バフチャーが滑降砲と同軸機銃を、メルヴェとフランシーヌ達が陣取る土嚢に撃ってきた。
コイツは、スイカと名付けられた小型戦車だが、それは砲弾《たね》や人員が車内に沢山入っているからだ。
「きゃああああっ!!」
「ぎゃああっ!?」
幸いにも、砲弾は外れてしまい、壁を破壊するだけで終わった。
だが、間近に存在する、メルヴェとフランシーヌ達を、砲弾と壁の破片が灰煙となって襲う。
「メルヴェッ!? うわっ!!」
「うぐっ! これじゃあ、下手に動けないなっ!」
「オラ、オラ、オラ、オラッ!」
ナタンとマフディ達にも、ソムサックの短機関銃による牽制射撃が迫る。
「おっ?」
だが、ソムサックは頭を撃たれて、防弾兜が変形してしまい、一瞬脳内が揺れた。
狙撃による直撃は受けなかったが、グニャリと歪んだ顔面装甲により、彼は前がよく見えない。
「まだ、俺は生きているぜっ!」
「隊長、対戦車兵器を持って来ましたっ!」
「発射ぁぁーー!!」
タカヤマは、ブルパップ式対物ライフル、バーレットM95を撃っていたのだ。
その後方から、RPGに似た兵器である、パンツァーファウスト3を自衛隊員たちが運んできた。
彼らは、戦場から一旦離脱して、武器を用意しに後方へと下がっていたのである。
そして、成形爆薬が入った弾頭が、真っ直ぐ飛んでいき、複数の爆発を起こした。
「きゃっ! ヤバイわっ!」
バフチャーに向かっていった、無数の弾頭により、床が吹き飛ぶ。
それに巻き込まれた、レギナも身を守ろうとして、両腕を交差させて、爆風から顔を防御する。
「くそがっ! 戦車が破壊されたっ!」
「うっ! がっ! 敵の反撃かっ!」
「ここは一旦、戦車の残骸まで下がるわよっ!!」
「カルミーネ、早く後方へいぎまじょう」
レオとカルミーネ達は、連合軍兵士や自衛隊員が体制を立て直したことで、銃撃を受けてしまう。
全身から青い血を垂れ流し、黒い制服を汚す、ミアは撤退しようと言いだす。
そして、ベーリットも、口や鼻から青い血を大量に吐き出しながら走り出した。
「逃がすかっ!! 今度は、こっちの番だっ!!」
「させないわっ! 喰らえっ!!」
ベクターSSー77汎用機関銃を、左右に激しく振って乱射する、ジハード。
それに対して、レギナは素早く、コンパウンド・ボウから、凍結矢フリーズ・ボルトを放った。
「ぐぅぅっ! だが…………まだ撃てるっ!」
「根性だけは、あるのねっ!」
「敵を視認した、援護するっ!」
「ランチャーを撃つっ!」
「狙撃支援は任せてくれっ!」
右肩に矢が刺さり、凍結して動かしにくくなっても、ジハードは銃を落とさない。
彼は、ベクターSSー77汎用機関銃を手放すどころか、さらに乱射を激しくする。
レギナの背後から、誰か分からないが、味方だと思われる声が聞こえてきた。
一人は女性らしく、後ろ側からグレネードランチャーを撃ったあと、自動小銃を単発連射し始めた。
さらに、その後ろからも、RPGー7による砲撃と狙撃が行われる。
「ぐわああっ!!」
「ぎゃっ!?」
「ぐああああーーーー!?」
「ぐ、がっ!」
連合軍兵士や自衛隊員たちが、爆風や狙撃により、次々と倒されていく。
「ルルワ? 援護しに来たの?」
「向こう側は、ほとんど片付いたからね」
レギナは、ジハードから乱射される機銃弾や連合軍側の銃撃から、身を隠そうと走る。
そして、破壊された、バフチャー空挺歩兵戦闘車の裏に素早く移動する。
彼女が、次矢を背中に背負った矢筒から取り出すと、アラビ系の女性警察隊員が右隣に現れた。
PASGTヘルメットを被り、黒いアバーヤで顔を隠した女性兵士は、顔は目元しか見えない。
しかし、黒緑色の目付きは鋭く、キリリとした眉は整っている。
服装は、灰色・白・黒・灰青などに染色された、警察DPMユニフォーム・グレイタイプが目立つ。
