と茶色からなる、迷彩色に塗装された、戦闘ヘリであった。
『デモ隊に告ぐ、直ちに降伏しろ…………投降を拒むならば我等帝国軍は容赦せずに再び攻撃を開始する…………』
拡声器を通して、投降を告げる帝国軍部隊長の声を聞いた、デモ隊。
彼等は、すでに戦意を喪失しており、投降しようとするが。
戦闘ヘリは、帝国軍の自走対空砲と、二台ならんだ装輪装甲車に向け、照準を合わせる。
そして、対地ミサイルを発射して破壊し、地上の帝国軍歩兵部隊に機関砲を撃ち込む。
「何だ? 何で助けた…………」
暴徒の一人が、上空を飛行する戦闘ヘリを見て呟くが。
上空では、司令部へと戦闘ヘリのパイロットが、無線で連絡を取っていた。
「指令部へっ! あのナチ野郎どもは暴徒の群れを虐殺しているっ! いくら暴徒の奴等が屑でも俺達は帝国のやり方は気にくわないっ! だから帝国と敵対させて貰う」
戦闘ヘリのパイロットは、通信機を通して、司令部に告げる。
それから、再び戦闘ヘリを旋回させて、機関砲で地上の帝国軍部隊に攻撃を加える。
彼だけでは無く各地で、帝国に与しなかった、軍と警察部隊による戦闘が頻発していた。
そんな中で、学校に居た大勢の生徒達は。
「みんなっ! 落ち着いて聞いてくれ、今入ったニュースによるとノルデンシュヴァイク帝国を名乗る軍隊がハンザ政府軍と衝突しているらしい…………」
「何だってぇーー?」
「えっ? 何…………」
急遽教室の扉を開いた、フロスト先生は、教室に居る生徒達に告げる。
そして、生徒達はまだ事態が理解出来ず、あたふたと混乱を起こす。
「みんなっ! 危険だから、もう直ぐ入る校内放送の指示に従って体育館まで列に並んで行くんだっ!」
『緊急事態です教室内に居る全生徒は先生の指示に従って至急体育館まで避難して下さいっ!』
フロスト先生は、教室内の生徒達に、校内放送による指示に従うように促す。
調度その時、校内放送が掛かり、生徒達を体育館へと避難誘導する。
「ほらっ! 皆早くっ! 慌てないでっ!」
「恐いよーーーー」
「ノルデン何たらって何処の国だ?」
フロスト先生と共に、教室から生徒達は体育館を目指して、列を作って、ゾロゾロと歩いて行く。
そして、彼は気づく、一人だけ生徒が足りない事に。
「あ~~? 出た出たーーーー!? って、何だよっ! 校内放送か…………」
トイレで用を足した、ナタンは、トイレのドアを開けて出て来る。
それから、突如聞こえてきた校内放送に驚き、直ぐに、教室に戻ろうとする。
だが、幸いなことに、渡り廊下の向こう側から、フロスト先生が走ってくる姿が見えた。
「ナタン君っ! 君は何をして居るんだっ!」
「あっ? 先生っ? いったい何が…………」
走って来た、フロスト先生に対して、ナタンは訳が分からずに質問するのだが。
「早く体育館に行きなさいっ! 皆もう避難し終わって居るんだよっ!」
「はっ! はい?」
まだ、事情が飲み込めず、困惑しているナタンの腕を掴み、フロスト先生は体育館まで急いで走る。
「ナタン君っ! 事情は後で校長先生が体育館で話てくれるから今は走ってっ!」
「いててっ! 痛いぜ先生っ?」
フロスト先生は体育館まで、ナタンの腕を引っ張りながら先を急ぐ。
こうして、渡り廊下を走りながら連れて行き、体育館の扉を開けて中に入る。
そこには、大勢の生徒と教師達、そして、黒衣に身を包んだ兵士達がに銃を向けて取り囲んでいた。
「なっ! なん何だよ? コイツらは…………」
「ノルデンシュヴァイク帝国軍…………今日から、この星の新しい支配者に成る偉大な国家の軍隊さ?」
体育館に居た兵士達に、ナタンは驚くが、後ろから聞こえて来る、フロスト先生の言葉も怖かった。
また、背中に突き付けられた、拳銃らしき鉄の武器にも、さらに驚く。
「はっ!? 先生…………何の真似だよっ!」
「君達の先生はら今日で辞めだっ! 今からは、ノルデンシュヴァイク帝国国家情報保安警察のフロスト中尉を名乗らせて貰うよ」
後ろに振り向いた、ナタンに対して、フロスト中尉はら左腕を即座に折り曲げて足払いを掛ける。
こうして、彼を体育館の床へと、転倒させてしまう。
「先生っ! あんたっ!」
「おっと? 静かにしてくれよ、でないと君の遊び仲間も彼処で処刑されるかも知れないからね?」
ナタンの背中に、左膝を押し付け、体重を掛けながら耳元で囁く、フロスト中尉。
彼は、チラリと目を剃らし、他の遊び仲間達に視線を向ける。
頭を両手で押さえた、今の彼等は、後頭部に兵士達から、銃口を突き付けられられている。
「ナタンッ! お願い助けてっ!? 痛いっ!!」
「ミアに何するんだっ! この変態野郎っ!」
ミアの悲鳴が体育館に木霊すると、頭に勢いよく振り下ろされた銃床が、ドンッと鈍い音を立てる。
そうして、後頭部に強い衝撃が当たり、彼女が倒れる姿が目に入る。
その隣に居た、レオが叫び、彼女を殴り付けた、帝国軍兵士に向かって怒鳴る。
「みんなっ! てめえっ! よくも仲間をっ! よくも、ミアを傷つけたなぁっ!」
「分かっているよ? 僕の大事な教え子達に手は出させないよ、おいっ! 子供達に手荒な事はするな、乱暴な真似はよせっ!」
「はっ! 了解しました…………」
ナタンが、そう叫ぶと、フロスト中尉は、兵士に手は出さぬように命令を下した。
「フロスト先生っ!! 何故こんな酷い事をするの? 貴方は何の目的があって、子供達を拘束するのっ?」
「フィーン先生…………今の僕は先生ではなく、帝国の人間何ですよ? それに僕の目的は、ここに居る子供達を帝国の兵士として教育しつつ、立派なキリングマシーンに育てて上げるのが使命なんですよ」
それを見ていた、フィーン先生も生徒達を預かる教師として怒鳴るが。
フロスト中尉は、ニヤリと口元を大きく歪ませながら、冷たい笑みを浮かべて、そう告げる。
「それに…………貴女も、すでに教育済み何ですよ? コード02、ネージュ准尉っ!」
「何を言っ? …………」
口元を歪ませたまま、ニヤけた顔で、フロスト中尉が、そう言った途端変化が起きた。
フィーン先生が、一瞬にして、まるで体中に、電撃が走ったかのような衝撃を感じたからだ。
彼女は、自分が別人に変わる不思議な感覚に陥る。
「あ…………? 了解? …………しましたっ!」
ネージュ准尉と呼ばれた、フィーン先生は本の一瞬だけ、混乱したが。
直後、彼女はまるで人が変わったかのように人格が豹変する。
「帝国に忠誠をっ! ジークハイルッ!!」
フィーン先生、もとい、ネージュ准尉は氷のように冷たい無表情で、ピンと背筋を伸ばす。
そして、勢い良く右手を高く掲げ、ジークハイルと叫んだ。
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