「右側からもっ!? 火炎瓶と手榴弾を投げろっ!」
「発煙筒もだっ!!」
レジスタンス達は、銃弾をバラ撒きながら、投擲武器を、倉庫の彼方此方《あちらこちら》に投げる。
こうやって、なんとか帝国側部隊を足止めしようと、試みる。
「手榴弾だっ! 隠れろっ!?」
ウィザードが叫ぶと、周囲に散らばる帝国兵達は、遮蔽物の陰に隠れる。
その瞬間に、手榴弾は炸裂して、爆炎と破片を周辺に振り撒く。
爆弾類だけではなく、火炎瓶も床に炎を広げ、発煙筒は、白灰色の煙幕を充満させる。
こうして、レジスタンス達を追撃しようとする、帝国側部隊の視界を邪魔させる。
「ぐっ! 怯むなぁーー! 追撃しろっ!」
下士官の命令が聞こえると、逃走するレジスタンス達を追うべく、帝国側部隊も通路へと走る。
そして、通路左側から現れた、ドライアドとリッチ達も、レジスタンス達を追撃しようとする。
「そこの、ワーウルフ、ドライアド、お前等は上の階の敵を追撃する、ミミックマスターを援護しに行けっ!」
「はっ! 了解しましたっ!」
「了解っ! 我々は上階を制圧します」
ワーウルフとドライアド達は、下士官の命令を受けるると、すぐに動きだす。
彼等は、二階の通路へと向かう、ミミックマスターを追うべく、それぞれ手摺を掴もうと準備する。
「行くぞっ!」
「やるぞっ!」
ワーウルフは、体を一気に屈め、両足に強く力を込めた。
次いで、二階の手摺に向かって、兎みたいに高く飛び上がる。
ドライアドは、二階の手摺に狙いを定めると、右腕から蔦を伸ばした。
それを鉄ポールに巻き付け、アンカーショットのように、一気に体を引っ張らせて上がった。
彼等は、逃げ出した四人のレジスタンス達と、先行する、ミミックマスターを追って行った。
その階下では、リッチが負傷者に、応急手当てを行っていた。
それ以外で、殆んどの帝国軍兵士・帝国警察隊員達は、通路を通って行った。
「負傷兵は、こちらへ」
だが、残された負傷者たちを、放って置く訳にはいかない。
なので、衛生兵である、リッチが負傷者の様子を見る。
黒い野戦帽に、青紫のロングジャケットを着た、リッチ。
彼は、負傷者であるシュバルツ・リッターを調べるが、時既に遅く、中の兵士は死亡していた。
死因は、戦闘中に燃え広がった、火炎瓶の炎による焼死であった。
もう一人の負傷者である、オーガーは、かなり重症では有ったが。
まだ、意識は有り、重傷ながら何とか生存していた。
「CP、担架ボットをっ!」
リッチは、負傷者を後送する為のボットを無線で司令部に要請する。
それから、オーガーや他の隊員達に、応急処置と治療を続ける。
一方、倉庫一階の通路奥へと、逃走していった、レジスタンス達を追撃する、レオとミア達。
二人を含む、帝国側部隊は、激しい銃撃戦を展開しつつ逃走する、敵を追い詰めていく。
連中は敗走しながらも、時折、手榴弾や手持ちの銃で反撃してくる。
ポンプアクション式散弾銃M1912を発射して、帝国側部隊を足止めする、レジスタンス員。
それを、別のレジスタンス員が、背後からスターリング・サブマシンガンを連射する。
彼等は、大量の銃弾を周囲にバラ蒔いて、撤退を援護する。
「くっ! これじゃあ前に進めないっ!」
「奴等を殲滅しなければ成らないわね」
廊下の曲がり角で、レオとミア達は、ずっと陰に隠れている。
二人は、自分達に対して、命を奪おうと向かってくる銃弾の嵐が止むまで待つ。
その間にも、レジスタンス達は、色々な手段で敵が追跡できないように対策を取る。
積み上げられた段ボール箱の山を崩したり、空のドラム缶を倒したりする。
こうして、追ってくる、帝国側部隊の追撃を妨害しようとする。
「これ以上奴等を近付けるなっ!」
「ああっ分かっている」
カートを横に押し倒して、楯代わりに使う、レジスタンス員。
部屋の入り口から此方に向かって、銃撃してくる、レジスタンス達。
彼等は、通路の奥から地下トンネルに通ずる、脱出用に掘られた穴を通る。
