ザミョール率いる、第二小隊の全員が、突撃用に武装を整える。
すると、かなり年配の士官が、二警備隊員を二名も連れて、近づいてきた。
「私が、警備隊長のルドルフ・エイフマン少尉で有ります」
現れた士官は、黒いロングコートを着ていて、両手を後ろ手に組ながら、自らの名を名乗った。
「こちらは部下のゲンナジー・ニクリン伍長とソロモン・ルビンシテイン一等兵です、二人とも私の優秀な部下で貴殿等の道案内を勤めさせます」
ルドルフは、自らの背後に控える、二警備隊員たちを、ザミョール中尉に紹介する。
「そうか…………有り難い申し出だ、では早速我々は工作員の救出に向かう、全員出発だっ!」
歓迎してくれた、ルドルフ少尉とザミョール中尉たちは、互いにローマ式敬礼を返す。
少尉と別れ、工作員の場所を目指す、一向を案内する、ゲンナジー伍長とソロモン一等兵たち。
「こちらです」
「さあ、行きましょう」
ゲンナジー伍長は、ブルバップ式ライフルである、OTsー14を装備した男性だ。
スチール・グレイ色の髪、黒い瞳、黒いヘルメット、黒いガスマスクなど。
装備から察するに、バクテリエラー・ゾルダートの格好をしていた。
ソロモン一等兵は、自動散弾銃である、ヴェープル12モロト散弾銃を両手に構えていた。
彼は、中世の鎧みたいな防弾装備を身に付けており、まさに騎士と言った格好をしていた。
そして、アイスランド・ブルーのキツそうな目をした瞳だけしか、素顔を確認できなかった。
また、格好からは彼の兵種が、シュヴァルツ・リッターであると分かる。
それに、動きやすそうな防弾プレー徒から、中量級のアーマーを、装備している事が伺えた。
「ハッ! では早速、我々が内部に案内します」
「私達の後に続いて下さい」
ゲンナジー伍長とソロモン一等兵たちは、八人の前を歩いて、先導していく。
そして、下水処理施設から左脇に作られた、倉庫みたいな建物のドアを開けて、中に入って行った。
その後に続いて、八人も入ってくると、二人は右端に存在する地下へと続く、階段を下り始めた。
ソロモン一等兵が、階段の奥にある青いドアを素早く開いた。
すると、即座に、ゲンナジー伍長が中に入り、奥の暗闇へと走っていった。
「チュチュ? チュッ!」
深い暗闇の中を、ひたすら走る、十人で構成さられる帝国警察隊員たち。
その姿を目にする、鼠《ネズミ》や蜘蛛たちは、壁際へと下がっていく。
何処までも続く、長い通路の隅に、彼等は静かに佇んでいた。
這いつくばる彼等、小さき者達は、足音が聞こえる度に隅へと逃げる。
そうして、じっと動かず、部隊全員が過ぎ去るのを、怯えながら待っていた。
彼らの足に、踏み潰される事を恐れ、黒いブーツを両目に映して、鼠達は震える。
「こちらです、ここから先は我々の巡回範囲外なので、何が待ち受けているか、分からないので気を付けて下さい」
長い通路最奥には、ドアがあり、その施錠をソロモン一等兵は外して、ノブを回す。
彼は、中量級のアーマーを装備した、シュヴァルツ・リッターだ。
それで、室内に対する突入時には、彼がドアを開く事が適任なのだ。
彼が、ヴェープル12モロトを片手に構えながら扉を開く。
中には誰も居らず、ガランとした長い通路が再び続いていた。
「内部構造は分かって居ますが、普段立ち寄らない通路ですから、罠が仕掛けられている可能性も」
「分かっている、さぁ案内してくれ」
ゲンナジー伍長は、OTsー14を両手に構え、腰を低くして暗い通路を進む。
後ろに続く、ザミョール中尉はAK12を構えながら、鼠色の廊下を走る。
彼等が通路の奥へと消えていく姿を、小さな黒蜘蛛は八つ目で見ていた。
やっと静寂が訪れた地下通路に、ヒンヤリとした空気が戻ると、鼠や蜘蛛は安心した。
雨が降ってきた時、コンクリートで出来た、アパート等に入ると漂う、湿気の匂い。
頬を撫でるように、充満するカビ臭さの混じった、それは鼻に入ってくる。