装備は、弾帯付きの黒い軽量防弾プレートを装着している。
「西側は、ほぼ制圧したわっ!」
「残るは正面の連中だけねっ!」
弓の玄を引いた、レギナは電撃矢サンダー・ボルトを放った。
ルルワは、FN、F2000の弾倉を交換したあと、直ぐに撃ち返す。
そして、弾切れになると、H&K69グレネードランチャーから榴弾を発射した。
「ぐわっ! くっ! うおーー!」
「う…………だがな」
「援軍だぞっ!」
「敵は…………あっちか?」
一人の自衛隊員は、体を撃たれても倒れる事なく、雄叫びを上げながら89式小銃を連射する。
タカヤマは、土嚢に突き刺さった、電撃矢から飛び出た、紫電を喰らって苦しむ。
だが、それでも彼はM95を持って、スコープを覗くと、一人の警察隊員に十字照準を合わせた。
そして、大きな射撃音とともに、敵の女性隊員を射殺した。
その間に、チィーナ軍部隊やアラビ人部隊が援軍に到着した。
「ぐぅ? 不味い、これを喰らえっ!」
「このままじゃ死ぬぞっ! ベーリット、必ず助けるからなっ!」
「げぶぁっ! ヒューー? ヒューー?」
「うあぁぁ? ヤバイわ…………マジで、コレは死ぬ」
敵の銃撃を掻い潜った、レオは毒ガス缶を投げて、牽制しながら視界を遮ろうとした。
そして、青い毒ガスが充満する中、カルミーネは重傷を負った、ベーリットを左手で引きずる。
彼女は、口から盛大に吐血しながら、元から悪かった顔色を、さらに蒼白へと変化させる。
ミアは、苦し気な顔をしながらも、サクセニア、セミ・ポンプを何度も撃ちながら下がる。
「ぐぅぅ…………」
「サミーラ、今助けるわっ!」
苦し気な表徐で、口からヨダレのように青血を垂らす女性隊員を、ミアは見つけた。
射殺されたかに見えた、女性隊員サミーラはまだ死んではいなかった。
アンデッド故の生命力が高いことで、胸に大穴が開こうとも、微かに息はあった訳だ。
「有り難う…………援護するわ」
「良いから無理しないでっ!」
「ミア、逃がさないぞっ!」
青・黒・白の迷彩服を着ているサミーラは、AKMSを撃ちまくる。
そんな彼女の首根っこを両手で掴みながら、ミアは後退していく。
だが、毒ガスの向こう側から、ナタンによる銃撃が飛んでくる。
それは、後ろに下がる二人の体を貫いていく。
「ぐ、がっ! やったわね…………」
「う?」
ミアは、何発か弾丸を喰らいながらも、サミーラを引っ張っていく。
引きずられていく、彼女の被る黒いPASGT・ヘルメットに拳銃弾が何発か当たる。
その度に、カツンッと弾けた音を立てる。
「サミーラ、撃ち返してっ!」
「分かってるわ、今やるわ」
無数の弾丸が飛んでくる中、ミアは必死で破壊された、バフチャーまで逃げようとする。
サミーラのPASGT・ヘルメット正面に取り付けた、サーマル・スコープが破壊された。
それで、焦った彼女は、黒い弾帯ベストの上に、首から青いスリングで下げたAKMSを手放す。
そして、背中側から取り出した、タブク狙撃銃を構えた。
スケルトン・マスクを装着している、彼女の青緑色に淀んだ瞳は、スコープを覗く。
「青ガスで見えないけど、音や軌道を探れば…………」
「撃てるの?」
「二人とも、こっち、こっちっ!」
「早くこいっ! 一旦、体制を立て直すぞっ?」
サミーラは冷静に、敵を狙って何回か、狙撃するが、ミアは彼女を引っ張りながら走り続ける。
レギナは、コンパウンド・ボウから催涙矢テラ・ガス・ボルトを放ちつつ二人を呼ぶ。
レオも、毒ガス缶の二発目を投擲しながら叫んだ。
こうして、連合側・帝国側と、双方の姿が見えなくなってしまった。
それにより、戦いは互いに無駄弾を撃ち合う消耗戦へ突入した。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!