そうして、帝国側部隊の追っ手から逃れ、迅速に脱出する算段であった。
「おいっ早くしろっ! このままじゃあ自決する嵌めになるぞっ!」
「分かっているが、予想より奴等がしつこいんだっ!」
予想以上の帝国側部隊による猛追に対して、レジスタンス達は苦戦する。
そして、何とか脱出する為に、彼等は必死で反撃した。
「来たぞ、帝国軍だっ!」
「兎に角撃てぇーー」
コマンド短機関銃と、ダブルマガジンを備えたAK47を発砲する、レジスタンス達。
彼等は、迫り来る、帝国側部隊の兵士達に弾丸を浴びせる。
「これでも喰らえっ!」
一人のレジスタンス員が、火炎瓶を投げると、それは床に落ちて、ガシャンと割れる。
すると、割れた瓶の中から、油と火が直ぐさま燃え広がる。
こうして、狭い通路を、通れないように炎の障壁を張る。
また、彼等レジスタンス達は、敵である帝国側部隊に対して、さまざまな手段で抵抗する。
銃弾・散弾・手榴弾・火炎瓶など。
有りったけの武器で、帝国側部隊を攻撃して、追撃を振り切ろうと試みた。
こう言った反撃により、帝国側・追撃隊に、再び多数の死傷者が出てしまった。
「ぐあっ?」
「くっ!? …………」
一人のレジスタンス員が、遠くに投げた手榴弾は頃がっていく。
それによって、身を隠していた場所から炙り出された帝国側部隊の兵士達だが。
彼等は、次々と連中の放った銃弾に体を貫かれて倒れてしまう。
「不味いなぁ? このままじゃあ、埒が空かない…………」
「ヤバいわねぇ~~? 反撃が強力過ぎるわ」
前進した、帝国側部隊の兵士達が倒れていくさまを見せつけられた、レオとミア達。
二人は、呟きながら、燃え広がり続ける火の海へと目を向ける。
そして、その向こう側に見える、レジスタンス達を睨む。
遠くから攻撃してくる連中に対する攻撃方法が、手持ちの拳銃による発砲しか手段が無い、二人。
彼等は、何か別の攻撃方法が、ないかと辺りに目を配り探す。
「…………あっ!? アレだっ!」
「何か有ったの?」
目を配った先に、倒れている警察隊員の死体が転がっていた。
その手に握られた、グレネードランチャー付きH&K、G36Gを見つけた、レオ。
彼は、レジスタンス達の銃弾が飛ぶ中、銃を拾い取るために、隙を伺う。
そんな彼に対して、ミアは両手に握る、ステアーGBとステアー・ハーン・ドッペルを下げる。
この二丁拳銃から、空になった弾装を、交換しながら声を掛ける。
「ああ、ちょっと援護してくれっ!」
「あっ! 待ってよ…………たく、仕方無いわねーー?」
倒れた、警察隊員のH&K、G36Gを目掛けて、レオは駆け出した。
彼の背後から、ミアは両手に握る、ステアーGB&ステアー・ハーン・ドッペルで援護する。
「奴を狙えっ!」
「撃ち殺せっ!」
廊下の陰から通路に飛び出した、レオに狙いを定めた、レジスタンス達は銃撃を集中した。
「うわっ!」
H&K、G36Gを拾いつつ、レオは銃撃を避けて移動する。
そして、向かい側にあるドアの開いた部屋まで、スライディングして逃げ込む。
彼は、部屋に入ると立ち上がり、壁際から通路を覗こうとするが、いきなり腹部に違和感を覚えた。
「…………つっ?」
レオは脇腹を確認すると、黒い制服に小さな穴が三つ開いていた。
そこからは、青黒い血液が、ダラダラと流れている。
彼は、レジスタンス達による銃撃で負傷してしまっていたのだ。
帝国に肉体を改造されて、ヴァンパイア化した、レオは、多少の怪我では痛みこそ感じないが。
そう流石に、何度も攻撃を喰らう訳には、いかなかった。
「レオッ! 無事なの?」
「ミア、怪我を負ったが俺は無事だっ!」
ミアは、向かい側にある部屋に隠れる、レオの安否を心配して声をかける。
そんな彼女の優しさに対して、彼は安心させようと素早く返事した。
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