「ここが、ポイントの近くですね?」
「ああ、だが? どうやってテロリストの拠点の入り口を探すとするかな?」
潜入している工作員から発信される信号に、ギルシュ二等兵のノートPCは反応する。
信号自体の発信源は、壁よりも向こう側である土中から発信されている。
だから、どのように進もうかと、ザミョール中尉は悩む。
「奥の方を調べて見るか?」
ザミョール中尉は、鼠色をしあ壁の向こう側に通じる隠し扉を探るべく歩いていく。
部下を率いて、彼は通路を奥へと向かうが、その先には幾つか、小部屋が存在している。
そこには、錆び付いたマンホールの蓋や、ロッカーみたいな形状をした、機械が並んでいた。
他の部屋にも、大型のボイラーに見える機械が無数に設置してある。
また、そこから延びる、所々が錆び付いた、青と赤の太いスチームパイプも見えた。
そして、多数ある、それ等の配管が天井や壁へと続いていた。
これ等の機械が、所狭しと並ぶ部屋を進む、十人からなる警察隊員たち。
「しらみ潰しと行くか…………」
ザミョール中尉は両目を瞑り、力強く足を床に踏みつけ、周囲に響く反響音を確かめる。
一つずつ部屋を回り、足音を立てたり、壁を叩いたりして、彼は隠し通路への入り口を確認する。
そんな中、今までの場には何も異常は見当たらず、彼は最後に残った、所に向かう。
そこには、ノルデンシュヴァイク帝国がハンザを制圧・占領する以前だが。
アラビ地域から避難してきた、難民が隠れていたので有ろう、ゴミが散乱していた。
空になったペットボトル・床に敷かれた・ブルーシート・スナック菓子・揚げパンの袋など。
こう言った、生活に使っていたであろう、ゴミが辺りに散乱している。
その奥には、壁に空調を制御する機械が設置されてあった。
しかし、埃を被った姿から、今は作動していない様子が伺えた。
「中尉…………今までの部屋には、何も怪しい物は見あたらなかったですね?」
「ああそうだな、だから最後のここが怪しいぜっ!」
ガリーナ二等兵が、部屋の中に入り、PPSh41短機関銃を、構えながら姿勢を低くする。
その後を、AK12を構えて、安全を確かめつつ部屋に入る、ザミョール中尉。
「何発か当てればっ!!」
ザミョール中尉は、奥にある空調制御の機械が怪しいと睨んだ。
そして、彼は直ぐに、AK12を背中に回すと、そのままTOZー194に持ち変えた。
次いで、ポンプを引きながら発砲しまくって、散弾を、装置に何度もブチ当てる。
「ふぅ…………出て来ないか?」
三回も、散弾を浴びた、空調制御の機械は穴だらけに成ってしまった。
しかし、何も変化はなく、辺りは再び静寂に包まれたまま、沈黙が訪れる。
「他に怪しい物は有りませんね、隊長?」
「爆薬でも、持ってくれば良かったぜ」
「今からでも、遅くは無いから取りに行くか」
カピトリーナ二等兵・リッチの隊員・ミミックマスターの隊員たちは、敵が居ないかと周辺を探る。
そして、彼等は、気を抜いているのか、呑気な会話をする。
『…………何か妙だな? …………』
「そうだな、カピトリーナ」
ザミョール中尉は、目の前にある空調制御用に設置された、機械を睨んでいたが。
ほかに、怪しい物は無いかと、彼方此方《あちらこちら》に目を向ける。
「何だっ!?」
天井に目を向けていた、ザミョールの眼前で、いきなり空調制御装置が右に動く。
すると、その四角い穴から、誰かが頭を出してきた。
「敵が、ここにも!?」
「貴様っ!」
紅いベレー帽を被った黒髪の男は、ザミョール中尉を見や否や、機先を制してきた。
奴は、胸のベストから、M1917リボルバー拳銃を抜き取る。
それを、ザミョール中尉は即座に、TOZー194の銃口で叩き、続いて素早く散弾を発砲した。
面白かったら、ブックマークとポイントを、お願いします。
あと、生活費に直結するので、頼みます。
(^∧^)
読み終わったら、ポイントを付けましょう!