いきなり、機銃掃射が始まり、素早い連射がビル内に響き渡った。
「ぐわああああああっ!?」
「ぐぶぉっ!!」
「うぎゃあーーーー!!」
帝国軍兵士たちは、大量の銃弾を浴びてしまい、さらなる攻撃を受けてしまう。
次に跳んできた弾は、散弾銃から発せられた、無数の丸いスチール弾だ。
この攻撃を受けた帝国軍兵士たちは、三名も戦死者を出してしまった。
「く、味方に何をするっ!」
「貴様、分かっているのか」
残る二人の内、右側で床に伏せた兵士は、怒鳴りながら腰から、357マグナムを抜く。
もう一人も、胸を撃たれて紅い血を流しながらも、AK200を構える。
「がっ!」
「ぐぶ?」
しかし、生き残った兵士たちも眉間を正確に狙い撃ちされた。
両方とも、脳天を撃ち抜かれた事により、紅黒い脳髄が後ろから吹き出る。
「危なかったわね…………敵ヴァンパイアの変装だわ」
「敵も、本格的に強化兵士を出してきたかぁ」
そこに居たのは、銃を構えた、ネージュ準尉とフロスト中尉たちだ。
ネージュ準尉は、ブローニング・ライフルド・ディアハンターの銃口を下げる。
フロスト中尉は、MABモデルD拳銃を右手に構えつつ、壁に貼り付きいて、外の様子を探る。
「敵は…………」
フロスト中尉が見た先では、路地を挟んで、ビル内から敵味方が銃撃している光景があった。
「ふん……ベーリット、ミア、二人は重傷のようだね? だが、敵はまだ来るようだぞ?」
路地の敵を撃っている味方は、ヴラウリオとイェスパー達だろう。
そう考える、フロスト中尉の目を向けた先に新たな敵が現れた。
「突撃っ!! あそこに隠れる敵を蹴散らすぞっ!!」
「援護するっ!! 散開しながら攻撃だっ!!」
一人は、緑色の塗装を施されたオーガーであり、PKM汎用機関銃を撃ちまくりつつ走ってくる。
さらに、もう一人はミニガンを装備した、緑色のシュヴァルツ・リッターだ。
「うおおおおっ!!」
「うらーーーー!!」
オーガーは、突撃しながら乱射しているが、アレは自分に注目を集めるための囮だろう。
対する、シュヴァルツ・リッターは凄まじい速度で、ミニガンの他銃身を回転させながら連射する。
二人だけでなく、他にも連合軍兵士たちが、自動小銃を撃ちながら前進してくる。
連中は、時おり物陰に身を隠しつつ銃撃して、互いに援護し合いながら近づく。
「今度は、総攻撃して来たか? ん…………シモーネとレギナだな」
路上を進軍する連合軍部隊は、防弾装甲を持つ、二兵種を盾にするような形で進軍している。
そんな中、連合軍兵士たちの頭や胸に遠方から弾丸と矢が放たれる。
「あぎっ!?」
「かっ!!」
強力な一撃を受けた、連合軍兵士たちは簡単に死んでしまう。
恐らく、進軍してくる連中も、ただの人間ではないだろう。
奴等も、改造手術を施された、トーテン・シェーデル・ゾルダートだ。
しかし、いくら強靭な肉体を持つとは言え、急所を撃たれれば、一溜りもない。
フリッツ・ヘルメットを貫通する弾丸、首を貫く鋼鉄製の矢。
これらを喰らった連合軍部隊は、多少は怯みながらも前進を止めない。
「不味いな、ヴラウリオとイェスパー達を援護しないとな…………全員、敵が我々の射線に入ったら、一斉射撃する……それまで指示を待て」
「了解、我々は待機します」
「獲物は固すぎて、大変そうですがね?」
フロスト中尉は、壁から少し顔を出して、敵を睨みながら見つからないように警戒する。
ネージュ準尉は、P90を構えながら膝だちになって窓の外を眺める。
ベーリットも、まるで疲れたとような愚痴を吐きつつも、AGー3を両手で確りと握る。
「愚痴を言っても、しょうがない………………よし、今?」
「すぅ~~~~ぶしゅううぅぅぅぅ」
フロスト中尉は、敵を充分に惹き付けたと思い、射撃命令を下そうとしたが。
しかし、連合軍部隊から緑色の毒々しい煙が噴出し始め、連中は姿が見えなくなってしまう。
どうやら、連合軍兵士の中にはグールが混ざって居たらしく、煙幕として毒ガスを吐いた訳だ。
「く、これじゃあ~~何も分からない…………レオ、カルミーネも重傷か…………よし、撤退だっ!! 二人を後送するっ!」
一度、敵を撃退してから隙を作り、二人を搬送しようと考えた、フロスト中尉。
しかし、余りに敵が多くて強いので、ついに撤退を決断した。
「ミア、ミネット、二人はレオ&カルミーネに肩を貸してやれっ! ネージュ、ベーリットは援護だっ! 行くぞっ!!」
そう言いつつ、フロスト中尉は外に向かって煙幕弾を投げた。
投げられた煙幕弾は、ガスを吐き出しつつ白い噴煙で辺りを包みだす。
