【暗黒騎士団VS反逆のレジスタンス】 吸血鬼アンデッド軍団と最後の人類は、たった一人でも戦う

レジスタンスは今日も戦う
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

第101話 魔女とペット

公開日時: 2024年7月10日(水) 09:36
更新日時: 2024年7月13日(土) 10:11
文字数:3,068


 何処かの地下室らしき暗闇では、ワーウルフへと変化する少年と魔女が存在した。



「グオオオオオオオオオーーーーーーーー!?」


 ラハーラーは、衣類をビリビリと破りながら全身の筋肉が隆起しつつ、体毛に覆われていく。


 そして、灰黒い狼男へと完全に変貌を遂げた、彼は見境を失い暴れだす。



 彼は、拘束ベルトを意図も簡単に引きちぎると、フォイルスニェーク中尉に襲いかかった。


 彼女の身体を、両手で掴んで持ち上げると、今度は遠くに投げ飛ばそうとする。



「グオオオオオオオーー!!」


「いっ!! …………おっ? おい、落ち着けっ! 命令だっ! 言う事を聞けっ!」


 ラハーラーは、暴走しているらしく、正気を失って、ただ吠え続ける。


 次に、己が拘束されていた手術台に、フォイルスニェーク中尉を持ち上げて、勢い良く叩きつける。



「グオーーーー!!」


「ぐっ! くぅ~~? ぺっ!」


 ラハーラーは、フォイルスニェーク中尉の美しき体に覆い被さろうとする。


 彼女は、手術台に寄りかかりながら、何とか立ち上が口内を切ったらしい。



 それで、口から唾液と血が混ざった物を吐き捨てる。



「クソッ! 仕方の無い奴だな…………♡ しょうがない? ほら、こっちにおいで、狼の坊やっ♡」


「ガオオォォッ!!!!」


 手術台に座っている魔女の誘いを受けた、狼は彼女へと素早く迫った。



「ここは…………昨日の事は夢なのか?」


 それから後、人間に戻った、ラハーラーは白いダブルベッドの上で目が覚めた。


 そこは薄暗く、唯一の光源は、ダブルベッド脇にある電話台に載せてある装置だけだ。



 これを、よく見ると、淡く青白い光を発光させる、水晶玉型のスタンドである事がわかった。



「起きたか? その…………昨晩は凄かったぞ♡」


「貴女は…………!?」


 開かれたドアから、室内に入ってきたばかりのフォイルスニェーク中尉。


 そんな彼女に対して、ダブルベッドから急いで身体を起こす、ラハーラー。



「もう、日が昇っている時間だ」


「そんな時間にっ!?」


 薄暗い室内で、淡い青白い光に照らされた、フォイルスニェーク中尉。


 いきなり現れた、彼女は何と物すごく過激な下着姿をしていた。



 薄布レース模様の黒いブラとパンツに、ガーターベルト&ストッキングと言う、派手で扇情的な姿。



 その格好に、目を丸くするラハーラー。



「昨日の事は夢などではないぞ、お前は狼に変身して、私を襲ったのだぞ」


「…………」


 フォイルスニェーク中尉から、とつぜん衝撃的な言葉が告げられた。


 それに、興奮が一気に消え失せ、俯いて黙ってしまう、ラハーラー。



「さあ~~? そんな事より昨日の続きだ」


「!?」


 ダブルベッドの脇にドサッと座った、フォイルスニェーク中尉。


 そこから、くるんと身体を回転させて、ラハーラーに、彼女は自らの顔を近づける。



 こうして、暫く、彼女と彼はシーツの上で、時間を無駄に消費した。



『ザザ…………帝国地上軍の活躍により、ルーマリア首都、ブカレストを瞬く間に占領っ! …………』


「我が軍が優勢だな、いずれは星全体が吹雪と霧に包まれ、寒波と氷の惑星と化すだろう」


「貴女の目的は?」


 ダブルベッドの隅に置いてある、タブレットからは、ラジオ・ニュース番組が流れる。


 それを聞いて喜ぶ、フォイルスニェーク中尉に、ラハーラーは質問する。



「私の目的は、帝国への忠誠と奴隷の確保だ」


「う? …………」


 狐目になりつつ、ラハーラーの頭と顎《アゴ》を優しく擦る、フォイルスニェーク中尉。



「良いか? お前はもう帝国の兵士だ、他の難民や黒い肌の奴等は遠慮なく殺せっ!」


「何故、僕は殺さないの? そして、僕が帝国の兵士に?」


