【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第十三部 史上最大の空挺作戦

第173話 砂漠の幻影作戦は開始された

公開日時: 2024年7月11日(木) 17:58
更新日時: 2024年7月14日(日) 09:51
文字数:3,087


「おい、おいっ! 朝だぞ?」


「ん? 君は誰だ」


 何者かは、ロビーで寝ていた、ナタンを起こす。



「誰だ…………じゃない、いいから全員を集めるように言われているんだ、訓示が始まるぞっ!」


「訓示?」


「ふぁぁ? ウルサイわね?」


 リザード迷彩服を着た赤ベレーの黒人PMC要員が、ナタンが眼を覚ました正面に立っていた。


 その声を聞いて、メルヴェも両手を上げて欠伸《アクビ》をしながら眼を覚ました。



「ねぼけている暇はない、お前らも着いてこいっ!!」


「うぅ~~仕方ない? メルヴェ、着いていこう」


「ここの社員には助けて貰ったし、しょうがないわよね」


 黒人PMC要員に着いて行った、ナタンとメルヴェ達は、ロビーの奥に連れて来られた。


 そこでは、大勢の兵士が集められており、部隊長から訓示を聞かされることを待っていた。



 そこには、木箱が何個か置かれた、演説台が設置されている。



 また、両脇には缶コーヒーを投げ入れる金網のゴミ箱に木炭が入れられ、炎が揺らめいていた。



「あぁ、あ~~? 諸君、我が社の社員とレジスタンス、それに連合軍兵士も居るだろう」

 

 迷彩服に身を包んだ、初老の白人男性が、暗闇に包まれたロビーよりも奥から現れた。



 彼は、演説を始めながら台の上に登った。



「今日、我々は特殊作戦を開始するっ! それは地中海、ひいては全世界で始まる大規模な反攻作戦を支援するためだっ!」


 白人男性PMC隊長が語る通り、大規模な反攻作戦に呼応して、ハンザでもテロをしかけよう。


 そう計画が立てられており、そのために何十台も軍用車両や改造された民間トラックが集められた。



「知っての通り、ピレネー、アルプス、カルパチア、カフカース、ザグロス…………これら進軍を阻む壁を連合軍は越えられない」


「鉄の壁とブルシーロフ大攻勢かよ、BF1じゃあるまいし」


「しーー! 黙って、聞いてなさい」


 PMC隊長が語る物の名前は、一部を除いた他すべてが、ハンザに存在する山脈だ。


 特に、ナタンが呟いたように、後世のゲームなどで描かれるような熾烈な戦いが繰り広げられた。



 そんな場所を越えることは、連合軍に取って、PMC隊長が言うように事実上不可能である。



 そして、そんな呟きを、メルヴェは小さな声で叱る。



 周りに迷惑をかけないようにする為だ。



「しかしっ! スピィン、イタリィー、グリシアと言った地域と、対岸のリビャやエズィペト等は制圧できる……また、ここには新型無人機やステルス攻撃機による援護が来るっ!」


 PMC隊長は、地中海の覇権は、連合側が支配すると力強く断言した。


 ここベルギューは、ハンザ西方地域に位置するが、ピレネー山脈が連合軍の進軍を邪魔する。



 そのため、空挺作戦や上陸作戦までは到底実行できない。


 だが、大型無人機やステルス戦闘機による短時間の航空支援までなら期待できた。



「また、地中海側に帝国の援軍が向かわぬように、世界各地では同時テロ攻撃が行われている…………今、この時間にもだ」


 世界各地では、PMC隊長の言った通り、様々な反帝国運動が行われ始めていた。



「我々も、それに続く、行けっ! 出撃だっ!」


 