「ヴラウリオ、イェスパー、撤退だっ! たく、我が隊にも通信機《インカム》が欲しいよっ!」
そう愚痴りつつも、MABモデルDを何度も発砲した後、直ぐに走り出す。
だが、そう易々と敵も見逃してくれるはずもなく、彼等を追撃してきた。
窓から急に、ワータイガーが奇襲を仕掛け、フロスト中尉を蹴り跳ばしたのだ。
さらに、ビル内を逃げる彼等の先からも敵が現れた。
「死ね、帝国兵っ!!」
「ぐわっ! クソ……」
「喰らえ、積年の恨みだっ!!」
「中尉っ! はっ!?」
ワータイガーと揉み合いになった、フロスト中尉を助けようにも、部下たちは銃は撃てない。
殴ったり、蹴ったりと、二人が激しい格闘を始めたからだ。
さらに、黄色いベレー帽を被るウィザードが雷撃魔法を放った事で、容易には救出できなくなる。
下手に、近寄ろうとしようとするなら、強力な魔法攻撃が跳んでくるからだ。
しかし、ネージュ準尉はP90を構えながら横に飛んで、何とか雷撃魔法を回避した。
こうして、出口を塞がれた、第三小隊の面々は逃げられなくなる。
「喰らえ、喰らえ、お前らは全員殲滅してやるっ!!」
「ヤバい、いったん身を隠さなきゃ燃えるっ!」
「コレは当たったら、氷で死ぬわっ!?」
ウィザードらしき兵士は、一人だけで雷撃や火炎に氷結魔法まで乱発しまくる。
これら、多数の魔法攻撃により、第三小隊たちは周囲にある事務机や椅子に隠れる他なくなる。
机の上には、書類やノートPCが設置されていたが、魔法が当たる度に吹き飛ぶ。
燃える紙が舞い、ベーリット頭を下げて、事務机に体を隠す。
凍ったPCやキーボードなどが、氷とともに壁に当たって砕け散る中、ミアは床に伏せる。
「ヤバいな…………あのウィザード相手じゃあ、うちの連中が死んじまう」
「そうだ、お前たちは、ここで死ぬんだ」
格闘しながら横目で、フロスト中尉は教え子らが無事か様子を確かめるが。
その隙を突いて、ワータイガーは鋭い爪を真っ直ぐ突き出す。
「ぐ……だが、これしきっ!」
「隙を見せたら終わり何だよっ! まだまだ行くぞっ!」
フロスト中尉は、右胸を鈎爪で切り裂かれてしまい、窮地に陥る。
さらに、ワータイガーは、彼を確実に仕留めるべく次は喉を狙って右手を振り上げた。
「そう簡単に殺られるかっ!」
「やるなっ!」
しかし、フロスト中尉は寸での所で、ワータイガーによる引っ掻きを、右腕を掴むことで止めた。
「ぐぅぅ………………」
「貰ったっ!」
だが、フロスト中尉が思っていたよりも、ワータイガーの腕力は強く、段々と押され気味になる。
「うわっ! ダメか?」
「止めだっ!」
そして、つかまれているにも関わらず、ワータイガーの鈎爪が、フロスト中尉に迫る。
鋭利な爪は、後少しで彼の喉を切り裂くだろう。
「いや、それは俺の台詞だっ!」
「げふぅぅっ?」
フロスト中尉は、ワータイガーの腹に膝蹴《ひざげ》りを喰らわせる。
「追撃だっ!」
「ぐわっ!」
おそらく、自分達と同じく、ワータイガーやウィザード達も、痛覚は遮断されているだろう。
フロスト中尉は、そう思ったが、流石に体へて伝わる衝撃までは止められない。
痛みは無くとも、ダメージだけは伝わるはずだ。
そう考えた、彼は強烈な一撃を放って、敵を見事に怯ませたのだ。
「今度は、そっちが隙を見せたな?」
「な、何をする気だっ!」
「は? まさか、人質にする気かっ?」
腹を押さえた、ワータイガーの胸を掴んだ、フロスト中尉は勢いよく、コイツを立たせた。
そして、背中をウィザードの方へと向けつつ走り始めた。
「その通りだっ!」
「ぐぅ? させるかぁっ!!」
フロスト中尉とワータイガー達は、互いに両手を掴み再び格闘戦を演じ合う。
「ふざけやがってっ! 俺ごと野郎を撃ち抜けっ!」
「クソがっ! 分かったっ! 死ぬなよ……」
ワータイガーは、自分ごと魔法で、フロスト中尉を殺せと、ウィザードに頼む。
そして、奴は一瞬だけ怯むも、直ぐに様々な魔法を撃ってきた。
「ぐ、が…………」
「お前と俺、我慢くらべだ」
フロスト中尉とワータイガー達の体を貫く、氷結魔法による氷柱弾。
致命傷には至らないが、他にも放たれる火炎魔法や雷撃魔法は、二人の体力を徐々に削る。
「数の上では有利でも、俺たちの方が戦闘技術は上だな」
「悔しいが認めざる得ないな?」
ワータイガーは、一気に両腕へと力を込め、フロスト中尉は押され始めた。
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