 ラハーラーを愛《いとお》しく見つめて、可愛いがる、フォイルスニェーク中尉の衝撃的な言葉。


 それに、当の彼は、何故自分がと疑問に思い、それを口に出す。



 彼もまた難民の一人であり、人種的には白人になる訳であるが。


 細かく区分すると、少し肌が浅黒くて堀の深い、アラビ・中央アシュア系になるはずだ。



 だから、彼が帝国の兵士になれたかと、疑問に思うことは当然であった。



「なぜ、難民の自分をだと? …………決まってるじゃないか? 私が、お前を気に入ったからだっ!」


「はぁ?」


 すっとんきょうな答えに、ラハーラーは、ただ唖然としてしまう。


 それから、何を当然の事を言っているんだと言う顔をする、フォイルスニェーク中尉を見つめる。



「その深い色の瞳、そして浅黒い健康的な肌を見た瞬間に欲しくなってな」


「それだけの理由で…………」


 まるで、乙女のように恥じらいつつ、目を反らす、フォイルスニェーク中尉。


 彼女に対して、本当にそれだけなのかと、ラハーラーは思う。



「本当は、僕を実験台にするのが目的じゃないの? それか拷問に掛けて殺すのとか?」


「はあーー? 何を言っているんだ、実験台や拷問になら、昨日すでに済ませただろう? それに絶対に死なせはしないと言ったはずだぞっ!」


 アフガンで悪夢の如き、虐待を毎夜受けていた、ラハーラー。


 彼は、熱っぽい視線を背ける、フォイルスニェーク中尉を信用しきれなかった。



「僕は、アフガンで酷い目にあったんだ? それに、ハンザでも余り良いことは無かった」


「そうか、なら聞かせて見ろ」


 叫んだ、ラハーラーをそっと抱き締めた、フォイルスニェーク中尉。


 彼女は、今までの経緯を、子供が話す内容に、耳を傾ける母親みたいに聞いた。



「そうか、それは辛かったな」


「…………」


 フォイルスニェーク中尉は、涙を流して無言に成った、ラハーラーを優しく抱き締める。



「だが、今は帝国の改造兵士だっ! だから、私と共に来いっ! ラハーラー」


 フォイルスニェーク中尉は、母親のような優しさを醸し出していた。


 しかし、一転して今度は立ち上がると、厳しい女軍人の態度を取った。



「一緒に来れば、お前が同胞から受けた傷を、千倍、いや万倍に返して復讐させてやる」


「はっ! はいっ!!」


 その後、フォイルスニェーク中尉は、復讐を遂げさせてやると、頼もしい笑みと強い口調で語る。


 彼女が言う通り、数々の潜入作戦等で、レジスタンスに上手く紛込《まぎれこ》んだ、ラハーラーは活躍した。



「なっ! ファリドッ! てめえっ!!」


「貴様、裏切っ! …………!?」


 元難民である、ラハーラーが、まさか帝国の兵士だとは思う訳が無い。


 そう考える、レジスタンス側を、彼は内側から崩していく事が得意だった。



 こうして、誰にも知られる事なく、潜入工作任務を、彼は着々と果たしていった。


 次々と武勲を重ねた彼は、遂に帝国軍部隊の下士官を勤めるまでに成った。



 彼が上げた功績は、上層部に評価されて、上官である、フォイルスニェーク中尉の階級も上がった。



「と、言う訳さ…………」


 二人へと、帝国軍に参加した理由を、ラハーラーは話した。


 彼は、手術台で起きた彼女と絡んだ事を抜いたり、アフガンでの過酷な日々を、多少は暈《ぼか》した。




「そう言う理由だったのか、なら分かったが」


「君も、大変だったんだね? 凄い話しだ」


 ラハーラーの話を、黙って静かに聞いていた、レオとカルミーネ達は短く答えた。


 丁度、話が終わった所に、数台の警察車両と装甲車が、猛スピードで現れた。



「貴女達、早くしないと二人が殺られてしまうわっ!?」


 いきなり、指揮車両から飛び出してきた、スネージュ準尉。


 彼女は、P90を構えながら地下に続く、防空壕の入口に向かって走る。



「待って下さいっ! 準尉…………アレ?」


「待ってられな…………あら?」


「一人で行くのは無茶ですって?」


 続いて、指揮車両から飛び出してきた、ミア・スネージュ・ベーリット達。


 彼女達は、無事だった二人を見て、何でここに居るのかと思って、固まってしまった。

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