『うおおおおおおーーーーー!!』


 PMC隊長による演説が終わり、出撃命令が下ると、大勢のPMC要員は歓声を上げる。



 それは、ロビーから地下駐車場まで響き渡った。



 勢いに乗ったまま、彼等は一斉に駐車場に止まる数多くの車両へと走ってゆく。



「ナタン、メルヴェ、お前たちは俺達の横にある奴に乗ってくれっ!」


「ワンガリ、分かった…………こっちも援護してやるからな」


「新入り、アンタ達に背中を預けるんだから頼むぜっ!」


「言われなくても、やる事は真面目にやるわよっ!」


 走ってゆく、PMC要員たちに続いて行った、二人をワンガリは見つけると声をかけた。


 ナタンは、彼の期待に応えるべく、元気よく返事を返した。



 エスメラルは、白い歯が見えるくらい、にこやかな笑顔を見せながら拳を前に出した。


 それに、自らの拳骨《げんこつ》を叩きつけながら、メルヴェも威勢よく応える。



 こうして、中世風な格好をした、彼等は屋根無しハンヴィーの荷台と牽引車に上がった。



 牽引車には、M2キャリバー重機関銃を、四機搭載したM45機関銃架があった。


 しかも、背部には防弾板が張られており、上部には左右の柱に支えられた屋根があった。



 レジスタンスである二人も、トヨタ・テクニカルの荷台に上がってゆく。


 こちらには、中央に緑のポールがあり、そこにAAー52汎用機関銃が載せられていた。



「機関銃手は任せたぞ、ジュジース」


「分かりましたよ、きちんと任務はこなします」


 ワンガリは、牽引車に搭載された、M45機関銃架に、ジュジースを載せた。


 エスメラルとヨルギオス達は、すばやく荷台へと飛び乗った。



「お前ら、本来は乗るはずだった連中の負傷が酷くてな…………ま、機関銃とグレポンは頼んだぞ」


「分かったわ、私はグレネードを担当するわっ! ナタンは機銃を任せるわっ!」


 トヨタ・テクニカルの助手席に座る、アシュア系PMC要員は、窓から顔を出して告げる。


 彼は、頭に黄緑色の鉢巻型バンダナを巻いていた。



 その言葉を聞いて、メルヴェはAAー52車載機関銃をナタンに託した。


 次いで、自身は車体左脇にある箱上に置いてあった、ダネルMGLを手に取る。



「それじゃ、出発する」


 運転手の声が聞こえると、トヨタ・テクニカルは車列に加わり、駐車場を走り出す。


 車列は、トンネルを目指して走り、明るく白い雲に覆われた地上に向かっていく。



「そう言えばさ? 前に連合側の兵士って言うか、ワーウルフとか教えてくれるって、言ってたよな」


「…………今、それどころじゃ…………いや、いいわ、教えて上げるわ」


 ナタンが、AAー52汎用機関銃を握りながら呟くと、メルヴェは呆れた顔をしながら応える。


 彼女は、トヨタ・テクニカルの屋根をバンバンッと叩いた。



「なんだ? 奇襲か?」


「いや、紙とペンは有るかしら?」


 アシュア系PMCが窓を開けて、顔を出すと、メルヴェは頼み事をした。



「ペンはあるが、ティッシュの箱くらいしか、紙の代わりになる物はないぞ」


 アシュア系PMC要員は、黒いペンと灰色のティッシュ箱をメルヴェに渡してきた。


 それを受け取った、彼女は箱の横に、ササッと字を書いていく。



 アタッカー。



 軽歩兵。 コープス・ソルジャー、トーテン・シェーデル・ゾルダート。

 突撃兵。 ワータイガー、ワーウルフ。

 重装兵。 ギガント、オーガー。



 ジャマー。



 毒撃兵。 スパルトイ、グール。

 潜入兵。 ヴァンピール、ヴァンパイア。

 遊撃兵。 ドリアード、ドライアド。



 サポーター。



 魔術兵。 マジシャン、ウィザード。

 衛生兵。 マミー、リッチ。

 幻術兵。 ドリーマー、ソーサラー。



 ディフェンサー。



 細菌兵。 デバッグ・ソルジャー、バクテリエラー・ゾルダート。

 罠猟兵。 シェイプシフター、ミミックマスター。

 装甲兵。 グリーン・シュヴァリエ、シュヴァルツ・リッター。



「こんな感じね? 帝国と連合の兵種の名前一覧よっ!」


「どれどれ? これが一覧か? 前に帝国側の一覧は見たことあるけど…………こっちと向こう側で、ビミョーに名前が違うんだね」


 メルヴェの見せた、メモ書きを眺めながらナタンは呟く。



「少し破るわよ? あんがと、コレは返すわ」


「おい…………まあ、まだ使えるから別に良いけどよ」


 また、メルヴェは屋根をバンバンッと叩いて、アシュア系PMCを呼び出す。


 そして、横から厚紙を破り取ったばかりのティッシュ箱を彼に手渡した。



「ナタン、これを渡しておくわ」


「ん…………分かった、ありがとう」


 メルヴェは、ナタンに今書いたばかりの簡単なメモ書きを渡す。



 そうこうしている内に、二人の頭上は明るくなった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート